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衣紋
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えもん
ふりがな文庫
“
衣紋
(
えもん
)” の例文
八五郎は急に
衣紋
(
えもん
)
を正したりするのでした。親分にかう褒められたのは、三年前御府内荒しの三人組を手捕りにした以來のことです。
銭形平次捕物控:135 火の呪ひ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼は何かに酔ひしれた男のやうに、
衣紋
(
えもん
)
もしだらなく、ひよろ/\と
跚
(
よろ
)
けながら寝室に帰つて、疲れ果てて自分の寝床に
臥
(
ふ
)
し倒れた。
An Incident
(新字旧仮名)
/
有島武郎
(著)
紫玉は我知らず
衣紋
(
えもん
)
が
締
(
しま
)
った。……
称
(
とな
)
えかたは
相応
(
そぐ
)
わぬにもせよ、
拙
(
へた
)
な山水画の
裡
(
なか
)
の隠者めいた老人までが、確か自分を知っている。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
母親の物言ふ度にぴよこぴよこ頭を下げ「立ちかはつたる機嫌にぐんにやり」にて頭をかき
衣紋
(
えもん
)
を壊して、体をぐたりとならしむ。
いがみの権太:(明治二十九年一月、明治座)
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
矢張刀法が強く、その点一寸父のものと似ているが、
衣紋
(
えもん
)
の彫方なども全然違い、感じが荒っぽく一見山田先生の特色が出ている。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
▼ もっと見る
「それが、あなた」と、うち消すやうに首を一つ
和
(
やは
)
らかにまはして、襟を拔け
衣紋
(
えもん
)
にして、「御失敗のもとぢやアありませんか?」
泡鳴五部作:02 毒薬を飲む女
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
鬢盥
(
びんだらい
)
に、濡れ手拭を持ち添えたいろは茶屋のお品は、思いきりの
抜
(
ぬ
)
き
衣紋
(
えもん
)
にも、まだ
触
(
さわ
)
りそうな
髱
(
たぼ
)
を気にして、お米の側へ腰をかける。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
金之助は立って
衣紋
(
えもん
)
を直し、刀を取上げて振返った。半三郎は毀れた
木偶
(
でく
)
のように、身を投げだしたまま動くけはいもなかった。
落ち梅記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
これに
直垂
(
ひたたれ
)
を着せ、
衣紋
(
えもん
)
をただし、袴をはかせて見ると、いかなる
殿上人
(
てんじょうびと
)
もおよび難き姿となって、「おとこ美男」の名を取る。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
髪はほつれ、お
化粧
(
つくり
)
ははげ、
衣紋
(
えもん
)
はくずれて、見る影もありません。まるで、このトンガリ長屋のおかみさんの一人のよう……。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
長押
(
なげし
)
に
衣紋
(
えもん
)
かけで釣り下げられている下町風な柄の洋服と商人風の羽織。「
穢
(
けが
)
されたものだ」わたくしは怒りに眠たさも覚めてしまいます。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
また、
衣物
(
きもの
)
の
縮緬
(
ちりめん
)
、
裾
(
すそ
)
模様の模様などにも苦心し、男の子の着流しの
衣紋
(
えもん
)
なども随分工夫を凝らしてやったのでありました。
幕末維新懐古談:27 引き続き作に苦心したこと
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
彼女は夜になるとよく、何かの用事にかこつけて、大柄な浴衣を抜き
衣紋
(
えもん
)
にし、白粉を平べつたい顔に塗り立てて外出した。
少年
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
彼女は巧みに
衣紋
(
えもん
)
をつくろって、少しも
態
(
わざ
)
とらしくなく、それを隠していたけれど、上野の山内を歩いている間に、私はチラと見てしまった。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そのうなだれたぼんのくぼあたりへ、月の光が落ちていて、抜き
衣紋
(
えもん
)
になっている肩の形が、いかにも寂しく見受けられる。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
緋
(
ひ
)
の
板〆縮緬
(
いたじめぢりめん
)
に
鶯
(
うぐいす
)
色の
繻子
(
しゅす
)
の
昼夜帯
(
はらあわせ
)
を、ぬき
衣紋
(
えもん
)
の背中にお太鼓に結んで、
反
(
そ
)
った
唐人髷
(
とうじんまげ
)
に結ってきたが、帰りしなには
旧聞日本橋:12 チンコッきり
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
そこで月代をした上へ
引火奴
(
ほくち
)
を黒々と糊で貼り付けて出ると、一通りの調べが濟んでから、代官が
繼
(
つ
)
ぎ
裃
(
がみしも
)
の
衣紋
(
えもん
)
を正して
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
つき添いの女中たちも急に、今から、
衣紋
(
えもん
)
を直し合ったり、囁きを交したりして、一座はもう落ちつきを失って来たようにさえ見えるのだった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
黒一楽
(
くろいちらく
)
の
三紋
(
みつもん
)
付けたる
綿入羽織
(
わたいればおり
)
の
衣紋
(
えもん
)
を直して、彼は
機嫌
(
きげん
)
好く
火鉢
(
ひばち
)
の
傍
(
そば
)
に歩み寄る時、直道は
漸
(
やうや
)
く
面
(
おもて
)
を
抗
(
あ
)
げて礼を
作
(
な
)
せり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
口で
囃
(
はや
)
して、床を踏み鳴らして歩いた。大正エビは頭に派手な
手拭
(
てぬぐい
)
をかぶり、
衣紋
(
えもん
)
を抜いている。
女形
(
おやま
)
のつもりなのだ。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
市郎の顔を見るや、
彼女
(
かれ
)
は
俄
(
にわか
)
に
衣紋
(
えもん
)
を
繕
(
つくろ
)
って、「あら、若旦那……。」と、
叮嚀
(
ていねい
)
に挨拶した。市郎も黙って目礼した。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
これはあの
衣紋
(
えもん
)
のクリコミ加減でもお解りになります通り、或る
町家
(
ちょうか
)
の娘で、
芸妓
(
げいしゃ
)
に売られておった者で御座いますが、なかなかの手取りと見えて
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
自然と抜き
衣紋
(
えもん
)
になっているためか猫背が一層円々と見える、———着附と云い、姿勢と云い、そう云う
爺臭
(
じじくさ
)
い風をするのがこの老人の好みであって
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
半衿のかかった軟かい着物のうえに、小紋の羽織などを抜き
衣紋
(
えもん
)
にして、浅山が差してくれる猪口を両手に受けなどして、お庄にもお愛想を言っていた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
色の白い
愛嬌
(
あいきょう
)
のある
円顔
(
まるがお
)
、髪を
太輪
(
ふとわ
)
の
銀杏
(
いちょう
)
返しに結って、伊勢崎の襟のかかった着物に、
黒繻子
(
くろじゅす
)
と変り八反の昼夜帯、
米琉
(
よねりゅう
)
の羽織を少し
抜
(
ぬ
)
き
衣紋
(
えもん
)
に
被
(
はお
)
っている。
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
衣紋
(
えもん
)
を繕っているのであるから、それには全く、美くしさとか調和とか云うものが
掻
(
か
)
き
消
(
う
)
せてしまって、何さま醜怪な地獄絵か、それとも思い切って度外れた
絶景万国博覧会
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
それからその又国芳の浮世絵は観世音菩薩の
衣紋
(
えもん
)
などに西洋画風の
描法
(
べうほふ
)
を応用してゐたのも覚えてゐる。
槐
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
幕とか旗とかに付けた
符牒
(
ふちょう
)
で、その思い付は京都の大官連が車に家々の紋を付けたのが
本
(
もと
)
で、紋の材料は現今の通説のごとく、礼服の
衣紋
(
えもん
)
から得たものであろう。
名字の話
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
へらへらした生地の、安物の着物の
衣紋
(
えもん
)
を思い切り抜いて、その
頸筋
(
くびすじ
)
から肩にかけて白粉を真白に塗りたくっていたが、その顔は齢をごまかす厚化粧ではなかった。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
傍
(
かたわ
)
らには接客用の卓が置かれてあった。その上に笠を置き、脇差を重ね、阿賀妻は
衣紋
(
えもん
)
をただした。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
かくのごとき無言劇が行われつつある間に主人は
衣紋
(
えもん
)
をつくろって
後架
(
こうか
)
から出て来て「やあ」と席に着いたが、手に持っていた名刺の影さえ見えぬところをもって見ると
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
借りてきた
衣紋
(
えもん
)
竹へ自らその羽織を裏返しにして掛けたら何とその羽織の裏一面が巧緻な春宮秘戯図! ために、今までわずかしかつめらしい空気でありすぎたその一座が
艶色落語講談鑑賞
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
黒縮
(
くろちり
)
つくりで
裏
(
うら
)
から出て来たのは、
豈斗
(
あにはか
)
らんや
車夫
(
くるまや
)
の女房、一
町
(
てう
)
許
(
ばかり
)
行
(
ゆ
)
くと
亭主
(
ていし
)
が待つて
居
(
ゐ
)
て、そらよと
梶棒
(
かぢぼう
)
を
引寄
(
ひきよ
)
すれば、
衣紋
(
えもん
)
もつんと
他人行儀
(
たにんぎようぎ
)
に
澄
(
す
)
まし返りて急いでおくれ。
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
道志山脈、関東山脈の山々の
衣紋
(
えもん
)
は、
隆
(
りゅう
)
として折目を正した。思いがけなく、
落葉松
(
からまつ
)
の森林から鐘が鳴った、小刻みな太鼓が
木魂
(
こだま
)
のように、山から谷へと朝の空気を
震撼
(
しんかん
)
した。
不尽の高根
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
日本髪に、ませたぬき
衣紋
(
えもん
)
の変わった姿とはいえ、長いまつ毛はもう疑う余地もなかった。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
(そは作者の知る処に
非
(
あら
)
ず。)とにかく珍々先生は食事の膳につく前には必ず
衣紋
(
えもん
)
を正し
角帯
(
かくおび
)
のゆるみを
締直
(
しめなお
)
し、
縁側
(
えんがわ
)
に出て手を清めてから、折々窮屈そうに膝を崩す事はあっても
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
或
(
ある
)
いはまた、さいぜん留守宅の若いお
妾
(
めかけ
)
の名を叫んで身悶えしていた八十歳の隠居は、さてもおそろしや、とおもむろに
衣紋
(
えもん
)
を取りつくろい、これすなわち
登竜
(
のぼりりゅう
)
に違いござらぬ、と断じ
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
化粧室なる
大玻璃鏡
(
すがたみ
)
の前には、今しも梅子の
衣紋
(
えもん
)
正して立ち出でんとするを
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
なにも伝六が参りますと特に断わらないでもいいのに、罪のないやつで、しきりと
衣紋
(
えもん
)
をつくりながら、気どり気どり出ていったようでしたが、矢玉のように駆け帰ってくると大車輪でした。
右門捕物帖:18 明月一夜騒動
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
そうして首筋の濃粧は主として
抜
(
ぬ
)
き
衣紋
(
えもん
)
の媚態を強調するためであった。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
改めさせられ御對面あるに
此時
(
このとき
)
將軍家の仰に中納言殿には天下の
一大事
(
いちだいじ
)
の
由
(
よし
)
何事なるやと御尋あれば中納言
綱條卿
(
つなえだきやう
)
には
衣紋
(
えもん
)
を正し天下の一大事と申候は
餘
(
よ
)
の
儀
(
ぎ
)
にも候はず
先
(
まづ
)
伺
(
うかゞ
)
ひ度は町奉行越前を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
まず枕もとに置いてあるものからかたづけ、次にぬいだねまきなどを
衣紋
(
えもん
)
竿にかけて日光にあて、まわりに何もなくなったところで、丁寧に夜具をたたんで、きまりどおりに順序よくしまうこと。
女中訓
(新字新仮名)
/
羽仁もと子
(著)
彼女は、
衣紋
(
えもん
)
を直しながら、もう昨日からのことについては、何にも考へまいと思ひ思ひ茶の間に這入つて、お茶を飲んだり、こはれかゝつた髪のピンをさし直したりして、漸く机の前に座つた。
惑ひ
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
マダム丘子は、するっと
衣紋
(
えもん
)
を抜いて、副院長の前の椅子にかけた。
蝱の囁き:――肺病の唄――
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
衣紋
(
えもん
)
の正しい夏衣裳は骨だって見える。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
と
衣紋
(
えもん
)
を
繕
(
つくろ
)
い
袴
(
はかま
)
の
皺
(
しわ
)
を伸ばし
手巾
(
はんけち
)
を
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
肌ぬぎし如く
衣紋
(
えもん
)
をいなしをり
五百五十句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
紫玉は
我知
(
われし
)
らず
衣紋
(
えもん
)
が
締
(
しま
)
つた。……
称
(
とな
)
へかたは
相応
(
そぐ
)
はぬにもせよ、
拙
(
へた
)
な山水画の
裡
(
なか
)
の隠者めいた老人までが、確か自分を知つて居る。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
八五郎は急に
衣紋
(
えもん
)
を正したりするのでした。親分にこう褒められたのは、三年前御府内荒らしの三人組を手捕りにした以来のことです。
銭形平次捕物控:135 火の呪い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「やはり地蔵尊かの。しかしお顔も
衣紋
(
えもん
)
も、ひどく磨滅して貝殻なども附着しておる。察するに、地蔵は地蔵でも、海上がりの
御仏
(
みほとけ
)
だろ」
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“衣紋”の意味
《名詞》
装束の着方。
着物の襟が胸で合わさる所。
衣服。
芸術の分野で衣服の襞の表現。
(出典:Wiktionary)
“衣紋(
抜衣紋
)”の解説
抜衣紋(ぬきえもん)は、女性の和服の着付け方のひとつである。
後襟(衣紋)を引き下げて、襟足が現れ出るように着ること。
(出典:Wikipedia)
衣
常用漢字
小4
部首:⾐
6画
紋
常用漢字
中学
部首:⽷
10画
“衣紋”で始まる語句
衣紋竹
衣紋坂
衣紋掛
衣紋着
衣紋竿
衣紋繕
衣紋架
衣紋附
衣紋裝束