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顫
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ふる
ふりがな文庫
“
顫
(
ふる
)” の例文
と、その時、「うーん」とかすかに唸る声が聞えましたので、はっとして夫人を見ますと、眼球が不規則に動いて、唇が
顫
(
ふる
)
えました。
印象
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
不圖したら今日締切後に宣告するかも知れぬ、と云ふ疑ひが電の樣に心を刺した、其顏面には例の
痙攣
(
ひきつけ
)
が起つてピクピク
顫
(
ふる
)
へて居た。
病院の窓
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
お兼は少し
顫
(
ふる
)
へて居ります。岡つ引などといふ人種は何時人を縛るかわからないと言つた、無智な恐怖にさいなまれて居るのでした。
銭形平次捕物控:170 百足屋殺し
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
そして、身体を
顫
(
ふる
)
わしながら、堤の上へ
這上
(
はいあが
)
って、又、
暫
(
しばら
)
く、四辺を、警戒していたが、静かに、指を口へ入れて、ぴーっと吹いた。
三人の相馬大作
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
彼女は彼の顔を見詰めながら、唇を
噛
(
か
)
み締めるようにしてぶるぶると身体を
顫
(
ふる
)
わした。彼は目を瞑るようにしてもう一度繰り返した。
或る嬰児殺しの動機
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
▼ もっと見る
例の如く若干首を傾けて貴族の如く一礼をなし、さて、
顫
(
ふる
)
へを帯びた細い声で感動のために澱みながら、
泌々
(
しみじみ
)
と挨拶の言葉をのべた。
盗まれた手紙の話
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
その刹那、
顫
(
ふる
)
い
戦
(
おのの
)
く二つの魂と魂は、しっかと相抱いて声高く叫んだ。その二つの声は幽谷に
咽
(
むせ
)
び泣く
木精
(
こだま
)
と木精とのごとく響いた。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
誰もが感ずるであろうような、皮肉じみた笑いが
片頬
(
かたほほ
)
に
顫
(
ふる
)
えたが——、鷺太郎は、何とはなく、不安に似た
苛立
(
いらだ
)
たしさを覚えたのだ。
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
だから、もし自分の
宅
(
うち
)
で
女房
(
かない
)
から手紙を投げつけられるやうな事があつたら、大抵の亭主は、小鳥のやうに
顫
(
ふる
)
へあがるに
極
(
きま
)
つてゐる。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
ハッと唇の色を変えて、錦子は
顫
(
ふる
)
えあがったが、いたずらものが忍び込んだ形跡もないので家の者たちは
神業
(
かみわざ
)
だと、
禍
(
わざわい
)
のせいにした。
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
クリームの色はちょっと
柔
(
やわら
)
かだが、少し重苦しい。ジェリは、
一目
(
いちもく
)
宝石のように見えるが、ぶるぶる
顫
(
ふる
)
えて、羊羹ほどの重味がない。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は口を
噤
(
つぐ
)
む。エロアは、そう言う場合の常として、抗議を申し立てない。彼は草稿を卓上に置く。彼の手は
顫
(
ふる
)
えているからである。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
その
晩
(
ばん
)
、
郵便局長
(
ゆうびんきょくちょう
)
のミハイル、アウエリヤヌイチは
彼
(
かれ
)
の
所
(
ところ
)
に
来
(
き
)
たが、
挨拶
(
あいさつ
)
もせずにいきなり
彼
(
かれ
)
の
両手
(
りょうて
)
を
握
(
にぎ
)
って、
声
(
こえ
)
を
顫
(
ふる
)
わして
云
(
い
)
うた。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
彼はやがて不意にぶるぶると全身を
顫
(
ふる
)
わして
後退
(
あとじさ
)
りしたが又、
卓子
(
テーブル
)
に両手をかけて女を見入った。女に近づこうとして又立ち
竦
(
すく
)
んだ。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それぞれに
旧
(
もと
)
いた位置から動かされなかったので、それでなくても不安と憂愁のために、追いつめられた獣のように
顫
(
ふる
)
え
戦
(
おのの
)
いていた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
鬢
(
びん
)
はほつれ、眼は血走り、全身はわなわな
顫
(
ふる
)
えています。少女達は驚きながら
訳
(
わけ
)
を
訊
(
たず
)
ねると、女はあわてて
吃
(
ども
)
りながら言いました。
気の毒な奥様
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
彼は門を入って
格子戸
(
こうしど
)
の方へ進んだが
動悸
(
どうき
)
はいよいよ早まり
身体
(
からだ
)
はブルブルと
顫
(
ふる
)
えた。雨戸は閉って四方は死のごとく静かである。
愛か
(新字新仮名)
/
李光洙
(著)
「全くそうじゃ」老翁は
白髯
(
はくぜん
)
を
顫
(
ふる
)
わしながら答えるのだ。「これからは
悪智慧
(
わるぢえ
)
のある奴が益々増えるから、脅迫は増える一方じゃのう」
急行十三時間
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
女達はいずれも誘拐されてきた者と見え、衣服も髪かたちも
区々
(
まちまち
)
であったが、みんな眼を
泣腫
(
なきは
)
らして、ぶるぶる
顫
(
ふる
)
えている様子だった。
其角と山賊と殿様
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
前の年よりも一しお厳しい、一しお身に
浸
(
し
)
みる寒さが、絶えず彼女を悩ました。彼女は寒さに
顫
(
ふる
)
える手を燃えさかる焔にかざした。
初雪
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
伴蔵は
顫
(
ふる
)
いながら
家
(
うち
)
へ帰り、夜の明けるのを待ちかねて白翁堂勇斎の家へ飛んで往った。そして、まだ寝ていた勇斎を叩き起した。
円朝の牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
枕許
(
まくらもと
)
にあった
水指
(
みずさし
)
から、湯呑に水をさしてお絹が竜之助の手に渡しました。
顫
(
ふる
)
えた手で竜之助はその湯呑を受取ろうとして取落す。
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
姫は振り向いて見ると、橋の隅の欄干によりかかって、立派な
服装
(
なり
)
をしていながら、白い顔をして
顫
(
ふる
)
えているコスモが立っていた。
世界怪談名作集:16 鏡中の美女
(新字新仮名)
/
ジョージ・マクドナルド
(著)
そして私には、アランがそれっきり唇を噛んで、蒼白な顔色をしながら、身体をワナワナと
顫
(
ふる
)
わせて黙り込んでいるのが見受けられた。
令嬢エミーラの日記
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
戸を
犇
(
ひしめ
)
かして、男は打ち
僵
(
たお
)
れぬ。
朱
(
あけ
)
に染みたるわが手を見つつ、
重傷
(
いたで
)
に
唸
(
うめ
)
く声を聞ける白糸は、戸口に立ち
竦
(
すく
)
みて、わなわなと
顫
(
ふる
)
いぬ。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
若
(
も
)
し、大尉が其処に居合せなかったら、自分は思わず叫声を挙げたに
違
(
ちがい
)
ない。自分が、それを持っている手は思わず、
顫
(
ふる
)
えたのである。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
ぎょッとしたような
顫
(
ふる
)
えが、天蔵の足から背すじへ、明らかに走った。まさか十六歳のこの家の童僕とは思えなかったに違いない。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
女は激しい
痙攣
(
けいれん
)
でも起したかのように、
顫
(
ふる
)
える手にいきなり鶴見の見ていた本を取り上げて、引き破って、座敷の
隅
(
すみ
)
に放りやった。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
私をじつと
凝視
(
みつ
)
めて、彼は口を
噤
(
つぐ
)
んだ。言葉は殆んど現はれかけて彼の唇の上で
顫
(
ふる
)
へた——しかし、彼の聲は
壓
(
お
)
しつけられてしまつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
お角さんと一緒に働いていたお豊さんも、その話を聴くと
顫
(
ふる
)
えあがって、これも俄かに気分が悪くなって寝込んでしまいました。
怪談一夜草紙
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
成は細君の話を聞いて、雪水を体にかけられたように
顫
(
ふる
)
えあがった。それと共に
悪戯
(
いたずら
)
をした我が子に対する怒りが燃えあがった。
促織
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
と、こんなときに犬どもを滅多打ちに打ち据えて、拳の下に
肉塊
(
にく
)
の
顫
(
ふる
)
えを感じたいという欲求が、むらむらっと込みあげて来た。
犬舎
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
立ち止まって、その音に何時でも耳をすましていると、急にワクワクと身体が底から
顫
(
ふる
)
えてくる——恐怖に似た物狂おしさが襲ってきた。
独房
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
余は覚えず身を
顫
(
ふる
)
はし申候。而も取られし手を振払ひて、
逃去
(
のがれさ
)
る決断もなく、否、寧ろ進んで闇の
中
(
うち
)
に
陥
(
おちい
)
りたき熱望に駆られ候。
夜あるき
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
自分は決して彼等を恐れてはいないし、又、殴られることをこわいとも思っていないのだが、それにも拘らず、彼等の前に出ると
顫
(
ふる
)
える。
虎狩
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「お連れ致さずともお
姫様
(
ひいさま
)
はすぐお殿様のお目の前においで遊ばすのでござります」島太夫は
顫
(
ふる
)
えながら手を上げて
几帳
(
きちょう
)
の
蔭
(
かげ
)
を指差した。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
磧の草はすっかり穂を
翳
(
かざ
)
しながら、いまは、蕭蕭とした荒い景色のなかに
顫
(
ふる
)
えて、もう立つことのない季節のきびしい風に砥がれていた。
性に眼覚める頃
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
われは
堕
(
お
)
ちじと戒むる
沙門
(
しゃもん
)
の心ともなりしが、聞きをはりし時は、胸騒ぎ肉
顫
(
ふる
)
ひて、われにもあらで、少女が前に
跪
(
ひざまず
)
かむとしつ。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
とうとう国境まで来たのかと思うと、ひえびえと私は雨の湿りに
顫
(
ふる
)
えたが、また、子供のように其処らを駈け廻りたくもなった。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
その白さは、唯の白さでなく、
寂莫
(
せきばく
)
とした底の知れないような白さだった。見ているうちに、全身
顫
(
ふる
)
えて来るような白さだった。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
と
焦
(
じ
)
れてガチリと音させ、よう/\錠をはずし木戸をひらき、出てまいりますと、只
何
(
なん
)
にも言わず伊之吉に取りすがって
顫
(
ふる
)
えております。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
体じゅうが微かに
顫
(
ふる
)
える。目がいらいらする。無理に早く起された人の常として、ひどい不幸を抱いているような感じがする。
罪人
(新字新仮名)
/
ミハイル・ペトローヴィチ・アルチバシェッフ
(著)
が——右手に持った真白な
鴕鳥
(
だちょう
)
の
羽毛
(
はね
)
で作った大きな
扇
(
おうぎ
)
がブルブルと
顫
(
ふる
)
えながら、その悲痛きわまりない顔を隠してしまった。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
だが、わなわなと
顫
(
ふる
)
えるだけで、彼は斬ることが出来なかったのである。事なかれの外交方針にうしろからどやしつけられていたのである。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
間
(
はざま
)
が影を隠す時、僕に
遺
(
のこ
)
した手紙が有る、それで
悉
(
くはし
)
い様子を知つてをるです。その手紙を見た時には、僕も
顫
(
ふる
)
へて腹が立つた。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
それだけの話ですが、『何か御用ですか』と言うと、男の方でも何でだか極りの悪るそうに先方だって声が
顫
(
ふる
)
えていました。
雪の日
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
此所
(
こゝ
)
で
余
(
よ
)
に
餘裕
(
よゆう
)
が
有
(
あ
)
ると、
之
(
これ
)
を
開
(
ひら
)
くのを
拒
(
こば
)
んで、
一狂言
(
ひときやうげん
)
するのであるが、そんな
氣
(
き
)
は
却々
(
なか/\
)
出
(
で
)
ぬ。ぶる/\
顫
(
ふる
)
へさうで、
厭
(
いや
)
アな
氣持
(
きもち
)
がして
來
(
き
)
た。
探検実記 地中の秘密:05 深大寺の打石斧
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
そんな時朝鮮の鈴は、喬の心を
顫
(
ふる
)
わせて鳴った。ある時は、喬の
現身
(
うつせみ
)
は道の上に失われ鈴の音だけが町を過るかと思われた。
ある心の風景
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
私は心の底まで
顫
(
ふる
)
えあがったが、かの幻影に悩まされていた当時のように、気違いじみた憧憬は少しも起こって来なかった。
世界怪談名作集:10 廃宅
(新字新仮名)
/
エルンスト・テオドーア・アマーデウス・ホフマン
(著)
たぶん、
端艇
(
ボート
)
を探し廻ろうというのだろう。だが、端艇は一艘も本船に残っていない。これに気がつくと、水夫は、
真蒼
(
まっさお
)
になって
顫
(
ふる
)
え上った。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
顫
漢検1級
部首:⾴
22画
“顫”を含む語句
顫音
身顫
胴顫
顫声
顫律
顫動
微顫
顫上
武者顫
打顫
血顫
震顫
顫慄
顫震音
顫着
顫出
顫聲
顫震
顫音符
顫戦
...