ゆら)” の例文
新字:
さうして其一喝した自分の聲にさへ、實際は恐怖心がゆらいだのであつた。雨は益〻降る。一時間に四分五分しぶごぶ位づゝ水は高まつて來る。
水害雑録 (旧字旧仮名) / 伊藤左千夫(著)
海藻みるをかき亂したやうな黒髮の、水肌を慕ふやうにゆらめく中に、白い顏が恐怖と苦惱に歪んで、二つの眼ばかりが、星の如く輝きます。
「お駒ちやん、もうこの頃は白い丈長たけなが懸けんのかい。」と、定吉は、俯向うつむいて咽せてゐるお駒の島田髷しまだまげゆらいでゐるのを見ながら言つた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
新しき光閉ぢたる目を俄かに射れば睡りは破れ、破れてしかしてその全く消えざるさきにゆらめくごとく 四〇—四二
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
くは烟草たばこけむあきゆらつかせながら、ぶら/\あるいてゐるうちに、どこかとほくへつて、東京とうきやうところはこんなところだと印象いんしやうをはつきりあたまなかきざけて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
言葉數も少なく、杯も一向にはずまぬ。座の一方の洋燈には冷やかに風がゆらいで居る。此ごろでは少し飮めばすぐに醉ふやうになつてゐる父が、その夜は更に醉はない。
古い村 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
くさまくらのまゝで、やしら/″\としらむ。こまびんがさら/\とあさのづらにゆらいでえる。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
西八條殿にしはちでうでんゆらぐ計りの喝采を跡にして、維盛・重景の退まかり出でし後に一個の少女をとめこそ顯はれたれ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
「わたしは隨分ずいぶん澤山たくさんんだが、一ばんしまいに三人の貴い御子みこを得た」と仰せられて、くびに掛けておいでになつた玉のをゆらゆらとゆらがして天照あまてらす大神にお授けになつて
焔が眼の中にゆらめいて、眼は露のやうに光つてゐる。やはらかに、思ひに滿ちてゐて、私の言葉に微笑ほゝゑんでゐる。感じ易く、その澄んだ眼球を通つて、次から次へと印象が這入つて行く。
びろがしはだゆげに、かぜゆらゆる初夏はつなつ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
ゆらぎを胸に覺えなばゆらぎをつつめ
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
月光はおぼろげな火陰ほかげゆらめかした
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
薄い毛を總髮のやうに撫であげた道臣の頭と、千代松の丁髷とが、かたみに少しづつゆらいで、ねち/\とした話聲が、途切れ/\に聞えた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
我若しわが答のまた世に歸る人にきかるとおもはゞこの焔はとゞまりてふたゝびゆらめくことなからん 六一—六三
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
せはしく香をくべて、かねを叩くのは彌助。新佛にひぼとけの前にあかりゆらいで、夜の鳥が雜司ヶ谷の空をいて過ぎます。
かんざしゆら氣勢けはひは、彼方あちらに、おぢやうさんのはうにして……卓子テエブル周圍まはりは、かへつて寂然ひつそりとなりました。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
風にあらで小忌をみころも漣立さゞなみたち、持ち給へる珠數震ひゆらぎてさら/\と音するに瀧口かうべもたげて、小松殿の御樣見上ぐれば、燈の光に半面をそむけて、御袖の唐草からくさたゞならぬ露を忍ばせ給ふ
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
日はゆらぎ、濃くもあざれし光明くわうみやう
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
しろがねの被衣かづきゆら
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
百傳ふ ぬてゆらくも。
くさまくらのまゝで、はやしら/\としらむ。こまたてがみがさら/\と、あさかつらにゆらいでえる。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さては、ゆらえた當時そのかみ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
ひやつこく、宛然さながらあみしたを、みづくゞつてるやう、砂地すなぢつてても身體からだゆらぎさうにおもはれて、不安心ふあんしんでならぬから、なみおそふとすた/\とあと退き、なみかへるとすた/\とまへすゝんで
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
うつくしさは、よるくもくらこずゑおほはれながら、もみぢのえだうらくばかり、友染いうぜんくれなゐちら/\と、櫛卷くしまき黒髮くろかみ濡色ぬれいろつゆしたゝる、天井てんじやうたかやまに、電燈でんとうかげしろうして、ゆらめくごと暖爐だんろほのほ
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
影法師かげぼふしつゆれて——とき夏帽子なつばうし單衣ひとへそでも、うつとりとした姿なりで、俯向うつむいて、土手どてくさのすら/\と、おとゆられるやうな風情ふぜいながめながら、片側かたかはやま沿空屋あきやまへさみしく歩行あるいた。
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
友造ともざうかげ石磈いしころうへゆらいで
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)