うかが)” の例文
そなたには神様かみさまうかがうこともちゃんとおしえてあるから、大概たいがいこと自分じぶんちかららねばならぬぞ……。』そうわれるのでございます。
おかみさんも、仲々の働き者らしく、いつも帳場に坐って電話の注文をうかがっては、てきぱき小僧さんたちに用事を言いつけて居ります。
誰も知らぬ (新字新仮名) / 太宰治(著)
「人の悪いのは貴女あなたでしょう。わたしは何もことばとがめなんぞした覚えはない。心持が悪いとおっしゃるからおっしゃる通りにうかがいました。」
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いかにしばしば彼は動きのとれぬ状態にあることか! 「あえておうかがいしてよろしければ、身動きがとれぬとはどういう意味ですか?」
人々は黙つて平八郎の気色けしきうかがつた。平八郎も黙つて人々の顔を見た。しばらくして瀬田が「まだ米店こめみせが残つてゐましたな」と云つた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「でも、あたし、桜井さんへ上ることは止そうかしらと思いますの。実はそれについて、守さんの御意見をうかがいに参りましたのよ」
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
いえ、そうじゃないのです。』ミハイル、アウエリヤヌイチはさら云直いいなおす。『その、きみ財産ざいさん総計そうけい何位どのくらいうのをうかがうのさ。』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
しっかりうかがっておきたいと存じましただけで……それも今度はよくわかりましてございます。はい。ほんとにお艶さんはしあわせだ
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「実は、身に差し迫った難儀が出来まして、是非ともお前さまのお手で、お力がお借り申したく押しつけわざにうかがいましたが——」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
まあ、あの侯爵さまと、そんなにお親しい御間柄おあいだがらですの。そううかがえばなつかしいわ。で、侯爵さまは、このごろちっともわたしたちに顔を
暗号音盤事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「ありますとも、まあ、わたくしの家へいらっしゃい、あなたのお話をうかがいましょう、すぐそこです、人の家の二階を借りてるのです」
女の首 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
次の日曜に正三君はお父さんにつれられておやしきへうかがった。お殿様にもお目通りをゆるされて、イヨイヨお学友ときまった。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
小山の妻君しきりに感心し「お登和さん、そううかがってみるとお魚ばかりではありませんね、お野菜でも肉類でもそういう工合ぐあいがありましょうね」
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「とんでもない。どうか上座にいてください。打虎だこ武松のご高名は雷のごとしで、義に強い数々かずかずなお噂もつとうかがっております」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これはわたし自身が頭を下げるから、さうして平生あなたがかう云ふ問題には公明正大な事をよく承知してゐるから、それでうかがつて見たいと思ふ。
俳画展覧会を観て (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
陛下へいかは、このくにも、とみも、幸福こうふくも、おようではございませんのですか。」と、最後さいごに、魔法使まほうつかいはおうさまにうかがいました。
北海の白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
只今女たちをご挨拶あいさつうかがわせますから。さあどうぞ!——もし、お雪さん! お座布団ざぶとんだよ! 上等のお座布団はどこだえ!
山県有朋の靴 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
其処そこ甲比丹カピテンブルックがいって、大に歓迎しようではないかと相談を掛けると、華盛頓ワシントンうかがうた上でなければ出来ないと云う。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
おのろけをうかがうの、伺わないのと盛んにくだを巻きつつある最中に、遊魂はもはや、近江の国分の宿の蒲団をもぬけの殻にしてしまったに相違ない。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「もう一つだけ、最後にうかがいたいですが」と、マレーフスキイが口を出した。——「その女王には、夫があるのですか」
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
この快楽を菜食ならば著しく減ずると思う。殊に愉快に食べたものならば実際消化もいいのだ。これをビジテリアン諸氏はどうおかんがえであるかうかがいたい。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「さあ、こういう時に、歿くなられた先生の批判がうかがい度いものです。及川、貴様は科学者にしては冷静を欠くと、よく先生に叱られたものですが……」
扉の彼方へ (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
彼はたばこをふかしながら、耳をラジオに寄せていた。しばらくして白木が彼の顔をうかがうようにして、早口に言った。
黄色い日日 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
先様が御婦人である場合などには、やんごとなきお顔をお隠しになる扇の影からもそのお笑いがよくうかがわれます。
猫八 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
手前、そう云う噂をさるところから、ふと、耳にしましたもので、何だかひどく心配になり、早速都へ舞い戻って、あの姉小路あねこうじのお宅へうかがってみたのです。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
ありがとうござりますそのお言葉をうかがいました嬉しさは両眼を失うたぐらいにはえられませぬお師匠様や私を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ですから夫人おくさん、僕には、貴女に当時の状況をお訊ねして、相変らず鬼談的デモーニッシュな運命論をうかがう必要はないのですよ
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
と死んでプウと息の止まつた時に此心このこゝろ何処どこくかとふ……何処どこまゐりませう、これ皆様方みなさまがたうかがつたら何処どこおつしやるかりませんが、円朝ゑんてうにはわかりません。
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
幸いにその土人の酋長は非常に慈悲の深い人であったので、まあ土人のために殺されなかったけれども、その地方からどうしようかといって政府の方へうかがって来た。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
あとからうかがったことでございますが、奥様は簡単な書置きをお残しになって、自分はどこまでも潔白であるが、お疑いの晴れないのが恨めしい、というようなことを
幽霊妻 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
人の心の事がなんでもお分かりになるあなたにうかがってみたら、それが分かるかも知れません。わたくしこれまで手紙が上げたく思いましたのは、幾度だか知れません。
田舎 (新字新仮名) / マルセル・プレヴォー(著)
「いや、どうも突然うかがいまして。」と、子爵は如才なく挨拶あいさつしながら先に立って、応接室に通った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
はからざりきこの船遊びを胡乱うろんに思い、恐るべき警官が、水にひそみてその挙動をうかがい居たらんとは。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
「そんな面倒めんどうな事情なら聞かなくてもいいんですが、あなたの方から話し出したからうかがうんです」
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこで右衛門督朝忠に勅して、検非違使をしてさがし求めしめ、又延光をして満仲みつなか、義忠、春実はるざね等をして同じくうかがひ求めしむといふことが、扶桑略記の巻二十六に出てゐる。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
ここにはただ例示的に二、三の問題について彼の思想を考察し、その片鱗をうかがうに留めよう。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
「ここへ、ちょくちょく、うかがいますわ。……でも、駄目でしょう。」と娘は言った。老人は言った、「ちょくちょく。」「有難う。」と娘は笑った。縁側へ黒猫が帰って来た。
老人と鳩 (新字新仮名) / 小山清(著)
頼光らいこう天子てんしさまのおいいつけをうかがいますと、すぐかしこまってうちへかえりましたが、なにしろ相手あいて人間にんげんちがって、変化自在へんげじざいおにのことですから、おおぜい武士ぶしれて行って
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「こりゃア、どうも。……旦那まで千賀春の御講中ごこうちゅうだったたア、今日の今日まで、存じませんでした。……じゃ、たんといただきやす。とても、ただじゃそのあとはうかがえねえ」
顎十郎捕物帳:06 三人目 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
まあ、ジャック、——私ね、今度いらしったお隣さんへ、何かお力になって上げられるようなことはないかと思って、うかがった所だったのよ。——まあ、なんだってそんなに私を
黄色な顔 (新字新仮名) / アーサー・コナン・ドイル(著)
「溺れたんですってね。私も長いこと御贔屓ごひいきを受けましたが、お葬いにもうかがえない有様で」
あなたの仰言しゃることをうかがっていると私はまるで闇に鉄砲っていう気がしますよ。私は叱られるような悪いことをした憶えもないのに先生に叱られている学校の生徒みたいね。
女の一生 (新字新仮名) / 森本薫(著)
いちばん下の円野媛まどのひめは、四人がいっしょにおめしに会ってうかがいながら、二人だけは顔がきたないためにご奉公ができないでかえされたと言えば、近所の村々への聞こえも恥ずかしく
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
大久保おほくぼのことを、すこ先生せんせいにおうかがひしたいとぞんじまして、お邪魔じやまましてございますが、先生せんせいにはなにもかもおわかりでせうとおもひますけれど。」あねはさうふうふのであつた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
それによると御病気の様子、それも例の持病の喘息ぜんそくとばかりでなく、もっと心にかかる状態のようにうかがわれますが、いかがでございますか、せっかくお大事になさいますよう祈ります。
父の出郷 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
もし、もし、ちょっとおうかがいしますがのし、針中野ちうたらここから……り向いて、あっ、君はこの間の——男は足音高くげて行った。その方向から荷馬車が来た。馬がいなないた。
馬地獄 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「はい。すこしばかりおもあまったことがござんして、お智恵ちえ拝借はいしゃくうかがいました」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
このゆうべ、私は親しくオイケンの哲学に関する先生の感想をうかがって、も九時過再び千駄木の崖道をば根津権現ねづごんげんの方へり、不忍池しのばずのいけうしろを廻ると、ここにもそびえ立つ東照宮とうしょうぐうの裏手一面の崖に
「では、次郎ちゃん、もうお帰りなさいね。乳母やはこれから、正木のお祖母さんとこにうかがって、それからじき次郎ちゃんとこに行きますわ。お母さんがいいっておっしゃったら、今夜は一緒に寝ましょうね。」
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「ただいまうかがいます」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)