水上みなかみ)” の例文
ついてはなしがある。(さるどのの夜寒よさむひゆくうさぎかな)で、水上みなかみさんも、わたしも、場所ばしよはちがふが、兩方りやうはうとも交代夜番かうたいよばんのせこにてゐる。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
翌十六日は一行の中の、石本いしもと所長と松沢まつざわ山口やまぐち両氏ならびに観測所主任の水上みなかみ氏と四人が浅間に登山したが、自分と坪井つぼい氏とは登らなかった。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
水上みなかみに行こう、ね。」その前のとしのひと夏を、水上駅から徒歩で一時間ほど登って行き着ける谷川温泉という、山の中の温泉場で過した。
姥捨 (新字新仮名) / 太宰治(著)
御厩河岸おうまやがしわたしを越して彼方かなたよこたわる大川橋おおかわばしの橋間からは、遠い水上みなかみに散乱する夜釣よづりの船の篝火かがりびさえ数えられるほどになると
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「それからね、習字に読書が乙で、あとはみんな丙なの、とうと水上みなかみに負けちゃッた。僕アくやしくッて仕方がないの」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
今でも「穢多の水上みなかみ」と云われた上方かみがた地方から、広く四国・九州・東海・東山・北陸地方まで、文字知らぬ爺さん婆さんは大抵エッタと云っている。
「エタ」名義考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
いずれかこの町もかかるたぐいに漏るべき、ただ東より西へと爪先上つまさきあがりの勾配こうばいゆるく、中央をば走り流るる小川ありて水上みなかみは別荘を貫く流れと同じく
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
はるか木隠こがくれの音のみ聞えし流の水上みなかみは浅くあらはれて、驚破すはや、ここに空山くうざんいかづち白光はつこうを放ちてくづれ落ちたるかとすさまじかり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
遠く水上みなかみには、秩父や甲州の山がおぼろに見えるし、対岸の高くもない山や林も、墨絵のようにぼかされています。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
私は河の水上みなかみといふものに不思議な愛着を感ずる癖を持つてゐる。一つの流に沿うて次第にそのつめまで登る。
みなかみ紀行 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
此打切は川口を一ばんとして水上みなかみへ十五番まであり。こゝはいづくのもちとて川にその境目さかひめありてはなはだ厳重げんぢゆう也。
かく僕にも手紙を寄せた女性の読者のゐることは疑ふべからざる事実である。が、彼等は僕に対するや、水上みなかみ君に対するやうに纏綿てんめんたる情緒じやうしよを示したことはない。
変遷その他 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
春の水の美くしく流れているところを見ると、この水の水上みなかみあくたや小石などの間からいている水とは思えん、多分水上は柳の木のある辺から湧いているのであろう。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
赤松が四五本川辺かわべりへ枝を垂れ、其処に塚がって、おきなの詠んだ「夏来ても只一つ葉の一つかな」という碑があります、此の大泉小泉の掘割から堅科川かたしながわという利根の水上みなかみ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
右なるは白と黄の間の色の如く、左なるはニーロの水上みなかみより來る人々の如くみえき 四三—四五
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
其の一〇一端詞はしことばに、高野たかのの奥の院へまゐる道に、玉川といふ河の水上みなかみどく虫おほかりければ、此の流を飲むまじきよしをしめしおきて後よみはべりける、とことわらせ給へば
川は道をやや東の方に取つて、Deggendorfデツゲンドルフ の近くに来てドナウに這入はひる。Tölzテルツ からもつと水上みなかみLenggriesレンググリース といふ一小邑せういふがあり、ながめのいい城がある。
イーサル川 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
七二 栃内とちない村の字琴畑ことばたは深山の沢にあり。家の数は五軒ばかり、小烏瀬こがらせ川の支流の水上みなかみなり。これより栃内の民居まで二里をへだつ。琴畑の入口に塚あり。塚の上には木の座像ざぞうあり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
けれど、とおい、とおい、水上みなかみからながれてきたことだけは、乞食こじきにもわかりました。なぜなら、まだ、このあたりは、かぜさむくて、きゅうりのがそんなにおおきくはならないからです。
遠くで鳴る雷 (新字新仮名) / 小川未明(著)
うわさにきくと、加茂川の水上みなかみのみぞろが池には、鬼女きじょが住むという噂があって、人の近よらないのをよいことにして、多能丸という大盗棒おおどろぼうが立派な邸を作って住んでおるということじゃ。
三人兄弟 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
雨脚あまあしはしだいに黒くなる。河の色はだんだん重くなる。渦のもんはげしく水上みなかみからめぐって来る。この時どす黒い波が鋭く眼の前を通り過そうとする中に、ちらりと色の変った模様もようが見えた。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
国は信濃よ三河遠江、水は天竜の流、水上みなかみよ、下り下りに春うらかすむ。
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
何にせい筑紫次郎という筑後川の水上みなかみに在る山奥の町じゃけに、四方の山々から切出いて川へ流す材木というものは夥しいものじゃ。そこでその材木を引当てに大公儀から毎年お金が貸下げられる
土地不案内なわたしも、その川について水上みなかみのほうへ進みさえすればいいと感づきました。だんだん歩いて行くうちに、川の水は谷底の下のほうに見えるようになって、がけづたいの道へ出ました。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
襄江の水上みなかみ七里の地に、さらにわかれている一川があった。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おちたぎつ滝の水上みなかみ年つもり
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
主は遠き水上みなかみにありて
受難日 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
われ水上みなかみに注ぎしに。
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
くてぞありける。あゝ、何時いつぞ、てんよりほしひとつ、はたとちて、たまごごといしとなり、水上みなかみかたよりしてカラカラとながる。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かず枝は、もっと水上みなかみの駅にちかいほうが、さびしくなくてよい、と言った。やがて、水上のまちが、眼下にくろく展開した。
姥捨 (新字新仮名) / 太宰治(著)
かれが前なる流れは音もせでよどみなく走るを、初めかれ心なくながめてありしが、見よ、水上みなかみより流れ来たる木の葉を、かれはひたすらながめ入りぬ。
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
私は河の水上みなかみというものに不思議な愛着を感ずる癖を持っている。一つの流に沿うて次第にそのつめまで登る。
みなかみ紀行 (新字新仮名) / 若山牧水(著)
愛宕あたごした、屋敷々々の下水も落ち込む故宇田川橋うだがはばしにては少しの川のやうに見ゆれども水上みなかみはかくの如し。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
しかもその上方地方という中に於いても、京都が古く「エタの水上みなかみ」と認められていた。
エタ源流考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
浅間観測所の水上みなかみ理学士に聞いたところでは、この日の爆発は四月二十日はつかの大爆発以来起こった多数の小爆発の中でその強度の等級にしてまず十番目くらいのものだそうである。
小爆発二件 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
気がついて足元を見ると、うずかぎりなく水上みなかみから流れて来る。貴王様の裏の池の水が、あの雲に襲われたものだろう。渦の形が急にいきおいづいたように見える。叔父さんはまたく渦を見守って
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その宿から火が出て竜神の村を焼いた時に、竜之助はその男を、なんの苦もなく日高川の水上みなかみへ斬って落しました。その後、お豊の話によると、金蔵は嫉妬しっとゆえに狂い出したものだそうです。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
日のうちも狹霧こもらふ水上みなかみは紅葉さしやき岩室いはむろ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
上野利根郡水上みなかみ村大字高日向たかひなた字アテラ沢
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
水上みなかみまさる庭の夏山
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其の向うは、わにの泳ぐ、可恐おそろし大河おおかわよ。……水上みなかみ幾千里いくせんりだか分らない、天竺てんじくのね、流沙河りゅうさがわすえだとさ、河幅が三里の上、深さは何百尋なんびゃくひろか分りません。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
愛宕の下、屋敷々々の下水も落ち込む故宇田川橋うだがわばしにては少しの川のやうに見ゆれども水上みなかみはかくの如し。
小川の水上みなかみの柳の上を遠く城山じょうざん石垣いしがきのくずれたのが見える。秋の初めで、空気は十分に澄んでいる、日の光は十分に鮮やかである。画だ! 意味の深い画である。
河霧 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
しかし本館のほうにいた水上みなかみ理学士は障子にあたって揺れる気波を感知したそうである。
小爆発二件 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ずつと以前利根川の上流を尋ねて行つた時、水上みなかみ村といふのに泊つたことがある。
山のふもと水上みなかみ町へぼんやり歩いて降りて来て、橋を渡って町へはいると、町は七夕、赤、黄、緑の色紙が、竹の葉蔭にそよいでいて、ああ、みんなつつましく生きていると、一瞬、私も
作家の手帖 (新字新仮名) / 太宰治(著)
このエタの水上みなかみというのは、果していかなる意味であろうか。
エタ源流考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
日のうちも狭霧こもらふ水上みなかみは紅葉さしやき岩室いはむろ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
むかうは、わにおよぐ、可恐おそろし大河おほかはよ。……水上みなかみ幾千里いくせんりだかわからない、天竺てんぢくのね、流沙河りうさがはすゑだとさ、河幅かははゞが三うへふかさは何百尋なんびやくひろわかりません。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「いったい私は、どうしたらいいのかなあ。」いつか水上みなかみ温泉で田舎まわりの宝船団とかいう一座の芝居を見たことがあるけれど、その時、額のあくまでも狭い色男が、舞台の端にうなだれて立って
鉄面皮 (新字新仮名) / 太宰治(著)