新字:曽
私は曾て自己の完成といふことを説いた。又自己の『自然』大にまで生長して行くことを説いた。しかし、それは多くは誤解された。
いきなり隣の部屋——曾て姉娘のお茂世が行方不明になつた六疊の部屋から、親分の平次の籠つたやうな聲がするではありませんか。
曾て見たことのある山水や、人物が、うつつとなって、沈思閉眼の境に現われて来て、甘美なる幻像に喜ばさるるの癖がつきました。
曾て大嫌いだった・之からも好きにはなれまい(というのは、今、南海の我が乏しき書庫に其の作物が一冊も並んでいないからだが)
もとよりいつたん精神病院の患者として入院したからには、曾て精神病者であつたことは明白であるが、現在は既に全治してゐる。