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苦患
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くげん
ふりがな文庫
“
苦患
(
くげん
)” の例文
じつは昨晩、ご悲嘆のさまを、見るに見かね、おのれの身一つさえやッとな乞食法師の
分
(
ぶん
)
もわすれて、つい浮世いろいろな
苦患
(
くげん
)
ばなし。
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
勿論そうなっては、熱い湯も、熱い奴も、却ってその
苦患
(
くげん
)
をはッきりさせるばかり、決して以前のようないやちこな
験
(
げん
)
をみせなかった。
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
藝術家が空想の世界を作って
此
(
こ
)
の世の
苦患
(
くげん
)
を超越するように、凡人は酒の力に依って
辛
(
かろ
)
うじて救われるのだ。酒は凡人の藝術だ。
小僧の夢
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そこで、結局、聖母は神から毎年神聖金曜日から三位一体祭までの間の五十日間は、すべての
苦患
(
くげん
)
を中止するという許しを得る。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
兵右衛門
(
へいゑもん
)
がかたにはかゝることゝは露しらず、本妻と
下女
(
げぢよ
)
が
修羅
(
しゆら
)
の
苦患
(
くげん
)
をたすけんと
御出家
(
ごしゆつけ
)
がたの
金儲
(
かねまう
)
けとなりけるとなり。
案頭の書
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
あえて
堕地獄
(
だじごく
)
の我身の
苦患
(
くげん
)
を
扶
(
たす
)
かろうというのではない、ただ
単
(
ひとえ
)
に蝶吉のためにしたのであったと、母親がその時の物語。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
僕はその時はっと思いついた。ああ
市
(
まち
)
は眠っている。だが狂酔と
苦患
(
くげん
)
とは目を覚ましている。憎悪、
精霊
(
せいれい
)
、熱血、生命、みんな目を覚ましている。
チチアンの死
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
すべての情を汲み分けて我らの
苦患
(
くげん
)
を救う主。今日君よりの
賜物
(
たまもの
)
を、
今宵
(
こよい
)
我が家に持ち行きて、飢えたる婆を悦ばせん。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
六道
能化
(
のうげ
)
の主を頼みて、父の
苦患
(
くげん
)
を助け、身の悲哀を忘れ、要因によつて、
却
(
かへ
)
つて勝道を成さんとしたのであると考へれば、まことに哀れの人である。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
心
暫
(
しば
)
らくも安らかなることなし、
一度
(
ひとたび
)
梟身
(
きょうしん
)
を
尽
(
つく
)
して、又
新
(
あらた
)
に梟身を得。
審
(
つまびらか
)
に諸の
苦患
(
くげん
)
を
被
(
こうむ
)
りて又尽くることなし。
二十六夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
まあそういった架空の肉体の
苦患
(
くげん
)
を、あるかのごとくに悩んでいるわけなのですから、お前は死んだのだと、はっきりわからせておあげになれば、それで
雲の小径
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
この悲劇の主人公たちはその最後の日まで何んという
苦患
(
くげん
)
に充ちた一生を送らなければならないのだろう。
大和路・信濃路
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
地上
(
ちじやう
)
にあつて、この
蒼白
(
あをじろ
)
い
苦患
(
くげん
)
に
取巻
(
とりま
)
かれてゐるわが
身
(
み
)
は、
今
(
いま
)
この
無垢
(
むく
)
の
血
(
ち
)
を
有
(
も
)
つてゐる
主
(
しゆ
)
の
幼児
(
をさなご
)
の
頸
(
くび
)
に
血
(
ち
)
を
吸取
(
すひと
)
つてやらうと、こゝまで
見張
(
みは
)
つて
来
(
き
)
たのである。
癩病やみの話
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
、どんなに念じておりましたことか! ……道中の
苦患
(
くげん
)
はこのお玉が、身に換えお引き受けいたしまする
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それに、実際物を書くべくいかに
苦患
(
くげん
)
な状態であるか——にもかかわらず、S君は毎日根気よくやってきては、袴の膝も崩さず居催促を続けているという光景である。
死児を産む
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
それにしても、元の組織の落語界だったら、せめてはもう少し海老の
苦患
(
くげん
)
も少なかったろうものを。
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
そのためにあの世の
苦患
(
くげん
)
は大変、娘さんを可哀相に思うなら、日頃大事にしていた品物と、三百両の小判を棺桶へ入れて、
菩提所
(
ぼだいしょ
)
へ葬ってやんなさい——とこう言います
銭形平次捕物控:005 幽霊にされた女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
足かけ五年の間片時も心の安まらなかった
苦患
(
くげん
)
を免かれて、快い睡眠を得ることが出来るのだが。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
猶
種々
(
さま/″\
)
詫言
(
わびごと
)
なし漸々にして追々に償ふ事を
免
(
ゆる
)
されしかば
直樣
(
すぐさま
)
引取の一
札
(
さつ
)
を
指出
(
さしいだ
)
し久八を連歸りけるは
無慈悲
(
むじひ
)
なりける有樣なり久八は
子供
(
こども
)
の時より主人を大切と我が身の
苦患
(
くげん
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
俺、これで大した
悪
(
わる
)
働いてゐねえから、どつちみち、大した
苦患
(
くげん
)
に
遇
(
あ
)
ふこともあるめえ。
野の哄笑
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
つまり運命の神の代理に立って、そうした
苦患
(
くげん
)
から彼等を救うてやろうとしたのです。
誤診
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
旧識同伴の
間闊
(
とおどおしき
)
を恨み、生前には
名聞
(
みょうもん
)
の遂げざるを
愁
(
うれ
)
え、死後は
長夜
(
ちょうや
)
の
苦患
(
くげん
)
を恐れ、目を
塞
(
ふさ
)
ぎて
打臥
(
うちふ
)
し居たるは、
殊勝
(
しゅしょう
)
に物静かなれども、胸中騒がしく、心上苦しく、三合の病いに
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
... その
底意
(
そこい
)
は
如何
(
いか
)
に?』フルコム答ふ—『わが南蛮四十二国、みなデウス
如来
(
にょらい
)
を拝むによつて、
苦患
(
くげん
)
なく乞食なく病者なし、なんぞ貧者を駆つて施物を集めんや。いま却つて我らが底意を ...
ハビアン説法
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
しかしてこの七尾の泣女の作法は、明治以前まで殆ど全国的に行われた。死者の霊を巫女に
憑
(
かか
)
らせて
苦患
(
くげん
)
を語らしめたものと共通しているが、その詮索を始めると柵外に出るので差控える。
本朝変態葬礼史
(新字新仮名)
/
中山太郎
(著)
胸衣
(
チョッキ
)
の一番下の
釦
(
ぼたん
)
を隠すほどに長い
白髯
(
はくぜん
)
を垂れ、魂の
苦患
(
くげん
)
が心の底で燃え
燻
(
くすぶ
)
っているかのような、憂鬱そうな顔付の老人であるが、検事の視線は、最初からもう一枚の外紙の方に奪われていた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
『ほほほ、今更それは遅いぞえ。何のお前は大事な身体。私こそは要らぬもの。旦那のお心変つたからは、
生存
(
いきなが
)
らえて、何楽しみ。一時も早う、死んで
苦患
(
くげん
)
が助かりたい。そこ離しや、ゑゑ離さぬか』
したゆく水
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
今日は陽気の為か
苦患
(
くげん
)
でございまして、酷く気色が悪いようで
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
あたら一生を地獄の
苦患
(
くげん
)
に送らなければなりません。
嫁取り二代記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その
懼怖
(
くふ
)
、その
苦患
(
くげん
)
、何にたとへ、何にたくらべむ。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
いずれも
釣
(
つる
)
しんぼうの
苦患
(
くげん
)
を今に脱せぬ
貌付
(
かおつき
)
。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
一切
(
いつさい
)
の
快樂
(
けらく
)
を盡し、
一切
(
いつさい
)
の
苦患
(
くげん
)
に堪へて
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
饑
(
うゑ
)
に
堕
(
お
)
ちたる
天竺
(
てんぢく
)
の
末期
(
まつご
)
の
苦患
(
くげん
)
。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
傷
(
い
)
た
振
(
ぶ
)
るる、
苦患
(
くげん
)
の声か。
哀詩数篇
(新字旧仮名)
/
漢那浪笛
(著)
苦患
(
くげん
)
を受くる種となる
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
重い
苦患
(
くげん
)
に
身悶
(
みもだ
)
えて
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
持つべきものは友達だ、あの書状がなかったら、わしはまだ児島の城の
業火
(
ごうか
)
の中に、みすみす昼夜の
苦患
(
くげん
)
にわずらっていたかも知れぬ。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
さまで
痩
(
や
)
せもせず、
苦患
(
くげん
)
も無しに、家眷息絶ゆるとは見たれども、の、心の
裡
(
うち
)
の
苦痛
(
くるしみ
)
はよな、人の知らぬ苦痛はよな。その段を芝居で見せるのじゃ。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
心
暫
(
しばら
)
くも安らかなるなし、
一度
(
ひとたび
)
梟身
(
けうしん
)
を尽して、又
新
(
あらた
)
に梟身を
得
(
う
)
、
審
(
つまびらか
)
に諸の
苦患
(
くげん
)
を
被
(
かうむ
)
りて、又
尽
(
つく
)
ることなし。
二十六夜
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
『
苦患
(
くげん
)
を受ける』ということが何を意味するか、おわかりですか! それはもう誰のためというのではなく、『ただ苦しまねばならぬ、苦患を受けねばならぬ』
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
と、そんな風な感想を述べて、結局「武州公は貴きおん身に地獄の
苦患
(
くげん
)
を忍び給い、その
功徳
(
くどく
)
に依ってわれら凡夫に
菩提
(
ぼだい
)
の心を授けて下すった有難いお方である。 ...
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ヨナは生きた地獄の穴に呑みこまれ、水は
千尋
(
ちひろ
)
の底に彼をひきこんだので、海草は
頭
(
こうべ
)
にまとい、あらゆる海の
苦患
(
くげん
)
はヨナのうえにはげしく波うった……ヨナは大いに悔いた。
だいこん
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
も
悔
(
くや
)
みて
泣沈
(
なきしづ
)
みしが
嗚呼
(
あゝ
)
我ながら
未練
(
みれん
)
なり此上
拷問
(
がうもん
)
強
(
つよ
)
ければとても存命思ひも寄ず此苦みを
請
(
うけ
)
んよりは惣内夫婦を殺したりと身に引受て白状なし
娑婆
(
しやば
)
の
苦患
(
くげん
)
を
遁
(
のがれ
)
んものと心を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
近く
閻魔王
(
ゑんまわう
)
に
請
(
こ
)
うて彼の身邊に現じ、生き乍ら焦熱地獄に投げ入れて、阿鼻の
苦患
(
くげん
)
を
嘗
(
な
)
めさせるであらうぞ。其方も前非を改めて、矢並行方を追ひ退け、身を愼んで罪を待つがよからう。
銭形平次捕物控:203 死人の手紙
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
さまでの
苦患
(
くげん
)
ではないやうにおもはれては日の暮れつくすまで遊んでしまひ、人力車へと乗せられたのち、はじめて取返しの付かないことでも
仕出来
(
しでか
)
したかのやうに悔恨するのが常であつた。
異版 浅草灯籠
(新字旧仮名)
/
正岡容
(著)
おろかなり円位、仏が好ましきものにもあらばこそ、魔か厭はしきものにもあらばこそ、安楽も望むに足らず、
苦患
(
くげん
)
も避くるに足らず、何を憚りてか自ら
意
(
こゝろ
)
を抑へ
情
(
おもひ
)
を屈めん、妄執と笑はば笑へ
二日物語
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
一切の
快楽
(
けらく
)
を尽し、一切の
苦患
(
くげん
)
に堪へて
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
今はかの
末期
(
まつご
)
の
苦患
(
くげん
)
ひたひたと
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
むしろ、
阿修羅
(
あしゅら
)
の世に、ぜひなく悪鬼正成と生れかわった自己の修羅道の
苦患
(
くげん
)
は今日が第一歩ぞとさえ、ほんとには思っている。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
栄華の空より墜落して、火宅の
苦患
(
くげん
)
を
嘗
(
な
)
めつつある綾子を犯す乞食お丹、自堕落の
態
(
てい
)
引替えて悪魔の
風采
(
ふうさい
)
凜々
(
りんりん
)
たり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
心
暫
(
しばら
)
くも安らかなるなし、
一度
(
ひとたび
)
梟身
(
きょうしん
)
を
尽
(
つく
)
して、又
新
(
あらた
)
に梟身を
得
(
う
)
、
審
(
つまびらか
)
に諸の
苦患
(
くげん
)
を
被
(
こうむ
)
りて、又尽ることなし。
二十六夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
“苦患”の意味
《名詞》
(仏教)地獄で受ける苦しみ。
(出典:Wiktionary)
苦
常用漢字
小3
部首:⾋
8画
患
常用漢字
中学
部首:⼼
11画
“苦”で始まる語句
苦
苦悶
苦笑
苦々
苦痛
苦力
苦労
苦手
苦衷
苦心