トップ
>
撞木
>
しゅもく
ふりがな文庫
“
撞木
(
しゅもく
)” の例文
時折、どこやらで、ぽと、ぽと——と大地を
撞木
(
しゅもく
)
で叩くような音がした。その軽い響きだけがわずかにここの沈黙を救っていた。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鼻環
(
はなかん
)
は、
木綿
(
もめん
)
針を長さ八分ほどに切り落とし、真んなかを麻糸で
括
(
くく
)
った
撞木
(
しゅもく
)
式。テグスの
鈎素
(
はりす
)
へ、鈎を麻で結びつけた鈎付け。
想い出
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
キャアいうて、恥かし……長襦袢で
遁
(
に
)
げるとな、しらがまじりの髪散らかいて、
般若
(
はんにゃ
)
の面して、目皿にして、出刃庖丁や、
撞木
(
しゅもく
)
やないのえ。
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
吊
(
つ
)
り
鐘
(
がね
)
だけ見える
鐘楼
(
しゅろう
)
の内部。
撞木
(
しゅもく
)
は誰かの手に綱を引かれ、
徐
(
おもむ
)
ろに鐘を鳴らしはじめる。一度、二度、三度、——鐘楼の外は松の木ばかり。
浅草公園:或シナリオ
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
最後
(
さいご
)
に
吉彦
(
よしひこ
)
さんがじぶんで、
大
(
おお
)
きく
大
(
おお
)
きく
撞木
(
しゅもく
)
を
振
(
ふ
)
って、がオオんん、とついた。わんわんわん、と
長
(
なが
)
く
余韻
(
よいん
)
がつづいた。すると
吉彦
(
よしひこ
)
さんが
ごんごろ鐘
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
▼ もっと見る
二股になった
撞木
(
しゅもく
)
の方が上になって、両手で握り締められたままワナワナと震えている。……その下に、全く形相の変った相手の顔があった。
一足お先に
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
梟
(
ふくろう
)
が
撞木
(
しゅもく
)
に止まってまじまじ
尤
(
もっと
)
もらしい顔をしていたこともあった。しかし小鳥屋専門の店ではなかったような気がする。
鷹を貰い損なった話
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
腕たア、
撞木
(
しゅもく
)
の腕のことか。その腕じゃ、ゴーンと
撞
(
つ
)
いても碌な
音
(
ね
)
は出なかろう、何を吐かしやがる。……まア、そんなことはどうでもいいや。
平賀源内捕物帳:山王祭の大像
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
この門をよく見直すと、左右に門番があって、屋根は
銅葺
(
どうぶき
)
の
破風造
(
はふづく
)
り、
鬼瓦
(
おにがわら
)
の代りに
撞木
(
しゅもく
)
のようなものが置いてあります。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
シタが此の鐘を打つ
撞木
(
しゅもく
)
は何所に有ろう、アア戸の表に十有二個の
凸
(
つき
)
出た所が有る、此の凸点が順々に鐘に当るのだ、併し此の凸点が有る以上は
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
朧夜
(
おぼろよ
)
にそそのかされて、
鉦
(
かね
)
も
撞木
(
しゅもく
)
も、
奉加帳
(
ほうがちょう
)
も打ちすてて、
誘
(
さそ
)
い
合
(
あわ
)
せるや否やこの
山寺
(
やまでら
)
へ踊りに来たのだろう。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ことに最後の「真田」の句に至ってはじめて鐘が
撞木
(
しゅもく
)
に当たって音を発したような心持がするのであります。
俳句の作りよう
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
越中
(
えっちゅう
)
・
越後
(
えちご
)
などのボッカたちは、太い野球の棒のような、頭が
撞木
(
しゅもく
)
になり、もしくは
二股
(
ふたまた
)
になったものを
杖
(
つえ
)
に突いていて、休む時にはそれで背の荷をささえる。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
それまで自動的に捲かれた
弾条
(
ぜんまい
)
が
弛
(
ゆる
)
み、同時に内部の
廻転琴
(
オルゴール
)
が鳴り出して、その奏楽が終ると、今度は二人の童子人形が、交互に
撞木
(
しゅもく
)
を振り上げては
鐘
(
チャペル
)
を叩き
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
応変自由なること、鐘の
撞木
(
しゅもく
)
に鳴るごとく、
木霊
(
こだま
)
の音を返すがごとく、
活溌
(
かっぱつ
)
、
轆地
(
ろくち
)
の
境涯
(
きょうがい
)
を
捉
(
とら
)
えました。
鯉魚
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
外に、
撞木
(
しゅもく
)
娘といって、美くしい町娘の風をしていて、顔が丁度、撞木の形、即ち丁字形であって、丁の横の棒の両端に目がついていて中央に赤い口を持ち鼻はない。
ばけものばなし
(新字新仮名)
/
岸田劉生
(著)
それらの
鐘楼
(
しょうろう
)
で
撞木
(
しゅもく
)
をふる音が、かわたれの一刻を長く尾をひいて天と地のあいだに消えてゆく。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
吊り下げられてある
撞木
(
しゅもく
)
を、手にした。軽く反動をつけてから、力まかせに、
梵鐘
(
ぼんしょう
)
に
打
(
ぶ
)
っつけた。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
半鐘はあたかも権太郎の
冤罪
(
むじつ
)
を証明するように鮮かな音を立てて響いた。このあいだから
撞木
(
しゅもく
)
は取りはずしてあるのに、誰がどうしたのか半鐘はやはりいつものように鳴った。
半七捕物帳:06 半鐘の怪
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
萌黄緞子
(
もえぎどんす
)
の
袴
(
はかま
)
を着けておりましたが、御用の声を聞くと、側に置いた小道具の一刀を取るより早く、舞台の上に掛け連ねた、
鞦韆
(
ぶらんこ
)
、綱、
撞木
(
しゅもく
)
などの間を
猿
(
ましら
)
のようにサッと昇りました。
銭形平次捕物控:002 振袖源太
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
大勢集ったところで、
撞木
(
しゅもく
)
に止っている蒼鷹を彼女は手に移し、声を張り揚げた。
美人鷹匠
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
といったまま、かまわず
撞木
(
しゅもく
)
に手をかけますと、その手をまた
鬼
(
おに
)
がつかみました。
子供
(
こども
)
はおこって、あべこべに
鬼
(
おに
)
の
頭
(
あたま
)
をつかみました。そしていきなり
鬼
(
おに
)
の
首
(
くび
)
を
引
(
ひ
)
き
抜
(
ぬ
)
こうとしました。
雷のさずけもの
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
鐘が鳴るのか
撞木
(
しゅもく
)
が鳴るか、鐘と撞木の合いが鳴る微妙不可思議のところだろう。
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
いい姿勢に
撞木
(
しゅもく
)
をとってきりりんきりりんと
緩
(
ゆるや
)
かにうち鳴らした
鉦
(
かね
)
の音である。
小品四つ
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
呼ばれた十二三の子が
紐
(
ひも
)
をつけた鉦と
撞木
(
しゅもく
)
を持て来た。辰爺さんはガンと一つ鳴らして見た。「こらいけねえな、
斯様
(
こん
)
な
響
(
おと
)
をすらァ」ガン/\と二つ三つ鳴らして見る。
冴
(
さ
)
えない響がする。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
と云いさま腕まくりをして
撞木
(
しゅもく
)
を掴んだ。
堺事件
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
被
(
かずき
)
の外へ
躍出
(
おどりい
)
でて、
虚空
(
こくう
)
へさっと
撞木
(
しゅもく
)
を
楫
(
かじ
)
、
渦
(
うずま
)
いた風に乗って、
緋
(
ひ
)
の
袴
(
はかま
)
の
狂
(
くる
)
いが
火焔
(
ほのお
)
のように
飜
(
ひるがえ
)
ったのを、よくも見ないで
縁結び
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
現実の社会を鐘とし親鸞を
撞木
(
しゅもく
)
として、どんなひびきを近代人のこころに生むか? ——をしきりに書かれたり演劇化されたりしたことがある。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この人と半々に
洋卓
(
テーブル
)
の角を回って向き合っていた時は、——
撞木
(
しゅもく
)
で心臓をすぽりと
敲
(
たた
)
かれたような気がした。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
高いところへ登って片足を
撞木
(
しゅもく
)
にかけて逆さにぶらさがっているところ、
裃
(
かみしも
)
を着て高足駄を穿いて、
三宝
(
さんぽう
)
を積み重ねた上に立っている娘の頭から水が吹き出す
大菩薩峠:09 女子と小人の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そして、カアンと
鐘
(
チャペル
)
に
撞木
(
しゅもく
)
が当る、とその時まさしく
扉
(
ドア
)
の方角で、秒刻の音に入り
混
(
ま
)
ざって
明瞭
(
はっきり
)
と聴き取れたものがあった。ああ、再び扉が開かれたのだった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
魚籠のなかの鮎は掌で捕らえ、そこでそのまま、かねて聞き覚えの通り
撞木
(
しゅもく
)
の鼻環を鼻の穴へ突き通して、瀬のなかへ放り込んだのであった。長さ二間の鮒竿、川幅はおよそ五間。
想い出
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
学校
(
がっこう
)
にあがってからでも
学校
(
がっこう
)
がひけたあとでは、たいていそこにあつまるのだ。
夕方
(
ゆうがた
)
、
庵主
(
あんじゅ
)
さんが、もう
鐘
(
かね
)
をついてもいいとおっしゃるのをまっていて、
僕
(
ぼく
)
らは
撞木
(
しゅもく
)
を
奪
(
うば
)
いあってついたのだ。
ごんごろ鐘
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
辰爺さんはやおら煙草入を腰に插して
鉦
(
かね
)
と
撞木
(
しゅもく
)
をとった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
針屋、そろばん屋、
陶器
(
すえもの
)
屋、その隣には鬼の念仏の絵看板、
鉦
(
かね
)
と
撞木
(
しゅもく
)
をもって町の守り神のように立っている
門
(
かど
)
は、
大津絵
(
おおつえ
)
をひさぐ
室井半斎
(
むろいはんさい
)
の店である。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
越前府中の舞台にて、道成寺の舞の半ばに、小六その
撞木
(
しゅもく
)
を振上げたるトタンに
左手
(
ゆんで
)
動かずなり、
右手
(
めて
)
も筋つるとて、
立
(
たち
)
すくみになりて、楽屋に
舁
(
か
)
かれて
来
(
き
)
ぬ。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
袴を着けた男は、台の上にある
撞木
(
しゅもく
)
を取り上げて、銅鑼に似た鐘の真中を二つほど打ち鳴らした。そうして、ついと立って、廊下口を出て、奥の方へ進んで行った。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
あのお屋敷の前を俗に
御守殿前
(
ごしゅでんまえ
)
と申しましてね、門は黒塗りの立派なものでございます、屋根は銅葺の
破風作
(
はふづく
)
りで、鬼瓦の代りに
撞木
(
しゅもく
)
のようなものが置いてございます
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
白の
鱗
(
うろこ
)
の
膚脱
(
はだぬ
)
ぎで、あの髪を
颯
(
さっ
)
と乱して、ト
撞木
(
しゅもく
)
を
被
(
かぶ
)
って、供養の鐘を出た時は、何となく舞台が暗くなって、それで振袖の
襦袢
(
じゅばん
)
を透いて、お珊さんの
真白
(
まっしろ
)
な胸が
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
身にはやれ衣をまとい、背中に
紙幟
(
かみのぼり
)
を一本さし、小さな形の釣鐘を一つ左手に持って、
撞木
(
しゅもく
)
でそれを叩きながら、お角さんの舟をめがけて何かしきりに
唸
(
うな
)
り出しました。
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
玄関に備えてある
撞木
(
しゅもく
)
をもって
訪鐘
(
ほうしょう
)
をつく。取次があらわれる。
誘
(
いざな
)
われて通ると、名古屋因幡守は、又右衛門の早速の来訪に、斜めならぬ機げんである。よう来てくれた。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
奴なきお夏さんは、
撞木
(
しゅもく
)
なき時の鐘。涙のない恋、戦争のない歴史、
達引
(
たてひ
)
きのない
江戸児
(
えどっこ
)
、江戸児のない東京だ。ああ、しかし
贅六
(
ぜいろく
)
でも可い、私は
基督教
(
キリストきょう
)
を信じても可い。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
持ちかけた
撞木
(
しゅもく
)
の綱を放して、
気色
(
けしき
)
ばんだ彼の友は、朱王房の胸ぐらをつかんで睨みつけた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
要するに鐘と
撞木
(
しゅもく
)
の
間
(
あい
)
が鳴るというところで、我々共の役目においてもその通り、強く罪人を扱うてかえって罪を大きくしてやることになり、或いは
寛
(
ゆる
)
やかに扱い過ぎてかえって増長を
大菩薩峠:11 駒井能登守の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
思出すわ。……
鋤鍬
(
すきくわ
)
じゃなかったんですもの。あの、持ってたもの
撞木
(
しゅもく
)
じゃありません?
悚然
(
ぞっ
)
とする。あれが魔法で、私たちは、誘い込まれたんじゃないんでしょうかね。
貝の穴に河童の居る事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ふたりは獄外を見まわして、約二間半ほどもある角の古材木が一隅に寄せつけてあるのを見つけ、二人してこれを持ち、
撞木
(
しゅもく
)
で大鐘を
撞
(
つ
)
くように、その突端を牢格子へ向って何度も
打
(
ぶ
)
つけた。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
電
(
いなびかり
)
が、南辻橋、北の辻橋、菊川橋、
撞木
(
しゅもく
)
橋、川を射て、橋に輝くか、と
衝
(
つ
)
と町を
徹
(
とお
)
った。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
どこの国からきた、どこのお
寺
(
てら
)
の
行人
(
ぎょうにん
)
であろうか、
天蓋
(
てんがい
)
に
瓔珞
(
ようらく
)
のたれたお
厨子
(
ずし
)
を
背
(
せ
)
なかにせおい、
胸
(
むね
)
には
台
(
だい
)
をつって
鉦
(
かね
)
と
撞木
(
しゅもく
)
をのせてある。そして
行乞
(
ぎょうこつ
)
でえた
銭
(
ぜに
)
は、みなその
鉦
(
かね
)
のなかにしずんでいた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
海から吹抜けの風を
厭
(
いと
)
ってか、窪地でたちまち
氾濫
(
あふ
)
れるらしい水場のせいか、
一条
(
ひとすじ
)
やや広い
畝
(
あぜ
)
を隔てた、町の裏通りを——横に通った、正面と、
撞木
(
しゅもく
)
に
打着
(
ぶつか
)
った
真中
(
まんなか
)
に立っている。
貝の穴に河童の居る事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
青銅の
訪鉦
(
ほうしょう
)
が下がっている。備えつけの
撞木
(
しゅもく
)
でたたく。
剣の四君子:02 柳生石舟斎
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“撞木”の意味
《名詞》
撞木(しゅもく)
磬などを打って鳴らすためのT字形の棒。
鐘を撞いて鳴らす棒。
(出典:Wiktionary)
撞
漢検準1級
部首:⼿
15画
木
常用漢字
小1
部首:⽊
4画
“撞木”で始まる語句
撞木杖
撞木町
撞木刀
撞木形
撞木擦
撞木橋
撞木返
撞木鮫
撞木野郎