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干物
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ひもの
ふりがな文庫
“
干物
(
ひもの
)” の例文
「人間の
干物
(
ひもの
)
ですよ、六十三ださうで。——あつしも、もう三十何年經つと、あんなになるかと思ふとこの世が情けなくなりますよ」
銭形平次捕物控:107 梅吉殺し
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼女は自分が酒と
肴
(
さかな
)
を買いにいった。一と二〇で酒を一升買い、〇・三〇で
干物
(
ひもの
)
とうぐいす豆と
佃煮
(
つくだに
)
を買い、残りはかあさんに渡した。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
室生犀星
(
むろふさいせい
)
君はこれは——今僕の前に坐つてゐるから、甚だ
相済
(
あひす
)
まない気がするけれども——
干物
(
ひもの
)
にして食ふより仕方がない。
食物として
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ベッドの脇には
干物
(
ひもの
)
のように
痩
(
や
)
せた男が立っていた。彼は
兀鷹
(
はげたか
)
のように眼をぎょろつかせて、病人の不思議な感じのする顔をじっと睨んでいた。
卑怯な毒殺
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
母も一緒に、
干物
(
ひもの
)
の匂いを立てながら、つつましく食事をし初めた。牛乳だけを飲んだ父は、散歩代りに庭を歩いていた。
童貞
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
▼ もっと見る
子供たちへの土産の海産物は、
干物
(
ひもの
)
だけ。私は、リュックサックを背負って友人の
許
(
もと
)
を辞し、れいの喫茶店に立ち寄り
人間失格
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
燈下に濛々として人の顔さへ見えわかぬが中に、諸君我輩の叫声に耳を
掩
(
おお
)
ひつつ
干物
(
ひもの
)
の如き塩焼の
肴
(
さかな
)
打眺めて坐する浮世の義理また
辛
(
つら
)
しといふべし。
桑中喜語
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
梅の小枝に妙な物がと目をとめて見ると、
蛙
(
かわず
)
の
干物
(
ひもの
)
が突刺してある。此はイタズラ小僧の
百舌鳥
(
もず
)
めが食料に
干
(
ほ
)
して
置
(
お
)
いて其まゝ置き忘れたのである。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
崖下
(
がけした
)
にある一構えの
第宅
(
やしき
)
は郷士の
住処
(
すみか
)
と見え、よほど古びてはいるが、骨太く
粧飾
(
かざり
)
少く、夕顔の
干物
(
ひもの
)
を
衣物
(
きもの
)
とした
小柴垣
(
こしばがき
)
がその
周囲
(
まわり
)
を取り巻いている。
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
と
蝮蛇屋
(
まむしや
)
が
蜷局
(
とぐろ
)
を巻いている。すべて大阪では廉くて利きが早いとなれば蛇や鰻の
干物
(
ひもの
)
が斯ういう霊場でも売れる。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
干物
(
ひもの
)
のおいしいのを持って来て欲しいとか、この間の
鮭
(
しゃけ
)
は
不味
(
まず
)
かったとか、そういうようなことを言っている。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
三上於菟吉の『
崇妻道歌
(
すうさいだうか
)
』によれば、彼も
細君操縱
(
さいくんさうじう
)
については
干物
(
ひもの
)
にしてたべるところまで
悟入
(
ごにふ
)
してゐる。
こんな二人
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
是公は書斎の大きな
椅子
(
いす
)
の上に
胡坐
(
あぐら
)
をかいて、
河豚
(
ふぐ
)
の
干物
(
ひもの
)
を
噛
(
かじ
)
って酒を
呑
(
の
)
んでいる。どうして、あんな堅いものが胃に収容できるかと思うと、実に恐ろしくなる。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「そうだ、徳川が亡びりゃ、八万騎の旗本の知行が上ったりだ、そうすると、八万枚の
干物
(
ひもの
)
が出来らあ」
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
種々
(
くさ/″\
)
の買物のほかに奈美女の好む甘き菓子、珍らしき
干物
(
ひもの
)
、又は
何処
(
いづこ
)
より手に入れ来るやらむ
和蘭
(
オランダ
)
の古酒なんどを汗みづくとなりて背負ひ帰るなんど、その
忠実々々
(
まめ/\
)
しさ。
白くれない
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
マーキュ
鮞
(
はららご
)
を
拔
(
ぬ
)
かれた
鯡
(
にしん
)
の
干物
(
ひもの
)
といふ
面附
(
つらつき
)
ぢゃ。おゝ、にしは、にしは、てもまア
憫然
(
あさま
)
しい
魚類
(
ぎょるゐ
)
とはなられたな! こりゃ
最早
(
もう
)
ペトラークが
得意
(
とくい
)
の
戀歌
(
こひか
)
をお
手
(
て
)
の
物
(
もの
)
ともござらう。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
「悪かったわね。知事さんを
情夫
(
いろ
)
に持ってはいけないなんて
掟
(
おきて
)
は女芸人の仲間にはござんせんのよ。大きなお世話じゃないか。猫の
干物
(
ひもの
)
みたいな婆のクセにして、お
妬
(
や
)
きでないよ」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
自分のようなものにはこの劇中でいちばんかわいそうなは
干物
(
ひもの
)
になった心臓の持ち主すなわちにんじんのおかあさんであり、いちばん幸福なのは動物にまでも同情されるにんじんである。
映画雑感(Ⅲ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
にこにこ笑いながら、
縮緬雑魚
(
ちりめんざこ
)
と、
鰈
(
かれい
)
の
干物
(
ひもの
)
と、とろろ
昆布
(
こんぶ
)
の
味噌汁
(
みそしる
)
とで
膳
(
ぜん
)
を出した、物の
言振
(
いいぶり
)
取成
(
とりなし
)
なんど、いかにも、
上人
(
しょうにん
)
とは
別懇
(
べっこん
)
の間と見えて、
連
(
つれ
)
の私の
居心
(
いごころ
)
のいいといったらない。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
薬味の中で
是非
(
ぜひ
)
要
(
い
)
るものは
先刻
(
さっき
)
申した甘漬のチャツネーと西洋の酢漬のピックルとココナツを
炒
(
い
)
ったものと、ボンベタークという西洋の魚か
鰺
(
あじ
)
の
干物
(
ひもの
)
のような魚類をむしって小さくしたものか
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
与一は骨の無い方の
鰺
(
あじ
)
の
干物
(
ひもの
)
を口から
離
(
はな
)
してこういった。
清貧の書
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
夕食に何ぞよい
干物
(
ひもの
)
御無心出来ませぬかな
旗本退屈男:08 第八話 日光に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
魚銀からは塩引の
鮭
(
さけ
)
を二尾と
干物
(
ひもの
)
を十枚、干物は風に当てれば十日は大丈夫だって云いました、それから八百久では青物のほかに漬菜と
沢庵
(
たくあん
)
を一と樽ずつに
あだこ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
八月には、僕は
房総
(
ぼうそう
)
のほうの海岸で
凡
(
およ
)
そ二月をすごした。九月のおわりまでいたのである。帰ってすぐその日のひるすぎ、僕は
土産
(
みやげ
)
の
鰈
(
かれい
)
の
干物
(
ひもの
)
を少しばかり持って青扇を訪れた。
彼は昔の彼ならず
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
大寒
(
だいかん
)
の
盛
(
さかり
)
にこの貸二階の半分西を向いた窓に日がさせば、そろそろ近所の家から
鮭
(
さけ
)
か
干物
(
ひもの
)
を焼く
匂
(
におい
)
のして来る
時分
(
じぶん
)
だという事は、丁度去年の今時分初めてここの二階を借りた当時
雪解
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
莞爾々々
(
にこ/\
)
笑
(
わら
)
ひながら、
縮緬雑魚
(
ちりめんざこ
)
と、
鰈
(
かれい
)
の
干物
(
ひもの
)
と、とろろ
昆布
(
こぶ
)
の
味噌汁
(
みそしる
)
とで
膳
(
ぜん
)
を
出
(
だ
)
した、
物
(
もの
)
の
言振
(
いひぶり
)
取做
(
とりなし
)
なんど、
如何
(
いか
)
にも、
上人
(
しやうにん
)
とは
別懇
(
べつこん
)
の
間
(
あひだ
)
と
見
(
み
)
えて、
連
(
つれ
)
の
私
(
わたし
)
の
居心
(
ゐごゝろ
)
の
可
(
よ
)
さと
謂
(
い
)
つたらない。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「ナニ、今度はたしかだよ。どうも金蔵さん、女房が
干物
(
ひもの
)
になる騒ぎだからな」
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
晩飯の時、叔母は叔父の好きな取っておきの
干物
(
ひもの
)
などを
炙
(
あぶ
)
り、酒もいいほど
銚子
(
ちょうし
)
に移して
銅壺
(
どうこ
)
に
浸
(
つ
)
けて、自身
寝室
(
ねま
)
へ行って、二度も
枕頭
(
まくらもと
)
で声をかけて見たが、叔父は起きても来なかった。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「ま、
執
(
しつ
)
こいね、この猫の
干物
(
ひもの
)
は。いいかげんにくたばっておしまいよ」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
はてさて
迷惑
(
めいわく
)
な、こりや
目
(
め
)
の
前
(
まい
)
で
黄色蛇
(
あおだいしやう
)
の
旨煮
(
うまに
)
か、
腹籠
(
はらごもり
)
の
猿
(
さる
)
の
蒸焼
(
むしやき
)
か、
災難
(
さいなん
)
が
軽
(
かる
)
うても、
赤蛙
(
あかゞへる
)
の
干物
(
ひもの
)
を
大口
(
おほぐち
)
にしやぶるであらうと、
潜
(
そツ
)
と
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
ると、
片手
(
かたて
)
に
椀
(
わん
)
を
持
(
も
)
ちながら
掴出
(
つかみだ
)
したのは
老沢庵
(
ひねたくあん
)
。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
木戸の外でも猫の
干物
(
ひもの
)
と
女狐
(
めぎつね
)
とが
掴
(
つか
)
み合いの一ト幕の事
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
はてさて
迷惑
(
めいわく
)
な、こりゃ目の前で
黄色蛇
(
あおだいしょう
)
の
旨煮
(
うまに
)
か、
腹籠
(
はらごもり
)
の猿の
蒸焼
(
むしやき
)
か、災難が軽うても、
赤蛙
(
あかがえる
)
の
干物
(
ひもの
)
を大口にしゃぶるであろうと、そっと見ていると、片手に
椀
(
わん
)
を持ちながら
掴出
(
つかみだ
)
したのは
老沢庵
(
ひねたくあん
)
。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
……
其
(
そ
)
の
気
(
き
)
で
城趾
(
しろあと
)
に
根
(
ね
)
を
生
(
はや
)
いて、
天守
(
てんしゆ
)
と
根較
(
こんくら
)
べを
遣
(
や
)
らうなら、
御身
(
おみ
)
は
蘆
(
あし
)
の
中
(
なか
)
の
鉋屑
(
かんなくづ
)
、
蛙
(
かへる
)
の
干物
(
ひもの
)
と
成果
(
なりは
)
てやうぞ……
此
(
この
)
老爺
(
ぢい
)
はなか/\
術
(
て
)
がある!
蝙蝠
(
かはほり
)
を
刻
(
きざ
)
んで
飛
(
と
)
ばせ、
魚
(
うを
)
を
彫
(
ほ
)
つて
泳
(
およ
)
がせる
代
(
かはり
)
には
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
“干物”の解説
干物(ひもの)は、魚介類の身を干した乾物である。
「干物」は「乾製品」(dried product)と同義ともされるが、魚介類以外の食品については、干し肉、干し野菜、ドライフルーツといった呼称もある。本項では主に魚介類の干物について解説する。
(出典:Wikipedia)
干
常用漢字
小6
部首:⼲
3画
物
常用漢字
小3
部首:⽜
8画
“干”で始まる語句
干
干乾
干戈
干潟
干支
干瓢
干渉
干魚
干上
干鰯