けは)” の例文
この坂の中けはしさのいたく破るゝ處より、一の日輪世に出でたり——あたかもこれがをりふしガンジェより出るごとく 四九—五一
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
荒い海とけはしい山とが激しくみ合つて、その間で人間が微小にしかし賢明に生きて居る一小市街の傍を、大きな急流の川が
もと/\やまには、たかやまひくやまなめらかなやまけはしいやまとさま/″\ありますが、日本につぽんでも、どれにも、はじめは、自然しぜんしげつてゐたのです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
「いや、もう、そんなことは過ぎたことですから」と修一は言下に打消したが、冠つたまゝの黒の中折の下の、眉間みけんしわけはしく、眼の剣は無気味に鋭かつた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
一〇七為朝ためともが勇猛、為義一〇八忠政ただまさ軍配たばかり一〇九贏目かついろを見つるに、西南の風に焼討やきうちせられ、一一〇白川の宮を出でしより、一一一如意によいみねけはしきに足を破られ
圓明寺ゑんみやうじすぎげたやう赭黒あかぐろくなつた。天氣てんきには、かぜあらはれたそらずれに、しろすぢけはしくえるやまた。とし宗助そうすけ夫婦ふうふつて日毎ひごとさむはうせた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
姿ばかりは墨染にして、君が行末をけはしき山路に思ひくらべつ、溪間たにまの泉を閼伽桶あかをけに汲取りて立ち歸る瀧口入道、庵の中を見れば、維盛卿も重景も、何處に行きしか、影もなし。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
「まア、附いてこい!」ついけはしい返事をしたが、別に訂正もせずに、そのまま進んだ。
泡鳴五部作:01 発展 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
忘れたり澤を傳ひ峯に上る隨分さかしき峠なれど馬にまかせてけはしき事を知らず東もち屋村といふは峠の上にして人家四五軒あり名物の餡餅あんもちありこゝにて馬を圍爐裏ゐろりの火にかゞみし手足を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
「生意氣云ふな……」先生は再び顏に朱を注いで、けはしい聲で呶鳴りつけた。
猫又先生 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「一体お寺の本山などいふものは、山の腹か頂辺てつぺんかに建ててある。見るとけはしく落つこちさうで危い。そこになると、黄檗はあの通り平地ひらちに建つてゐるので、廓然からりと気持がいゝつたらない。」
休屋やすみややまに一かつそびえて巌山いはやま鎮座ちんざする十和田わだ神社じんじやまうで、裏岨うらそばになほかさなかさなけはしいいは爪立つまだつてのぼつたときなどは……同行どうかうした画工ゑかきさんが、しんやりも、えつつるぎも、これ延長えんちやうしたものだとおも
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
昂奮こうふんしないでおきなさいツ。ではこれから自分達じぶんたちみちが、どんなにけはしい、文字もじどほりの荊棘いばらみちだつてことが、生々なま/\しい現實げんじつとして、おぢやうさん、ほんとにあなたにわかつてゐるんですか……
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
見上げる三白眼のけはしいのは、妙にこの男の印象を惡くします。
近子はきれの長い眼をけはしくして、「んでございますツて。」
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
谷、深きこと、東百丈、西七十五丈、南北もまたけはし。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
両側はずゐぶんけはしい山だ。
楢ノ木大学士の野宿 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
有爲うゐ奧山おくやまみちけはし。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
けはし国たひらけくや。
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
われさとりわざをもて汝をこゝにみちびけり、今より汝は好む所を導者となすべし、汝けはしき路を出で狹き路をはなる 一三〇—一三二
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
まつかしはは奥ふかくしげりあひて、二一青雲あをぐも軽靡たなびく日すら小雨こさめそぼふるがごとし。二二ちごだけといふけはしきみねうしろそばだちて、千じん谷底たにそこより雲霧くもきりおひのぼれば、咫尺まのあたりをも鬱俋おぼつかなきここちせらる。
いえたれでもまをしますもりから三ばかり傍道わきみちはいりましたところ大瀧おほたきがあるのでございます、れは/\日本一にツぽんいちださうですがみちけはしうござんすので、十にん一人ひとりまゐつたものはございません。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そしてふと顏を上げると、けはしい皺を眉間みけんに寄せて上村を睨んだ。
猫又先生 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
をんなけはしいをとこ眼鏡めがねなかつめながらいふのだつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
けはし國たひらけくや。
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
請ふいづれの道のきざはしにいとちかきやを告げよ、またもしこみち一のみならずば、けはしからざるものを教へよ 四〇—四二
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
忽ちけはしく忽ちたひらかなる一條の曲路我等を導いてかのあなほとりふちなかばより多く失せし處にいたらしむ 七〇—七二
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)