はし)” の例文
と鸚鵡のかたへ首さしいだしていうに、姉君憎むちょう鳥は、まがりたるはしを開きて、「さならずや、さならずや」と繰り返しぬ。
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
南の枝にも梢にも、残る葉はなくて、黄葉こうようは唯北方に密集して居る。其裸になった梢に、はしの大きな痩鴉やせがらすが一羽とまって居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
この影がさしたら、四ツ目あたりに咲き掛けた紅白の牡丹ぼたんも曇ろう。……はしを鳴らして、ひらりひらりと縦横無尽に踊る。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
兵粮方ひょうろうかたの親族に死なれ、それからやむを得ず再び玄関をひらくと、祝融しゅくゆうの神に憎まれて全焼まるやけと相成ったじゃ、それからというものはる事なす事いすかはし
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
全く死滅しないまでも山椒魚さんしょううおかもはしのような珍奇な存在としてかすかな生存をつづけるに過ぎないであろう。
俳句の型式とその進化 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
往きにへその近所が氷りつきそうであった事を思い出しつつ、今か今かと冷たい足を運んで行ったが、いすかはしい方へばかり、食い違って、行けば行くほど、水が浅くなる。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ひもじきかさらばめよと、一つに牛の盛れば、子鴉はみぎりより来て、犬の子は左より来て、はしと口つつき合せて、つつき嘗め、啄き嘗めつす。また、そねみ、惜み、にくまず。
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ただ片恋の方向が、まず医者から令嬢へ、やがて令嬢から医者へと、イスカのはしになっているだけで、最後に病身になった令嬢が母と二人で静養に出かけるところも同工異曲といえる。
つるはし、手袋「かてえなあ」傍に、郵便局電信配達だまりあり、赤い自転車、若いもの、一人が犬と遊んで居る。つとのって出かける、五分位に一人二人出かける。「おい百××番地知らないか」
「さっそくの迎え、うれしいぞ。……笑うべし、かねがねのこまやかなるはかりも、いすかのはしと食いちがい、かくの如く、俄か落人おちゅうどとはなって、昨夜、ひそかに大内を脱け出てまいった。たのむぞよ」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うつばりに黄なるはし五つ鳴く雛に痩せて出で入る親燕おやつばめあはれ
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
うとまるるわれになつける文鳥のはしのいたづら笑みていとしむ
遺愛集:02 遺愛集 (新字新仮名) / 島秋人(著)
はしと嘴く動きつゝま黒の鸚鵡の舌はまるまりて見ゆ
河馬 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
煙管きせるはしをつゝかれて、心無こゝろなしには嘲けられ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
山雀のはしをたたきし板びさし
寒林小唱 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
かもはしよりたら/\と春のどろ
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
第十二回 いすかのはし
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
と鸚鵡のかたへこうべさしいだしていふに、姉君憎むてふ鳥は、まがりたるはしを開きて、「さならずや、さならずや」と繰返しぬ。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ツツとざるの目へはしを入れたり、さっと引いて横に飛んだり、飛びながら上へ舞立まいたったり。そのたびに、笊の中の仔雀のあこがれようと言ったらない。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ひもじきかさらばせよと、一つに牛の盛れば、子鴉はみぎりより来て、犬の子は左よりきて、はしと口つつき合せて、つつめ、啄き嘗めつす。また、そねみ、惜み、にくまず。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
淡緑色の大きな眼球に蚊のはし程のほそく鋭い而してじいと人を見詰むるひとみを点じたすごい眼、黒く鋭い口嘴くちばし、Vice の様な其両手、いて見れば黒い虫の様にうごめく腸を満たしたふくれ腹
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
是非なく、今晩二人の不義者を殺し、其の場を去らず切腹なし、殿様の難義をお救い申そうと思うた事はいすかはし喰違くいちがい、とんでもない間違をいたしました、主人の為にあだを討とうと思ったに
くちうつしにいひ食む文鳥のはしあかく与ふる都度つどに啼き乞ひてかな
遺愛集:02 遺愛集 (新字新仮名) / 島秋人(著)
煙管きせるはしをつゝかれて、心無こころなしには嘲けられ
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
長いはしのさきまでこもっている。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
はしふりさけし
艸千里 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
う、はしを伏せ、はねをすぼめ、あとじさりに、目を据ゑつゝ、あはれに悄気しよげて、ホ、と寂しく、ホと弱く、ポポーと真昼の夢にうなされたやうに鳴く。
玉川の草 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
└鶴と云へどひもじきものか松ヶ根のこごれる苔にはしつけにけり (改作)
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
面会の母を待ち佗び文鳥をに呼びはしのいたづらに笑む
遺愛集:02 遺愛集 (新字新仮名) / 島秋人(著)
はしをとぎゐし
短歌集 日まはり (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
総じて寝ていても口を結んだ奴は、ふたをした貝だと思え。うかつにはしを入れると最後、大事な舌を挟まれる。やがて意地汚いじきたなの野良犬が来てめよう。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はしほそき鶴の一羽は見上げたり雪の気霧けきらふ空の暗みを (二三六頁)
文庫版『雀の卵』覚書 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
此奴こいつら、大地震の時は弱ったぞ——ついばんで、はしで、仔の口へ、押込おしこ揉込もみこむようにするのが、およたまらないと言った形で、頬摺ほおずりをするように見える。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
┌白妙の丹頂の鶴やるせなく地の淡雪にはしつけにけり (原作)
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
けむりにかいふいてぐるにあらず、落着おちつまして、ひとさむと、するどはしらすのである。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ニツケルの産科さんくわ器械きかいのごときはししてひか
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
道理こそ、人の目と、そのはし打撞ぶつかりそうなのに驚きもしない、と見るうちに、ふまえてとまった小さな脚がひょいと片脚、幾度も下へ離れてすべりかかると、その時はビクリと居直いなおる。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あかはしある小鳥らのゆるきさへづり。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
二の烏 いや、まだうは成るまいか。此の歯をくひしばつたところを見い。総じて寝て居ても口を結んだ奴は、ふたをした貝だと思へ。うかつにはしを入れると最後、大事な舌を挟まれる。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
黄の、はしの、そよろ化粧毛けはひげ
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
この一雫ひとしずくが身に染みたら、荒鷲あらわしはしに貫かれぬお雪の五体も裂けるであろう。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はしにまたあかき
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
つれ/″\にはんで、つばさでもし、ひざきもし、ほゝもあて、よるふすまふところひらいて、あたゝかたま乳房ちぶさあひだはしかせて、すや/\とることさへあつたが、一夜あるよすさまじき寒威かんいおぼえた。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
うをよりけものよりむしとりはしによくる、すゞめか、山雀やまがらか、さうでもない。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
コトコトとはしを鳴らし、短夜みじかよの明けた広縁には、ぞろぞろおびただしい、かば色の黒いのと、松虫鈴虫のようなのが、うようよして、ざっと障子へ駆上かけあがって消えましたが、西瓜のたねったんですって。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見よ、見よ、鴉がおおいかかって、人の目、かしらに、はしを鳴らすを。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うおより獣よりむしろ鳥のはしによく肖ている。
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)