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しらじら
ふりがな文庫
“
白々
(
しらじら
)” の例文
鉄杖を突くと片足をはね、一本歯の足駄高々と、ヒラリと飛んだは金目垣、さながら一匹の巨大な
蛾
(
が
)
だ。
白々
(
しらじら
)
と姿を消してしまった。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
すぐ其処に、橋の北側の欄干に背をもたせ、橋の上にじかに坐って両足を投げ出し、月の光を正面から
白々
(
しらじら
)
と受けて、二人の女がいた。
人間繁栄
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
女王は、その庭に見入っているの。そこには、
木立
(
こだち
)
のそばに
噴水
(
ふんすい
)
があって、
闇
(
やみ
)
の中でも
白々
(
しらじら
)
と、長く長く、まるで
幻
(
まぼろし
)
のように見えています。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
火事の危険であった話や、父に
扶
(
たす
)
けられた話や、
久方
(
ひさかた
)
ぶり、母との対面や何やかやで、
雑炊
(
ぞうすい
)
を食べなどしている
中
(
うち
)
、夜は
白々
(
しらじら
)
として来ました。
幕末維新懐古談:15 焼け跡の身惨なはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
と思っていると、
足許
(
あしもと
)
が、はっきり見えるではないか。
手提電灯
(
てさげでんとう
)
の光で見えるのではない。もっと
白々
(
しらじら
)
と、はっきり見える。
未来の地下戦車長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
線路の両側に
鬱蒼
(
うっそう
)
と続いていた森が、突然ぱったりと
途絶
(
とだ
)
えると定規で引いたような直線レールが
逈
(
はる
)
か多摩川の方に
白々
(
しらじら
)
と濡れて続いています。
穴
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
彼女はもはや、この上客人たちの
白々
(
しらじら
)
しさと無礼とを、がまんすることが出来なかった。或る発作的な
激情
(
パッション
)
が、火のように全身を焼きつけて来た。
ウォーソン夫人の黒猫
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
が、誰も人の住んでいるけはいはありません。キチンと片付いて、何一つ道具とてもない
黴
(
かび
)
だらけの
琉球畳
(
りゅうきゅうだたみ
)
だけが、
白々
(
しらじら
)
と光っているばかりです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
木の葉交じりに、ばらばらと降りこぼれては、その雨雲のあいだから重陽の夜の月は
白々
(
しらじら
)
とここの山河を照らしていた。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
昨日の
白々
(
しらじら
)
明け、背中へ穴をあけて象の中へ里春を下し込むとき、定太郎は、じぶんだけわざとその場にいなかった
平賀源内捕物帳:山王祭の大像
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
アダルベルトは、
白々
(
しらじら
)
しいゆるやかな声音で、みずから退屈し人を退屈させる上品なていねいさで、意見を述べた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
すずめは、その
夜
(
よ
)
は、そこで、まんじりとも
眠
(
ねむ
)
れませんでした。
夜
(
よ
)
が、
白々
(
しらじら
)
と
明
(
あ
)
けると、からすに
聞
(
き
)
いた
温泉
(
おんせん
)
へいこうと
思
(
おも
)
って、
苦
(
くる
)
しい
旅
(
たび
)
をつづけたのです。
温泉へ出かけたすずめ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
それにつれて、加茂川にかかっている橋が、その
白々
(
しらじら
)
とした
水光
(
すずびか
)
りの上に、いつか暗く浮き上がって来た。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
しかしその瞬間に葉子は
燕返
(
つばめがえ
)
しに自分に帰った。何をいいかげんな……それは
白々
(
しらじら
)
しさが少し過ぎている。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「黙れ黙れッ。どのようなとは
白々
(
しらじら
)
しい……あの櫛田神社の犬塚信乃の押絵の顔は誰に似せて作ったッ」
押絵の奇蹟
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
三日おきには、細君に手紙を書いてゐる富岡に対して、ゆき子は、妙に
白々
(
しらじら
)
しい感情になつてゐた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
兵馬の目的には頓着なく、存外
鷹揚
(
おうよう
)
な客と見たので、駕籠屋は勢いよく急がせる。そのうちに、前後でしきりに聞ゆる
鶏犬
(
けいけん
)
の声。夜は
白々
(
しらじら
)
と明け放れたものと見ゆる。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
八五郎はそれを
労
(
いた
)
わるように、小腰を
屈
(
かが
)
めて、
白々
(
しらじら
)
と夜霧に包まれた娘の顔を
覗
(
のぞ
)
きました。
銭形平次捕物控:282 密室
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
まるで
霜
(
しも
)
のやうに
白々
(
しらじら
)
とした夜気です。北の空は痛いほど
冴
(
さ
)
えかへつて、いつのまにか母さまのお好きなあの七つ星が中ぞら近くかかつてゐます。もう夜半はとうに過ぎたのでせう。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
虫
(
むし
)
の
音
(
ね
)
の
細
(
ほそ
)
ったことも、
外
(
そと
)
が
白々
(
しらじら
)
と
明
(
あ
)
けそめて、
路地
(
ろじ
)
の
溝板
(
どぶいた
)
を
踏
(
ふ
)
む
人
(
ひと
)
の
足音
(
あしおと
)
が
聞
(
きこ
)
えはじめたことも、
何
(
なに
)
もかも
知
(
し
)
らずに、ただ
独
(
ひと
)
り、
破
(
やぶ
)
れ
畳
(
だたみ
)
の
上
(
うえ
)
に
据
(
す
)
えた
寺子屋机
(
てらこやつくえ
)
の
前
(
まえ
)
に
頑張
(
がんば
)
ったまま
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
是などもまた確かに
群
(
む
)
れて旅行く女たちの生活であって、静かにその歌の声に聴き入った人々の背後には、秋の夜明けの
白々
(
しらじら
)
とした
東雲
(
しののめ
)
が、もううそ寒く近よって来ている感じがする。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
……払えば、ちらちらと散る、が、夜目にも消えはせず、なお
白々
(
しらじら
)
と
俤
(
おもかげ
)
立
(
た
)
つ。
第二菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
白々
(
しらじら
)
しいや。この間も、僕の見ているところでやってたじゃないか。
烏恵寿毛
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
今度はどんな
技術
(
わざ
)
をするだろうと
白々
(
しらじら
)
した興味を覚えながら
美少年
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「いやなこった。あんな
白々
(
しらじら
)
しい、おしゃらくは!」
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
目も動かさず、
白々
(
しらじら
)
と
悪
(
わる
)
く
澄
(
す
)
ましたくはせ者
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
夜も
白々
(
しらじら
)
明け放れるらしかった。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
白々
(
しらじら
)
しい
寂寞
(
せきばく
)
!
遠藤(岩野)清子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
燭は
白々
(
しらじら
)
と主客の沈黙を照らし、庭のしじまをゆく泉の
音
(
おと
)
がせんかんとその灯を湿らせてくる。時折、時雨かと思うばかり木の葉が大殿の
廂
(
ひさし
)
を打った。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と叫びたいのを懸命で
怺
(
こら
)
えたQX30だった。見よ! 見よ! あの女がいるではないか。敵の副司令が、
唐子
(
からこ
)
になって、
白々
(
しらじら
)
しくも踊っているのだ。決った!
間諜座事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
逢ふまでは、ゆき子を、まるで女神のやうに考へてゐたが、逢つてみると、加野は何の負け惜しみでもなく、人間的なゆき子の現実に、
白々
(
しらじら
)
と夢の覚める思ひだつた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
「え、
夜
(
よ
)
が
明
(
あ
)
ける? ……」といって、
妙
(
みょう
)
な
男
(
おとこ
)
は
東
(
ひがし
)
の
空
(
そら
)
を
見
(
み
)
ると、はや
白々
(
しらじら
)
と
夜
(
よ
)
が
明
(
あ
)
けかけた。
電信柱と妙な男
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
何事も心得ながら
白々
(
しらじら
)
しく無邪気を装っているらしいこの妹が敵の
間諜
(
かんちょう
)
のようにも思えた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
左様な議論で火花を散らして、さんざんに飲み且つ食い、この四人は八官町の大輪田を辞し、大手を振って、例の四国町の薩摩屋敷に入ったのは、夜の
白々
(
しらじら
)
と明けそめた時分でありました。
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そのうしろには氷河だか石の壁だか、とにかく
白々
(
しらじら
)
とした帯が水平に流れ、背景ははるかな
樅
(
もみ
)
の林らしく濃い緑いろでした。千恵が注意をひきつけられたのは、なかでもその婦人の眼つきでした。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
夜
(
よる
)
が
白々
(
しらじら
)
と
明
(
あ
)
けそめて、
上野
(
うえの
)
の
森
(
もり
)
の
恋
(
こい
)
の
鴉
(
からす
)
が、まだ
漸
(
ようや
)
く
夢
(
ゆめ
)
から
覚
(
さ
)
めたか
覚
(
さ
)
めない
時分
(
じぶん
)
、
早
(
はや
)
くも
感応寺
(
かんのうじ
)
中門前町
(
なかもんぜんちょう
)
は、
参詣
(
さんけい
)
の
名
(
な
)
に
隠
(
かく
)
れての、
恋知
(
こいし
)
り
男
(
おとこ
)
の
雪駄
(
せった
)
の
音
(
おと
)
で
賑
(
にぎ
)
わいそめるが、十一
軒
(
けん
)
の
水茶屋
(
みずちゃや
)
の
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
膝小僧がともすると覗き出しそうになるので、両手で着物の前を押えて、ぴしゃんこに坐って一息ついていると、久保田さんはふと、藁で
分厚
(
ぶあつ
)
に編んだその深編笠の中で、
白々
(
しらじら
)
とした気持になった。
人の国
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
蓄電器
(
コンデンサアー
)
のように
白々
(
しらじら
)
しく対立した感情……
古傷
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
まもなく
白々
(
しらじら
)
と夜が明けて、少し
凪
(
な
)
いだ時には、こっちの船は、
昨日
(
きのう
)
の小松島を素通りにして、
日和佐
(
ひわさ
)
手前の
由岐
(
ゆき
)
の
浜
(
はま
)
へ、ギッギッと帰っていたんです。
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一時間ばかりすると、夜が
白々
(
しらじら
)
と明けていった。心も感情もない人造人間に
背負
(
せお
)
われて、どんどん
広野
(
こうや
)
を逃げていく私たちの恰好は、全くすさまじいものに見えた。
人造人間の秘密
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
私達は
一緒
(
いっしょ
)
になって間もなかったし、多少の
遠慮
(
えんりょ
)
が私をたしなみ深くさせたのであろうか、その男の
白々
(
しらじら
)
とした物云いを、私はいつも
沈黙
(
だま
)
って、わざわざ報いるような事もしなかった。
清貧の書
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
「いえ、五
厘
(
りん
)
足
(
た
)
りないと
追
(
お
)
いかけていっていうと、たしかに
置
(
お
)
いてきたといいなさるから、うそをいうことは、どろぼうのはじまりだといったのです。」と、
平常
(
ふだん
)
無口
(
むくち
)
の
男
(
おとこ
)
は
白々
(
しらじら
)
しく
答
(
こた
)
えた。
火を点ず
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「
白々
(
しらじら
)
しい言いわけを申すな。どうも当節は、ややもすればお上の御威光を軽く見る奴があって
奇怪
(
きっかい
)
じゃ、見せしめのために厳しくせんければならん。亭主、この上かれこれ申すと貴様も同罪だぞ」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「いちいち挙げればきりがない。さほどな
痴態
(
ちたい
)
悪業におよびながら、いまさらなんぞ、その
白々
(
しらじら
)
しさは」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
アンは、マネキン人形のような
白々
(
しらじら
)
しさにかえって、彼を階上の部屋へ案内した。
英本土上陸戦の前夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「
随分
(
ずいぶん
)
あなたは
白々
(
しらじら
)
としたもの云いをする人だ……そんな事云わぬものだわ」
魚の序文
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
『
白々
(
しらじら
)
しいことをお言いでないよ、そのお
腹
(
なか
)
をごらん』
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
白々
(
しらじら
)
しい
勿体顔
(
もったいがお
)
。その顔、その弁で、丞相はあざむき得たかも知れんが、拙者の眼はだまされぬぞ。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
例の
白々
(
しらじら
)
しいせりふを並べ出しました
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
夜色
(
やしょく
)
をこめた草原のはてを
鞍上
(
あんじょう
)
から見ると——はるかに
白々
(
しらじら
)
とみえる
都田川
(
みやこだがわ
)
のほとり、そこに、なんであろうか、一
脈
(
みゃく
)
の
殺気
(
さっき
)
、形なくうごく
陣気
(
じんき
)
が民部に感じられた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
白
常用漢字
小1
部首:⽩
5画
々
3画
“白々”で始まる語句
白々地
白々敷
白々明