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箍
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たが
ふりがな文庫
“
箍
(
たが
)” の例文
たちまち
箍
(
たが
)
を外して、年甲斐もなく鍵を掛けた妻の寝室の扉に体当りでもしかねまじいのを、自分ながらハッと恐れたからであった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
段々監督が
箍
(
たが
)
をゆるめ、馬鹿らしいちゃりを入れ出したので、終りまで見る気がなくなったが、私はそこまで可なり愉快であった。
茶色っぽい町
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
私の云ふ束縛とは若樹を縛る麻縄の如きものであつて、かの
将
(
まさ
)
に倒れんとする老樹を辛うじて支ふる鉄の
箍
(
たが
)
の如きものではないのである。
恋愛と道徳
(新字旧仮名)
/
エレン・ケイ
(著)
こっちへ追われ逃げ場をなくして松の木へ飛び付き
漸
(
やっと
)
呼吸
(
いき
)
を吐いたなんて、へ、それでも
稼人
(
かせぎにん
)
けえ? 鼠小僧も
箍
(
たが
)
が弛んだな。
善悪両面鼠小僧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
紀久子は身体の
箍
(
たが
)
が全部緩んだような気がしながら、目が熱くなってきてなにも言うことができなかった。正勝は微笑みながら繰り返した。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
▼ もっと見る
子供が急にゲラゲラ笑いをやり出したのは、
疳
(
かん
)
のせいで、笑神経の
箍
(
たが
)
がゆるんだのか、そうでなければ、対象物が変ったのだ。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それは縦に多くの板をよせ集めたぶかっこうなもので、上の方の板は下の方のものより広く、皆横に打ちつけた長い鉄の
箍
(
たが
)
で止めてあった。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
右衛門七が羽織を放さないので、その上から彼の首をつつみ、
背後
(
うしろ
)
から鉄の
箍
(
たが
)
かと思われるような両腕をまわして締めつけた。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
真鍮の
箍
(
たが
)
をたくさんはめた盥みたいなもののまはりに日の丸の小旗がぐるりとたつて、旗竿のさきに
鴛鴦鳥
(
をしどり
)
の形をした紅白の飴がついてゐる。
銀の匙
(新字旧仮名)
/
中勘助
(著)
腰の廻りに荒目昆布のごときびらびらのついた
真紅
(
しんく
)
の
水浴着
(
マイヨオ
)
を一着におよび、クローム製の
箍
(
たが
)
太やかなるを七八個も右の
手頸
(
てくび
)
にはめ込んだのは
ノンシャラン道中記:03 謝肉祭の支那服 ――地中海避寒地の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
今度は
徒
(
かち
)
あるきであるから
捗
(
はか
)
どらず、元の宿まで帰り着いた頃には夜が明けて、かの老人は店さきで桶の
箍
(
たが
)
をはめていた。
中国怪奇小説集:05 酉陽雑爼(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
樽はごろごろっと転がり落ちて、
箍
(
たが
)
がはじけ、酒店の戸口のすぐ外のところの敷石の上に止って、胡桃の殻のようにめちゃめちゃに砕けたのだ。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
ある朝、八五郎が
箍
(
たが
)
の
外
(
はづ
)
れた
桶
(
をけ
)
見たいに、笑ひながら飛び込んで來ました。九月もやがて
晦日
(
みそか
)
近く、菊に、紅葉に、江戸はまことに良い陽氣です。
銭形平次捕物控:306 地中の富
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「可愛がられた竹の子も、いまは抜かれて割られて、桶の
箍
(
たが
)
に掛けられて締められた——ってのはどうでえ。勘弁ならねえや。ざまあ見やがれ。」
釘抜藤吉捕物覚書:13 宙に浮く屍骸
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「口が悪い! 性分は仕方がありませんよ、大山さん。あんただって、
箍
(
たが
)
を嵌めたように瘠せているじゃありませんか」
山谿に生くる人々:――生きる為に――
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
山内さんが内地へ引上げて内閣を組織されるようになった大正五年以後、
折角
(
せっかく
)
、引締まっていた各道の役人の
箍
(
たが
)
がグングン
弛
(
ゆる
)
んで来たものらしい。
爆弾太平記
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ちょうど村の子供の間には
桶
(
おけ
)
の
箍
(
たが
)
を回して遊び戯れることが
流行
(
はや
)
って来たが、森夫も和助もその箍回しに余念のないような
頑是
(
がんぜ
)
ない年ごろである。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
巴里の婦人等といつたら、それこそその華奢な體姿の腰のところに、わざとらしい曲線をうたせ、特別な歩き方をし、鯨髯の
箍
(
たが
)
をはめて、飛び𢌞つた。
氷島の漁夫:01 氷島の漁夫
(旧字旧仮名)
/
ピエール・ロティ
(著)
長さは三フィート半、幅は三フィート、深さは二フィート半あった。
鍛鉄
(
たんてつ
)
の
箍
(
たが
)
でしっかりと締め、
鋲
(
びょう
)
を打ってあって、全体に一種の
格子
(
こうし
)
細工をなしている。
黄金虫
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
……というほどのことはなくっても、その間に、へんにどこか
箍
(
たが
)
のゆるんで来たような、ホゾの外れて来たようなかたちのあるのがかれに感じられて来た。
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
彼らは、大楽匠を踏み台にしておのれの腕前を
揮
(
ふる
)
い、広く世に知られてる作品を
形
(
かた
)
なしにしようとつとめ、ハ短調交響曲の
箍
(
たが
)
の飛びぬけをやってるのだった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
天秤棒は細手の、
飴色
(
あめいろ
)
に
磨
(
みが
)
きこんだ、特別製のようであり、手桶は
杉
(
すぎ
)
の
柾目
(
まさめ
)
で、
銅
(
あか
)
の
箍
(
たが
)
がかかっていた。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
何程
(
なんぼ
)
心細
(
こゝろぼせ
)
えか
分
(
わか
)
んねえもんですよ、
尤
(
もつと
)
もこれ、
死
(
し
)
ぬ
者
(
もの
)
せえあんだから
斯
(
か
)
うして
居
(
え
)
られんな
難有
(
ありがて
)
え
樣
(
やう
)
なもんぢやあるが、そんでも四
斗樽
(
とだる
)
の
太
(
ふて
)
え
箍
(
たが
)
ん
處
(
ところ
)
むぐつた
時
(
とき
)
や
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
鼻の
前
(
さき
)
を、その
燈
(
ひ
)
が、暗がりにスーッと
上
(
あが
)
ると、ハッ
嚔
(
くさめ
)
、
酔漢
(
よっぱらい
)
は、細い
箍
(
たが
)
の
嵌
(
はま
)
った、どんより黄色な魂を、口から抜出されたように、ぽかんと
仰向
(
あおむ
)
けに目を明けた。
菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
女は足で自分の椅子を押し
退
(
の
)
けた。そして鉄の
箍
(
たが
)
を
脱
(
はず
)
すように、自分の頭を病人の手から引き放した。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
田舎の農夫等が年中大人しく真面目に働いているのが、
鎮守
(
ちんじゅ
)
の祭とか、虫送りとか、盆踊りとか、そういう機会に平生の
箍
(
たが
)
をはずして、はしゃいだり怠け遊んだりした。
雑記(Ⅰ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
お櫃は
箍
(
たが
)
をみがき、すしはんぼは紙やすりをかけた。それらの製品はできるしだいに姿を消していく。つまり重吉は気に入るとそれを持ってあちこちへ出かけるのである。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
或
(
あるい
)
は
畳針
(
たたみばり
)
を
買
(
かっ
)
て来て畳の
表
(
おもて
)
を
附
(
つ
)
け
替
(
か
)
え、又或は竹を割って
桶
(
おけ
)
の
箍
(
たが
)
を入れるような事から、その
外
(
ほか
)
、
戸
(
と
)
の破れ屋根の
漏
(
も
)
りを繕うまで
当前
(
あたりまえ
)
の仕事で、皆私が
一人
(
ひとり
)
でして居ました。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
地は黒塗で、牡丹の
花弁
(
かべん
)
は朱、葉は緑、幹は黄、これに
金箔
(
きんぱく
)
をあしらいます。蓋には二つの
桟
(
さん
)
、胴には二段の
箍
(
たが
)
、その間に
線描
(
せんがき
)
の葉を散らします。作るのは盛岡であります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
肥桶の
箍
(
たが
)
を黄金で造ると言うたそうであるが、天国もそのとおりで、エスキモーの天国には
錦
(
にしき
)
のごときアザラシが泳いでい、インドの天国には車輪のような
蓮花
(
れんげ
)
が咲いている。
我らの哲学
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
フップとは北窻翁が、「たがかけのたがたがかけて帰るらん」と吟じた
箍
(
たが
)
すなわち桶輪だ。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
一向平気の十兵衛笑って、病人あしらいにされるまでのことはない、手拭だけを絞ってもらえば顔も一人で洗うたが好い気持じゃ、と
箍
(
たが
)
の
緩
(
ゆる
)
みし
小盥
(
こだらい
)
にみずから水を汲み取りて
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
況
(
いわん
)
や僕は既にわかくはない。感激も衰え批判の眼も鈍くなっている。
箍
(
たが
)
が
弛
(
ゆる
)
んでいる。
申訳
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
父は店先でトン/\と桶の
箍
(
たが
)
を
篏
(
い
)
れてゐたし、母は水汲に出て行つた後で私は
悄然
(
せうぜん
)
と圍爐裏の隅に
蹲
(
うづくま
)
つて、もう人顏も見えぬ程薄暗くなつた中に、焚火の中へ竹屑を投げ入れては
二筋の血
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
さすがの迷亭もこの
不意撃
(
ふいうち
)
には
胆
(
きも
)
を抜かれたものと見えて、しばらくは
呆然
(
ぼうぜん
)
として
瘧
(
おこり
)
の落ちた病人のように坐っていたが、
驚愕
(
きょうがく
)
の
箍
(
たが
)
がゆるんでだんだん持前の本態に復すると共に
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
四壑のために鉄より堅牢なる
箍
(
たが
)
を
匝
(
め
)
ぐらしたるもの、曰く鍋冠山、曰く霞沢山、曰く焼嶽、或ものは緑の莢を破りて長く、或ものは、紫の穂に出て高きが中に、殊に焼嶽(中略)は
それからそれ:書斎山岳文断片
(新字新仮名)
/
宇野浩二
(著)
箍
(
たが
)
の弛んだ桶のように壊裂し易い状態にあった中流の部分から、先ず恐る可き破壊作用を開始して、終に今日見るような深い峡谷を造るに至った導火線となったものではあるまいか。
黒部峡谷
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
身体を締めつけていた
箍
(
たが
)
を外した途端にぷうと
膨
(
ふく
)
れたといったような、その奇妙な肥り方を美佐子も示していて、まだ若いのだろうに、
年増
(
としま
)
の
贅肉
(
ぜいにく
)
のような、ちょっといやらしいのを
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
来て見れば予期以上にいよいよ幻滅を感じて、案外
与
(
くみ
)
しやすい
独活
(
うど
)
の大木だとも思い、あるいは
箍
(
たが
)
の
弛
(
ゆる
)
んだ
桶
(
おけ
)
、穴の
明
(
あ
)
いた風船玉のような民族だと愛想を尽かしてしまうかも解らない。
二葉亭追録
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
額に
箍
(
たが
)
を締められたような気分で、そしてふと気がつく。ああ、きょうも誰とも口をきかなかったと。これはよくない。きっと僕は
浮腫
(
むく
)
んだような顔をしているに違いない。誰とでもいい。
落穂拾い
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
後日私に継いで
政柄
(
せいへい
)
を執り、琉球に
金
(
かね
)
の
箍
(
たが
)
をはめるのはこの児であろうといったとの伝承がございますが、この
寧馨児
(
ねいけいじ
)
こそは他日薩州と琉球とを融和させた所の
羽地按司
(
はねじあんじ
)
向象賢であります。
琉球史の趨勢
(新字新仮名)
/
伊波普猷
(著)
※
(
やまきた
)
の濃染手拭、酒の名の「
潮
(
うしほ
)
」の盃、引出よと祝ふとわけて、我が
老舗
(
しにせ
)
酒はよろしと、
新
(
あら
)
の桝酒に
磨
(
みが
)
くと、春や春、
造酒
(
みき
)
よ
造酒
(
みき
)
よと、酒はかり、朱塗の樽の
栓
(
だぶす
)
ぬき、神もきかせと
箍
(
たが
)
たたき
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
彼等は肥っているが美食に疲れその皮膚は不自然に
箍
(
たが
)
になって
弛
(
ゆる
)
んでいる。彼等は美しい女を見ても本能を食慾の方へ導いてうまそうだと思う。肝や臓物を多く食うので胆石病にかかり易い。
食魔に贈る
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それが今はもう石油が出なくなったので、人々は
此方
(
こちら
)
の小屋を見捨てて、
彼処
(
かしこ
)
に移ってしまったのだろう。この桶も、もう
箍
(
たが
)
が腐って、石油を
容
(
い
)
れる役には立たないので
捨
(
すて
)
てあるものと見える。
暗い空
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
尤
(
もっと
)
も「女夫して……酔はしぬ」とある句法から見ると初めは住持の方はそれほど
箍
(
たが
)
を
外
(
はず
)
していなかったのを、女夫して遂に酔わしてしまったというような、多少強迫的なところも見ゆるのである。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
日本人の家では床の間へ三百円も五百円もする名画をかけておきながら台所へ往ってみると
箍
(
たが
)
の
嵌
(
はま
)
った七厘の下を妻君が破れた
渋団扇
(
しぶうちわ
)
で
煽
(
あお
)
いでいるような事もある。随分間違っているではないか。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
今日まで如何なる難題にも、邪推にも、悪罵にも、あてこすりにも十二分に堪えていた温良な嫁も、むざむざ良人との愛を
割
(
さ
)
かれるこの不法と苛酷に対して、思わず自制の
箍
(
たが
)
を
逸
(
はず
)
してかッと逆上した。
姑と嫁について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
きゅうと、胸が、ワイヤの
箍
(
たが
)
ででも、締めつけられるようである。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
けい
箍
(
たが
)
が外れてバラバラになっても困りますもの。
女の一生
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
弥撒集
(
いのりぼん
)
に突ツ込み、鉛の
箍
(
たが
)
の
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
“箍”の解説
箍(たが)は、桶や樽など結物の部材を固定するための輪をいう。
(出典:Wikipedia)
箍
漢検1級
部首:⽵
14画
“箍”を含む語句
箍骨
金箍棒
如意金箍棒
張箍
箍捌
細箍
緊箍咒
金箍
鉄箍