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儘
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まま
ふりがな文庫
“
儘
(
まま
)” の例文
昔の
儘
(
まま
)
に現在までも続いていると云う住家は
殆
(
ほとん
)
んどなく、極めて
稀
(
まれ
)
に昔の美しさのある物を発見するのが
頗
(
すこぶ
)
る難しいことなのである。
現代語訳 方丈記
(新字新仮名)
/
鴨長明
(著)
何よりも私は世間の者より狂人扱いにされる事が
堪
(
たま
)
らなく苦痛なのでありまして、此の
儘
(
まま
)
此の苦痛が果し無く続くものであるならば
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
ところが一五九一年に父が
歿
(
な
)
くなったので、その家族を扶養しなくてはならなくなり、その
儘
(
まま
)
では過ごすことができなくなったので
ガリレオ・ガリレイ
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
すると、月は物思い顔にじっと自分を見ていたが、その
儘
(
まま
)
黒い雲のうしろに隠れてしまったことを、海豹は思い出したのであります。
月と海豹
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
河に下りては山の鼻に登って、二、三度同じような事を繰り返すと、道は河の中に通じた
儘
(
まま
)
両岸をいくら物色しても更に見当らない。
奥秩父の山旅日記
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
▼ もっと見る
六対十の比率に安心していたのも
空
(
むな
)
しく、今自分達が出て奮戦しないと、この
儘
(
まま
)
懐しい故郷へ帰れないことになるらしいのであった。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
まさか市長に云う訳にも行かず、その
儘
(
まま
)
帰って来るのだが、買収問題さえなかったら、いっそ投げ出してしまいたい位なのである。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
彼女はしかしその間、目をつぶった
儘
(
まま
)
、何か自身の考えに沈んでいた。ときどき
痙攣
(
けいれん
)
のようなものが彼女の
痩
(
や
)
せた
頸
(
くび
)
の上を走っていた。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
夫の腹の中いいましたら、あないに
我
(
わ
)
が
儘
(
まま
)
やった私がまるで生れ変ったみたいに態度改めましたのんが、どない
嬉
(
うれ
)
しいか分れしません。
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
これをこの
儘
(
まま
)
にして置ては
迚
(
とて
)
も始末が付かぬから、何でも片付けなければならぬ。
如何
(
どう
)
しよう。
外
(
ほか
)
に仕方がない。何でも売るのだ。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
側
(
そば
)
には
長大
(
ちやうだい
)
な
向日葵
(
ひまわり
)
が
寧
(
むし
)
ろ
毒々
(
どく/\
)
しい
程
(
ほど
)
一
杯
(
ぱい
)
に
開
(
ひら
)
いて
周圍
(
しうゐ
)
に
誇
(
ほこ
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
草夾竹桃
(
くさけふちくたう
)
の
花
(
はな
)
がもさ/\と
茂
(
しげ
)
つた
儘
(
まま
)
向日葵
(
ひまわり
)
の
側
(
そば
)
に
列
(
れつ
)
をなして
居
(
ゐ
)
る
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
「此間中から、お礼を申上げよう申上げようと思いながら、ついその
儘
(
まま
)
になっていたのです。此間はどうも有難うございました。」
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
彼は、舞台も生活も、昔の
儘
(
まま
)
の役者型で押して行った。明治十七・八年頃から東京を去る二十年頃迄が、源之助の一番盛りの時であった。
役者の一生
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
がそう思う様に目的は達せられんので晩からかけて翌日の午後の三時頃迄は村中浜へ総出の
儘
(
まま
)
風の中、雨の中を立ち尽して居た。
高浜虚子著『鶏頭』序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
お藤は喪心したように、人形よりも無力に、さるるが
儘
(
まま
)
に立って居りました、か弱い娘の力で、抵抗したところで
何
(
ど
)
うなるものでしょう。
礫心中
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
昨夜お召しに因って王君の前に出ますと、その
顔容
(
かおかたち
)
が二十七年前に殺したかの少年をその
儘
(
まま
)
であるので、わたくしも実におどろきました。
中国怪奇小説集:06 宣室志(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
儘
(
まま
)
になるなら、自分は
退
(
ひ
)
いてもよいから、平田氏を三十三間堂へ立たせてみたいが、実は手前も、
明日
(
あした
)
の晩、
頼母子講
(
たのもしこう
)
の金を
競
(
せ
)
り落して
死んだ千鳥
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
渡島國凾舘住吉町
(
をしまのくにはこたてすみよしてう
)
、
後志
(
しりべし
)
國余市川村、
石狩
(
いしかり
)
國
空知監獄署用地
(
ソラチかんごくしようようち
)
、
日高
(
ひだか
)
國
捫別舊會所
(
もんべつきうくわいじよ
)
の
裏
(
うら
)
等よりは
石鏃
(
せきぞく
)
を入れたる
儘
(
まま
)
の
土器
(
どき
)
を
掘出
(
ほりだ
)
せし事有り。
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
「興に依りて之を作る」と左注にあるが、興の
儘
(
まま
)
に、
理窟
(
りくつ
)
で運ばずに家持流の語気で運んだのはこの歌をして一層なつかしく感ぜしめる。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
おまけに
輫
(
はこ
)
へはひる所だから、片手に袴をつかんだ
儘
(
まま
)
、心もち腰をかがめ加減にした、——その又恰好もたまらなかつたつけ。
好色
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その一人は、近国の
門閥家
(
もんばつか
)
で、地方的に名望権威があって、我が
儘
(
まま
)
の出来る
旦那
(
だんな
)
方。人に、鳥博士と
称
(
とな
)
えられる、聞こえた鳥類の研究家で。
神鷺之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
自然なる希臘人の眼には現在の真意がその
儘
(
まま
)
に現じたのである。今日の美術、宗教、哲学、みなこの真意を現わさんと努めているのである。
善の研究
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
豊かなデリケエトな唇は、不思議に末子でもあり清でもある、小さな、細い〔時にきらきらと
潤
(
うる
)
んで光る〕
柔
(
やさ
)
しい眼は清にその
儘
(
まま
)
であった。
青べか日記:――吾が生活 し・さ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
私は父の手紙を受け取って初めて、楽しい夢幻の世界から、また現実の
儘
(
まま
)
ならぬ世界へ、引き戻されたような気になりました。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
妾は立止った
儘
(
まま
)
ジッと目の間から断崖の上を見詰めていました。——すると、突然二人は争い始めたので御座居ます。そして……それから……
花束の虫
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
乏しい灯影の下にずぶりっと浸りながら、三人は唯だてんでに微笑を含んだまま、殆んどだんまりの
儘
(
まま
)
の永い時間を過した。
みなかみ紀行
(新字新仮名)
/
若山牧水
(著)
その
儘
(
まま
)
に居れば熱く重苦しい負担を覚え、振り放そうとすれば、あとに世にも残酷な焼跡を残しそうで、思い切れなかった。
宝永噴火
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
軍人の三人
連
(
づれ
)
が改札口から出て、八が立つてゐる方へ、高声に話しながら来る。外には
誰
(
たれ
)
も降りなかつたと見えて、電車はその
儘
(
まま
)
出てしまつた。
金貨
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
只
(
ただ
)
ごうっと吹く風の音、ばらばらっと板屋を打つ雨の音に
許
(
ばか
)
り神経は
昂進
(
たかぶ
)
るのである。新聞も読掛けてよした。雑誌も読掛けた
儘
(
まま
)
投げてやった。
大雨の前日
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
「武士たる者に、けがらわしい。見れば貴様は、河原者の供ではないか。
身体
(
からだ
)
に触れられて、その
儘
(
まま
)
では措けぬ。
不愍
(
ふびん
)
ながら、手打ちにするぞ」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
こうして地面と人間とが生きて見せびらかしている間は、いかに絶滅論者でも、自分の手で死なない限り、死ぬことさえが
儘
(
まま
)
にはなりますまい。
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
頭には金冠をつけた
儘
(
まま
)
で、ながい髪を金の輪で束ね、白衣の上に着ていた不思議な彫刻ある鎧の胸当の両側から雪のように白い腕を垂らしていた。
髪あかきダフウト
(新字新仮名)
/
フィオナ・マクラウド
(著)
後妻はいっそ毒殺してしまおうかなどとも申しましたが、何だか、後の祟りがおそろしいように思われたのでその
儘
(
まま
)
毒殺を決行せずに過ぎました。
猫と村正
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
「失礼」と云って席を換えようとすると、その客は「イヤ、どうかその
儘
(
まま
)
。僕も丁度相手がほしくっていた所ですから」
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
父親は腕を伸ばし棒を廻しながら舞い、息子は地に
蹲
(
かが
)
まり、其の
儘
(
まま
)
何ともいえない
恰好
(
かっこう
)
で飛び跳ね、此の踊の画く円は次第に大きくなって行った。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
翌朝
(
よくちょう
)
になって、家人一同が、昨夜の出来事を
談
(
はな
)
して
如何
(
いか
)
にも奇妙だといっていたが、多分
門違
(
かどちがえ
)
でもあったろうくらいにしてその
儘
(
まま
)
に過ぎてしまった。
感応
(新字新仮名)
/
岩村透
(著)
いま妻のベッドの
脇
(
わき
)
には、近所の細君が二人づれで見舞に来ていた。テーブルの上に菊の花が乱れた
儘
(
まま
)
になっていた。
秋日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
オヽ
道理
(
もっとも
)
じゃと抱き寄すれば
其
(
その
)
儘
(
まま
)
すや/\と
睡
(
ねむ
)
るいじらしさ、アヽ死なれぬ身の
疾病
(
やまい
)
、
是
(
これ
)
ほどなさけなき者あろうか。
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
この様なる所にて犬畜生同様名も知れぬ
屍
(
かばね
)
を
曝
(
さら
)
すこと如何にも口惜しく候
儘
(
まま
)
、息のあるうちに月の光を頼りに一筆書残し申候、右に
認
(
したた
)
めし條々実証也
平賀源内捕物帳:長崎ものがたり
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
ネネは、
感極
(
かんきわ
)
まったように、手を堅く握りしめて胸のところに合せた
儘
(
まま
)
、眉一つ動かさぬ春日の横顔を見守っていた。
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
ああ浮世は
愁
(
つ
)
らいものだね、何事も
明
(
あけ
)
すけに言ふて
除
(
の
)
ける事が出来ぬからとて、お倉はつくづく
儘
(
まま
)
ならぬを
傷
(
いた
)
みぬ。
うつせみ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
勝子は
婉曲
(
えんきょく
)
に意地悪されているのだな。——そう思うのには、一つは勝子が
我
(
わ
)
が
儘
(
まま
)
で、よその子と遊ぶのにも決していい子にならないからでもあった。
城のある町にて
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
事は
甚
(
はなは
)
だ簡単である。旦那の留守に以前のお客を
引摺込
(
ひきずりこ
)
んだのだから、この
儘
(
まま
)
暇をやって仕舞えばよい。それで
向
(
むこう
)
も、何一ツ苦情を云うべき
筈
(
はず
)
はない。
夏すがた
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
よし、堅気で辛抱したとて、喜んでくれる人でもあることか裸一貫たった一人じゃござんせんか。ハハハハ。
儘
(
まま
)
よ。
瞼の母
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
その胸の
辺
(
あたり
)
を、
一突
(
ひとつき
)
強く
貫
(
つ
)
くと、女はキャッと
一声
(
いっせい
)
叫ぶと、その
儘
(
まま
)
何処
(
どこ
)
とも知らず
駈出
(
かけだ
)
して姿が見えなくなった。
月夜峠
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
四十四 どうかこの
儘
(
まま
)
に太陽の表面を通過してくれよ、金星や水星が去る様に、暫くにして立ち去ってくれとこれも少しの間だけれど人々が心に祈った。
暗黒星
(新字新仮名)
/
シモン・ニューコム
(著)
わたくしは
忝
(
かたじ
)
けなさと心づよさに、お手をじっと握りしめた
儘
(
まま
)
、しばしは物も申せなかったことでございました。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
先生の平生
甚
(
はなは
)
だ多忙にして執筆の閑を得ずその
儘
(
まま
)
に経過したりしに、一昨年の秋、
或
(
あ
)
る外国人の
需
(
もとめ
)
に応じて維新前後の実歴談を述べたる折、
風
(
ふ
)
と思い立ち
福翁自伝:01 〔慶應義塾の社中にては〕
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
お母さんは、病人のくせに、とても口が達者で、それにわが
儘
(
まま
)
で、看護婦をやとっても、すぐに追いやってしまうのだ。姉さんでなければ、いけないのだ。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
もし西郷が言論をもって九州を風靡して立ったらおそらく天下は意の
儘
(
まま
)
になっていたろう、貴公そう思わんか
風蕭々
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
儘
漢検準1級
部首:⼈
16画
“儘”を含む語句
其儘
我儘
此儘
自儘
氣儘
気儘
我儘者
我儘娘
我儘三昧
吾儘
気随気儘
吾儘者
気儘頭巾
勝手気儘
力儘
我儘放埒
我儘育
自由自儘
気儘気随
氣儘少女
...