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ありあけ
ふりがな文庫
“
有明
(
ありあけ
)” の例文
引入れて雨戸を締めると、中は真っ暗、手と手を握った二人は、遠い廊下の
有明
(
ありあけ
)
を目当てに、
逢曳
(
あいびき
)
らしい心持で、奥へ
辿
(
たど
)
りました。
銭形平次捕物控:015 怪伝白い鼠
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
更にその
末
(
すえ
)
が裾野となって、
緩
(
ゆる
)
やかな傾斜で海岸に延びており、そこに
千々岩
(
ちぢわ
)
灘とは反対の側の
有明
(
ありあけ
)
海が
紺碧
(
こんぺき
)
の色をたたえて展開する。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
もぬけの
殼
(
から
)
なりアナヤとばかり
蹴
(
け
)
かへして
起
(
た
)
つ
枕元
(
まくらもと
)
の
行燈
(
あんどん
)
有明
(
ありあけ
)
のかげふつと
消
(
き
)
えて
乳母
(
うば
)
が
涙
(
なみだ
)
の
聲
(
こゑ
)
あわたゞしく
孃
(
ぢやう
)
さまが
孃
(
ぢやう
)
さまが。
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
此外▲
有明
(
ありあけ
)
の
浦
(
うら
)
▲
岩手
(
いはで
)
の
浦
(
うら
)
▲
勢波
(
せば
)
の
渡
(
わたし
)
▲
井栗
(
ゐくり
)
の
森
(
もり
)
▲
越
(
こし
)
の松原いづれも古哥あれども、
他国
(
たこく
)
にもおなじ名所あればたしかに越後ともさだめがたし。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
夜はおそくまで経を学んで、
有明
(
ありあけ
)
の月の出るのを知らなかった事もありました。お勤めを怠るというような怠慢な事は思いも寄らぬ事でしたよ。
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
▼ もっと見る
巌
(
いわお
)
を
刳
(
く
)
り抜いて造った家の部屋と部屋との仕切りには
莚
(
むしろ
)
が釣ってあるばかり
有明
(
ありあけ
)
の灯も消えたと見えて家の内は真っ暗だ。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その光は、片すみにともされてる一つの
有明
(
ありあけ
)
から来るのだった。広間の中はひっそりとして、何も動くものはなかった。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
川の上の
有明
(
ありあけ
)
月夜のことがまた思い出されて、とめどなく涙の流れるのもけしからぬ自分の心であると浮舟は思った。
源氏物語:53 浮舟
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
目をつぶって腕組みした白髪童顔の玄鶯院を
中央
(
なか
)
に、十五、六の人影が、
有明
(
ありあけ
)
行燈の灯をはさんで静まり返っていた。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
穂高
(
ほだか
)
、
有明
(
ありあけ
)
、
安曇追分
(
あずみおいわけ
)
と行くうちに、突然空の一部分が口をあいて、安曇平野の一部に、かなり強い日光を投げつけた。直径約一里ぐらいであろうか。
可愛い山
(新字新仮名)
/
石川欣一
(著)
磐石
(
ばんじやく
)
を曳くより苦く貫一は膝の
疼痛
(
いたみ
)
を
怺
(
こら
)
へ怺へて、とにもかくにも
塀外
(
へいそと
)
に
踽
(
よろぼ
)
ひ出づれば、宮は
未
(
いま
)
だ遠くも行かず、
有明
(
ありあけ
)
の
月冷
(
つきひやや
)
かに夜は水の
若
(
ごと
)
く
白
(
しら
)
みて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
襖
(
ふすま
)
のすこし
明
(
あ
)
きたるあひよりそつと
下
(
お
)
りて大座敷へ
出
(
いで
)
、(中略)
唐更紗
(
たうざらさ
)
の
暖簾
(
のれん
)
あげて、
長四畳
(
ながよでふ
)
の
間
(
ま
)
を過ぎ、一だんたかき小座敷あつて、
有明
(
ありあけ
)
の火明らかに
案頭の書
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
また
一説
(
いつせつ
)
には、その
丸木橋
(
まるきばし
)
は
今
(
いま
)
の
熊本
(
くまもと
)
あたりから、
有明
(
ありあけ
)
の
海
(
うみ
)
を
渡
(
わた
)
つて
肥前國
(
ひぜんのくに
)
温泉岳
(
うんぜんだけ
)
までかゝつてゐたとも
言
(
い
)
ひます。おそろしい
大
(
おほ
)
きな
木
(
き
)
ではありませんか。
森林と樹木と動物
(旧字旧仮名)
/
本多静六
(著)
それを今日は珍らしく、まだ
有明
(
ありあけ
)
の月が空に残っているうちに、馬の鈴の音がこの丸山台のあたりで聞えます。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
フィツジェラルドの英訳をテクストとした
森亮
(
もりりょう
)
氏の
傑
(
すぐ
)
れた訳業に啓発されて、全部
有明
(
ありあけ
)
調の文語体で翻訳したが(解説二、「ルバイヤートについて」の項参照)
ルバイヤート
(新字新仮名)
/
オマル・ハイヤーム
(著)
井の底にくぐり入って死んだのは、忠利が愛していた
有明
(
ありあけ
)
、
明石
(
あかし
)
という二羽の鷹であった。そのことがわかったとき、人々の間に、「それではお鷹も
殉死
(
じゅんし
)
したのか」
阿部一族
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そして、何かの拍子に眼をさましてみると
有明
(
ありあけ
)
の
行燈
(
あんどう
)
の傍に人影があった。武士ははっと思った。
山寺の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そうして西に傾きかかった太陽は、この小丘の
裾
(
すそ
)
遠く
拡
(
ひろが
)
った
有明
(
ありあけ
)
の入江の上に、長く曲折しつつ
逈
(
はる
)
か水平線の両端に消え入る白い砂丘の上に今は力なくその光を投げていた。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
傍
(
かたわら
)
に、家業がら余程奇を好んだと見えて、
棕櫚
(
しゅろ
)
の樹が鉢に
突立
(
つった
)
ててある、その葉が獅子の
頭毛
(
かしらげ
)
のように見えて、私は、もう一度ぐらぐらと目が
眩
(
くら
)
んだ、横雲黒く、
有明
(
ありあけ
)
に……
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蚊遣
(
かやり
)
の
烟
(
けむり
)
になお
更
(
さら
)
薄暗く思われる
有明
(
ありあけ
)
の
灯影
(
ほかげ
)
に、
打水
(
うちみず
)
の乾かぬ小庭を眺め、隣の二階の三味線を
簾越
(
すだれご
)
しに聴く心持……東京という町の生活を最も美しくさせるものは夏であろう。
夏の町
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
偉なる
高麗焼
(
こまやき
)
の大花瓶に一個の
梵鐘
(
ぼんしょう
)
が釣ってあり、また、銀の
大襖
(
おおぶすま
)
につらなる燭台の数は、
有明
(
ありあけ
)
の海の
漁灯
(
いさりび
)
とも見えまして、さしも由緒ある豪族の名残はここにもうかがわれる。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
宵惑
(
よいまどい
)
の私は例の通り宵の口から寝て了って、いつ
両親
(
りょうしん
)
は
寝
(
しん
)
に就いた事やら、一向知らなかったが、ふと目を覚すと、
有明
(
ありあけ
)
が枕元を
朦朧
(
ぼんやり
)
と照して、
四辺
(
あたり
)
は
微暗
(
ほのぐら
)
く
寂然
(
しん
)
としている中で
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
この
界隈
(
かいわい
)
の製紙の業も盛なものでありましたが、私どもにとってもっと興味深いのは、この
南安曇
(
みなみあずみ
)
の
有明
(
ありあけ
)
村から出る「
山繭織
(
やままいおり
)
」であります。自然産であって、極めて堅牢であります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
現にわたしなども霜夜の枕にひびく餅の音を聴きながら、やがて来る春のたのしみを夢みたもので——
有明
(
ありあけ
)
は
晦日
(
みそか
)
に近し餅の音——こうした俳句のおもむきは到るところに残っていた。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
越路
(
こしじ
)
の方の峰には、雲が迷っていたけれど、
有明
(
ありあけ
)
山、
燕
(
つばくろ
)
岳、
大天井
(
おてんしょう
)
、花崗石の
常念坊
(
じょうねんぼう
)
、そのそばから抜き出た槍、なだらかな南岳、低くなった蝶ヶ岳、高い穂高、乗鞍、
御嶽
(
おんたけ
)
、木曾駒と
雪の武石峠
(新字新仮名)
/
別所梅之助
(著)
腫物の湯治に、郷里熊本から五里ばかり
有明
(
ありあけ
)
の
海辺
(
うみべ
)
の
小天
(
おあま
)
の温泉に連れられて往った時、宿が天井の無い家で、寝ながら上を見て居ると、真黒に
煤
(
すす
)
けた屋根裏の竹を縫うて何やら動いて居た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
元亀
(
げんき
)
、天正とうちつづく戦国時代のことで、彼もまた一国一城の主になる野心をもったのであろう、多くの海賊なかまをひきつれて
有明
(
ありあけ
)
の海から
島原
(
しまばら
)
へと入り、大村領の西岸へ上陸するとともに
伝四郎兄妹
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
五月十七日
三角
(
みすみ
)
港より
有明
(
ありあけ
)
湾を渡る。島原泊り。
七百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
有明
(
ありあけ
)
の
月夜
(
つくよ
)
をあかみ
此園
(
このその
)
の
紅葉
(
もみじ
)
見に
来
(
き
)
つ
其
(
その
)
戸
令開
(
ひらかせ
)
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
有明
(
ありあけ
)
の月に
薪
(
たきぎ
)
を取り込んで
音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
有明
(
ありあけ
)
の
灯
(
ともしび
)
を見る。
展望
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
「それが判りません。何しろ江戸一番の締り屋で、二階廊下が危ないのを承知の上で、どうしても
有明
(
ありあけ
)
を
灯
(
つ
)
けさせない人です」
銭形平次捕物控:070 二本の脇差
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
此外▲
有明
(
ありあけ
)
の
浦
(
うら
)
▲
岩手
(
いはで
)
の
浦
(
うら
)
▲
勢波
(
せば
)
の
渡
(
わたし
)
▲
井栗
(
ゐくり
)
の
森
(
もり
)
▲
越
(
こし
)
の松原いづれも古哥あれども、
他国
(
たこく
)
にもおなじ名所あればたしかに越後ともさだめがたし。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
ほそぼそとともされている
有明
(
ありあけ
)
の灯で、良人の顔を見詰めていた早瀬は、起き上がってにわかに居住居を直した。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
有明
(
ありあけ
)
の君は短い夢のようなあの夜を心に思いながら、悩ましく日を送っていた。東宮の後宮へこの四月ごろはいることに親たちが決めているのが
苦悶
(
くもん
)
の原因である。
源氏物語:08 花宴
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
太郎左衛門は寝床からそっと起きあがって、
枕頭
(
まくらもと
)
に
点
(
とも
)
した
有明
(
ありあけ
)
の
行燈
(
あんどん
)
を吹き消し、次の室に眠っている女房に知れないようにと、そろそろと室を出て暗い縁側を通って往った。
切支丹転び
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
まず鶏の
啼
(
な
)
く声が耳に流れこむと一緒に、
有明
(
ありあけ
)
をつけて置いた朱塗の美しい
行燈
(
あんどん
)
がぼんやりと——そうして、その行燈の下にうずくまっている怪しいものが一つ——睡眼に触れると
大菩薩峠:34 白雲の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
つれなく
見
(
み
)
えし
有明
(
ありあけ
)
の
月
(
つき
)
の
形見
(
かたみ
)
を
空
(
そら
)
に
眺
(
なが
)
めて、(
曉
(
あかつき
)
ばかり)と
呌
(
うめ
)
きけんか
知
(
し
)
らず。
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
疑問は、一個の
行燈
(
あんどん
)
です。——いや、その
有明
(
ありあけ
)
にしたためられた奇怪な文字です。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
有明
(
ありあけ
)
の月のうすい光に、
蕭条
(
しょうじょう
)
とした
藪
(
やぶ
)
が、かすかにこずえをそよめかせて、
凌霄花
(
のうぜんかずら
)
のにおいが、いよいよ濃く、甘く漂っている。時々かすかな音のするのは、竹の葉をすべる露であろう。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
有明
(
ありあけ
)
の
主水
(
もんど
)
に酒屋つくらせて
荷兮
(
かけい
)
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
廊下の
有明
(
ありあけ
)
に照らされて、それは哀れにも痛々しい姿ですが、今はそんなものに取合っている
隙
(
すき
)
もなく、八五郎は精いっぱいの智恵を絞りました。
銭形平次捕物控:282 密室
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
中宮は夜明けの時刻に南殿へおいでになったのである。弘徽殿の
有明
(
ありあけ
)
の月に別れた人はもう御所を出て行ったであろうかなどと、源氏の心はそのほうへ飛んで行っていた。
源氏物語:08 花宴
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
いつもある
有明
(
ありあけ
)
の燈火が無く、兵馬が手さぐりに近づく物音にも、お雪ちゃんはいっこう驚かず、やっと火打をさぐりあて、カチカチときった物音にも、パッと明るくした明りにも
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
小さな
有明
(
ありあけ
)
の電燈の光にぼかされた椅子の人は顔をあげた。それは章一であった。
一握の髪の毛
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
平次は
忙
(
せわ
)
しく袷を引っかけると、部屋の外へ飛出しました。左手には
有明
(
ありあけ
)
の
行灯
(
あんどん
)
を
提
(
さ
)
げて、曲者の通ったらしい道を、
嘗
(
な
)
めるように進んで行きます。
銭形平次捕物控:027 幻の民五郎
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ちょうど
有明
(
ありあけ
)
の月がこの窓からは蔭になりますけれども、月の光は江川の本邸の内の土蔵の
棟
(
むね
)
に浴びかかって、その反射で見た我が子の面が、この世の人のようには見えなかったので
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
有明
(
ありあけ
)
の月が澄んだ空にかかり、水面も曇りなく明るかった。
源氏物語:53 浮舟
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
お越は絹を裂くような
叱陀
(
しった
)
とともに、二階の奥の一と間、
有明
(
ありあけ
)
の光のほのかに隠れる障子をパッと、蹴開けたのです。
銭形平次捕物控:081 受難の通人
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
次の朝の
有明
(
ありあけ
)
月夜に薫は
兵部卿
(
ひょうぶきょう
)
の宮の御殿へまいった。
源氏物語:49 総角
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
有
常用漢字
小3
部首:⽉
6画
明
常用漢字
小2
部首:⽇
8画
“有明”で始まる語句
有明月
有明行燈
有明楼
有明行灯
有明灣
有明湾
有明燈
有明道
有明霞