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礎
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いしずえ
ふりがな文庫
“
礎
(
いしずえ
)” の例文
西塔はすでに崩壊して、わずかに
土壇
(
どだん
)
と
礎
(
いしずえ
)
を残すのみであるが、東塔はよく千二百年の風雨に耐えて、白鳳の壮麗をいまに伝えている。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
その
礎
(
いしずえ
)
の
花崗岩
(
みかげいし
)
と、その扉の下半分とが、
茫
(
ぼう
)
と薄赤く描き出されていた。どうした加減か一つの
鋲
(
びょう
)
が、鋭くキラキラと輝いていた。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
私は理知的な現代人が、わずか鼻頭で嘲り去るこの見方に、動かしがたい真理の
礎
(
いしずえ
)
を見出す。人々はどこに思想の自由があるかを難詰する。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
荒廃した
土塀
(
どべい
)
、
礎
(
いしずえ
)
ばかり残った桑畠なぞを見、離散した多くの家族の
可傷
(
いたま
)
しい歴史を聞き、振返って本町、荒町の方に町人の
繁昌
(
はんじょう
)
を望むなら
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
出はいりなく平らに、層一層と列をととのえ、雲までとどかせるつもりの
方尖碑
(
オベリスク
)
の
巌畳
(
がんじょう
)
な
礎
(
いしずえ
)
でもあるかのような観を呈した。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
▼ もっと見る
兵燹
(
へいせん
)
のために焼かれた村落の路には、
礎
(
いしずえ
)
らしい石が草の中に散らばり、片側が焦げて片側だけ生きているような立木が、そのあたりに点在して
太虚司法伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
石のうち
鎔
(
と
)
けぬ性質を帯びたのは、先刻既に焼け砕けて、灰となり、
微塵
(
みじん
)
と変じた。家々の
礎
(
いしずえ
)
までも今は残らず粉である。
暗黒星
(新字新仮名)
/
シモン・ニューコム
(著)
生物学を知らずして精神科学を修めるものはあたかも
礎
(
いしずえ
)
なしに家を建てるようなものであるゆえ、いつ倒れるやもしれぬと覚悟しなければならぬ。
誤解せられたる生物学
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
徳川の御代はすでに
万代不易
(
まんだいふえき
)
の
礎
(
いしずえ
)
も定まり、この先望むところは只御仁政一つあるのみじゃ。ましてや天台の教えは仏法八宗第一の尊い
御教
(
みおしえ
)
じゃ。
旗本退屈男:09 第九話 江戸に帰った退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
島を囲む黒い
漣
(
さざなみ
)
がぴたぴたとその
礎
(
いしずえ
)
を洗うごとくに、夜よりも暗い無数の
房々
(
ふさぶさ
)
がその明るい大広間を取り巻いている。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
こう考えたら、何よりも、御当家の
礎
(
いしずえ
)
を根として、われわれもお前方も、枝や花と茂って、子孫までも共に栄え、利得することを考えずばなるまい。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
本丸から火を出して、グラついた江戸城の
礎
(
いしずえ
)
を立て直すほどの火を出してみろ。小盗賊のやるようないたずらはよせ
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
納屋にも池にも貯うること
乱杭逆茂木
(
らんぐいさかもぎ
)
を打ったるごとく、要害堅固に
礎
(
いしずえ
)
を立てた一城の
主人
(
あるじ
)
といっても
可
(
い
)
い、深川木場の材木問屋、勝山重助の一粒種。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
今少し
経
(
た
)
てば、
己
(
おれ
)
の中の人間の心は、獣としての習慣の中にすっかり
埋
(
うも
)
れて消えて
了
(
しま
)
うだろう。ちょうど、古い宮殿の
礎
(
いしずえ
)
が次第に土砂に埋没するように。
山月記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
かくありて後と、あらぬ
礎
(
いしずえ
)
を一度び築ける上には、そら事を重ねて、そのそら事の未来さえも想像せねばやまぬ。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
初代もなかなか苦労人でかつ人徳があったが、淡島屋の身代の
礎
(
いしずえ
)
を作ったのは全く二代目喜兵衛の力であった。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
今横浜の三渓園に移されている
賀茂
(
かも
)
の塔なども、
礎
(
いしずえ
)
の下に非常な宝物が埋めてあると伝えられていた。で、移すときに大勢の人夫を雇ってその発掘を始めた。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
お前の個性に生命の泉を見出し、個性を
礎
(
いしずえ
)
としてその上にありのままのお前を築き上げなければならない。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
遊女の成因とも名づくべきものについても、問題はまた未来の解決に
委
(
ゆだ
)
ねられている。女は普通には家に結びつけられ、家はまた土に動かぬ
礎
(
いしずえ
)
を打ち込んでいる。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
三年前まで、万両分限の栄華を誇った菱屋の跡は、取壊した跡の
礎
(
いしずえ
)
と、少しばかりの板塀を残すだけ。
銭形平次捕物控:102 金蔵の行方
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
つら/\此
住居
(
すまゐ
)
を見るに、
礎
(
いしずえ
)
もすえず
掘立
(
ほりたて
)
たる
柱
(
はしら
)
に
貫
(
ぬき
)
をば
藤蔓
(
ふぢづる
)
にて
縛
(
くゝ
)
りつけ、
菅
(
すげ
)
をあみかけて
壁
(
かべ
)
とし小き
窓
(
まど
)
あり、戸口は大木の
皮
(
かは
)
の一
枚
(
まい
)
なるをひらめて
横
(
よこ
)
木をわたし
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
系図が作られたということはそのとき自家の
礎
(
いしずえ
)
が定まったことを意味するものであろう。
安吾史譚:02 道鏡童子
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
ころは春五月の末で、日は西に傾いて西側の家並みの影が東側の家の
礎
(
いしずえ
)
から二三尺も上に
這
(
は
)
い上っていた。それで尺八を吹く男の腰から上は
鮮
(
あざ
)
やかな
夕陽
(
ゆうひ
)
に照されていたのである。
女難
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
老人
(
ろうじん
)
は、そんなら
青年
(
せいねん
)
も
死
(
し
)
んだのではないかと
思
(
おも
)
いました。そんなことを
気
(
き
)
にかけながら
石碑
(
せきひ
)
の
礎
(
いしずえ
)
に
腰
(
こし
)
をかけて、うつむいていますと、いつか
知
(
し
)
らず、うとうとと
居眠
(
いねむ
)
りをしました。
野ばら
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
それ、国民の元気を養い、その精神を独立せしむるの術、
頗
(
すこぶ
)
る少なからず。然れどもその永遠の基を開き、久耐の
礎
(
いしずえ
)
を建つるものに至ては、
唯
(
た
)
だ学問を独立せしむるに在るのみ(大喝采)。
祝東京専門学校之開校
(新字新仮名)
/
小野梓
(著)
綱宗さまの
御逼塞
(
ごひっそく
)
このかた、御本城の
礎
(
いしずえ
)
をゆるがしかねないような騒ぎが、幾たびとなく起こっているようです、わたくしは隠居の身で、御政治むきのことには一向に不案内ですけれども
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
婿
(
むこ
)
の松方何とか云ふ奴の為に
煉瓦
(
れんぐわ
)
の建築を
創
(
はじめ
)
たのだ、僕は其前を通る
毎
(
たび
)
に、オヽ国民の
膏血
(
かうけつ
)
を
私
(
わたくし
)
せる赤き煉瓦の家よ、汝が其
礎
(
いしずえ
)
の一つだに
遺
(
のこ
)
らざる時の
来
(
きた
)
ることを思へよと言つて
呪
(
のろつ
)
てやるンだ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
礎
(
いしずえ
)
の下の豆菊
這
(
は
)
ひ出でて
六百句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
戦いの終った後、その廃墟に立ち、わずかに残った
礎
(
いしずえ
)
の上にいかなる涙をそそぐであろうか。そういう日に、何に
拠
(
よ
)
って悲しみに堪えようか。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
天保時代の建物たる宗介天狗の拝殿も、窩人達の住居もなかったが、その
礎
(
いしずえ
)
とも思われる、幾多の
花崗石
(
みかげいし
)
は残っていた。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
これから捨吉が教えに行こうとする麹町の学校は高輪の浅見先生の先の細君が
礎
(
いしずえ
)
を遺して死んだその形見の事業であるということなぞを聞取った後で、
一語
(
ひとこと
)
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
石段を
攀
(
よ
)
じた境内の桜のもと、分けて鐘楼の
礎
(
いしずえ
)
のあたりには、高山植物として、こうした町近くにはほとんどみだされないと
称
(
とな
)
うる処の、梅鉢草が不思議に咲く。
夫人利生記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
のみならず歴史の上に立つということは、丁度
確
(
しっか
)
りした大きな
礎
(
いしずえ
)
の上に家を建てることと同じでありまして、これほど安全なまた至当なことはないでありましょう。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
そうした武士たちの——土中の白骨が、眼には見えぬが、今もなお、
礎
(
いしずえ
)
となっていればこそ、この国はこんなにも平和に、何千年の
豊秋
(
とよあき
)
が護られているのではないか
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「自分の寺がいつかは亡び失せる——そんなことを考える必要はない。インドの
祇園精舎
(
ぎおんしょうじゃ
)
は
礎
(
いしずえ
)
をとどめているに過ぎぬ。重大なのは寺院によって行なう真理体現の努力である。」
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
看護婦が
草履
(
ぞうり
)
で廊下を歩いて行く、その音一つを考えてみても、そこには明らかに生命が見いだされた。その足は確かに廊下を踏み、廊下は
礎
(
いしずえ
)
に続き、礎は大地に
据
(
す
)
えられていた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
彼
(
かれ
)
は、その
荒
(
あ
)
れ
果
(
は
)
てた
野原
(
のはら
)
の
中
(
なか
)
に
立
(
た
)
って、
足
(
あし
)
もとに
散
(
ち
)
らばった
材木
(
ざいもく
)
や、ものの
壊
(
こわ
)
れたのや、
大
(
おお
)
きな
家
(
うち
)
が
建
(
た
)
っていた
跡
(
あと
)
らしい、
礎
(
いしずえ
)
などを
見
(
み
)
まわしながら、いろいろの
思
(
おも
)
いにふけったのです。
塩を載せた船
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
現実の示す通り、彼女はここに王国の
礎
(
いしずえ
)
を置くことになったものらしい。
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
一揆
(
いっき
)
が事を起す前に七人の同志と江戸に潜行し将軍御膝元で事を挙げるつもりでしたが、島原の乱も案外早く平定し、徳川の
礎
(
いしずえ
)
はいよいよ
鞏固
(
きょうこ
)
で、
痩
(
やせ
)
浪人の策動ではどうにもならないと解ると
銭形平次捕物控:008 鈴を慕う女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
と
溜息
(
ためいき
)
をして云った。浮世を
鎖
(
とざ
)
したような黒門の
礎
(
いしずえ
)
を、
靄
(
もや
)
がさそうて、向うから押し拡がった、
下闇
(
したやみ
)
の草に踏みかかり、
茂
(
しげり
)
の中へ吸い込まれるや、否や、仁右衛門が
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
従者だけをそこから下城させて、スタスタとふたたび
曲輪
(
くるわ
)
へ帰りだしたのは、もと裾野では
鏃師
(
やじりし
)
の鼻かけ
卜斎
(
ぼくさい
)
——いまではこの城の
礎
(
いしずえ
)
とたのまれる
上部八風斎
(
かんべはっぷうさい
)
だった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その仁王門の
礎
(
いしずえ
)
のあたりに、例によって朱色の十文字の符牒が、このたびは四つ記されてあった。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
小竹とした暖簾の掛っていたところは仮の板囲いに変って、ただ
礎
(
いしずえ
)
ばかりがそこに残っていた。
食堂
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
一
躯
(
く
)
の像、一基の塔、その
礎
(
いしずえ
)
にはすべて人間の悲痛が白骨と化して埋れているのであろう。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
さしもに
堅固
(
けんご
)
な王子の立像も
無惨
(
むざん
)
な事には
礎
(
いしずえ
)
をはなれてころび落ちてしまいました。
燕と王子
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
その地盤の上に十二
間
(
けん
)
四面の
伽藍
(
がらん
)
の
礎
(
いしずえ
)
が、さながら地軸のように置かれた、堂塔内陣の墨縄は張りめぐらされ、やがて
檜
(
ひのき
)
の
太柱
(
ふとばしら
)
と、巨大な
棟木
(
むなぎ
)
と、荘重な
梁
(
はり
)
も組まれた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
母屋
(
もや
)
と土蔵と小屋とを除いた以外の建物はほとんど
礎
(
いしずえ
)
ばかり残っていると言っていい。土蔵に続くあたりは
桑畠
(
くわばたけ
)
になって、ところどころに植えてある
桐
(
きり
)
の若木も目につく。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
いうまでもないが、このビルジングを、
礎
(
いしずえ
)
から貫いた
階子
(
はしご
)
の、さながら
只中
(
ただなか
)
に当っていた。
開扉一妖帖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
神木を棟に使ってはならない。又逆木を使ってはならない。そうだ特に大黒柱にはな。運命が逆転するからよ。さて次には不祥事だ。すべて柱の
礎
(
いしずえ
)
へ、石臼などを置いてはならない。
天主閣の音
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
畑
(
はた
)
一つ
前途
(
ゆくて
)
を仕切って、縦に幅広く水気が立って、小高い
礎
(
いしずえ
)
を
朦朧
(
もうろう
)
と上に浮かしたのは、森の
下闇
(
したやみ
)
で、靄が
余所
(
よそ
)
よりも
判然
(
はっきり
)
と濃くかかったせいで、鶴谷が別宅のその黒門の
一構
(
ひとかまえ
)
。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“礎”の意味
《名詞》
(いしずえ)建造物の基になる部分に組み込まれる石。
(出典:Wiktionary)
礎
常用漢字
中学
部首:⽯
18画
“礎”を含む語句
基礎
礎石
土礎石
基礎固
御礎石
断礎
業礎
残塁礎石
残礎
石礎
礎下
遺礎