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襤褸
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ぼろ
ふりがな文庫
“
襤褸
(
ぼろ
)” の例文
襤褸
(
ぼろ
)
シャツを
捲
(
まく
)
りあげた二の腕に「禍の子」「自由か死か」という物凄い入墨の文字が顔を出しているのをも、彼は見逃さなかった。
ラ・ベル・フィユ号の奇妙な航海
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
いずれ支那兵あたりが使用したものであるが、いまはそれも見世物で、私達が近よってゆくと、五つ六つの
襤褸
(
ぼろ
)
をまとった女の子が
中支遊記
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
彼の思想は物置場であり、ユダヤ人の古物店であって、珍稀な器物、高価な布、鉄
屑
(
くず
)
、
襤褸
(
ぼろ
)
などが、同じ室の中に
堆
(
うずたか
)
く積まれていた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
溝に
架
(
わた
)
した
花崗石
(
みかげいし
)
の橋の上に、髪ふり乱して垢光りする
襤褸
(
ぼろ
)
を着た
女乞食
(
をなごこじき
)
が、二歳許りの
石塊
(
いしくれ
)
の様な児に乳房を
啣
(
ふく
)
ませて坐つて居た。
葬列
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
明日
(
あした
)
から引っ込んでるがいい。店へなんぞ出られると、かえって家業の邪魔になる。奥でおん
襤褸
(
ぼろ
)
でも
綴
(
つづ
)
くッてる方がまだしも
優
(
まし
)
だ。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
▼ もっと見る
襤褸
(
ぼろ
)
を着てこんな真似をしてこんな親に附いて居ようより、
一層
(
いっそ
)
の事
好
(
い
)
い処へ往って仕舞おうとお前に
愛想
(
あいそ
)
が尽きて出たのに違いない
文七元結
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
が、左の手は、ぶらんと落ちて、
草摺
(
くさずり
)
の
断
(
たた
)
れたような
襤褸
(
ぼろ
)
の袖の中に、肩から、ぐなりとそげている。これにこそ、わけがあろう。
貝の穴に河童の居る事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼は物貰ひのやうに
襤褸
(
ぼろ
)
つ
片
(
きれ
)
を身に纏つて、日がな一日ぼりぼりと微かな歯音をたてて、そこらの葉つぱをかじるのに余念がない。
独楽園
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
その真ん中に、
襤褸
(
ぼろ
)
を着た女がすわって、手に長い
竿
(
さお
)
を持って、雀の来て
啄
(
ついば
)
むのを
逐
(
お
)
っている。女は何やら歌のような調子でつぶやく。
山椒大夫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
私は今迄に不具者や、
襤褸
(
ぼろ
)
の着物を着た者や、変な着物が、ひやかされたり、騒ぎ立てられたりしたことを、只の一度も見ていない
*
。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
これが石油を
襤褸
(
ぼろ
)
に
浸
(
し
)
み
込
(
こ
)
まして、火を着けて、下から
放
(
ほう
)
り
抛
(
な
)
げたところですと、市川君はわざわざ
崩
(
くず
)
れた
土饅頭
(
どまんじゅう
)
の上まで降りて来た。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
犬が飛びつく、血だらけの
襤褸
(
ぼろ
)
みたいなもの、半分になった鷓鴣を持って来る。拳骨が、残りの半分をふっ飛ばしてしまったのである。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
ただ残っていたものは、掛けぶとんと自ら言っていた
襤褸
(
ぼろ
)
と、床にひろげた一枚の敷きぶとんと、
藁
(
わら
)
のはみ出た一脚の椅子だけだった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
表を通る
襤褸
(
ぼろ
)
を下げた奴が矢張己れが親類まきで毎朝きまつて貰ひに來る
跣跋
(
びつこ
)
片眼
(
めつかち
)
の彼の婆あ何かゞ己れの爲の何に當るか知れはしない
わかれ道
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
持つ
意
(
つも
)
りでございますが、
偖
(
さて
)
故郷というところは案外予言者を入れぬもので、
襤褸
(
ぼろ
)
を纏った私などはさぞ虐待されることでございましょう
国事犯の行方:―破獄の志士赤井景韶―
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
雨が
霽
(
は
)
れると水に濡れた家具や
夜具
(
やぐ
)
蒲団
(
ふとん
)
を初め、何とも知れぬ
汚
(
きたな
)
らしい
襤褸
(
ぼろ
)
の数々は旗か
幟
(
のぼり
)
のやうに
両岸
(
りやうがん
)
の屋根や窓の上に
曝
(
さら
)
し出される。
水 附渡船
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
彼は、他の者よりは大胆だったので、骸骨のずっと近くへ行っていて、衣服の
襤褸
(
ぼろ
)
を調べていたのだ。「ともかく、これぁ船乗の服だ。」
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
土塊
(
どくわい
)
の
如
(
ごと
)
く
動
(
うご
)
かぬ
彼
(
かれ
)
の
身體
(
からだ
)
からは
憐
(
あはれ
)
に
微
(
かす
)
かな
煙
(
けぶり
)
が
立
(
た
)
つて
地
(
ち
)
を
偃
(
は
)
うて
消
(
き
)
えた。
藁
(
わら
)
の
火
(
ひ
)
を
沿
(
あ
)
びた
時
(
とき
)
其
(
そ
)
の
火
(
ひ
)
が
襤褸
(
ぼろ
)
な
彼
(
かれ
)
の
衣物
(
きもの
)
を
焦
(
こが
)
したのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
姐さんといふのは一時は日本一とまで唄はれた程聞えた美人で、年は若いが極めて落ちついた何事にも
襤褸
(
ぼろ
)
を見せないといふ
質
(
たち
)
の女である。
梅龍の話
(旧字旧仮名)
/
小山内薫
(著)
襤褸
(
ぼろ
)
商人の家の二階の
格子窓
(
こうしまど
)
の前の屋根の上に
反古籠
(
ほごかご
)
が置いてあって、それが格子窓にくくりつけてある。何のためか分らぬ。
車上の春光
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
花を盛つた桜は彼の目には一列の
襤褸
(
ぼろ
)
のやうに憂欝だつた。が、彼はその桜に、——江戸以来の向う島の桜にいつか彼自身を見出してゐた。
或阿呆の一生
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
斯う呼びながら、其処へ、腰抜け同様になって長い間床に就いているお婆さんが、
襤褸
(
ぼろ
)
を曳摺って奥の部屋から這出して来た。
黒い地帯
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
眼
(
まなこ
)
の光
濁
(
にご
)
り
瞳
(
ひとみ
)
動くこと遅くいずこともなくみつむるまなざし鈍し。
纒
(
まと
)
いしは
袷
(
あわせ
)
一枚、裾は短かく
襤褸
(
ぼろ
)
下がり濡れしままわずかに
脛
(
すね
)
を隠せり。
源おじ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
それは恐らく、どこかの多くの男たちの姿の中から、つぎはぎに引き摺り出された
襤褸
(
ぼろ
)
のようなものだったにちがいない。——
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
それらの洗濯物は、そうやってぬれて綱にはられているからこそ洗濯ものとよばれるけれど、どれもみんな
襤褸
(
ぼろ
)
ばかりだった。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
アルマンが「
可笑
(
をか
)
しな
母
(
かあ
)
さんだこと。こんな物を眺めて、流行遅れの
襤褸
(
ぼろ
)
ばかしぢやありませんか」と云ふと、マドレエヌは目に涙を
浮
(
うか
)
べて
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
筆を入るれば入るるほど統一が破れて
襤褸
(
ぼろ
)
が出る感じがするので、一二文字の末を改めたほかは、いったん加筆した部分もすべて取り消して
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
あれぢやたとへキモノを着てゐたところで
襤褸
(
ぼろ
)
つきれで
掌
(
てのひら
)
の機械油をごしごし拭きつけた人なることは一目
瞭然
(
りょうぜん
)
ぢやないか。
三つの挿話
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
毛布やモスリンの新しい塵が加わっても、やはり昔通りに
畳
(
たたみ
)
を敷きつめて、その上で綿や
襤褸
(
ぼろ
)
ぎれをばたばたとさせている。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
その藪の中から
襤褸
(
ぼろ
)
の小屋を架け出して何やら煙を立てゝいる物の形を何とも思わなかったし、そこに一人の
出鱈目
(
でたらめ
)
な服装をした老人がいて
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
正直そうな母が一人で
襤褸
(
ぼろ
)
をつづくっていて、お吉は今朝いつもの通りに家を出たぎりでまだ帰らないと云った。母の顔色には嘘は見えなかった。
半七捕物帳:04 湯屋の二階
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
……そのとき、その道ばたの一軒の
茅葺
(
かやぶき
)
小屋の中から、
襤褸
(
ぼろ
)
をきた小さな子供が走り出してきて、その四つ手網を重そうに一人で持ち上げだした。
三つの挿話
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
びしょびしょな
襤褸
(
ぼろ
)
にくるまった彼女は、気味悪いばかりでした。彼女は、じっと目の前を見つめ、苦痛のあまりぽかんとした顔をしていました。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
枯枝の先に
襤褸
(
ぼろ
)
をつけて、どっぷりと油を
浸
(
ひた
)
し、それを、火口から幾つも抛りこんで、ぱッと、
燐木
(
つけぎ
)
の
焔
(
ほのお
)
を投げこんだ。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
人々は皆
神仏
(
かみほとけ
)
のように畏敬し、深く前の軽薄を悔いて気を失うばかり……自分の
襤褸
(
ぼろ
)
屋敷の門内を賃借りする雑姓を追い出し——追い出すどころか
白光
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
破れ掛つた処を、
襤褸
(
ぼろ
)
や
古帽子
(
ふるしやつぽ
)
で埋めた窓が、広く開けてあつて、戸の上には、「ジヨナタン、ヅウリツトルの聯邦客舎」と塗字で書いてあります。
新浦島
(新字旧仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
何といふ寒々とした薄い影! お前の
草臥
(
くたび
)
れた神経は飽くまで簫条と色蒼ざめて
襤褸
(
ぼろ
)
外套の背筋にまで、何とまあ鈍く光沢なく滲み出てゐることか!
竹藪の家
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
僕も毎日こうやってちょいちょい掛けてみてると、こいつは怪しいというような奴はだんだん
襤褸
(
ぼろ
)
が眼についてくる。
贋物
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
いつぞや肺病で死んだニーナさんが寝かされていたその
寝台
(
ベッド
)
の上に、湯タンポと
襤褸
(
ぼろ
)
っ
布片
(
きれ
)
で包まれながら、
素
(
す
)
っ
裸体
(
ぱだか
)
で放り出されているじゃないの。
支那米の袋
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
前の
棟割
(
むねわり
)
長屋では、垣から垣へ物干竿をつらねて、汚ない
襤褸
(
ぼろ
)
をならべて干した。栗の花は多く地に落ちて、泥にまみれて、汚なく人に
踏
(
ふ
)
まれている。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
一瞬間、縦横に入り乱れた斬っ
尖
(
さき
)
に、壁や天井代りの筵が、ズタズタに切り裂かれて、
襤褸
(
ぼろ
)
のようにたれさがった。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
東京中の
煤掃
(
すすは
)
きの
塵箱
(
ごみばこ
)
を此処へ打ち明けた様なあらゆる
襤褸
(
ぼろ
)
やガラクタをずらりと並べて、売る者も売る、買う者も買う、と唯驚かるゝばかりである。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
地見
(
ぢみ
)
、椅子直し、
襤褸
(
ぼろ
)
ッ買い、屑屋なんていうてあいが
海鼠板
(
なまこいた
)
で囲った簡素高尚なバラックを建てて住んでいる。
犂氏の友情
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「冗談おっしゃってはいけません、私は御覧の通りの貧乏俳諧師、逆さにふるったって
鐚
(
びた
)
一文ありゃしません、この
襤褸
(
ぼろ
)
を身ぐるみ脱いだところで——」
其角と山賊と殿様
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その浪もとに立つて、みるめの樣な
襤褸
(
ぼろ
)
をまとつたシヤモやアイノが、長い紐のさきに石を結びつけたのを浪間へ投げ込んでは、昆布を拾ひあげてゐる。
泡鳴五部作:04 断橋
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
痩せた体に
襤褸
(
ぼろ
)
を纏つて埃だらけになつてゐる。髪は短く切つてある。足には百姓の靴を穿いて、頭には百姓の帽子を着てゐる。それが叮嚀に礼をした。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
ここをくぐり、都会へ出て、めちゃめちゃに敗れて、再びここをくぐり、虫食われた肉体一つ持って、
襤褸
(
ぼろ
)
まとってふるさとへ帰る。それにきまっている。
座興に非ず
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
海藻
(
わかめ
)
を
綴
(
つづ
)
ったような、恐ろしい
襤褸
(
ぼろ
)
が、二三枚無いことはありませんでしたが、五月になるとそれを剥がれて、陽の当るうちは、岩の上でも、藪の中でも
裸身の女仙
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
月はいよいよ西に傾きて、遥かの沖の方には、
綿
(
わた
)
の如く、
襤褸
(
ぼろ
)
の如き怪しげなる雲のしきりに動くを見たり。
片男波
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
それは、藻か
襤褸
(
ぼろ
)
かわからぬようなものを身につけていて、見れば
擬
(
まぎ
)
れもなく人間の男だ。胸に大きな拳形の
痣
(
あざ
)
があって、ほかは、吾々と寸分の違いもない。
人外魔境:05 水棲人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
襤
漢検1級
部首:⾐
19画
褸
漢検1級
部首:⾐
16画
“襤褸”で始まる語句
襤褸切
襤褸屑
襤褸片
襤褸布
襤褸錦
襤褸屋
襤褸布団
襤褸船
襤褸巾
襤褸市