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一条
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ひとすじ
ふりがな文庫
“
一条
(
ひとすじ
)” の例文
旧字:
一條
朦朧
(
もうろう
)
と見えなくなって、国中、町中にただ
一条
(
ひとすじ
)
、その桃の古小路ばかりが、漫々として波の
静
(
しずか
)
な
蒼海
(
そうかい
)
に、船脚を
曳
(
ひ
)
いたように見える。
絵本の春
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
行書で太く書いた「鳥」「
蒲焼
(
かばやき
)
」なぞの
行燈
(
あんどう
)
があちらこちらに見える。
忽
(
たちま
)
ち左右がぱッと
明
(
あかる
)
く開けて電車は
一条
(
ひとすじ
)
の橋へと登りかけた。
深川の唄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
お前はまるで皺だらけな、力の脱け切つた
顔貌
(
かおつき
)
をして笑つた。その皺に、みんな
一条
(
ひとすじ
)
、何か冷い液体が滲み出るやうな
顔貌
(
かおつき
)
をしながら……。
海の霧
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
そして、その蘆の葉の間に
一条
(
ひとすじ
)
の水が見えて、前後して往く二三
隻
(
せき
)
の小舟が白い帆を一ぱいに張って音もなく往きかけた。
水郷異聞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
三年前、半死の岸本の耳に
一条
(
ひとすじ
)
の活路をささやいてくれた海は、もう一度故国の方へと彼を呼ぶように成った。その声は
復
(
ま
)
た彼の耳に聞えて来た。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
▼ もっと見る
こうして虎口の難をのがれた張遼は、やがて曹操に追いついて合体したが、両軍合わせても五百に足らず、しかも
一条
(
ひとすじ
)
の軍旗すら持たなかったので
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そこからは道が
一条
(
ひとすじ
)
であった。
神楽坂
(
かぐらざか
)
の下まで来ると、世界がにわかに明るくなった。人の影もちらほら見えていた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
二回往復した
四条
(
よすじ
)
の跡が印されていて、それ以外には、
扉口
(
とぐち
)
から現在人形のいる場所に続いている
一条
(
ひとすじ
)
のみだった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
自分は小山にこの際の自分の感情を語りながら行くと、
一条
(
ひとすじ
)
の流れ、薄暗い林の奥から音もなく走り
出
(
い
)
でまた林の奥に没する
畔
(
ほとり
)
に来た。一個の橋がある。
小春
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
そこには
一条
(
ひとすじ
)
のりっぱな地下道がついていた。人造人間は、そのうえを、走りだした。だんだんスピードがあがってきて、風がひゅうひゅう鳴りだした。
人造人間の秘密
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
鉄瓶の口から、つぎこむように、天井の小さな穴から、ただ
一条
(
ひとすじ
)
そそぎこまれる水は、刻々たまる一方だ。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
我
(
わ
)
が
亡
(
な
)
き
後
(
のち
)
は汝等二人決して分れをることをすべからず、
譬
(
たと
)
へば
一条
(
ひとすじ
)
の糸にては象を
係
(
つな
)
ぐこと難けれど多くの糸を集めて
縄
(
なわ
)
となさば大象をも係ぐを得べきがごとく
印度の古話
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
と言葉残して芳野が
吐
(
は
)
く
一条
(
ひとすじ
)
の
黒煙
(
くろけむり
)
をおき土産に品川を出帆されました。
此方
(
こなた
)
の花里でございます。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
お前の過去にあった
一条
(
ひとすじ
)
の不可思議より、まだ幾倍かの不可思議をもっているかも知れないのだよ。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それはわずかばかりの
稀
(
まれ
)
なる天才にのみ委ねられた仕事だからである。だがここにも神の準備は不可思議である。異なる
一条
(
ひとすじ
)
の道を通して、衆生にも美の現しが許されている。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
それで
沖
(
おき
)
を
見渡
(
みわた
)
しても、一つの
帆影
(
ほかげ
)
も、また
一条
(
ひとすじ
)
の
煙
(
けむり
)
の
跡
(
あと
)
も
見
(
み
)
ることがなかったのです。
黒い旗物語
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
伊香保より
水沢
(
みさわ
)
の
観音
(
かんのん
)
まで一里あまりの間は、
一条
(
ひとすじ
)
の道、
蛇
(
へび
)
のごとく
禿山
(
はげやま
)
の中腹に沿うてうねり、ただ二か所ばかりの山の裂け目の谷をなせるに陥りてまた
這
(
は
)
い上がれるほかは
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
奇麗に
平
(
なら
)
した畑は
一条
(
ひとすじ
)
一条丁寧に
尺竹
(
しゃくだけ
)
をあて、縄ずりして、真直ぐに西から東へ
畝
(
うね
)
を立て、堆肥を置いて土をかけ、七蔵が種を
振
(
ふ
)
れば、赤児を負った若いかみさんが
竹杖
(
たけづえ
)
ついて
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
馬は
一条
(
ひとすじ
)
の枯草を奥歯にひっ掛けたまま、
猫背
(
ねこぜ
)
の老いた
馭者
(
ぎょしゃ
)
の姿を捜している。
蠅
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
ただ
一条
(
ひとすじ
)
に助けられたかったのである。苦痛や悲哀や不調和や罪そのものを選ぼうとする心は甘いでき心である。人生の外道である。運命を直視せよ。脅かさるるがごとく救いを求めよ。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
あたかも濃い霧の中からパッと
一条
(
ひとすじ
)
の光が射して、一瞬にして、また元の霧の中へ消え去るように、この未知の大陸も再び永遠の霧の彼方に閉ざされてしまうのではあるまいかと考えますと
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
下にはまずまばらに
茅葺屋根
(
かやぶきやね
)
、大根の青い畑が連って、その下に温泉場、二階三階、大湯から出る湯の煙、上を仰ぐと、同じ
畠
(
はたけ
)
の
斜坂
(
さか
)
の
爪先
(
つまさき
)
上がりになっている間に
一条
(
ひとすじ
)
の路がうねうねと通って
ネギ一束
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
見よ前方
数間
(
すうけん
)
のところに
一条
(
ひとすじ
)
の縄が道に引っ張られてあるではないか。
奇巌城:アルセーヌ・ルパン
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
式部官が突く
金総
(
きんぶさ
)
ついたる杖、「パルケット」の板に触れてとうとうと鳴りひびけば、
天鵝絨
(
びろうど
)
ばりの扉一時に音もなくさとあきて、広間のまなかに
一条
(
ひとすじ
)
の道おのずから開け、こよい六百人と聞えし客
文づかい
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
蘆の中に、色の白い
痩
(
や
)
せた
嫗
(
おうな
)
、
高家
(
こうけ
)
の後室ともあろう、品の
可
(
い
)
い、目の赤いのが、
朦朧
(
もうろう
)
と
踞
(
しゃが
)
んだ手から、
蜘蛛
(
くも
)
の
囲
(
い
)
かと見る糸
一条
(
ひとすじ
)
。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
これだけは以前に変らぬ眺めであったが、自分の眼は
忽
(
たちま
)
ち
佃島
(
つくだじま
)
の
彼方
(
かなた
)
から深川へとかけられた
一条
(
ひとすじ
)
の長い橋の姿に驚かされた。
深川の唄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
それを踏んで雑木林の間にある
一条
(
ひとすじ
)
の細道を分けて行くと、黄勝なすずしい若葉のかげで、私達は旅の商人に逢った。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ほど経て、一滴のしづくのやうな悲しさを一つの場所に感じてゐた。そして、冷え冷えと
漾
(
ただよ
)
ふものが
一条
(
ひとすじ
)
ばかりゆるやかに身体をぬうて流れていつた。
Pierre Philosophale
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
本流から
岐
(
わか
)
れた
一条
(
ひとすじ
)
の流れが
斜
(
ななめ
)
に来て
磧
(
かわら
)
の
裾
(
すそ
)
で岸の
竹藪
(
たけやぶ
)
に迫っていたが、そこには二三
艘
(
そう
)
の小舟が
飛
(
とび
)
とびに
繋
(
つな
)
いであった。四人はその小舟の方へ往った。
赤い土の壺
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「然らば、もし貴説があたったときには、予は魏帝から拝領した
玉帯
(
ぎょくたい
)
一条
(
ひとすじ
)
と名馬一頭をご辺に贈ろう」
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ここの町よりただ荒川
一条
(
ひとすじ
)
を
隔
(
へだ
)
てたる鉢形村といえるは、むかしの鉢形の城のありたるところにて、城は
天正
(
てんしょう
)
の頃、
北条氏政
(
ほうじょううじまさ
)
の弟
安房守
(
あわのかみ
)
氏邦の守りたるところなれば
知々夫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
そうしてどこからか一筋の日光が
射
(
さ
)
して来ないかしらんという希望よりも、こちらから探照灯を用いてたった
一条
(
ひとすじ
)
で好いから先まで明らかに見たいという気がしました。
私の個人主義
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
異なる
一条
(
ひとすじ
)
の道を通して衆生にも美の現しが許されている。凡夫さえも美に
携
(
たずさ
)
わり得る道、それが工藝の一路である。丁度無学な者にも神との
邂逅
(
かいこう
)
が許されているのと同じである。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
大麦小麦はとくに
刈
(
か
)
られて、畑も田も森も林も何処を見ても
緑
(
みどり
)
ならぬ処もない。其緑の中を
一条
(
ひとすじ
)
白く西へ西へ山へ山へと
這
(
は
)
って行く甲州街道を、二人は話しながらさッさと歩いた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
すると、
蜘蛛
(
くも
)
糸のような
一条
(
ひとすじ
)
の光線が隙間から洩れて、それが
蚊帳
(
かや
)
を透し、皺ばった頬のうえに落ちた。滝人はしばらく
動悸
(
どうき
)
を押さえ、死の番人のように、その顔を黙視していた。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
式部官が突く
金総
(
きんぶさ
)
ついたる
杖
(
つえ
)
、「パルケット」の板に触れてとうとうと鳴りひびけば、
天鵝絨
(
ビロード
)
ばりの扉一時に音もなくさとあきて、広間のまなかに
一条
(
ひとすじ
)
の道おのづから開け、こよひ六百人と聞えし客
文づかひ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
一条
(
ひとすじ
)
の
青烟
(
けぶり
)
の悠々と空に消えて行くのを見ることがある。
漁師の娘
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
茶店の
縁
(
えん
)
に腰を掛けて、渋茶を飲みながら評議をした。……春日野の
新道
(
しんみち
)
一条
(
ひとすじ
)
、
勿論
(
もちろん
)
不可
(
いけな
)
い。
湯
(
ゆ
)
の
尾
(
お
)
峠にかかる山越え、それも
覚束
(
おぼつか
)
ない。
栃の実
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
青く濁った水の
面
(
おもて
)
は鏡の如く両岸の土手を
蔽
(
おお
)
う雑草をはじめ、柳の細い枝も
一条
(
ひとすじ
)
残さず、高い空の浮雲までをそのままはっきりと映している。
深川の唄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そしてお前は急ぎはじめる、急ぐうちに僕のみ一人侘しく遠い岩壁に
小
(
ち
)
さく残して、お前は白い石畳をだんだん早い速力で、ただ
一条
(
ひとすじ
)
に駈けぬけて行く。
海の霧
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
そうして今ちょうどその夢を
追
(
おっ
)
かけようとしている途中なのだ。
顧
(
かえり
)
みると過去から持ち越したこの
一条
(
ひとすじ
)
の夢が、これから目的地へ着くと同時に、からりと覚めるのかしら。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
睨みつめていても
何時
(
いつ
)
の間にというけじめも分らぬまに、ほのかに姉川の水面が白みかけたと思うと、林の
梢
(
こずえ
)
を
透
(
す
)
いて、
一条
(
ひとすじ
)
の紅い雲が、伊吹山の肩のあたりに見出された。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
台地の上へは
一条
(
ひとすじ
)
の
小径
(
こみち
)
がついていた。女はその台地の下へ往くと、ふと姿を消した。
月光の下
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
身の分際を忘れてか、と泣き声になり掻き口説く女房の
頭
(
こうべ
)
は低く垂れて、
髷
(
まげ
)
にさされし縫針の
孔
(
めど
)
が
啣
(
くわ
)
えし
一条
(
ひとすじ
)
の糸ゆらゆらと振うにも、千々に砕くる心の
態
(
さま
)
の知られていとどいじらしきに
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
あの
光悦
(
こうえつ
)
作と云わるる著名な「
鷹ヶ峯
(
たかがみね
)
」と銘する茶碗を見られよ。あの手作りの
高台
(
こうだい
)
、あの
一条
(
ひとすじ
)
の
篦目
(
へらめ
)
、何たる技巧の仕業であるか。あの自然な自由な「
井戸
(
いど
)
」の茶碗の前に何の面目があろうか。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
白く
降埋
(
ふりうず
)
んだ往来には、人や馬の通る
痕
(
あと
)
が
一条
(
ひとすじ
)
赤く
染
(
つ
)
いている——その
泥交
(
どろまじ
)
りの雪道を、おつぎさんの凍った身体は
藁蓆
(
むしろ
)
の上に載せられて、巡査
小吏
(
やくにん
)
なぞに取囲まれて、静に担がれて行きました。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ただ
一条
(
ひとすじ
)
にたどりしのみ。
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
渡り越して、その姿、低い欄干を放れると、俤橋は一点の影も留めず、後になって、道は
一条
(
ひとすじ
)
、美しくその白足袋の下に続いた。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
殊に自分が
呱々
(
ここ
)
の声を上げた旧宅の門前を過ぎ、その
細密
(
こまか
)
い枝振りの
一条
(
ひとすじ
)
一条にまでちゃんと見覚えのある
植込
(
うえごみ
)
の
梢
(
こずえ
)
を越して屋敷の屋根を窺い見る時
伝通院
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
雪をやうやく切りひらいてたつた
一条
(
ひとすじ
)
走つてゐる冷めたい鉄路を考へたり、眠むるまも耳のまはりに絡みついて離れない車輪の響きを考へると、堪えがたかつた。
吹雪物語:――夢と知性――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
条
常用漢字
小5
部首:⽊
7画
“一条”で始まる語句
一条路
一条道
一条兼良
一条一
一条下
一条廓
一条町
一条縄
一条忠衛
一条大蔵卿朝成