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さと
ふりがな文庫
“
敏
(
さと
)” の例文
盲人の
敏
(
さと
)
き習として、少女はその常の錢ならぬを知りたるなるべし、顏は燃ゆる如くなりて、その
健
(
すこや
)
かに美しき唇は我手背に觸れたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
その瞬間であつた。一種の異臭の
幽
(
かす
)
かに浮び出るを
敏
(
さと
)
くも感覚した長次は、身体の痛みも口惜しさも忘れ、
跣足
(
はだし
)
のまゝに我家へ一散走り
名工出世譚
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
「三人衆は抜けますまいが、幸いなことには、主水は兄とちがって、利慾に
敏
(
さと
)
い人間ですから、これは利をもってすれば、使えましょう」
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
額安
(
かくやす
)
に、手取早く味覚の満足を
購
(
か
)
ふといつた風になり勝なので、感覚の
敏
(
さと
)
さが
段々
(
だん/″\
)
と
弛
(
ゆる
)
んで、
終
(
しま
)
ひには
痺
(
しび
)
れかゝつて来るのではあるまいか。
茸の香
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
私はそれが嬉しかつた。
奈何
(
どんな
)
に
尫弱
(
かよわ
)
い體質でも、私は流石に男の兒、藤野さんはキッと口を結んで
敏
(
さと
)
く追つて來るけれど、容易に
捉
(
つかま
)
らない。
二筋の血
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
▼ もっと見る
そして
小
(
ちいさ
)
いおりから母親に
媚
(
こ
)
びることを学ばされて、そんな事にのみ
敏
(
さと
)
い心から、
自然
(
ひとりで
)
に
故
(
ことさ
)
ら二人に甘えてみせたり、
燥
(
はしゃ
)
いでみせたりした。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「ても恐ろしい眼力じゃよなあ。老子は生れながらに
敏
(
さと
)
く、
荘子
(
そうし
)
は三つにして人相を知ると聞きしが、かく弥平兵衛宗清と見られた上は……」
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「すると、値上がりのところで、売ってもうけるつもりなんだな。すると、単に、目さきの
敏
(
さと
)
い商人でしかないではないか」
火薬船
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼らまた水を求むるに
敏
(
さと
)
く、沙中水もっとも多き所を速やかに発見し、手で
沙
(
すな
)
を掘る事人のごとく、水深けば相互交代す
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
辛
(
から
)
い時には辛酷以上に辛い、
敏
(
さと
)
い時には
狡猾
(
こうかつ
)
以上に敏いところはなければならないから、この物影がグッとこたえたものと見なければなりません。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
両手を
鍔
(
つば
)
の下へ、重々しゅう、南蛮鉄、五枚
錣
(
しころ
)
の
鉢兜
(
はちかぶと
)
を脱いで、陣中に憩った形でござったが、さてその耳の
敏
(
さと
)
い事。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、ナオミは早くも私の心の変化を
看
(
み
)
て取ってそう云いました。学問の方には
疎
(
うと
)
くっても、私の顔色を読むことにかけては彼女は実に
敏
(
さと
)
かったのです。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
お延はそれ以上にまだ
敏
(
さと
)
い気を遠くの方まで廻していた。彼女は自分に対して仕組まれた
謀計
(
はかりごと
)
が、内密にどこかで進行しているらしいとまで
癇
(
かん
)
づいた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それでも非常に
敏
(
さと
)
い赤蠅がそつと來ては軟かな
子葉
(
め
)
を舐め減すので、爺さんの苦心は容易ではありません。
白瓜と青瓜
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
言葉の感覺には
敏
(
さと
)
くありたい。その感覺に鈍くては文章の道には到り得ない。失敗を恐れて、試みることを躊躇するやうなものも、またこの道を行き盡せない。
桃の雫
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
敏
(
さと
)
い、冗談好きの頭のよさで以て、彼等の心にちょっとでも浮かぶ考えはどんな小さなものでも、本人達の気のつかないうちに見抜いてしまうらしいのでした。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
初めの間は僕がさうやつて上げるが、直ぐにあなたは(僕にはあなたの力が分つてゐるから)僕同樣に、強くそして
敏
(
さと
)
くなつて、僕の
扶
(
たす
)
けは要らなくなります。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
そのあまりに利害に
敏
(
さと
)
過ぎるのに、私の妻などは、時々反感を抱きながら、屡々その口車に乘せられた。
水不足
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
この
辺
(
あたり
)
には大樹が多かった。大樹の
聳
(
そび
)
ゆる
下
(
もと
)
に落葉焚く煙が白く
颺
(
あが
)
って、
彼
(
か
)
のお杉
婆
(
ばばあ
)
は窟を
背後
(
うしろ
)
に、余念もなく
稗
(
ひえ
)
の
粥
(
かゆ
)
を煮ていたが、
彼女
(
かれ
)
の耳は非常に
敏
(
さと
)
かった。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
和服も上等ではなかったが、時候に相当した物を、一二着
宛
(
ずつ
)
調えて行く事が出来た。殊に彼の妻は、女性に特有な、衣類に対する
敏
(
さと
)
い感覚と、執着とを持って居た。
大島が出来る話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「おおよその郷民は仁に近い
木訥
(
ぼくとつ
)
、融通きかぬ手合いではござるが、中には利に
敏
(
さと
)
い者もあって……」
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
これこそ、じつにどんな
鳥
(
とり
)
の
目
(
め
)
よりも
敏
(
さと
)
い
不思議
(
ふしぎ
)
な
眼鏡
(
めがね
)
であって、まったく、わしがいつか
命
(
いのち
)
を
救
(
すく
)
ってもらったお
礼
(
れい
)
に
太郎
(
たろう
)
に
持
(
も
)
ってきてくれたものだとわかりました。
薬売り
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
デップリした
恰幅
(
かっぷく
)
で、柔和な眉、少し鋭い智恵の輝きを思わせる眼、二重
顎
(
あご
)
、大町人らしい
寛闊
(
かんかつ
)
なうちにも、何となく商機に
敏
(
さと
)
い人柄を思わせるのが、地味な
紬
(
つむぎ
)
を着て
銭形平次捕物控:029 江戸阿呆宮
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
容姿
(
ようし
)
優
(
すぐ
)
れて美しく才気あり万事に
敏
(
さと
)
き
性
(
せい
)
なりければ、
誘工
(
ゆうこう
)
の事
総
(
すべ
)
てお政ならでは目が
開
(
あ
)
かぬとまでに
称
(
たた
)
えられ、永年の誘工者、伝告者として衆囚より
敬
(
うやま
)
い
冊
(
かしず
)
かれけるが
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
「みゝずという奴は、眼も耳も無い癖に、
敏
(
さと
)
い奴でね、お嬢さん。土から首を出しかけているときにねえ、
鶫
(
つぐみ
)
の鳴き声が聞えると、ちゅっと、こう首を縮こますのですよ」
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
詩人の耳は
敏
(
さと
)
くもその響を聽きとめて新たなる歌に新たなる聲を添へる——それのみである。
新しき声
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
不思議な眼の
敏
(
さと
)
さで、それを間もなく見破つたのは、却つて須磨寺にゐる厚母喬彦であつた。
垂水
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
主
(
あるじ
)
の女が
敏
(
さと
)
き耳には、少しあやしと聞かるゝ事あり、秋雨しと/\と降りて物あはれなる夜、ともし火のもとに独り手馴れの琴を友として、あはれに淋しき調べを
弄
(
もてあそ
)
びつゝ
琴の音
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
しかし時代を見る事の早く
敏
(
さと
)
い山中定次郎翁は民藝品の骨董としての将来性を見てとってか
四十年の回想:『民藝四十年』を読んで
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
縹緻でのぞまれたのと、身分の違うのが不安だったけれども、頭の
敏
(
さと
)
い小松はよく婚家の風に馴れ、案外なくらい良縁としておさまった。それから三年たって津留も結婚した。
日本婦道記:風鈴
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
しかし俄然私の友人の鋭い感覚が、
敏
(
さと
)
く識取していたものを、私の感覚も受け取った。
空家の冒険
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
オリヴィエの
敏
(
さと
)
い眼は、現在の各方面の類型を、ゴチック彫刻中にも見出していた。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
すなわち留吉の眼は猫よりも鋭く、またその鼻は犬よりも
敏
(
さと
)
いのであります。そのうえ彼は筋力にもすこぶる恵まれておりまして、一口にいえば、
猩猩
(
しょうじょう
)
のように強かったのであります。
白痴の知恵
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
即ち、氏の生れながらに持つ、理に
敏
(
さと
)
き頭脳の力と、他は其の明敏な理智に伴ふ知識の不足と云ふよりは、その知識に先だつて氏の才能を囚へた禅の智識である。私は敢て、禅の智識と云ふ。
平塚明子論
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
斯
(
か
)
く思いて余は少し失望せしに目科は
敏
(
さと
)
くも余の心を察せし如く
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
子供の眼は
敏
(
さと
)
く、遠慮がないから、精一杯の声で
平賀源内捕物帳:山王祭の大像
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
その青銅の投槍を、イドメニュースは眼
敏
(
さと
)
くも
イーリアス:03 イーリアス
(旧字旧仮名)
/
ホーマー
(著)
敏
(
さと
)
い植木才蔵は抜からず助言した。
討たせてやらぬ敵討
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
敏
(
さと
)
く
優
(
やさ
)
しき身を刺せば
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
が、これは未然に
敏
(
さと
)
くも信長の知るところとなって、当時、安藤伊賀の一味は、
詫状
(
わびじょう
)
を入れて、一応、すんだ問題になっている。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何事をか
聯
(
つら
)
ねけん、いまは覺えず。人々はわが詞の多かりしを、才豐なりと稱へ、わが臆せざるを、心
敏
(
さと
)
しと譽めたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
(次三郎とは本間のこと、第一回より三回の間に出でて毒を飲みたる病人なり。鎌倉より東京のことなれば、
敏
(
さと
)
き
看官
(
みるひと
)
の眼も届くまじとて書添え置く。)
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と団さんは横手を
拍
(
う
)
って感歎した。団さんは数理の方が
敏
(
さと
)
い代りに洒落と来ると余程血の廻りが遅いようだ。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
多分この計算は間違いないでしょう、高いところにいて、ことに物を見る目の
敏
(
さと
)
い茂太郎の勘定ですから、報告にあやまりないものと見てよろしかろうと思います。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
おつぎは
燒
(
や
)
いた
握飯
(
にぎりめし
)
を一つ
枕元
(
まくらもと
)
にそつと
置
(
お
)
いて
遁
(
に
)
げるやうに
歸
(
かへ
)
つて
來
(
き
)
た。
老人
(
としより
)
の
敏
(
さと
)
い
目
(
め
)
が
到頭
(
たうとう
)
開
(
ひら
)
かなかつた。
卯平
(
うへい
)
は
疲
(
つか
)
れた
心
(
こゝろ
)
が
靜
(
しづ
)
まつて
漸
(
やうや
)
く
熟睡
(
じゆくすゐ
)
した
處
(
ところ
)
なのであつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
栄えた船着場の
名残
(
なご
)
りとしての、遊女町らしい
情緒
(
じょうしょ
)
の今も漂っているのと思いあわせて、近代女性の自覚と、文学などから教わった新しい恋愛のトリックにも
敏
(
さと
)
い彼女が
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
それでも夫は神経が
敏
(
さと
)
くて、受けこたえにまめで、誰に
対
(
むか
)
っても自然と
愛想好
(
あいそよ
)
く、日々家へ帰って来る時立迎えると、こちらでもあちらを見る、あちらでもこちらを見る、イヤ
鵞鳥
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
六十前後の一と掴みほどの老人で、利には
敏
(
さと
)
くも、氣力も體力も甚だ心細い仁體です。
銭形平次捕物控:272 飛ぶ若衆
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
けれど決して鼠
一疋
(
いっぴき
)
といえども其処を通ったものは
覚
(
さと
)
らずにはいない。それ程、彼の霊魂は
聡
(
さと
)
くあった。老人自身でもよくいうのに、肉体が衰えれば精神はそれだけ
敏
(
さと
)
くなるものだと。
薔薇と巫女
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
敏
(
さと
)
き感じにわななける
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
敏
常用漢字
中学
部首:⽁
10画
“敏”を含む語句
敏捷
素敏
敏感
目敏
敏達
敏速
耳敏
機敏
過敏
俊敏
敏活
敏腕家
寝敏
敏三
慧敏
眼敏
鋭敏
上田敏
穎敏
敏子
...