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沸
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たぎ
ふりがな文庫
“
沸
(
たぎ
)” の例文
そして、傍らの釜に
沸
(
たぎ
)
らせておいた熱湯を充分にかけると、すっぽんのからだについた泥臭がきれいに洗い去られてしまうのである。
すっぽん
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
二叔の信雄、信孝へむかって、こう
促
(
うなが
)
すのさえ、
頤
(
あご
)
のさきで、声こそ低かったが、
業腹
(
ごうはら
)
の
沸
(
たぎ
)
りが息になって洩れたような語調だった。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
遣瀬
(
やるせ
)
の無い焦燥が全身を駈巡って、心臓が熱く激しく急速度の動悸を打出して来る。同時に頭部が
沸
(
たぎ
)
って来る。続いて眩暈が来る。
三稜鏡:(笠松博士の奇怪な外科手術)
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
新大橋を過ぐる折から雨またばら/\と降り来。されど舟子の少しも心にかけぬさまなるに我等も驚かで、火を
打
(
おこ
)
し湯を
沸
(
たぎ
)
らしなどす。
鼠頭魚釣り
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
「成程、あの
墓石
(
はかいし
)
に耳を当てがふと、
何時
(
いつ
)
でも茶の湯の
沸
(
たぎ
)
る音がしてまんな。
私
(
わて
)
も
俳優甲斐
(
やくしやがひ
)
に
洒落
(
しやれ
)
た
墓石
(
はかいし
)
が一つ欲しうおまんね。」
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
▼ もっと見る
それはゴトゴトとして湯の
沸
(
たぎ
)
るに似た音であつたが、部屋の何処から、或ひは戸外の何処からか聞えてくるやうに考へることが出来た。
竹藪の家
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
赤ともつかず、黄ともつかぬ
其
(
そ
)
の
凄
(
すさ
)
まじい色彩は、湯のように
沸
(
たぎ
)
っている
熔融炉
(
ようゆうろ
)
の、高温度を、警告しているかのようであった。
夜泣き鉄骨
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
今こゝへ来て
彳
(
たゝず
)
んでみると、矢張土間には
竃
(
かまど
)
の湯が
沸
(
たぎ
)
らしてあって、
生暖
(
なまあたゝ
)
かい空気の中に、あの忘れられない異臭が匂っているのである。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
明日の神田祭を控えて、九月十四日の明神下——御台所町、同朋町から金沢町へかけては、全く
沸
(
たぎ
)
り返るような賑わいでした。
銭形平次捕物控:236 夕立の女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
どうしてそんなことで、
沸
(
たぎ
)
り立つ憎しみがおさまろう。それから僕が、涙を流しながら、灰掻棒でなにをしたか、もう君は知っている筈だ。
寒の夜晴れ
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
うたごえと撥の音と、あちこちに出来た塊りでは
喧
(
やか
)
ましい話しごえが
沸
(
たぎ
)
り立って、はるか下座のこの老人の言葉などは揉みくたにされていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
私は秀岡の顔を見ると
赫
(
かっ
)
となりました。胸の中が
沸
(
たぎ
)
るような昂奮に襲われて了ったのです。秀岡も
駭
(
おど
)
ろいていたようです。
旅客機事件
(新字新仮名)
/
大庭武年
(著)
前に
褥
(
とこ
)
を取り、桐の胴丸
形
(
がた
)
の火鉢へ
切炭
(
きりずみ
)
を
埋
(
い
)
け、其の上に利休形の鉄瓶がかゝって、チン/\と湯が
沸
(
たぎ
)
って居りまする。
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
湯は
沸
(
たぎ
)
らせましたが——いや、どの
小児衆
(
こどもしゅ
)
も性急で、渇かし切ってござって、
突然
(
いきなり
)
がぶりと
喫
(
あが
)
りまするで、気を着けて進ぜませぬと、直きに
火傷
(
やけど
)
を。
朱日記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
たッぴつに惜しげなくついだ備長の匂があかるい燈火のなかにうごいていた。——かれは
沸
(
たぎ
)
った鉄瓶の湯を湯呑についでうまそうに一
ト
口飲んだ……
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
襟
(
えり
)
引き合わせ、
履物
(
はきもの
)
をぬぎすてつつ、浪子は今打ち寄せし浪の岩に砕けて
白泡
(
しらあわ
)
沸
(
たぎ
)
るあたりを目がけて、身をおどらす。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
二五八九、二、一八、午後十二時。うどんを煮る鮒の汁の
煮
(
に
)
沸
(
たぎ
)
る音をききつつ。(月は三時ちょっと前に落ちた)。
青べか日記:――吾が生活 し・さ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
此小使室の土間に、煉瓦で築き上げた大きな
竈
(
かまど
)
があつて、其上に頗る大きな湯釜が、昔の儘に湯を
沸
(
たぎ
)
らして居る。
葬列
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
醫者
(
いしや
)
が
歸
(
かへ
)
つたあとで、
宗助
(
そうすけ
)
は
急
(
きふ
)
に
空腹
(
くうふく
)
になつた。
茶
(
ちや
)
の
間
(
ま
)
へ
出
(
で
)
ると、
先刻
(
さつき
)
掛
(
か
)
けて
置
(
お
)
いた
鐵瓶
(
てつびん
)
がちん/\
沸
(
たぎ
)
つてゐた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
煮え
沸
(
たぎ
)
るような憤怒を感じながら、その憤怒をどこへ向けるかを知らぬ私は、ただこうして部屋の中を
喘
(
あえ
)
ぐような気持で歩き廻る外はなかったのであった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
その最後のありゃりゃんを、ことさら、
瓦斯
(
ガス
)
の灯の燃え
沸
(
たぎ
)
るほど、ひとふし、張りあげてうたうのだった。
寄席行灯
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
お絹はいつでもお茶のはいるように、
瀟洒
(
しょうしゃ
)
な瀬戸の
風炉
(
ふろ
)
に火をいけて、古風な鉄瓶に湯を
沸
(
たぎ
)
らせておいた。
挿話
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
彼はぼんやりとそれを見下ろし、その日の朝刊の見出しをけんめいに思い出そうとしていた。
沸
(
たぎ
)
るような欲望を抑えつけるときの、それは彼のいつものお
咒
(
まじな
)
いだった。
メリイ・クリスマス
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
湯を出ると、部屋は奇麗に取り片付けられ、青磁の火鉢に銀瓶が
沸
(
たぎ
)
っていた。茶菓が出されていた。
自殺を買う話
(新字新仮名)
/
橋本五郎
(著)
沸
(
たぎ
)
りたつ感情を噛み殺して生きねばならぬ、あの監視兵の横っ面を思う存分ひっぱたいてやろうという気持に駆りたてられながら、慌てて自分を宥めたりすかしたりする
十三夜:――マニラ籠城日記
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
その
真上
(
まうえ
)
には電灯が
煌々
(
くわうくわう
)
と光を放つてゐる。
傍
(
かたはら
)
には
瀬戸火鉢
(
せとひばち
)
の鉄瓶が虫の啼くやうに
沸
(
たぎ
)
つてゐる。もし
夜寒
(
よさむ
)
が甚しければ、少し離れた
瓦斯煖炉
(
ガスだんろ
)
にも赤々と火が動いてゐる。
漱石山房の秋
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼女は、年が年じゅう、湯が
沸
(
たぎ
)
るのを聞き、鍋が空っぽになれば、たとえ雨が降ろうが、風が吹こうが、また日が照ろうが、年が年じゅう、そいつをいっぱいにして来たのだ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
それでも
蕎麥掻
(
そばがき
)
は
身體
(
からだ
)
が
暖
(
あたゝ
)
まる
樣
(
やう
)
で
快
(
こゝろよ
)
かつた。
彼
(
かれ
)
はたべた
後
(
あと
)
の
茶碗
(
ちやわん
)
へ
沸
(
たぎ
)
つた
湯
(
ゆ
)
を
注
(
つ
)
いで
箸
(
はし
)
で
茶碗
(
ちやわん
)
の
内側
(
うちがは
)
を
落
(
おと
)
して
其
(
そ
)
の
儘
(
まゝ
)
棚
(
たな
)
へ
置
(
お
)
いた。さうしては
彼
(
かれ
)
は
毎日
(
まいにち
)
の
仕事
(
しごと
)
のやうに
外
(
そと
)
へ
出
(
で
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
小母さんは、火鉢の上で、快い音をたてて、
沸
(
たぎ
)
っている鉄瓶のお湯を湯呑に入れて、二階へもって行かれました。丁度、その時菓子屋の
幸吉
(
こうきち
)
さんが、這入って来られたのでございます。
ながうた勧進帳:(稽古屋殺人事件)
(新字新仮名)
/
酒井嘉七
(著)
が、七輪に
沸
(
たぎ
)
っている味噌汁の鍋を覗き込みながら、葬式彦兵衛は口を尖らせた。
釘抜藤吉捕物覚書:10 宇治の茶箱
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
穏かな冬の日光が
障子
(
しょうじ
)
一杯に
拡
(
ひろが
)
って、八畳の座敷をほかほかと暖めていた。大きな桐の
火鉢
(
ひばち
)
には
銀瓶
(
ぎんびん
)
が眠気を誘う様な音を立てて
沸
(
たぎ
)
っていた。夢の様にのどかな冬の温泉場の午後であった。
二癈人
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
私は先づそれを書く積りでゐたのであるが、すぐその次に来る出来事を思ひ返す度に、感情が盛り上がり、
沸
(
たぎ
)
り立つ為に、心の平静が破れて、先を書き続ける気になれなかつたものに違ひない。
吉右衛門の第一印象
(新字旧仮名)
/
小宮豊隆
(著)
今日は
宵
(
よい
)
の内から二階へ上って寝てしまうし、小僧は小僧でこの二三日の
睡
(
ね
)
不足に、店の火鉢の横で
大鼾
(
おおいびき
)
を掻いている、時計の音と長火鉢の鉄瓶の
沸
(
たぎ
)
るのが耳立って、あたりはしんと真夜中のよう。
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
尻尾を卷きかへる 風が鳴る 榾がはじける 文福茶釜に湯が
沸
(
たぎ
)
る
山果集
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
跳
(
をど
)
りぞ過ぐれ、湯は釜に
飛沫
(
しぶき
)
くわつくわと
沸
(
たぎ
)
りたる
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
海波は最後の一滴まで
沸
(
たぎ
)
り墜ち了り
わがひとに与ふる哀歌
(新字旧仮名)
/
伊東静雄
(著)
血は
沸
(
たぎ
)
り
夜明の集会
(新字新仮名)
/
波立一
(著)
鉄甲に
鎧
(
よろ
)
われた氷の皮膚の下にも、やはり親の血は熱く
沸
(
たぎ
)
っているのだ。そう
覚
(
さと
)
ると、郎党の金王丸もまた、鎌田正清につづいて
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鍋のなかには予め
羹
(
あつもの
)
が
沸
(
たぎ
)
つてゐて、三蛇は互に毒を以て毒を制し、その
甘膩
(
かんじ
)
、その
肥爛
(
ひらん
)
まことに
喩
(
たと
)
ふべからずと言ふのである。
たぬき汁
(新字旧仮名)
/
佐藤垢石
(著)
明日の神田祭を控へて、九月十四日の明神下——御臺所町、同朋町から金澤町へかけては、全く
沸
(
たぎ
)
り返るやうな賑はひでした。
銭形平次捕物控:236 夕立の女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「
不鍛煉
(
ふたんれん
)
」は「不覚」が、心掛の
沸
(
たぎ
)
り足らないところから起るに比して又一段と罪の軽いもので、場数を踏まぬところから起る修行不足である。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
犯人は云うまでもなく同一人であり、しかも坑殺された峯吉の燃え
沸
(
たぎ
)
る
坩堝
(
るつぼ
)
のような怨みを継いだ冷酷無比の復讐者だ。
坑鬼
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
湯はしづかに煮え
沸
(
たぎ
)
つてゐました。主人の顔からはいつのまにか押しつけがましさが消えて、物を頼むときのやうな弱々しい表情が見え出しました。
利休と遠州
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
番頭は気がさしたか、
密
(
そっ
)
と振返って
背後
(
うしろ
)
を見た、
釜
(
かま
)
の湯は
沸
(
たぎ
)
っているが、
塵
(
ちり
)
一つ見当らず、こういう折には、余りに広く、且つ余りに
綺麗
(
きれい
)
であった。
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
此小使室の土間に、煉瓦で築き上げた大きな
竈
(
かまど
)
があつて、其上に頗る大きな湯釜が、昔の儘に湯を
沸
(
たぎ
)
らし居る。
葬列
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
おまけに、竃の上に
釜
(
かま
)
が
懸
(
か
)
けてあって、湯が
沸
(
たぎ
)
らしてあるせいか、妙にその臭いが
生暖
(
なまぬる
)
くたゞよって来る。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
今はかの当時、何を恥じ、何を
憤
(
いか
)
り、何を悲しみ、何を恨むともわかち難き感情の、
腸
(
はらわた
)
に
沸
(
たぎ
)
りし時は過ぎて、一片の痛恨深く
痼
(
こ
)
して、人知らずわが心を
蝕
(
くら
)
うのみ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
茶の間へ出ると、
先刻
(
さっき
)
掛けておいた
鉄瓶
(
てつびん
)
がちんちん
沸
(
たぎ
)
っていた。清を呼んで、
膳
(
ぜん
)
を出せと命ずると、清は困った顔つきをして、まだ何の用意もできていないと答えた。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼の
凝
(
じ
)
ッとしておれない気持がふいに
沸
(
たぎ
)
りあげて来た。これからトウベツに行こうと心が決った。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
その
真上
(
まうへ
)
には電燈が
煌々
(
くわうくわう
)
と光を放つてゐる。
傍
(
かたはら
)
には
瀬戸火鉢
(
せとひばち
)
の鉄瓶が虫の
啼
(
な
)
くやうに
沸
(
たぎ
)
つてゐる。もし
夜寒
(
よさむ
)
が甚しければ、少し離れた
瓦斯煖炉
(
ガスだんろ
)
にも赤々と火が動いてゐる。
東京小品
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
沸
常用漢字
中学
部首:⽔
8画
“沸”を含む語句
沸騰
湯沸
沸々
沸立
沸返
沸然
沸上
珈琲沸
湯沸器
沸燗
沸湯
鼎沸
沸沸
沸出
大沸
赤沸石
荒沸
大沸騰
熱沸
煮沸
...