桃色ももいろ)” の例文
そこでぼくは彼女達かのじょたち婉然えんぜんと頼まれると、唯々諾々いいだくだくとしてひき受け、その夜は首をひねって、彼女の桃色ももいろのノオトに書きも書いたり
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
室内は、暗室あんしつになっていた。ただ桃色ももいろのネオンとうが数箇、室内の要所にとぼっていて、ほのかに室内の什器や機械のありかを知らせていた。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
服装ふくそう筒袖式つつそでしき桃色ももいろ衣服きもの頭髪かみ左右さゆうけて、背部うしろほうでくるくるとまるめてるところは、ても御国風みくにふうよりは唐風からふうちかいもので
また一つのまどからは、うすい桃色ももいろ光線こうせんがもれて、みちちて敷石しきいしうえいろどっていました。よい音色ねいろは、このいえなかからこえてきたのであります。
青い時計台 (新字新仮名) / 小川未明(著)
シグナルとシグナレスはぱっと桃色ももいろえました。いきなり大きな幅広はばひろい声がそこらじゅうにはびこりました。
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いちばん上のおよめさんは二十三で、しろそでにのはかまをはいていました。二ばんめのおよめさんは二十はたちで、むらさきそでに桃色ももいろのはかまをはいていました。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
象の背中せなかには、桃色ももいろの洋服をきたかわいい少女が三人、人形のようにちょこんとならんでのっかっています。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
前はうねから畝へ花毛氈はなもうせんを敷いた紫雲英の上に、春もやゝ暮近くれちかい五月の午後の日がゆたかににおうて居る。ソヨ/\と西から風が来る。見るかぎり桃色ももいろさざなみが立つ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
葡萄酒ぶどうしゅ一壜ひとびんきりで、それもあやしげな、くびのところがふくれ返ったどす黒い代物しろもので、中身はプーンと桃色ももいろのペンキのにおいがした。もっとも、誰一人それは飲まなかった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
かれのあゆむにつれ彼の手から、かみでつくった桃色ももいろ蓮華れんげ花片はなびらがひらひら往来おうらいらばった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところ石町こくちょう鐘撞堂新道かねつきどうしんみち白紙はくしうえに、ぽつんと一てん桃色ももいろらしたように、芝居しばい衣装いしょうをそのままけて、すっきりたたずんだ中村松江なかむらしょうこうほほは、火桶ひおけのほてりに上気じょうきしたのであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
月様つきさま桃色ももいろ
お月さまいくつ (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
秀吉ひできちは、かけるとき、むねえがいた、桃色ももいろ希望きぼうかげは、どこかへえて、うちへもどるときは、失望しつぼうそこあるくように、はこあしおもかったのでした。
しいたげられた天才 (新字新仮名) / 小川未明(著)
十畳敷ほどの間が二つ、障子しょうじがあいていた。薄ぼんやりと明りがついている。小さいネオンとうが、シェードのうちに、桃色ももいろかすかな光線をだしていた。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あかだの、むらさきだの、桃色ももいろだの、いろいろのいろそでをかさねて、のはかまをはいた姿すがたは、目がめるようにまぶしくって、きゅうにそこらがかっとあかるくなったようでした。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
森をこえて紫野むらさきのさとに、うす桃色ももいろの花の雲をひいて、今宮神社いまみやじんじゃ大屋根おおやねが青さびて見える。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
桃色ももいろの大きな月はだんだん小さく青じろくなり、かしわはみんなざわざわい、画描えかきは自分のくつの中に鉛筆えんぴつけずってへんなメタルの歌をうたう、たのしい「夏のおどりのだい三夜」です。
いもうとは、つねに桃色ももいろ着物きものをきていました。きわめて快活かいかつ性質せいしつでありますが、あね灰色はいいろ着物きものをきて、きわめてしずんだ、口数くちかずすくない性質せいしつでありました。
灰色の姉と桃色の妹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
桃色ももいろのペラペラの寒天でできているんだ。いい天気だ。
若い木霊 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そしてテーブルのうえには、いろいろのはなみだれているばかりでなく、桃色ももいろのランプのほか緑色みどりいろのランプがともって、楽園らくえんにきたようなかんじがしたのであります。
青い時計台 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるのこと、二人ふたりは、小川おがわにそうて散歩さんぽをしていました。かわほとりには、しろはなや、桃色ももいろはないていました。そのとき、あねみずうつった自分じぶん姿すがたをながめて、かおあかくしながら
木と鳥になった姉妹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
桃色ももいろふくをきたおんなと、たかい、黒服くろふくおとこが、をとりあって、はいったようにおもったのが、いつのまにか時間じかんがたち、もう食事しょくじをすまして、二人ふたりてくるのを、としとったおんなたのでした。
かざぐるま (新字新仮名) / 小川未明(著)
もうはるがやってくるのだとおもってみなみほうそらをながめていると、うす桃色ももいろくもがたなびいており、そして、そのしたほうに、学校がっこうおおきなかしのあたまが、こんもりとしてえたのでありました。
すずめの巣 (新字新仮名) / 小川未明(著)