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轡
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くつわ
ふりがな文庫
“
轡
(
くつわ
)” の例文
平次と八五郎と又六は直ぐ樣數寄屋橋まで
轡
(
くつわ
)
を並べるやうに驅けました。三人の吐く息が、白々と見えるやうな、薄寒い冬の日です。
銭形平次捕物控:205 権三は泣く
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
鋼鉄のような意志の
轡
(
くつわ
)
の下に荒立ってる熱狂的な想像力、どちらも広大な——(いずれが勝つともわからない)——利己心と他愛心
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
まだ娘のころ、若い男と
轡
(
くつわ
)
をならべて、田舎の
畦道
(
あぜみち
)
を馬で乗りまわして、百姓をおどろかした。嘘か本当か、そんな噂話も伝っている。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
すこし
距
(
へだ
)
てて、一群の騎馬隊が
燦々
(
さんさん
)
と
手綱
(
たづな
)
轡
(
くつわ
)
をそろえて来るのが見えた。中ほどにある
年歯
(
ねんし
)
まだ二十一、二歳の弱冠が元康その人だった。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と駒に打ち乗り、濁流めがけて飛び込もうとするので式部もここは必死、
篠
(
しの
)
つく雨の中を
蓑
(
みの
)
も
笠
(
かさ
)
もほうり投げて若殿の駒の
轡
(
くつわ
)
に取り
縋
(
すが
)
り
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
▼ もっと見る
正勝はそう言って、巡査の乗っている馬の
轡
(
くつわ
)
を捉えた。巡査は手綱を
放
(
ほう
)
って、馬から下りた。そして、長靴のままで露台へ上がっていった。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
口には別段に
轡
(
くつわ
)
をはめられているわけでもないのに、眼はどろりとして、口は
唖
(
おし
)
の如く、助けを呼ぶの気力さえないようです。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
善「
選
(
えり
)
に
選
(
え
)
って
轡
(
くつわ
)
の紋付を買って来たのは何ういう訳だ、薩摩様の御紋所のようだなア、多助、何かそれがお前の
家
(
うち
)
の定紋か」
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その時ドッと喊声が起こり、数百の騎馬武者が
轡
(
くつわ
)
を揃え、この大藪地の密林を分けて、移動する松明の方角へ、走って行く音が聞こえて来た。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
御者
(
ぎょしゃ
)
は馬の
轡
(
くつわ
)
を取ったなり、白い
泡
(
あわ
)
を岩角に吹き散らして鳴りながら流れる早瀬の上に
架
(
か
)
け渡した橋の上をそろそろ通った。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
急いで一散に街道を東へ
轡
(
くつわ
)
を並べながら、丁度そこの洗い馬の岸辺近くまでさしかかって来た刹那——、全く不意でした。
旗本退屈男:05 第五話 三河に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
その隙に藁庖丁の上に懸けて在る手綱を外して、
馬塞棒
(
ませぼう
)
の下を潜って、驚く赤馬をドウドウと制しながら、眼にも止まらぬ早業で
轡
(
くつわ
)
を噛ませた。
名君忠之
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
然るに徳永商店では教頭の飼犬の中の一頭だけ
轡
(
くつわ
)
を施こして鎖で
繋
(
つな
)
いだが、残りの何頭かは野犬として解放してしまった。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
戦の
潮合
(
しほあひ
)
を心得た将門は、
轡
(
くつわ
)
を
聯
(
つら
)
ね馬を飛ばして突撃した。下野勢は散〻に
駈散
(
けち
)
らされて遁迷ひ、余るところは
屈竟
(
くつきやう
)
の者のみの三百余人となつた。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
勘次
(
かんじ
)
は
百姓
(
ひやくしやう
)
の
尤
(
もつと
)
も
忙
(
せは
)
しい
其
(
そ
)
の
頃
(
ころ
)
の五
月
(
ぐわつ
)
に
病氣
(
びやうき
)
に
成
(
な
)
つた。
彼
(
かれ
)
は
轡
(
くつわ
)
へ
附
(
つ
)
けた
竹竿
(
たけざを
)
の
端
(
はし
)
を
執
(
と
)
つて
馬
(
うま
)
を
馭
(
ぎよ
)
しながら、
毎日
(
まいにち
)
泥
(
どろ
)
だらけになつて
田
(
た
)
の
代掻
(
しろかき
)
をした。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
勝頼騒がず真先に
馳
(
か
)
け合せようとするのを、土屋惣蔵馬の
轡
(
くつわ
)
を押え、小山田十郎兵衛以下旗本の士四百騎が、悉く討死して防ぐ間を、落延びさせた。
長篠合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
せまい刈分け路では二頭の馬は
轡
(
くつわ
)
を並べる余地が無かった。むろん、もはやお互いでも、話すべき何ものもなかった。おのれの思いに沈潜するのだ。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
がたくた
引込
(
ひっこ
)
む、石炭を積んだ大八車の通るのさえ、
馬士
(
まご
)
は
銜煙管
(
くわえぎせる
)
で、しゃんしゃんと
轡
(
くつわ
)
が揺れそうな合方となる。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「馬が待遠しがつて、戸口で
轡
(
くつわ
)
を噛んでゐるわ。今時分はもう此処から三十哩も先きへ行つてゐる筈だつたのよ。」
クラリモンド
(新字旧仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
轡
(
くつわ
)
をならべて、
討死
(
うちじに
)
させなければ、この若松に、いつまで経っても、市民の平和と幸福とは実現しないのであります
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
武士は
轡
(
くつわ
)
の音で眼をさますというが、伊賀侍は、こけ猿というひとことで、みないっせいにガバッと起きあがった。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
決しつか/\と進みよりつゝ大岡殿の馬の
轡
(
くつわ
)
に取り付て
夫
(
をつと
)
の身にとり一大事の御願ありと申にぞ前後を
固
(
かた
)
めし家來を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
女ッてえやつアね、がみがみどなってあばれるにしろ、
温和
(
おとな
)
しそうにはいはいと猫をかぶッてるにしろ、どっちみち男に
轡
(
くつわ
)
を
噛
(
か
)
ませて、手綱をしばって
嘘アつかねえ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
六十七十の将軍達が切腹もせず
轡
(
くつわ
)
を並べて法廷にひかれるなどとは終戦によって発見された壮観な人間図であり、日本は負け、そして武士道は亡びたが
堕落論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
かう思つて、
予
(
あらかじ
)
め利仁が牽かせて来た、蘆毛の馬に
跨
(
またが
)
つた。所が、
轡
(
くつわ
)
を並べて此処まで来て見ると、どうも利仁はこの近所へ来るつもりではないらしい。
芋粥
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
わがすくひにゆかむとするを待たで、
傍
(
かたえ
)
なる高草の裏にあと叫ぶ声すと聞く
間
(
ま
)
に、羊飼の
童
(
わらべ
)
飛ぶごとくに
馳寄
(
はせよ
)
り、姫が馬の
轡
(
くつわ
)
ぎは
緊
(
しか
)
と握りておし
鎮
(
しず
)
めぬ。
文づかひ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
一行が警察署の門前へ差しかかったとき、警戒の巡査が野口春蔵の馬の
轡
(
くつわ
)
をとらえて引きずり下そうとした。
渡良瀬川
(新字新仮名)
/
大鹿卓
(著)
そんなわけで、この一派の人は
轡
(
くつわ
)
をならべて和歌所に列した。後鳥羽院の御好みが和歌所の歌風をこのようにして俊成・定家の御子左流に色づけたのである。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
ベルセネフはいきなり馬の
轡
(
くつわ
)
を
掴
(
つか
)
んだ。馬は身を
悶
(
もだ
)
えるように轡を掴まれたなりにぐるぐると廻わった。
警察署長
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
次
(
つ
)
ぎに
動物
(
どうぶつ
)
の
像
(
ぞう
)
には
馬
(
うま
)
が
一等
(
いつとう
)
多
(
おほ
)
く、それには
轡
(
くつわ
)
だとか
鞍
(
くら
)
だとかの
馬具
(
ばぐ
)
をつけてゐるところが
見
(
み
)
られます。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
よく草むらで捕えるときに指さきに噛みつくが、
轡
(
くつわ
)
形の大きな複雑そうな切物で一ぱいになった口でパックリとやると、指さきに血がにじむくらいの傷をつけるのである。
螽蟖の記
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
赤天狗青天狗銀天狗金天狗という順序で煙草の品位が上がって行ったが、その包装紙の意匠も名に
相応
(
ふさわ
)
しい俗悪なものであった。
轡
(
くつわ
)
の紋章に天狗の絵もあったように思う。
喫煙四十年
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
もうこれだけはと思いつつ、あがき進む馬のように彼は自分の
轡
(
くつわ
)
を噛み破ろうとするのだった。
旅愁
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
孫一の生れた時は、京子の父が初めての孫だと言つて、自分に孫一といふ名を選び、舊藩主から拜領の、
轡
(
くつわ
)
の紋を散らした黄金作りの大小を幼い孫へ贈り物にして喜んだ。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
轡
(
くつわ
)
を執っていた子貢が、いまだ子路を見ずしてこれを褒める理由を聞くと、孔子が答えた。
已
(
すで
)
にその領域に入れば
田疇
(
でんちゅう
)
ことごとく治まり
草莱
(
そうらい
)
甚だ
辟
(
ひら
)
け
溝洫
(
こうきょく
)
は深く整っている。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
節廻しが
凡
(
すべ
)
て艪拍子に連れて動いて、緩く、哀調になっています。信濃のは
馬子唄
(
まごうた
)
ですから、上り下りの
山路
(
やまみち
)
の勾配から、
轡
(
くつわ
)
の音、馬の歩調に合せて出来上ったものなのです。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
直刀
(
ちよくたう
)
が二
本
(
ほん
)
交叉
(
かうさ
)
してある。
鐵環
(
てつくわん
)
。
轡
(
くつわ
)
。
槍先
(
やりさき
)
。
祝部
(
いはひべ
)
、
土器等
(
どきとう
)
が、
其所此所
(
そここゝ
)
に
置
(
お
)
かれてある。
探検実記 地中の秘密:29 お穴様の探検
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
轡
(
くつわ
)
を並べて遠乗をして、美しい谷間から、
遥
(
はるか
)
にアルピイの青い山を望んだこともある。
世界漫遊
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ユリウス・ダビット
(著)
それをば無理無体に荒くれた
馬子供
(
まごども
)
が
叱咜
(
しった
)
の声激しく落ちた
棒片
(
ぼうぎれ
)
で容捨もなく打ち
叩
(
たた
)
く、馬は激しく
手綱
(
たづな
)
を引立てられ、
轡
(
くつわ
)
の痛みに堪えられぬらしく、白い歯を
噛
(
か
)
み、
鬣
(
たてがみ
)
を逆立て
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
馭者は黙って返事もせず、
轡
(
くつわ
)
をとると
邪慳
(
じゃけん
)
に馬の首を引っ張って位置をなおした。
黄昏
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
彼が注意深く接骨木の根の
叢
(
くさむら
)
を廻って行くと、その馬の
轡
(
くつわ
)
を取って一人の男が呆然と停って居る。その男は、前夜小田島がカジノの切符台に納って居るのを見た勘定係の四十男だった。
ドーヴィル物語
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
消化不良から来た急性の
心悸亢進
(
しんきこうしん
)
のためにとんだ失礼をしましたと、まことしやかに弁解したので、キッティのご機嫌も直って、その日の午後に二人はまた馬の
轡
(
くつわ
)
をならべて外出したが
世界怪談名作集:12 幻の人力車
(新字新仮名)
/
ラデャード・キプリング
(著)
瀝青
(
チャン
)
を塗った柳編みの屋根のついてる一種の従軍行商人の小さな車のようなものが止まっていて、
轡
(
くつわ
)
をつけたまま
蕁麻
(
いらくさ
)
を食ってる飢えたやせ馬がそれにつけられていて、その車の中には
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
幅のせまい、濃い緑、赤黄などで彩色した
轎
(
こし
)
型の
轅
(
ながえ
)
の間へ耳の立った驢馬をつけ、その
轡
(
くつわ
)
をとって、風にさからい、背中を丸め、長着の裾を煽られながら白髯の老人がトボトボ進んで行く。
石油の都バクーへ
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「将軍家は明早朝に京へ引き揚げらるるという。われらも成るべくお側を離れぬようにして、
轡
(
くつわ
)
をならべてまいるが肝要じゃ。将軍家の見る前では、何者もさすがに手出しはあるまいぞ。」
小坂部姫
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
下人祝してお前は長崎丸山の出島屋万六とて女郎屋の一番名高い
轡
(
くつわ
)
、その轡へ新しい上赤貝の女郎が思い付いて招かぬに独り食い付くと申す
前表
(
ぜんぴょう
)
と悦ばす所あるはこれに拠って作ったのだ。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
どうして各中隊の先頭には、士官と
轡
(
くつわ
)
を並べてがっしりした砲兵下士が一人馬を進ませているのか、なぜこの下士が『前駆』と呼ばれているのか、なんていう事はとうの昔に知り抜いている。
接吻
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
世界文明の微光は兵の運動とともに始まり、武備の機関進歩するに従い社会はいよいよその歩を進め、二者並行いまだかつて
轡
(
くつわ
)
を
駢
(
なら
)
べ、
袂
(
たもと
)
を連ねて運動せざることはあらず。吾人は実に断言す。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
姉妹ともそれを
真
(
ま
)
に受けて、初めは父親の死後も二人で仲よく
轡
(
くつわ
)
を並べて、郵便局へ手紙を取りに来ていたが、姉妹間に争いが起ったというのもその大学生が両方にいいことを並べたばっかりに
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
昨日は東關の下に
轡
(
くつわ
)
竝
(
なら
)
べし十萬騎、今日は西海の波に漂ふ三千餘人。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
“轡(ハミ(馬具))”の解説
ハミ(馬銜、銜、en: bit)、または轡(くつわ)は、馬具の一種であり、馬の口に含ませる主に金属製の棒状の道具である。
(出典:Wikipedia)
轡
漢検準1級
部首:⾞
22画
“轡”を含む語句
轡頭
轡虫
金轡
猿轡
白轡
轡面
馬轡
南蛮轡
堅轡
島津轡
菱形轡
轡蟲
轡金具
革轡