なんぢ)” の例文
なんぢ地にのぞみて水そゝぎ、大に之をゆたかにし玉へり。神の川に水満ちたり。なんぢかくそなへをなして、穀物たなつものをかれらにあたへたまへり。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
殿とのよツくきこし、呵々から/\わらはせたまひ、たれぢやと心得こゝろえる。コリヤ道人だうじんなんぢ天眼鏡てんがんきやうたがはずとも、草木くさきなびかすわれなるぞよ。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
我々は——少くとも自分は氏によつて、「驢馬の子に乗りなんぢに来る」人道ユウマニテエを迎へる為に、「その衣をみちき或は樹の枝を伐りて途に布く」
あの頃の自分の事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
偖招待券は首尾よく手に入りぬ。一難わづかに去りて一難また到る、招待券には明記して曰く、燕尾服着用と。燕尾服、燕尾服、あゝ燕尾服、なんぢ如何いかん
燕尾服着初めの記 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
「主よ。もし御心に適ふならば、この苦き酒盃さかづきを離し給へ。されどなんぢにして欲するならば、御心のままに爲し給へ。」
宿命 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
吾れ一たびはこの矛盾に泣きぬ。而してやがて「世にある限りなんぢが最善をくすべし、神を見たるもの竟に死なず」
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
なんぢの Longing を空際に投げよ、空際より、爾が人間に為すべきの天職をり来れ、嗚呼あゝ文士、何すれぞ局促として人生に相渉るを之れ求めむ。
人生に相渉るとは何の謂ぞ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
彼はこの色を売るの一匹婦いつひつぷも、知らずたれなんぢに教へて、死にいたるまでなほこのがたき義にり、守りかたき節を守りて、つひに奪はれざる者あるに泣けるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「此の事なんぢにありしにる、またなんぢわが契約をわが爾に命じたる法憲のりを守らざりしによりて、我必ず爾より国を裂きはなして、これを爾の臣僕けらいに与ふべし。」
われはなんぢを愛す——さうだ、要するに唯それだけではなかつたらうか。私はこんなことに頭をくり返しながら、下に横へられた静かな日影のチラチラした沼を眺めた。
あさぢ沼 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
ことわざに其事なんぢに出て爾にかへるとむべなる哉此言や所化しよけ願山の白状はくじやうに因て再度日野家の一件委さい吟味有るべしと大岡殿差※さしづあつて平左衞門を呼び出されしに平左衞門は又何を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さあ是から時刻だから、お前は出て行つて、嫁の家に往つてなんぢの相手を迎へて來たれ、そして我が家の宗の事を承けよ、宗廟の事務を疎かにしないやうにせよといふのです。
支那の古代法律 (旧字旧仮名) / 桑原隲蔵(著)
いよいよ深き所に到れば、一異人の遮りて大呵するに遇ふ、曰く——ここより進まば再び世に帰ることあたはざらむ、なんぢはすみやかに黄泉の国に到らむなり、やよ、舟をかへせ。
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
彼女に聖力みちからを注ぎて、なんぢ聖旨みむねを地に成さしめ給へ、篠田はを転じて表のかたに出でぬ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
われ若し我拳の、一たびなんぢを怒らしむるを知らば、われは必ず爾を打つべし。汝は人に本性を見するときなきか。わが汝を嘲るとき、汝は何故に拳をふるひて我面をたんとせざる。
今や二個の岐路は襄の前に横はれり、一は小学近思録の余り多く乾燥せる道なり、一は空詩虚文の余り多く湿潤せる道なり。憐れなる少年よ、なんぢ若し右に行かば爾の智慧は化石せん。
頼襄を論ず (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
ぼくは一ねんこゝにおよべば倫理學者りんりがくしや健全先生けんぜんせんせい批評家ひゝやうか、なんといふ動物どうぶつ地球外ちきうぐわい放逐はうちくしたくなる、西印度にしいんど猛烈まうれつなる火山くわざんよ、何故なにゆゑなんぢ熱火ねつくわ此種このしゆ動物どうぶつ頭上づじやうにはそゝがざりしぞ!
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
なんぢうみにゆきてはりれよ。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
飛衞ひゑいいにしへるものなり。おなとき紀昌きしやうといふもの、飛衞ひゑいうてしやまなばんとす。をしへいはく、なんぢまづまたゝきせざることをまなんでしかのち可言射しやをいふべし
術三則 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
バビロンの淫婦はなんぢ七頭しちとうの毒竜は爾の馬、火と煙と硫黄いわうとはなんぢ黒檀こくたん宝座みくらの前に、不断の香煙かうえんのぼらしめん。
LOS CAPRICHOS (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
何となれば仏人は国利の為に戦ふよりも、寧ろ戦ひの為に戦ふ。平和、平和、遂になんぢわづらはさざるを得ず。
想断々(2) (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
なんぢたみぞを大にうるほし、うねをたひらにし、白雨むらさめにてこれをやはらかにし、そのえ出づるを祝し、また恩恵めぐみをもて年の冕弁かんむりとしたまへり。なんぢの途にはあぶらしたゝれり。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「お前の言ふ事は能う解つたさ。しかし、なんぢは爾たり、吾は吾たりじや」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
イエス忽ちユダに一撮ひとつまみの食物を与へ、静かに彼に云ひけるは、「なんぢが為さんとする事は速かに為せ。」ユダ一撮の食物を受け、直ちに出でたり。時既になりき。
LOS CAPRICHOS (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「神よなんぢは我等を爾の為に造りたまへり、故に我等は爾を得るまでは我等の心に安みを得る能はず」
トルストイ伯 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
るにてもあまりのうつくしさに、ひととなりてのちくにかたむくるうれひもやとて、當時たうじ國中こくちうきこえたる、道人だうじん何某なにがし召出めしいだして、ちかう、ちかう、なんぢよく可愛かはゆきものをさうせよ、とおほせらる。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
し、おのれ毒龍どくりようなんぢ魯鈍うつけゆゑもつて、股肱ここうしんうしな
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
イエス彼に云ひけるは、「ユダよ。我誠になんぢを知る。爾は荒野あらの獅子ししよりも強し。ただ小羊こひつじの心を忘るるなかれ。」ユダ、イエスの言葉を悦べり。されどその意味をさとらざりき。
LOS CAPRICHOS (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
なんぢは躰健かに美形なりと雖、他家に寓して人となれり、我は躰弱く形又た醜くしと雖、祖先の家を守りて暫らくも爰を離れず、誇るべきところ我にあり、何ぞ爾の下にあらんやと。
国民と思想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
まねきて、かかるなんぢ
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
然れども常に無言にして常に雄弁なるは、自然に加ふるものなきなり。人間に若し自然の如く無言なるものあらば、愛山生一派の論士は其の傍に来りて、なんぢ何ぞ能く言はざると嘲らんか。
人生に相渉るとは何の謂ぞ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
都城繁労の人をうらやなかれ、人間縦心しようしんの境はなんぢにあり。
客居偶録 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)