“張(ば)” の例文
なわ張(ば)りの外に見物はぞろぞろ集まっている。わたしはこわごわ見回すと、数知れないひとみの光がわたしたちの上に集まっていた。
硝子箱(がらすばこ)へ物を入れたように中の品物が見え透(す)かねばならん。しかるに我邦の文章とか文学と言われるものは鉄板を累(かさ)ね張(ば)りにしてある。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
そして、そのとき、美(うつく)しい店(みせ)の前(まえ)に立(た)って、ガラス張(ば)りの中(なか)に幾(いく)つも並(なら)んでいるオルガンや、ピアノや、マンドリンなどを見(み)ましたとき
赤い船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
古藤はしゃちこ張(ば)った軍隊式の立礼をして、さくさくと砂利(じゃり)の上に靴(くつ)の音を立てながら、夕闇(ゆうやみ)の催した杉森(すぎもり)の下道のほうへと消えて行った。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「好(い)い香(にほひ)でせう」と云つて、自分の鼻(はな)を、瓣(はなびら)の傍(そば)迄持(も)つて来(き)て、ふんと嗅(か)いで見せた。代助は思はず足(あし)を真直(まつすぐ)に踏(ふ)ん張(ば)つて、身(み)を後(うしろ)の方へ反(そ)らした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
隅に、短冊(たんざく)を散らし張(ば)りにした屏風(びょうぶ)が置いてある。ふと見ると、それが、何時の間にか逆(さか)さ屏風になっているのだ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そこには、美しいくつだの、ぴかぴか光る長ぐつだのがはいった、大きなガラス張(ば)りの箱(はこ)が並んでいました。
大きい重油の燃焼炉が地下室の真中にがん張(ば)っていて、それから太い送気筒が、七、八本各部屋の床へ、蛸(たこ)の足のようにのび上っている。ちょっと怪奇な恰好である。
ウィネッカの秋 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
さりとて、今見たように、鯱(しゃち)こ張(ば)ってのみおると、あれは小胆者ぞと敵に肚を押し測(はか)られるぞ。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大家(たいか)高堂(かうだう)、手(て)が屆(とゞ)かず、從(したが)つて鼠(ねずみ)も多(おほ)ければだけれども、小(ちひ)さな借家(しやくや)で、壁(かべ)の穴(あな)に氣(き)をつけて、障子(しやうじ)の切(き)り張(ば)りさへして置(お)けば、化(ば)けるほどでない鼠(ねずみ)なら、むざとは入(はひ)らぬ。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
八畳の書斎の中央に、一閑(かん)張(ば)りの机を前にして父は端然と坐つてゐた。そして其眼はぢつと前方遠くを見凝(みつ)めてゐた。机の上には一冊の和本と、綴ぢた稿本(かうほん)とが載せてあつた。
父の死 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
いずれ川上の方の事だから高いには相違(そうい)ないが、恐(おそ)ろしい高い山々が、余り高くって天に閊(つか)えそうだからわざと首を縮(すく)めているというような恰好(かっこう)をして、がん張(ば)っている状態(ありさま)は
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
飽(あ)くまで木造(もくざう)一點(てん)張(ば)りで進(すゝ)んだか、これは畢竟(ひつけう)地震(ぢしん)を考慮(かうりよ)したゝめではなからうか
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
私は元来囲碁(いご)を知らぬ、少しも分らないけれども、塾中の書生仲間に囲碁が始まると、ジャ/″\張(ば)り出(で)て巧者(こうしゃ)なことを云(いっ)て、ヤア黒のその手は間違いだ、夫(そ)れ又やられたではないか
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
更にその両足を頤(あご)にこすり付くまでに引きあげて、肩から背にかけて縛りつけるのであるから、彼は文字通りに海老のような形になって、押潰されたように平(へ)た張(ば)り伏しているのである。
拷問の話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そして、店(みせ)に帰(かえ)ってから、そのさかずきを他(た)の細(こま)かな美術品(びじゅつひん)といっしょに、ガラス張(ば)りのたなの中(なか)に収(おさ)めて陳列(ちんれつ)しました。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「君、薄(すすき)の根へ足をかけて持ち応(こた)えていたまえ。——あんまり前の方で蹈(ふ)ん張(ば)ると、崖(がけ)が崩(くず)れて、足が滑べるよ」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なんでもわたしがさるをけしかけているように思ったとみえて、いきなりなわ張(ば)りの中へとびこんで来た。
謝罪って謝罪って謝罪り貫(ぬ)いたらお情深い親方様が、まさかにいつまで怒ってばかりも居られまい、一時の料簡違いは堪忍(かに)して下さることもあろう、分別しかえて意地張(ば)らずに
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その連でもないのに、坊主は腕まくりをして、陽木棍で膝を敲いて出(で)しゃ張(ば)った。
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「伝二郎さんてましてね、田之助(たゆう)張(ば)りの、女の子にちやほやされる——。」
ジョリクールは事件(じけん)の重大なことを理解(りかい)しなかった。そこでおもしろ半分なわ張(ば)りの中で巡査(じゅんさ)とならんで歩きながら、その一挙一動(いっきょいちどう)を身ぶりおかしくまねていた。
はたして、乞食(こじき)の親子(おやこ)は、ぶなの木(き)の根(ね)もとで火(ひ)を焚(た)きました。青(あお)い煙(けむり)が、幹(みき)を伝(つた)い、小枝(こえだ)を分(わ)けて、冴(さ)えた、よくふき清(きよ)めたガラス張(ば)りのような空(そら)へ上(のぼ)ってゆきました。
縛られたあひる (新字新仮名) / 小川未明(著)
ウガチとかコガシとか申す者は空抜(うろぬき)にしてと断りながら、青内寺(せいないじ)煙草(たばこ)二三服馬士(まご)張(ば)りの煙管(きせる)にてスパリ/\と長閑(のどか)に吸い無遠慮に榾(ほだ)さし焼(く)べて舞い立つ灰の雪袴(ゆきんばかま)に落ち来(きた)るをぽんと擲(はた)きつ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
美(うつく)しいガラス張(ば)りの店頭(みせさき)に
おもちゃ店 (新字新仮名) / 小川未明(著)