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頸
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くび
ふりがな文庫
“
頸
(
くび
)” の例文
外套を着ていないから僕の
頸
(
くび
)
はむきだしなのだ。座席の後板に背筋を着け、僕は両手をすくめて膝にはさみ眼をしっかり閉じていた。
蜆
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
小腰をかがめて
媼
(
おうな
)
の
小舞
(
こまい
)
を舞うているのは、
冴々
(
さえざえ
)
した眼の、白い顔がすこし赤らみを含んで、汗ばんだ耳もとから
頬
(
ほお
)
へ、頬から
頸
(
くび
)
の
大橋須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
頸
(
くび
)
に縄を付けて、池に
投
(
ほう
)
り込まれるまで、瓢々斎が音も立てなかったということは、どう考えても少しテニヲハが合わなくなります。
銭形平次捕物控:085 瓢箪供養
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
部屋中がグルグル廻転し、耳のそばで馬鹿
囃
(
ばやし
)
がチャンチャン囃し立てている中で、何かうるさく、彼女の
頸
(
くび
)
に
纏
(
まと
)
いつくものがあった。
江川蘭子
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
伯爵は
唸
(
うな
)
っていた。主翁は小紐を出して、そっと伯爵の
頸
(
くび
)
に捲こうとした。と、小紐は風に吹き寄せられるように
手許
(
てもと
)
に寄って来た。
黄灯
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
▼ もっと見る
私はその
頸
(
くび
)
から
鉄鎖
(
てつぐさり
)
を取り、
羊飼
(
ひつじか
)
いに手伝わせて、ロボをブランカの死体をおいた
小舎
(
こや
)
へ運び入れて、そのかたわらに
並
(
なら
)
べてやった。
動物物語 狼の王ロボ
(新字新仮名)
/
アーネスト・トンプソン・シートン
(著)
田島はこれがためにこの家に大分借金が出来たし、また他の方面でも負財のために
頸
(
くび
)
がまわらなくなっている。僕が吉弥をなじると
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
その
頸
(
くび
)
筋と
頬
(
ほお
)
が少し彼の眼にはいった。——そして彼女をながめているうちに、彼女が赤くなってるのに気づいた。彼も赤くなった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「——でござりましょうか」と外記は
頸
(
くび
)
をふるわした、そうではない、と、
反駁
(
はんばく
)
する気持が語気に出て、力を入れて云うのであった
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
蛇と云えば、いつぞやお化け師匠のお話をしたことがあるでしょう。師匠を絞め殺して、その
頸
(
くび
)
に蛇をまき付けて置いた一件です。
半七捕物帳:55 かむろ蛇
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そうしてその一軒の大きい方の店頭には、いつも一匹の
黒斑
(
くろぶち
)
の猫が
頸
(
くび
)
も動かさずに、通りの人人を細目に眺めながら
腹這
(
はらば
)
って寝ている。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
黄金の黄ろい頸鎖を
頸
(
くび
)
に巻き、三本の
尖頭
(
とげ
)
ある黄金の輪を頭に載せ、脚は鹿皮の革紐で巻いて、赤く染めた牝牛の皮で足を包んでいた。
かなしき女王
(新字新仮名)
/
フィオナ・マクラウド
(著)
庭には
藤
(
ふじ
)
が咲き重つてゐた。
築山
(
つきやま
)
を
繞
(
めぐ
)
つて
覗
(
のぞ
)
かれる花畑にはヂキタリスの細い
頸
(
くび
)
の花が夢の
焔
(
ほのお
)
のやうに冷たくいく筋もゆらめいてゐた。
汗
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
娘は
糠袋
(
ぬかぶくろ
)
で
頸
(
くび
)
から胸、腹から
腿
(
もも
)
へと洗いながら、また湯を汲みに立ったりして、前後左右いろいろな角度と姿勢をこちらへ見せた。
追いついた夢
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
裸になった彼女は花束の代りに英字新聞のしごいたのを持ち、ちょっと両足を組み合せたまま、
頸
(
くび
)
を傾けているポオズをしていた。
夢
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
都の女はすての顔立にある男らしさを美しいといい、すては女はみなこうあらねばならぬ
頸
(
くび
)
のほそれを、都の女に
対
(
むか
)
って
褒
(
ほ
)
めていった。
舌を噛み切った女:またはすて姫
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
そのほか、私の正面には、ルセアニア人の
羸弱
(
フラジル
)
な眼鼻立ちがあった。彼は、
頸
(
くび
)
へ青い血管を巻いて、
蓴菜
(
じゅんさい
)
のような指を組んでいた。
踊る地平線:10 長靴の春
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
おかけになっていらっしゃる
頸
(
くび
)
飾りが取り換えられたということは、普通では考えられぬ、魔術のような
早業
(
はやわざ
)
だということになります。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
続いて
入
(
い
)
るはアグラヴェン、
逞
(
たく
)
ましき腕の、
寛
(
ゆる
)
き袖を洩れて、
赭
(
あか
)
き
頸
(
くび
)
の、かたく衣の
襟
(
えり
)
に
括
(
くく
)
られて、色さえ変るほど肉づける男である。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
百合、のび上って、晃が
紐
(
ひも
)
を押え
頸
(
くび
)
に掛けたる
小笠
(
おがさ
)
を取り、瓢を引く。晃はなすを、受け取って
框
(
かまち
)
におく。すぐに、鎌を取ろうとする。
夜叉ヶ池
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼女はしかしその間、目をつぶった
儘
(
まま
)
、何か自身の考えに沈んでいた。ときどき
痙攣
(
けいれん
)
のようなものが彼女の
痩
(
や
)
せた
頸
(
くび
)
の上を走っていた。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
城太郎は、竹筒の
栓
(
せん
)
を抜いてから、中をのぞいた。吉岡道場の返書はたしかに入っている。やっと安心して、また
頸
(
くび
)
へかけながら
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「いやどうして」と法水は強く
頸
(
くび
)
を振って、「この事件の犯人ほど冷血な人間が、どうして打算以外に、自分の興味だけで動くもんか」
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
頸
(
くび
)
の逆毛を針のように立て、射られた一眼に矢を折り掛け、二振りの剣と見
惑
(
まが
)
うような二本の牙を喰いそらして雷光の如く突いて来た。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
右の眼の上と耳あたりが特別大傷らしく、生温かい血が噴いては
頸
(
くび
)
へ流れ伝わる。痛くはない。目に見えぬ大きな拳骨が室中を暴れ回る。
長崎の鐘
(新字新仮名)
/
永井隆
(著)
私は軽はずみの例に
洩
(
も
)
れず、少しくとりのぼせていたのである。よく見ると、犬の
頸
(
くび
)
には最近まで首輪をはめていた形跡がある。
犬の生活
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
激情に満ち満ちた声で叫んだ弟はイキナリ私の
頸
(
くび
)
ッ玉に飛付いた。横頬を私の胸にスリ付けてシャクリ上げシャクリ上げ云った。
冥土行進曲
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そうして、私が語り終るなり、あッという間もなく、百五十歳の隠居さんはその皺くちゃの両腕をのばして、私の
頸
(
くび
)
にいだきつきました。
血友病
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
けげんな面持で
頸
(
くび
)
をひねり、「氣のせゐかなあ。あれあれ、何だか火が燃えてゐるやうな、パチパチボウボウつて音がするぢやないか。」
お伽草紙
(旧字旧仮名)
/
太宰治
(著)
ついに彼は、
喉
(
のど
)
のあるあたりの
頸
(
くび
)
に接吻し、そこに唇を長いあいだ押しあてていた。大尉の部屋から物音が聞えたので、彼は眼を上げた。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
それで
頸
(
くび
)
を押えて、
項
(
うなじ
)
まで棒を転がして行って、頭の直ぐ根の処を掴むのです。これは俗に云う青大将だ。棒なんぞはいらない。
蛇
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
最初は恐怖のために死んだのであろうと想像していたが、その
頸
(
くび
)
の骨が実際に
砕
(
くだ
)
かれているのを発見して、わたしはまた驚いた。
世界怪談名作集:02 貸家
(新字新仮名)
/
エドワード・ジョージ・アール・ブルワー・リットン
(著)
面は火のように、眼は
耀
(
かがや
)
くように見えながら涙はぽろりと
膝
(
ひざ
)
に落ちたり。男は
臂
(
ひじ
)
を
伸
(
のば
)
してその
頸
(
くび
)
にかけ、我を忘れたるごとく
抱
(
いだ
)
き
締
(
し
)
めつ
貧乏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
花鬘
(
けまん
)
をその
頸
(
くび
)
にかけ、果を供え、
樟脳
(
しょうのう
)
に点火して
薫
(
くゆ
)
らせ廻り、香を
焼
(
た
)
き飯餅を奉る、祠官神前に供えた椰子を砕き一、二片を信徒に与う。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
どうも、樹の蔭に、鳥が
頸
(
くび
)
を立てているように見える。すると、心臓の鼓動がはげしくなる。この草の中に鷓鴣がいなくって何がいよう。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
彼女の
頸
(
くび
)
にした
白狐
(
びゃっこ
)
の毛皮の毛から、感じの柔軟な暖かさが彼の
頬
(
ほお
)
にも触れた。この毛皮を首にしていれば、絶対に
風邪
(
かぜ
)
はひきッこない。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
けれども、両親の意に逆らうのもどうかと思う心から、ただ
頸
(
くび
)
をたてに
掉
(
ふ
)
って、無言のうちに「行く」という返事をしてしまったのだった。
初雪
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
私は刑事が手を触れてはいけないと云う言葉も忘れていきなり、姉の
頸
(
くび
)
からその呪うべき紐を解かずには居られませんでした。
ある抗議書
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「これもこちらへ隠しまして」と美少年は
草籠
(
くさかご
)
を片寄せると見せて、
利鎌
(
とがま
)
取るや武道者の
頸
(
くび
)
に引掛け、力委せにグッと引いた。
怪異黒姫おろし
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
『太平記』に「雨の降るが如くに
射
(
い
)
ける矢、二人の者共が
鎧
(
よろい
)
に、蓑毛の如くにぞ立たりける」。一つは
鷺
(
さぎ
)
の
頸
(
くび
)
に垂れたる蓑の如き毛のこと。
蓑のこと
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
だけど、古屋さん、貴方自身は所長さんと
嚢
(
ふくろ
)
の中に入っていたようなもので、手を
一寸
(
ちょっと
)
伸ばせば所長さんの
頸
(
くび
)
に届くでしょうね
階段
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
今
(
いま
)
、この
新
(
あたら
)
しく
入
(
はい
)
って
来
(
き
)
た
仲間
(
なかま
)
を
歓迎
(
かんげい
)
するしるしに、
立派
(
りっぱ
)
な
白鳥達
(
はくちょうたち
)
がみんな
寄
(
よ
)
って、めいめいの
嘴
(
くちばし
)
でその
頸
(
くび
)
を
撫
(
な
)
でているではありませんか。
醜い家鴨の子
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
そんな場合に、彼はもう一方の手で、猫の一番喜ぶ場所、あの
頸
(
くび
)
の部分を撫でゝやると、直ぐにリヽーはゴロ/\云ひ出した。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
しかるに水をお飮みにならないで、
頸
(
くび
)
にお繋けになつていた珠をお解きになつて口に含んでその器にお吐き入れなさいました。
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
時々は馬鹿にした小鳥が白い糞をしかける。いたずらな
蜘
(
くも
)
めが糸で
頸
(
くび
)
をしめる。時々は家の主が汗臭い帽子を裏返しにかぶせて日に
曝
(
さ
)
らす。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
そして、飲みなれぬ酒は中田の頭をすっかり
掻
(
か
)
き
廻
(
まわ
)
してしまったらしく、
頸
(
くび
)
をかしげる度に頭の中で脳髄が、コトコトと転がるように感じた
自殺
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
燕は目をきょろきょろさせながら羽根を
幾度
(
いくど
)
か組み合わせ直して
頸
(
くび
)
をちぢこめてみましたが、なかなかこらえきれない寒さで
寝
(
ね
)
つかれません。
燕と王子
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
暫くの間じっと息を
窺
(
うかが
)
っていたが、やがて真白い肉付きのいい二本の腕を忍ばすように静かに延ばすと、伊豆の
頸
(
くび
)
を圧えて力強く絞めつけた。
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
すると、
蹲
(
うずくま
)
っているその
乞食
(
こじき
)
は、
頸
(
くび
)
が自由にならぬままに、赤く濁った
眼玉
(
めだま
)
をじろりと上向け、一本しかない長い前歯を見せてニヤリとした。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
何もかもみな思い出の種で、源内先生は、深い感慨を催しながら舷側に
倚
(
よ
)
って街や海岸を眺めていたが、そのうちに
頸
(
くび
)
に下げた骨箱に向って
平賀源内捕物帳:長崎ものがたり
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
“頸(
首
)”の解説
くび(首、頸, neck)とは頸部(けいぶ)、すなわち、人体において頭(頭部)と胴体をつなぐ部位である。
日本語ではまた、頭部そのものを指す場合もある。
(出典:Wikipedia)
頸
漢検準1級
部首:⾴
16画
“頸”を含む語句
頸首
頸筋
頸飾
御頸
襟頸
頸足
頸毛
頸圏
頸動脈
頸脚
頸輪
頸城
頸部
頸窪
頸元
頸根
頸巻
頸骨
頸低
岩頸
...