“顫:ふる” の例文
“顫:ふる”を含む作品の著者(上位)作品数
野村胡堂91
岡本綺堂35
田中貢太郎32
吉川英治30
夏目漱石18
“顫:ふる”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語13.6%
文学 > 日本文学 > 詩歌2.3%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)2.2%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
書き終りたる文字は怪しげに乱れて定かならず。年寄の手のふるえたるは、おいのためともかなしみのためとも知れず。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼女の結婚する二三日前に、岡田と佐野は、氷を裂くような汽車の中から身をふるわして新橋の停車場ステーションに下りた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
勘次かんじ、それぢやれをつていてるんだ」巡査じゆんさはいつた。勘次かんじふるへた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
彼は古びたオーバーを着込んで、「寒い、寒い」とふるえながら、生木のくすぶ火鉢ひばち獅噛しがみついていた。
廃墟から (新字新仮名) / 原民喜(著)
「銀子さん」と良久しばしありて梅子は声ふるはしつ「四年前の貴女の苦痛を、今になつて始めて知ることが出来ました――」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
彼女は、身をふるわしながらいた。テーブルの上にかけている白いろうのような手も、烈しい顫えを帯びていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
はぬまでに全身ぜんしんふるはし、すみからすみへといそいであゆはじめる
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
わぬまでに全身ぜんしんふるわし、すみからすみへといそいであゆはじめる
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
お通は、ふるえあがって、牛の背へしがみついた。そして、丑之助の眉に、ただならぬ出来事が起りそうな気色を見たので、
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と新九郎の声は悲痛そのものであった。右手めてにかまえた切尖きっさきは千浪の胸の前で、ただわくわくとふるえていた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
透明とうめい清澄せいちょうで黄金でまた青く幾億いくおくたがい交錯こうさくし光ってふるえて燃えました。
インドラの網 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
この頃、柳原のどてに辻斬りが出るという物騒な噂があるので、お里はそんなことを言い出して足がすくむほどふるえていた。
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
満枝は彼の枕をとらへてふるひしが、貫一の寂然せきぜんとしてまなこを閉ぢたるにますますいらだちて、
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
痩せた梧の青い葉はまだ大きい手を拡げないが、古い槐の新しい葉は枝もたわわに伸びて、軽い風にも驚いたようにふるえている。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「ああ、なんという怖ろしいやつだろう」と神経的なまたたきをして、熊城もこころもちふるえを帯びた声で云った。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
やがて、伸子は竪琴ハープに顔を隠して、肩をふるわせ激しい息使いを始めたが、法水は、それなり訊問を打ち切ってしまった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
何となく圧迫されるような気持で封を切った石子刑事は、忽ち両手をブル/\ふるわせて、血の気を失った唇をきっと噛みしめた。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
辰さんが父親らしい情のこもった口調で慰めると、娘は頭から肩までふるわせて、泣く度に言うこともよく解らない位だった。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いずれも、自分が立会ってとくと見定めたような話しぶり。実は斬合いという声を聞くと、戸を閉じてふるえていた連中。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
我は前の日の酒のうまかりしを稱へしかど、翁自ら瓶取り出して、ふるふ痩手にて注ぎたれば、これさへあだなる望となりぬ。
私は心の底までふるえあがったが、かの幻影に悩まされていた当時のように、気違いじみた憧憬は少しも起こって来なかった。
その蒼ざめた顔その悲しそうな声、今も眼に着いて耳について、思い出しても悚然ぞっとします――と声ふるわせて物語る。
お住の霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
眼でも悪いのか、しょぼしょぼした目蓋をせわしなくふるわせながら、小鼓つづみの望月は二三歩先に立って道を拾う。
助五郎余罪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
そしてはつと気がいて後を見ると、〓間なげしに懸つたゲツセマネの基督は吃驚びつくりしたやうにふるへて居た。
『新坊さん、新坊さん!』と智恵子は慌てて小供に手を添へて、『まア真箇ほんとに! うしませう!』とふるへてゐる。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
だから、伸子があわせ一枚の寒さにふるえながら、金策に出かけると云った時に、彼はその無駄な事を説いて、彼女を留めた。
罠に掛った人 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
筆を持っている手が、少しブルブルふるえた。彼は、紙を身体でおおいかくすようにしながら、仮名で『くろすけ』と書いた。
入れ札 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
慈愛深き老尼僧は今まで少しふるえて居られましたが、眼には涙が満ちて非常に心配らしくまた悲しい有様を呈して居ましたが
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ソーニャ まあ、ふるえてらっしゃるのね? 気をもんでらっしゃるのね? (探るように相手の顔を見つめる)わかったわ。
とうとう国境まで来たのかと思うと、ひえびえと私は雨の湿りにふるえたが、また、子供のように其処らを駈け廻りたくもなった。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
鈴川主水は眞つ蒼になつて、頬のあたりがピリピリふるへてをります。恐ろしい激怒に、ハツと自制心を取はづした樣子です。
白く、冴え切ったお小夜の決死の顔に反して、甚三郎の方は、むしろ土気いろに、体もこわばり、どこか微かにふるえていた。
夏虫行燈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老女は畳みかけました。事の重大さに面喰った青侍は、大地に双手もろてを突いて、恐れ入った姿で肩さえふるわして居ります。
未亡人も、爺やも、美保子も、事情を察して飛んで来たものと見えて、廊下に固まって、ふるえ乍ら、部屋の中を覗いて居ります。
悪魔の顔 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
三名はさっと眉色びしょくを変えた。わけて伝五は唇のあたりの筋をひっ吊るようにふるわせて、つとその膝へつめ寄った。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
太守も不思議に思って、ひそかに李の方をみかえると、彼も色蒼ざめて、杯をることも出来ないほどにふるえているのである。
ト少しドギマギして、ふるえていはしまいかと自分でも気が引けるような弱い返辞をしながら、あわてて衣を着けて支度をした。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
母親のひばりは、ものえずにぶるぶるふるえながら、子供こどものひばりを強く強くいてやりました。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ありとあらゆるものが、魔法のような美くしいうちに、乙女の声は体のふるえる力と魅力をもって澄み上って行ったのです。
地は饒なり (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
その葉のおもてに、盞の底に、寒さにふるへる真冬の日かげと粉雪のかすかな溜息とが、溜つては消え、溜つては消えしてゐる。
水仙の幻想 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
私はもう、気味が悪いやら怖いやら、がたがたふるえておりますと、お神さんがね、貴方、ざくりと釘をつかみまして、
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
暫らくは、誰もが口をかなかった。運転手が、ブル/\ふるえ出したのが、ほの暗い提灯の光の中でも、それとわかった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
細かくふるう哀韻を聴き得ないのは、憶良おくらなどの歌もそうだが、この一団の歌人の一つの傾向と看做みなし得るであろう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
庄次郎は、くぎを踏んだように、すくんでしまった。足の裏から、昨夜ゆうべの恐怖を、思いだして、ぶるっとふるえた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もちろん自分で見ることは出来ないが、何しろすこぶる息がつまりくちびるふるえて、頭を動かしていたに違いない。
端午節 (新字新仮名) / 魯迅(著)
その少女は、熱砂ねっさの上に、俯伏になっていたが、時折、両の手をぶるぶるとふるわせながら、砂をかき乱していた。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
「ん、しもやけだ。」と進が返事をすると、見ている間に、お母アの眼がつり上がって、薄い唇がピリピリとふるえ出した。
母たち (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
私はやにわに、ピストルを持って飛び出そうとすると、妻は両腕でしっかりと私を抱き止めて、ふるえるような力で押えるのでした。
「怨みが三重になりました」兵馬の声はふるえている。「主義の敵に親同士の怨みに、失明されました私自身の怨みに……」
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
椿を突いた京子の右の手はまま前方に差し出たなり、左手はぶらんと下って、どちらも小刻みにふるえ出した。
春:――二つの連作―― (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
と、心では叱〓しったしてみるものの、どうしようもないふるえを白い刀身にきざむだけで、いつまで斬ッてかかれなかった。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五音の調子に少しふるえを帯びて居りますが、横になって妾お元の美女に眺め入って居た原口作左衛門、そこまでは気が付きません。
禁断の死針 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
油のような生温かい雨が降るのに、芳年の身体からだは、ガタガタ小刻みにふるえて、時々はしゃっくりをして居ります。
芳年写生帖 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
飛出しそうな眼、おどおどした落着きのない顔、指先などがブルブルふるえて、新兵衛の顛倒した様子は、全く眼も当てられません。
ガラッ八は間もなく二十三四の青白い男をつれて来ました。恐怖と疑懼ぎくとにさいなまれて、腹の底からふるえている様子です。
銭形平次捕物控:130 仏敵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
ぎょッとしたようなふるえが、天蔵の足から背すじへ、明らかに走った。まさか十六歳のこの家の童僕とは思えなかったに違いない。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大烏はもう怒ってぶるぶるふるえて今にも飛びかかりそうです。双子の星は一生けん命手まねでそれをおさえました。
双子の星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
――寒い空、新らしい刑壇、刑壇の上に立つ彼の姿、襯衣一枚のままふるえている彼の姿、――ことごとく鮮やかな想像の鏡に映った。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
歌っているうちに、声がふるえ涙がほおを伝わった。女々めめしいぞとみずかしかりながら、どうしようもなかった。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「おとつゝあ、何遍なんべんつたんだわ」卯平うへいまた煙管きせるんですこふるへた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
やっぱり二人とも出ていたねえ、子供は高いところなもんだからもうぶるぶるふるえて手すりにとりついているんだ。
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
祖父は階下したにおりて金函かねばこの前にすわったが、手がふるえて手燭てしょくへなかなか火がつかなかった。
市民の胸の感激にあふれて打ちふるえ、市長閣下に対する感謝の涙潸然さんぜんとしてくだるを見るは誠にいじらしき限りなり。
やはり平土間に席をとっていたグーロフは、彼女の傍へ歩み寄ると、無理に笑顔をつくりながらふるえる声でこう言った。
三左衛門はあっちこっちに石を置いている主翁の指端ゆびさきふるえを見ていた。それは主翁の神経的な癖であった。
竈の中の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
けろ!』アンドレイ、エヒミチは全身ぜんしんをぶる/\とふるはして。『おれめいずるのだツ!』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
と、その時、「うーん」とかすかに唸る声が聞えましたので、はっとして夫人を見ますと、眼球が不規則に動いて、唇がふるえました。
印象 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
細い水は一旦いったん噴き上って更に真直にさッと落ちて来ると、夏楓の柔い葉は重いしずくに堪えないように身をふるわした。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
首実検の時に手をふるわせながら、懐紙かいしを口にくわえる仕種しぐさなどをひどく細かく見せて、団十郎式に刀をぬきました。
米国の松王劇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
けろ!』アンドレイ、エヒミチは全身ぜんしんをぶるぶるとふるわして。『おれめいずるのだッ!』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ずるずるッと廊下を引摺ひきずって行こうとする。ものかげにみていたなつめは唇の色を失ってふるえていた。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御主人はいって、体じゅうに、かつて、人に見せた事もないたかぶりをふるわせながら、京の方を指さしていわれた。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
街燈の光りで見た有喜子は、もうすっかりおびえきっていて、顔の筋肉をふるわし、まるで死人の如く青褪めていました。
機密の魅惑 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
お兼は少しふるへて居ります。岡つ引などといふ人種は何時人を縛るかわからないと言つた、無智な恐怖にさいなまれて居るのでした。
強健な相模さがみ者で、恐ろしく元氣さうですが、平次が名題の岡つ引と聽いて、齒の根も合はないほどガタガタふるへて居ります。
路の辺に紅の玉をつけた梅もどきの枝に尾を動かしているひたきは、私の近寄るのも知らぬげに寒さにふるえている。
茸をたずねる (新字新仮名) / 飯田蛇笏(著)
普通の刺戟しげきれて了った神経をふるおののかすような、何か不思議な、奇怪な事はないであろうか。
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「ああでも言って逐攘おっぱらわなくちゃ、遣切やりきれやしないじゃないか」お島はふるえるような声で言った。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
百姓どもははっとして、息を殺して象を見た。オツベルは云ってしまってから、にわかにがたがたふるえ出す。ところが象はけろりとして
オツベルと象 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
焔の舌が三つに分かれ、ヒラヒラ空の方へ立ち上るていは、芍薬の蕾が花弁を開き、その尖端せんたんふるわせるようであった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
竜之助はその刀に残る血の香にふるえつくようでありました。身体もまたブルブルと顫えて、手に持った刀から水が飛ぶようであります。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
苛刻かこくな現実精神をかの獰猛どうもうな妖怪から、身をもって学んだわけだ、と、悟浄はふるえながら考えた。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
私はなぜふるえながらその櫛をうけ取って、まるで蛇をつかんだように冷たく感じられる女の髪に自分の手を触れたか。
寒くないかと、見舞を言ったお雪ちゃんその人が、かえって寒さにふるえている面影を、竜之助はありありと見ました。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
セエラは手を額にあてました。唇はわなわなふるえていました。セエラはまるで夢の中にいるように思わず囁きました。
あのぶる/\とふるへる太股ふともゝ乃至ないしその近邊ちかまにある處々ところ/″\けていのりまするぞ。
と、いつか、両袖で顔を隠してしまつた。あはれその心の底は、いかに激しく悶えるのであらう。肩頭かたさきよりかすかにふるへた。
もつれ糸 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
と云って聞いたが、細君は真蒼まっさおな顔をしてふるえているばかりで何も云わなかった。そこで息子が又聞いた。
平山婆 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
虚子氏は筆を取り上げたが、手がふるつてどうしても字が書けなかつた。短冊は見る見るうちに書き潰されてしまつた。
主人はかうきめつけられて、ぐうのも出ず、くなつた蝙蝠傘のやうに、真つ直につてぶるぶるふるへて居た。
それは、母親たちの間をうろつき、不器用なからだつきで、あらった四本の棒切れのような脚を、ぶるぶるふるわせている。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
声をふるわせてカ氏とジャヴェリとの悲憤の手に握りしめられていたクシャクシャの電報三葉は左のごとくに読まれた。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「この尼僧院には私たちのオーリャが居るのよ」とソフィヤ・リヴォヴナは言って、やはり十字を切ったが、その身はふるえた。
そう報告する男が、がちがちと奥歯をふるわせていうことであるから、話し半分として聞いても、事態の容易でないことは争えなかった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、伊吹山のころから今もまだ、帯かたもとか、どこかに付けているらしい鈴が、ふるえるように彼女の身動きとともに鳴った。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし再び、驚くべき事実をのあたりに見せられて、彼の好奇心は、満足を通り越え、恐怖のふるえに襲われた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と秋の虫でもふるえ啼くように柱の鈴縄が鳴った。「……おうっ」と高氏は、腹のそこで、母の合図にこたえて起った。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の仕事着をつかんで、彼の母は、つて一度も、子に見せた事のない程な、悲しい声をふるわせてすがった。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
玄沢坊にせき立てられて、佐久間勘解由、夢心地に立上ると、お勝手に小さくなってふるえているお竹の手を取ってれて来ました。
云いかけて、義経はかわいた唇のふるえを歯でむすんだ。ともすれば今でもまた、あふれかけそうな瞼のものをそっとこらえて。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
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