そなた)” の例文
そなたには神様かみさまうかがうこともちゃんとおしえてあるから、大概たいがいこと自分じぶんちかららねばならぬぞ……。』そうわれるのでございます。
夙起はやおきの癖故にそなたまでを夙起はやおきさしてなお寒き朝風につれなくそでをなぶらする痛わしさと人をかばう御言葉、しんぞ人間五十年君に任せて露おしからず
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そなたくろ外套マントルほゝばたく初心うぶをすッぽりとつゝんでたも、すれば臆病おくびゃうこのこゝろも、ぬゆゑにきつうなって、なにするもこひ自然しぜんおもふであらう。
そこは少しも案じぬがよい。媼にはいろいろ世話になつた訳でもあり、また頼まれても居る事なれば、どんな事があらふとも、そなたの保護を忘れはせぬ。
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
そなた幾歳いくつとや十九か二十か、我れに比らべてよほどの弟とおぼゆるに、我れはまあ幾歳いくつほどに見ゆるぞや、されば一の※君か、何として何として
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
藤吉郎こそ稀世きせいの傑物、関白までも経昇へのぼる男、二重瞳孔に不思議はない! しかるにそなたの才能は藤吉郎のなかばもなくて、しかも悪虐あくぎゃくの性質は彼に百倍勝っている。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ハムレツト曰く「ホレシオよ、この天地の間にはそなたの哲学の思ひも及ばぬ大事がござるぞ。」
茶話:12 初出未詳 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
男の中の果報者と欣んでゐる渡の女房たるそなたが、何が悲しうて、泣くのぢや。
袈裟の良人 (旧字旧仮名) / 菊池寛(著)
朝日あさひかげ窓にまばゆき頃、ふらふらと縁前えんさきに出づれば、くや、檐端のきばに歌ふ鳥の聲さへ、おのが心の迷ひから、『そなたゆゑ/\』と聞ゆるに、覺えず顏を反向そむけて、あゝと溜息ためいきつけば、驚きて群雀むらすゞめ
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
蝙蝠と霜と物の種子たねとはわたしの自由。わたしの信仰は眞赤なくちびるの上にある。いづれの海の手に落ちるのか、靈魂たましひそなたは秋の日の蜻蛉とんぼのやうに慌ててゐる。汝は書籍を舐る蠧魚と小さく甦る。
聖三稜玻璃:02 聖三稜玻璃 (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
一生、顔を見なくとも、そなたを思ふ心は変らない
女と情と愛と (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
わたしは何時も長閑のどかそなたの頭上から
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
無残にも、そなた
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
じつ今日きょうここでそなた雨降あめふりの実況じっきょうせるつもりなのじゃ。ともうしてべつわし直接じかにやるのではない。あめにはあめ受持かかりがある……。
我が先へそなたは後にと兄弟争ひせめいだ末、兄は兄だけ力強く弟を終に投げ伏せて我意の勝を得たに誇り高ぶり、急ぎ其橋を渡りかけ半途なかばに漸く到りし時
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
御前樣は幾年いくつにて別れ給ひしぞと問へば、そなたも早くよりの一人者とや我れによく似しことかなとほゝゑまる。
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
『さうか、それはてうどよいところ、そなたに話す事がある』と。
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
ヂュリ そしてそなただまりゃ。だまってたも、とへば。
自分じぶんについてればわかる。そなた折角せっかく修行しゅぎょうめにここへ寄越よこされているのであるから、このさいできるだけ何彼なにか見聞けんぶんしてくがよいであろう……。
何時になつてそなたの来るか知れたことでは無いとして出掛けて来ただけ馬鹿であつたか、ハヽヽ、然し十兵衞、汝は今日の上人様の彼お言葉を何と聞たか
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
それがつひどくにてひたるなれど、こゝろはらば二とははじ、そなたすてられてなにとしてかにはつべき、こゝろおさなければにあまることもらん、腹立はらたゝしきこともさはならんが
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
亡き父上の御遺言をも忘れてそなたは分居せむとや、さても分別違ひのことを能くも汝はいひ得るよ、と度々たびたび弟を誡め諭してあえて弟のいふところを許さざりしが
印度の古話 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
我れ斗りならでそなたも何ぞ話して聞かせよと仰せらるゝに、いよ/\詞のふさがりてさしうつむけば、困りし人よ女のやうな男と笑はれて、今更きえぬ心の恐れも顏色いろに出て笑はるるにや
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
こっちは例の気短ゆえ今しがたまで待っていたが、いつになってそなたの来るか知れたことではないとして出かけて来ただけ馬鹿であったか、ハハハ、しかし十兵衛
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
かぬほどより五月蠅しの素振あらはるれば、與之助、そなたはまだ子供のようと少し笑ひて身を進ませ、思案はまだまとまらぬかの、言うは汝が胸一つにして、詞に否と應との二つなるのみなるを
花ごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
我等二人の相談には余つて願ひにまゐりました、と実意を面に現しつゝ願へば上人ほく/\笑はれ、左様ぢやろ左様ぢやろ、流石にそなたも見上げた男ぢや、好い/\
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
ましてむこむかへんの嫁入よめいりせんのと、ひとめかしきのぞすこしもなし、たゞそなたさへ見捨みすてずは、御身おんみさへいとはせたまはずは、生涯しやうがい幸福かうふくぞかしとて嫣然につことばかりうちめば、松野まつのじり/\とひざすゝめて
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかしそなたに感服したればとて今すぐに五重の塔の工事しごとを汝に任するわと、軽忽かるはずみなことを老衲の独断ひとりぎめで言うわけにもならねば、これだけは明瞭はっきりとことわっておきまする
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
りてまへではなんでありしやら兄弟きようだいにもなき親切しんせつこののちともたのむぞやこれよりはべつしてのことなにごともそなた異見いけんしたがはん最早もういまのやうなことふまじければゆるしてよとわびらるゝも勿体もつたいなくてば甘露かんろと申ますぞやとるげにへど義理ぎりおもそで
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
我ら二人の相談には余って願いにまいりました、と実意を面に現わしつつ願えば上人ほくほく笑われ、そうじゃろそうじゃろ、さすがにそなたも見上げた男じゃ、よいよい
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
今そなたと別れんことはまことに悲しけれど、そなたにしてのりのため道のために渡宋せんことはわれも亦随喜すべきである、我いかで汝の志を奪うべきや、と涙ながらに許してくれた。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そなたが嘗て我に誇り示したる鮒釣の竿をひし家にてと云へば、弟は羨ましげに眼を光らせて左視右視とみかうみ暫らく打護り居けるが、やがて大きなる声して、良き竿をひ給ひしかな
鼠頭魚釣り (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)