もり)” の例文
おなじなら春さん春さんと好かれてもりをするほうが、どんなによいかしれません。子供に好かれるのには、どうしたらよいでしょうか。
女中訓 (新字新仮名) / 羽仁もと子(著)
郁太郎も、今ではばなれもしたし、人に預けなくても、遊びに来る子供がもりをしてくれるから、自分の仕事もよく手が廻ります。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
子守こもりがまた澤山たくさんつてた。其中そのなか年嵩としかさな、上品じやうひんなのがおもりをしてむつつばかりのむすめ着附きつけ萬端ばんたん姫樣ひいさまといはれるかく一人ひとりた。
迷子 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さてこれからどの位たち升たか、半月か一月もたつたことでしたらう、私はいもとを連れて、のぶといふもりと一処に遊びに出升た。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
先年も大阪の私の家に奉公して私のおもりをした者で、私が大阪に着た翌日、この男を連れて堂島三丁目か四丁目の処を通ると、男の云うに
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「いゝえ。あなたこそ毎日々々のおもりで、本当に大変ですわ。でもあなたがけに来て下さつたので、本当に大助かりよ。」
姉弟と新聞配達 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
「へエ、佛樣のおもりをして居りました。親方はあの通り江戸一番の元氣の良い方でしたが、心の中ではひどく淋しがりやで」
そこを去つて川上の方に行くに、林中からいた泉が流になつてそそぐところがある。そこに二人の童子が一人のもりに連れられて遊んでゐた。
イーサル川 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
……アノ一知は貧乏者の借金持ちの子で、お前とは身分が違うのを、お前のおもりと、うちの田畠の番人に雇うてあるのだよ。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ベシーはこの間生れたばかりの兒をもりしながら爐の側に掛けてをり、ロバァトとその妹とは片隅でおとなしく遊んでゐた。
それから、わたもりが年がら年じゅういったりきたりして、ひとをわたしているのに、かわりの人がさっぱりこないというのは、どうしてなんですか。
別荘もりの男から主人と思って大事がられるために、時方は宮のお座敷には遣戸やりど一重隔てたで得意にふるまっていた。
源氏物語:53 浮舟 (新字新仮名) / 紫式部(著)
鳥羽は亀千代のもりであるが、使いに来たのは、鳥羽の使っている部屋子へやごの少女で、「非常にいそぐから」と云い、手紙を置くと、すぐに帰ろうとした。
斯ういう厄介者のおもりをさせて、首尾く勤まれば遠眼鏡を買ってくれるなんていっても出来ない相談だ。泣く子と地頭にゃ勝たれないというじゃないか。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「それはそうと、いまどこかのもりが使いに来ているのです。誰か、男の人に頼まれて、お前様を迎えに来たとのことで、裏門に立って待っているので」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
村境むらざかいまで行ってしまう始末さ、わしらもく抱いてもりをしたんだが、今じゃアでかくなってハア抱く事ア出来ねい
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「——とすれば、屋敷にもしばし飼いおいて、庭掃きや亀一のもりなどさせ、はしのきいたわらべであったが」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
丁度その頃は、貧しいモアン祖母さんに引き取られて、祖母さんがパンポルの人々の家で骨折仕事をしてゐる間、シルヹストルのもりをさせられるやうになつてゐた。
ある冬の朝、下肥しもごえを汲みに大阪へ出たついでに、高津の私の生家へ立ち寄って言うのには、四つになる長女にもりをさせられぬこともないが、近所には池もあります。
アド・バルーン (新字新仮名) / 織田作之助(著)
私のうちには兄弟が沢山たくさんあったので、兵さんは毎日、私の弟や妹のもりをさせられていた。口やかましい私の母は、兵さんを随分怒鳴りつけていたのを、私は覚えている。
あまり者 (新字新仮名) / 徳永直(著)
出島へ渡るためにははしけに乗らなければならない。艀の渡しもりは奉行からつかわされている侍である。
それからたかしは日中、ほとんど一人の手で幸子さちこもりをした。そして漸くのことで牛乳をのませた。
(旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
翌十一日は母上がお見舞にゆかれ、私が家でお父さんのもりをしていた。午後三時すぎ母上おかえり。やはり時間の問題と思うとのことでした。医者も今明日が危期という。
私たち三人の外には、看護婦と女中と、馬のもりをする下男とが住んでおりましたが、いずれも気立のよい人間ばかりで、一家には、いわばあかるい太陽が照り輝いておりました。
安死術 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
この歳の暮は大御難おおごなんで、あいつも少し自棄やけになっているようですから、仕方なしにおもりをしながら午過ぎまで奥山あたりをうろついていると、或る茶屋から若い番頭が出てくる。
半七捕物帳:02 石灯籠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
赤ん坊のおもりをさせたりしていましたが、だんだんネリはなんでも働けるようになったので、とうとう三四年前にその小さな牧場のいちばん上の息子むすこと結婚したというのでした。
グスコーブドリの伝記 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
おおマダム街の鄙唄ひなうた! おおオブセルヴァトアールの通路の鄙唄! おお夢みる兵士ら! 子供をもりしながらその姿を描いて楽しむかわいいおんなら! オデオンの拱廊きょうろうがなければ
いつそ幸子女史が音楽の先生なぞめてしまつて、京都へ来て世話女房になるか、それとも安藤氏が語学の教師を思ひとゞまつて、東京へ帰つて、嬰児あかんぼもりでもするか、二つに一つ
君は僕のおもりになって、わざわざいっしょに旅行しているんじゃないか。僕は君の好意を感謝する。けれどもそういう動機から出る君の言動は、まことよそおいつわりに過ぎないと思う。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
妹のお大を臺所働だいどころばたらきやら、子供のもりやら、時偶ときたま代稽古などにも使つて、あごで追𢌞してゐたものが、今では妹の方が強くなり、町内の二三の若者が同情して、後楯うしろだてになつてくれたのを幸ひ
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
自分の赤ん坊のもりをしている女のひたいは、自分の頭に再び巻きつけた襤褸布片ぼろぎれ汚染しみで染められた。樽の側板がわいたにがつがつしがみついていた連中は、口の周囲に虎のような汚斑をつけていた。
私明日からお友達と遊ぶのをよして、朝起きてから晩寝るまできっと賢ちゃんを見るから、ちょっとも泣かせないように一生懸命おもりをするから、お父さんのとこへ連れて行くのはしてよ。
「俺はもうゆきもりはこりこりだぞ。俺が傍にいるからと思って安心されると困るよ。殊に俺のような男は信用されればされるほどお人好しになるからな。だけどもう知らないぞ、うるさい。」
御身 (新字新仮名) / 横光利一(著)
いへつてはまごもりをしたりしてどうしてもひとりはなれたやうつて各自てんで暢氣のんきにさうして放埓はうらつなことをうてさわぐので念佛寮ねんぶつれうたゞ愉快ゆくわい場所ばしよであつた。彼岸ひがんけてはこと毎日まいにち愉快ゆくわいであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
つになる子のもりをしぬ。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
もりのおさととおくに
子もりうた (新字新仮名) / 小川未明(著)
望楼もりリンケウス
「だって、乙松は殺された様子もなく、肝腎の親父おやじが呑んでばかりいるようじゃ、この仕事はお北坊のおもりにしかならないよ、俺は御免を蒙ろう」
ここでもわたもりが、おまえはどういうしょくをこころえているか、なにを知っているか、と、福の子にたずねました。
二人の子供が申し合わせたように泣き出したものですから、二人のもりは、あわててそれをなだめにかかりました。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「……ナ……高がもりの云う事を聞いて、云いがかりをつけるよりも、その方が洒落しゃれとらせんかい」
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
何方の坊っちゃんが好い器量かという議論がもりもりの間に起ったらしい。似たものが二つ並べば、出来の善し悪しが問題になる。僕の守は無論僕の方に力瘤を入れて
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
見たり、おもりをしたりしますわ。さうすれや寂しいことはないんだから‥‥
また、北上きたかみ川の朗妙寺ろうみょうじふちわたもりが、ある日わたしに言いました。
ざしき童子のはなし (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
若様のおもりをしながら皆様がお稽古を遊ばすのをお側で拝見致していましても、型ぐらいは覚えられましょうと存じましたに、若様はいらっしゃらず、お嬢様には柳島の御別荘にいらっしゃいまして
「ここのお神さんはおひろちゃんですよ。私は世話焼きに来ているだけなんです。いつまでこんなこともしていられないんです。働けるうちに神戸へ行って子供のもりでもしてやらなければ」そして彼女はよごれた肌襦袢はだじゅばん
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
『杉野、その子を寺へ抱いて来て、もりしてやれ』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
王さまは、じぶんのおかしたつみばつとして、それからはずうっとわたもりをしなければなりませんでした。
この笈物おいぶつのおもりをしながら、どこかそこらで、ゆっくり休ませていただきたいんでございます、皆さんがむりやりに、わたしを馬に乗せて、踊っておいでなさろうとするが
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「君なんかも、このはチョクチョク用いるだろう。ハッハッハハ、隠すな隠すな。何? まだ女房がえ、情ねえ男だな、女房が無きゃア女給でももりっ娘でも剥いで来るがいい——」
踊る美人像 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)