世人せじん)” の例文
あるいは彼らが骨冷かに肉ち、世人せじんの一半は彼等が名を忘却したる時において、始めて彼らのきたる種子の収穫を見ることあり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
かりに「聖人夢なし」という句が本当なりとするも、世人せじんことごとく聖人ならざる以上は、やはり夢は人生に添えるものである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
世人せじん金解禁きんかいきん出來できたならば、正貨せいくわ急激きふげき巨額きよがく積出つみだされ、其結果そのけつくわ經濟界けいざいかい非常ひじやう打撃だげきあたへるとつて心配しんぱいしてるが
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
鋼索こうさく化學用くわがくようしよ劇藥げきやく其他そのほか世人せじん到底たうてい豫想よさうがた幾多いくた材料ざいりよう蒐集中しうしふちうなりしが、何時いつとも吾人われら氣付きづかぬその姿すがたかくしぬ。
人々は、それが蝋細工と分っても、そんなもので、どうして長い間、世人せじんあざむくことが川来たのかと、不思議にたえなかった。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
世人せじんはタチバナの名にあこがれて勝手にこれを歴史上のタチバナと結びつけ、とうとんでいることがあれど、これはまことに笑止千万しょうしせんばん僻事ひがごとである。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
今日の会合は食道楽会の発会ですから二円の原料で随分立派な御馳走を拵えましたが必ずしも世人せじんをしてこれにならわしめようとは申しません。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
これきゝ伝へた世人せじんはタルマ自身に匹敵する悲劇役者が国立劇場へ加はつたのを故人の霊が喜んだのであらうと評判した。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
常に山頂の風力の強暴なるに似ず、日光のほがらかなるを見て、時としてさいなどはもし空気が目に見ゆるものならば、このはげしき風を世人せじんに見せたし
花前はかえって人のいつわりおおきにあきれて、ほとんど世人せじん眼中がんちゅうにおかなく、心中しんちゅうに自分らをまで侮蔑ぶべつしつくしてるのじゃないかとも思われる。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
この強国のいずれが将来この国を支配することになるということについては、大いに世人せじんの注意するところである。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
これは近時きんじ建築けんちくたいする世人せじん態度たいどきはめて眞面目まじめになり、徹底的てつていてき建築けんちく根本義こんぽんぎ解決かいけつし、れから出發しゆつぱつして建築けんちくおこさうとかんがへからたことで
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
そこで世人せじんが突込んで実際は伯爵が生きているんじゃないかと訊くとゴーは頑固に首をふってそんなはずはないという。ある朝市長と牧師が城に呼ばれた。
過ぎ去ったことだの、はこの中にかくしてある物をあてたところで、何の世人せじんの益にもならない。未然の禍いを
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これに因つて世人せじんひろくフェノロサが日本美術について最も広大深刻なる見解を有する人なるを知りぬ。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
世人せじん断じて山師的宗教家の口車などに乗って、迷信家の仲間入りをしてはならない。
これがために運動うんどうや、競技きようぎや、登山とざんなどいへそと生活せいかつすることがはやり、ひいては森林しんりん世人せじん休養きゆうよう保健ほけんのため利用りようすること、つまり森林しんりん公園こうえんとして利用りようすることがさかんになつたわけです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
本所を荒し廻った大泥棒、——井筒屋の主人まで殺した曲者くせものは、言うまでもなくお紺とその手代の嘉七で、狸囃子は、世人せじんを惑わして、嘉七お紺の仕事を助ける、笛辰と三吉の仕事だったのです。
滿ち、青銅に滿つる事、世人せじんあまねく口に曰ふ。
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
きつはなして急催促きふさいそく言譯いひわけすべきほどもなくたちま表向おもてむきの訴訟沙汰そしようざたとはれりけるもと松澤まつざは數代すだい家柄いへがら信用しんようあつければ僅々きん/\せん二千にせんかね何方いづかたにても調達てうたつ出來得できうべしと世人せじんおもふは反對うらうへにて玉子たまご四角しかくまだ萬國博覽曾ばんこくはくらんくわいにも陳列ちんれつ沙汰さた
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
世を渡るにはまったく輿論よろんを無視するわけにはいかぬけれども、世人せじんの考えをのみ標準として成敗をはかることは、はなはだはかなきわざである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
しかも、もっと不気味なことには、世人せじんは蠍の紋章を見せつけられるばかりで、それを使用している極悪人の正体を全くつかみ得ないことであった。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
いろいろの果実、すなわち実を研究してみるとなかなかおもしろいもので、ふつう世人せじんが思っているよりほか、意外な事実を発見するものである。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
それに私は世人せじんに向って家屋の不完全を攻撃しながらこの家は御覧の通り何事も不完全だらけです。これも借りている家ですから致方いたしかたがありません。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
其結果そのけつくわ我國わがくに金利きんりたかくなり、株劵かぶけんさがり、公債こうさい社債しやさいさがつて、我國わがくに經濟界けいざいかい非常ひじやう打撃だげきあたへるであらうとふことが、世人せじんぱん心配しんぱいになつたところであるが
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
国に国難がおこれば、元寇げんこうの折の時宗ときむね世人せじんの胸によみがえって来よう。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
八重何が故に我家わがやを去れるや。われまた何が故にその後を追はざりしや。『矢筈草』の一篇もとこの事を書綴りて愛読者諸君のお慰みにせんと欲せしなり。新聞紙三面の記事は世人せじんの喜ぶ所なり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
勝つとはなにかとたずぬると、おそらく世人せじんは奇怪なる質問と思うであろう。勝負ほど明瞭めいりょうなものはないと思う人が世に多い。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
人のこの世に生存するは毎日の食物を摂するがためなり。食物は生存の大本たいほんなるに世人せじんの深く注意せざるはあやしむべし。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
世人せじんは一般に、ヒマワリの花が日に向こうてまわるということを信じているが、それはまったく誤りであった。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
次いで白髥橋下の獄門舟事件と前代未聞の残虐に世人せじん心胆しんたんさむからしめた怪賊は、更らに毒手を伸ばして
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
また金解禁きんかいきんたいしては世人せじんぱんなり神經過敏しんけいくわびんになつてるから、此際このさいめてこれ發表はつぺうしてくとふことはむし財界ざいかい安定あんていせしむるうへ相當さうたう效果かうくわのあることゝかんがへたからである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
ただ世人せじんが学校にさえっておけば娘も息子も立派な人間になれると思うのが大間違いだ。人の品性は学校教育よりもむしろ家庭教育に感化される。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
何故なぜと云って、この記録の重要な部分をす所の小山田おやまだ氏変死事件は、まだまだ世人せじんの記憶に残っているのだから、どんなに変名を用い、潤色じゅんしょくを加えて見た所で
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
少数の製造者を保護するために世人せじんへ向って最も有害なる緑青毒の食物を売らせてくれろという歎願だ。今の人に共公心のないのはこれを見ても分る。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
世人せじんれっこになってしまって、またかという様な顔をして、その一つごとに、さして驚きもしないけれど、静かに考えて見ると、何と騒々そうぞうしく、いまわしい世の中であろう。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
大原ぬしがあの誠実なる心を以て我邦の家庭教育を改良し給わば世人せじんまさに神とも仏ともしてその徳を感謝せん。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
このことをう人ごとに聞かれるのが煩しいばかりでなく、折角せっかく身の上話をしても、相手が信用してくれない歯痒はがゆさもあるし、それに実を云うと私は、世人せじんかつて想像もしなかった様な、あの奇怪事を
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
世人せじんはよく平易簡単というと一番短いいやしい言語に傾きたがるからそれを注意しなければならん。なんじというのは長いからナで沢山だという事になっても困るさ。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
仕方がないからわざわざ白い塩を一旦いったん泥の上へあけて俵を結び直して深川からその地方へ送るというはなしもありますが世人せじんの智識が進歩しないとそんなものです。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
我々文学者は社会の悪い風習や野蛮な旧慣を改良して世人せじんを善道に導かねばならん天職を持っている。父母の意見ばかりで我子の承諾もないのに嫁を決定するのは悪い習慣だ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)