一同みんな)” の例文
『あゝ、みなわたくしわるいのだ、わたくし失策しくじつたばかりに、一同みんな此樣こん憂目うきめせることか。』とふか嘆息たんそくしたが、たちまこゝろ取直とりなほした樣子やうす
「衆人がそう見るなら衆人の見るに一任して置きます」と押問答して居る間に本当の国王が来られたといって一同みんな迎えに出られまして
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
風呂桶ふろをけそばでは四十五十に百姓ひやくしやう一同みんな愉快相ゆくわいさうにどよめいた。おつぎが手桶てをけつたとき勘次かんじ裏戸うらど垣根口かきねぐちにひよつこりとた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
よくるとハコべのわかいのだったので、ア、コリャ助からない、とりじゃあ有るまいし、と手に残したのを抛捨なげすてると、一同みんながハハハと笑った。
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「ははあなるほど、そういう次第か。……おおかたそうだろうとは思ったが……つまり敵方をして我々一同みんなが戦死したものと思わせるのだな」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
残りなく白粉の塗られた顔を、一同みんなは互ひに笑つた。消さずに帰る事と、誰やらが言出したが、智恵子清子静子の三人は何時の間にか洗つて来た。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
沈み切っていた、職人頭の富さんが、運八に推遣おしやられて坐に返ると、一同みんなも、お神輿みこしの警護が解けたように、飲みがまえで、ずらりとお並びさ、貴方。
丁度その途端、階段から上って来る新しい客の洋服姿がむこうの壁の鏡に映ったのを早くも認めて、「アラ清岡先生よ。」と瑠璃子は小声で一同みんなに知らせた。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
いのさ、これはお前にこれは姉さんに、大きいので帳場の払ひを取つて残りは一同みんなにやつても宜いと仰しやる、お礼をまをして頂いてお出でと蒔散まきちらせば
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一同みんなふでかみすみの用意して愡掛そうがかりだと云た所でここに一つ困る事には、大切な黒田様の蔵書をこわすことが出来ない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
一同みんなは驚いて箸を止めたが、それは竹丸が一番先きに食事を濟まして、母の眼界からのがれ去らうとする時、自分の身體で母の眼と一同の食膳との間をさへぎつたのであつた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
前よりも一層大きな、一層長く続く笑声が湧起わきおこつた。と、その中の一人が、もう一度、一同みんなの笑を繰返へさせようとして、「若旦那も罪なもくろみを初めなすつたものさね。」
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
天神下の叔父の家で、友達と一所に酒を飲んで、それから一同みんな遊びに出かけようとしているところへ行き合わせた時も、外へ出てから雨のなかで喧嘩を始めて、傘で腕をたれたりした。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
家へ帰ってから一同みんなは食堂に入った。乃公は頻りにお菓子を喰べていたが、皆は葡萄酒ばかり飲んでいる。先刻さっきシェリイをこぼした処は如何なったかと思って見たらナプキンが置いてあった。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
下肥を汲む。木の苗を盗む。近所の事ではあり、病気と皆が承知して居るので、表沙汰にはならなかったが、一同みんな困り者にして居た。杉苗すぎなえでもとられると、見附次第黙って持戻もちもどったりする者もあった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「ハッハッハッハッハッハッ」と一同みんな笑いだした。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「さああの後にいて一同みんなも飛び降りるんだ。」
月世界跋渉記 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
と歓喜の色は一同みんなの顔にみなぎった。
監獄部屋 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
宛然さながら厚化粧した様になつて、黒い歯の間の一枚の入歯が、殊更らしく光つた。妖怪おばけの様だと言つて一同みんながまた笑つた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
かねさん自分じぶん這入へえんのにけむつたけりや、おんしてからへえつたらかんべなあ、それに怎的どうしたもんだ一同みんな
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
たかはあきれてりきちやん大底たいていにおしよといへども、なにいのさ、これはおまへにこれはねへさんに、おほきいので帳塲ちやうばはらひをつてのこりは一同みんなにやつてもいとおつしやる
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「それも普通の人達ではないよ、私達一同みんな以前まえまえから手に入れようと望んでいた、唐寺の謎を解き明かした、研究材料を持っている、そういう好都合の人達なのだよ」
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
一同みんなはまたぶらぶらと笑語しながら堤上や堤下を歩いた。ふと土耳古帽氏は堤下の田のくろへ立寄って何かった。皆々はそれを受けたが、もっさりした小さな草だった。
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一同みんなからみっちゃんとか道子さんとか呼ばれている円顔の目のぱっちりした中肉中丈の女がある。
吾妻橋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「女といふものは何時でもきに泣けるもんやなア。」と竹丸は思ひながら、濡れた身體をろくに拭かずに薄物を引ツかけて、母の病室へ來て見ると、一同みんなが枕元を取り卷いて、事あり氣に坐つてゐた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
一同みんなから事情を聞いてから、芳村は自分の宿へ帰って行った。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
どこか一同みんなと共通した不平と嘲笑てうせうの影がひそんでゐた。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
『そんでヤハアお常ツ子もかかつたアな。』と囁いて、一同みんなそつと松太郎を見た。お由の眼玉はギロリと光つた。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
一同みんなからみつちやんとか道子みちこさんとかばれてゐる円顔まるがほのぱつちりした中肉中丈ちゆうにくちゆうぜいをんながある。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
「献上々々、献上でえ!」と囃し喚く声が聞こえてきたので、一同みんなは黙って聞耳を立てた。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
大きいので帳場の拂ひを取つて殘りは一同みんなにやつても宜いと仰しやる、お禮を申て頂いてお出でと蒔散らせば、これを此娘の十八番に馴れたる事とて左のみは遠慮もいふては居ず
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いつか大師だいし一同みんなが行く時も、まあ親方の身辺まわりについて居るものを一人ばかり仲間はずれにするでもないと私が親切に誘ってやったに、我は貧乏で行かれないと云ったきりの挨拶あいさつ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
かれたゞ一つでもいから始終しじゆうしるなかかならずくつ/\としかつた。しかしそれは一同みんないはときのみで、それさへ卯平うへい只獨ただひとりゆつくりとあぢはふには焙烙はうろくせる分量ぶんりやうあまりにらなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
『好し。』と言つて、健は莞爾につこりして見せる。『それでは一同みんな歸しても可い。お前も歸れ。それからな、今先生が行くから忠一だけは教室に殘つて居れと言へ。』
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
斯う云って検事は先に立って、庭の方へ一同みんなを導きました。私も従いて行きました……。
西班牙の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
東坡巾の先生は囅然てんぜんとして笑出して、君そんなに感服ばかりしていると、今に馬糞まぐそ道傍みちばた盛上もりあがっているのまで春の景色けいしょくだなぞとめさせられるよ、とたわむれたので一同みんな哄然どっ笑声しょうせいげた。
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
『好し。』と言つて、健は莞爾につこりして見せる。『それでは一同みんな帰しても可い。お前も帰れ。それからな、今先生が行くから忠一だけは教室に残つて居れと言へ。』
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
のろり/\と充分したゝか清めて碁盤肌にでも削らうかと僻味ひがみを云つた事もありました、第一彼奴は交際つきあひ知らずで女郎買ぢよろかひ一度一所にせず、好闘鶏しやも鍋つゝき合つた事も無い唐偏朴、何時か大師へ一同みんなが行く時も
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
一同みんなはホッと息を吐いた。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と、一同みんなに挨拶した。そして、手づから椅子を引寄せて、遠慮もなく腰を掛け、校長や秋野と二言三言話してゐたが、何やら気の急ぐ態度やうすであつた。その横顔を健はじつ凝視みつめてゐた。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
一同みんなもそれに和した。沼田は片肌を脱ぎ、森川は立襟の洋服のボタンはづして風を入れ乍ら、乾き掛つた白粉で皮膚かは痙攣ひきつる様なのを気にして、顔を妙にモグ/\さしたので、一同みんなまた笑つた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
續いて一同みんな乘り込んだが、君だけは見張をするつて垣の外に殘つたつけね。
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
続いて一同みんな乗り込んだが、君だけは見張をするツて垣の外に残ツたツけね。
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
樹下したに居た奴等は一同みんな逃げ出したが、僕は仕方が無いから默つて居た。
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
樹下したに居た奴等は一同みんな逃げ出したが、僕は仕方が無いから黙ツて居た。
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
一同みんな今迄の場所ところに今迄の通り列べ。』
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
一同みんな今迄の場所ところに今迄の通り列べ。』
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)