とつ)” の例文
「かへせ。かへさんとてめえのとつつあんにいひつけるぞ。てめえの父つあんは、家にをつた嘉助だらう。嘉助にいひつけるぞォ。」
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
お留 さう云つても、我慢して稼いで貰はなければ、今日こんにちが過されませんからねえ。こちらのおとつさんは今日はお休みですか。
俳諧師 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
アヽおかへりかと起返おきかへはゝ、おとつさんは御寢げしなツてゞすかさぞ御不自由ごふじいう御座ございましたらうなにもおかはりは御座ございませんかと裏問うらとこゝろきずもつあし
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「薄情なやうだが、とつさんのためだ。子分衆を手一杯に働かせて、お品さん一人の手にこいつをさばいて見る氣はないか」
「そんなことあ、おいら、根に持つてやしねえだよ、ソローピイのおとつつあん! なんならからだを自由にしてあげるぜ!」
とつちやん血が大層たいそう出るよ。父「アー大層たいそう出るか。子「アー大層たいそう流れるからね……あのねばうすつてげようか。 ...
四十二の厄年が七年前に濟んだひつじ八白はつぱくで、「あんたのおとつつあんと同い年や」と言つてゐるが、父に聞くと、「やいや、乃公おれ四緑しろくで、千代さんより四つ下や」
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
妻いく こんな晩に、仕事をする人つてあるか知ら……全く変りもんだよ、おとつつあんは……。
かぬ気のとつッさんである、この嘉門次が一年中の半分は、寝泊りしているところは、温泉宿から半里ばかり、宮川の小舎といって、穂高岳の麓にある、宮川の池のほとりにしつらえた
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
とつさんからお話があつて、貫一さんもそれで得心がいけば、済む事だし、又お前が彼方あちらへ適つて、末々まで貫一さんの力になれば、お互の仕合しあはせと云ふものだから、其処そこを考へれば
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
貴郎あなたさまだ、其時丁度ちやうど十二三の坊様が、長い刀を持ち出しなされて、とつちやんの復讐かたきうちに行くと言ひなさる、其れを今の粟野あはのに御座る伯母御様が緊乎しつかり抱き留めておすかしなさる——イヤもう
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
『私とこのとつさんは、山からの歸りに、橋向うの松原でたしかに見た。』
雪をんな (旧字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
「その間、おとつさんと一緒にもう少しお酒を飲みながら待つて頂戴!」
パンアテナイア祭の夢 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
あゝ、イワンの家か。しつてるとも。あのうちは金もちだ。もつとも、おとつつあんは、シベリヤへ来てるとかいふがね。やつぱり、おれたち見たいな罪人らしい。ときにおまいはもういゝ年のやうだが、一たい何を
ざんげ (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
とつさん——とつさん、これをくちへ入れてくださいよう。』
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「ぢやア、またおとつさんにられたの、ね。」
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
とつさんも知らない
のきばすずめ (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
「何? そいつは話が違つて來るぜ。とつさんの財布へ五つになる伜の迷子札を入れたのは、何か呪禁まじなひにでもなるのかい」
とつつあんの留守をすぐに嗅ぎつけるんだもの。ええ、あたし、ちやんとあんた達のことは知つててよ。それはさうと、あたしの長櫃スンドゥークはもう出来て?
ふくやいそいでお医者様いしやさまへおとつさんそこにつてらつしやらないでうかしてやつてださいりやうさん鳥渡ちよつと手拭てぬぐひ
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わたくし負傷けがいたしますとおとつさんいたうないかとつていたはつてれます、わたくし心得違こゝろえちがひから斯様かやう零落れいらくいたし、までつぶれまして、ソノんにも知らぬ頑是ぐわんぜのないせがれ
「お前のお間男まをとこしてなア、おとつつあんに足切られて、跛足になつたん知つてるか。」
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
それだから気がふさいだり、からだが悪くなつたりして、おとつさんや阿母おつかさんも心配するやうになるのだ。そんなことを忘れてしまふために、今夜は遅くなるまで歩かうぢやないか。
こんな不思議なことがあるだらうか? おとつつあんが見たら、なんていふだらう……。墺太利オーストリーの悲しみは、どこへ行つたんだ? 何処で、人が涙をのみ、歯をくひしばつてゐるのだらう……。
けむり(ラヂオ物語) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
とつさんも知らない
おさんだいしよさま (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
それからね、おとつつあん、あの人は、帰りがけにうちへ寄つて食事をするから、さう言つておけつて言ひましたぜ。
「おとつさん、——私には何にも判らないけれど、おとつさんが良いと思ふことならどんな事でもやつてみませう」
加減かげんうちでもこしらへる仕覺しがくをしておれとたび異見ゐけんをするが、其時そのときかぎりおい/\と空返事そらへんじしてつからにもめてはれぬ、とつさんはとしをとつて
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それは二代目塩原しほばらが、大層たいそう身代しんだいになつて跡目相続あとめさうぞくをした時、おとつさん、おまへさんはもうこれだけの身代しんだいになつたら、少しはさつぱりした着物をおしなさるが
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「きりもんんとおとつつあんに叱られる。ぽん/\になるのはまだ早い。おゝ寒い寒い。」と、お駒は竹丸が裸體はだかのまゝ板の間を駈け廻るのを追ひ廻して、ふだんを着せた。さうして
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「黙つてゐると、おとつつあんを引つ張つて来るよ。」
けむり(ラヂオ物語) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
小鳥屋のおとつさん
十五夜お月さん (旧字旧仮名) / 野口雨情(著)
よく知つて居るよ、なア、黒助兄哥、お前さんのとつさんは御用金がかさんだ上、上納がとゞこほつて水牢で死んだ筈だ。
こゝにるよお千代ちよ阿母おつかさんだよいゝかへわかつたかへおとつさんもお呼申よびまをしたよサアしつかりしてくすり一口ひとくちおあがりヱむねがくるしいアヽさうだらうこのマアあせ
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「あんたも、ずゐぶん隅におけないわね! でも、うちのおとつつあんだつてなかなかの凄腕よ。見ていらつしやい、今にあんたとこのお母さんと結婚するから!」
とつちやん痛いかえ、おとつちやん痛いかえ。
美代 おとつつあん……。
隣のとつさん
十五夜お月さん (旧字旧仮名) / 野口雨情(著)
とつつあんの伊之助親方は、たしか六十を越した筈だし、お袋さんが五十八で去年亡くなつたとすると五つになる子があるのは少し變ぢやないか、お北さん」
い加減にうちでも拵へる仕覚しがくをしておくれとふ度に異見をするが、その時限りおいおいとそら返事して根つから気にも止めてはくれぬ、とつさんは年をとつて
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「おとつつあん、おめえさんはおいらを知りなさるめえが、おいらはひと目でおめえさんがわかつただよ。」
美代 おとつつあん。
今詫びたからとて甲斐かひはなしと覚悟して、太吉、太吉と傍へ呼んで、お前はととさんの傍とかかさんと何処どちらが好い、言ふて見ろと言はれて、おいらはおとつさんは嫌い
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「待つておくれ、おとつつあん! この手紙をあづかつて来たんだよ。」と、レヴコーが言つた。
「おとつさん、さういはずに、相談に乘つて上げて下さい、——私達は本當に死ぬつもりだつたのを親分さんに助けられて——かうしてお父さんのところへ歸つて來たんです」
いまびたからとて甲斐かひはなしと覺悟かくごして、太吉たきち太吉たきちそばんで、おまへとゝさんのそばかゝさんと何處どちらい、ふてろとはれて、おいらはおとつさんはきら
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「まあ、おとつつあん!」と、オクサーナが言つた。「あの袋の中に誰かしら入つてゐるのよ!」
「それでは、私のおとつさんは、直ぐ其處の濱町に居ります。行つて相談して見ませうか」
ひとかほいまのとはちがふね、あゝ此母このかゝさんがきてるといが、れが三つのとしんで、おとつさんはるけれど田舍いなか實家じつかかへつて仕舞しまつたからいま祖母おばあさんばかりさ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ああ、そのことなんで、おとつつあん! そのお訊ねに対する返辞なら、かう申し上げるだけで沢山でせう——あつしやあね、もうとうの昔からむつきの厄介にはなつてゐませんよ。