腕白わんぱく)” の例文
藪入やぶいりの小僧こぞうさん、学校帰りの腕白わんぱく、中には色気盛りの若い衆までが「ここはお国を何百里」と、喜び勇んで、お馬の背中でおどるのだ。
木馬は廻る (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その話を聞いた老人夫婦は内心この腕白わんぱくものに愛想あいそをつかしていた時だったから、一刻も早く追い出したさにはたとか太刀たちとか陣羽織じんばおりとか
桃太郎 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
……お竜ちゃんの家には私の嫌いな腕白わんぱくの兄や弟たちがいるので、私は決して自分の方から彼女を呼びに行こうとはしなかった。
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
腕白わんぱく小僧で、竜泉寺小学校の二年生であったが、虎造の「森の石松」の物真似をやって、先生や友達をあっと云わせたという面白い子である。
安い頭 (新字新仮名) / 小山清(著)
腕白わんぱくは家中にも多い。けれど父母がありながら父母の膝下しっかを遠く離れて、他国の質子となっている子は、その仲間では松千代ひとりであった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五人の男の子が揃って腕白わんぱくで、四番目の清は毎日袖をち切ったり、ズボンを破らぬ日がないとか、末っ子の耕造は近所じゅうの子供を泣かせて
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
と呼びながら、氷すべりの仲間から離れて半蔵の方へ走って来るのは、腕白わんぱくざかりな年ごろになった三男の森夫であった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
気は心だからあの児へ何かお歳暮をやらなくちゃあ……女の子達には出ず入らずで一様に羽子板がいいけれど、腕白わんぱくにはやはり破魔はまの弓かしら?
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
いたずらに他の腕白わんぱく生徒せいと嘲弄ちょうろうの道具になるばかりですから、かえって気の毒に思って退学をさしたのだそうです。
春の鳥 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
それをまた、腕白わんぱくの強がりが、よく賭博かけなんぞして、わざとここまで来たもんだからね。梟は仔細しさいないが、弱るのはこの額堂にゃ、ふるくから評判の、おに
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼が指先へそれを着けて籠の中へ突込むと、腕白わんぱくそうな大きな眼を見開いて、黄色いふちのある三角の口を大きく開けて、争うてそれを食べるのであった。
田舎医師の子 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
この腕白わんぱくどもに扇動せんどうされておたがいにうらみもないものが喧嘩したところで実につまらない、シナを見てもわかることだが、英国やアメリカやロシアにしりを
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「ああ、腕白わんぱくたちでして」と、画家は言い、寝巻の頸のボタンをかけようとするのだがだめだった。
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
甚之助じんのすけとて香山家かやまけ次男じなん、すゑなりにはないとヾ大輪おほりんにて、こヽのつなれども權勢いきほひしのぎ、腕白わんぱくかぎりなく、分別顏ふんべつがほ家扶かふにさへはず、佛國ふつこく留學りうがく兄上あにうへ御歸朝ごきてうまでは
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それは何も一向いっこういいことではないはずなのだけれど、いうことを聞かぬいたずらもの腕白わんぱくどもに、老教師ろうきょうしはもうほとほと手をいているので、まるで探偵たんていみたいなかおつきをしながら
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
たゞ黙つて夏の夜のかもす濃厚でさわやかで多少腕白わんぱくなところもある雰囲気にひたつてゐた。
夏の夜の夢 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
騒ぎたたせようとするいとがあるふうにも感じられる子供っぽい理窟りくつ世馴よなれない腕白わんぱくさがあるのとは反対に、伝右衛門氏の方で、正式に離縁というのは、どことなく、どっしりして
柳原燁子(白蓮) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
それは子規がだ生きている時分に、現在子規の周囲にあつまって来ている俳人たちの未来の進歩も計り知られぬものがあるが、それよりも今木登りなんかをして遊んでいる腕白わんぱくの子供の
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
が、この腕白わんぱく猫めはすこぶる健啖家で、ちっとやそっとのお裾分すそわけでは満足しなかった。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
松林にも腕白わんぱくらが騒いでいた。良寛堂の敷地には亭々ていていたる赤松の五、六がちょうどその前廂まえひさしななめに位置して、そのあたりと、日光と影と、白砂はくさ落松葉おちまつばと、幽寂ゆうじゃくないい風致を保っていた。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
腕白わんぱくな菊五郎よ、汝も口前くちまへばかりは名優の面影がある。
二人の腕白わんぱくの頭をでながら凝乎じっと考え込んでいると
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
腕白わんぱくどもが呼ばはれど
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
全校ぜんかうたい腕白わんぱくでも數學すうがくでも。しかるに天性てんせいきなでは全校ぜんかうだい一の名譽めいよ志村しむらといふ少年せうねんうばはれてた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
中には、気早にも、もう素裸体すっぱだかになって、汚らしい水に飛び込む、野蛮人みたいな腕白わんぱく小僧達もあった。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
背戸せどつて御覽ごらんなさい、と一向いつかう色氣いろけのなささうな、腕白わんぱくらしいことをつてかへんなすつた。——翌日よくじつだつけ、御免下ごめんくださアい、とけたこゑをして音訪おとづれたひとがある。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「ほっ、要助が、——そうけ。——長う会わんの、おらたあ、腕白わんぱく友達じゃ、行くとも、すぐ行く」
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
腕白わんぱく小僧の様にずば抜けたいたずらをして、どこかしら見えぬ場所から、手を叩いて笑っているのだ。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
げんだの、ろくだの、腕白わんぱくどもの多い中に、ぼうちやん/\と別ものにして可愛かわいがるから、姉はなし、此方こなたからもなついて、ちよこ/\と入つては、縫物ぬいもの交返まぜかえす、物差ものさしで刀の真似
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その日は日曜で僕は四五人の学校仲間と小松山こまつやまへ出かけ、戦争の真似まねをして、我こそ秀吉だとか義経だとか、十三四にもなりながらばかげた腕白わんぱくを働らいて大あばれにあば
非凡なる凡人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
独楽こまでだましたのは悪かったけれど、おとなしくクロをわたしてくれといっても、かせといってたのんでも、浜松城はままつじょう腕白わんぱくッちゃん、けっして、すなおには承知しょうちしないでしょう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
川手氏は数十年来経験せぬ冒険に、腕白わんぱく小僧の少年時代を思い出したのか、ひどく上機嫌であった。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
腕白わんぱくひざへ薬をことづかつてくれれば、私が来るまでもなく、此のむすめは殺せたものを、が明けるまで黙つてなよ。」といひすてにして、細腰さいよう楚々そそたる後姿うしろすがた、肩をゆすつて
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
遊びざかりの腕白わんぱくになっただけである。ある日の夕方、相沢の町通りで、市中からぞくぞく帰ってくる汚穢屋おわいやの馬力車の後ろにブラ下がって、ガラガラ揺られてゆく快感に興じていたことがある。
彼は勿論もちろん級中第一の弱虫であったから、この腕白わんぱく少年にはもうビクビクしていたもので、「一寸こい」と肩をつかまれた時には、例の目に涙を一杯浮べてしまった程で、その命令には
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「あぶ、あぶ、あツぷう。」と、まるつらを、べろりといたいけなでて、あたまからびたしづくつたのは、五歳いつゝばかりの腕白わんぱくで、きよろりとしたでひよいとて、また父親おやぢ見向みむいた。
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その意味で、鞍馬くらま竹童ちくどうも、泣き虫の蛾次郎がじろうも、諸君の友だち仲間へ入れておいてくれ給え。時代はちがうが、よく見てみたまえ、諸君の友だち仲間の腕白わんぱくにも、竹童もいれば、蛾次郎もいるだろう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
チャチな青塗り木造の西洋館の玄関をあけっ放しにして、そこの石段に四五人の腕白わんぱく小僧が腰をかけ、一段高いドアの敷居しきいの所に深山木幸吉があぐらをかき、みんなが同じ様に首を左右に振りながら
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
腕白わんぱく先刻さっきはよく人の深切しんせつを無にしたね。」
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「おうちの腕白わんぱくが本能寺の濠へ落ちたとさ」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)