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悉皆
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すつかり
ふりがな文庫
“
悉皆
(
すつかり
)” の例文
何故自分は何もかも
悉皆
(
すつかり
)
姉に言つてしまはないだらう。姉は今危地に居る。それを知つてゐる自分が親身の姉を救ふことが出來ない。
少年の死
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
前の晩に
悉皆
(
すつかり
)
荷造りして置いた
見窄
(
みすぼ
)
らしい持物を一臺の
俥
(
くるま
)
に積み、夜逃げするやうにこつそりと濃い朝霧に包まれて濕つた裏街を
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
尤もあの男の事だから、
書物
(
ほん
)
といつたつてたんと読んでゐる訳でもあるまいが、源平盛衰記と太平記とだけはが
悉皆
(
すつかり
)
暗記してゐる。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
『音さん。四斗七升の何のと言はないで、
何卒
(
どうか
)
悉皆
(
すつかり
)
地親
(
ぢやうや
)
さんの方へ上げて了つて
御呉
(
おくん
)
なんしよや——
私
(
わし
)
はもう
些少
(
すこし
)
も
要
(
い
)
りやせん。』
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
さうして
養蠶
(
やうさん
)
の
忙
(
せは
)
しい四
月
(
ぐわつ
)
の
末
(
すゑ
)
か五
月
(
ぐわつ
)
の
初
(
はじめ
)
迄
(
まで
)
に、それを
悉皆
(
すつかり
)
金
(
かね
)
に
換
(
か
)
へて、
又
(
また
)
富士
(
ふじ
)
の
北影
(
きたかげ
)
の
燒石
(
やけいし
)
許
(
ばかり
)
ころがつてゐる
小村
(
こむら
)
へ
歸
(
かへ
)
つて
行
(
ゆ
)
くのださうである。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
父はもう
悉皆
(
すつかり
)
健康になつた。相模灣の暖い日和に葉山の別莊から
長者岬
(
ちやうじやみさき
)
近くまで散歩した位だと手紙にも書いてある。
新帰朝者日記
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
オヽ
吐
(
は
)
くのか
吐
(
は
)
くなら少しお待ち、サ
此飯櫃
(
このおはち
)
の
蓋
(
ふた
)
ン
中
(
なか
)
へ
悉皆
(
すつかり
)
吐
(
は
)
いてお
了
(
しま
)
ひ。源「ハツ/\ド
何
(
ど
)
うぞモウ一杯お湯を…。金「サお
上
(
あが
)
り。源「へい
有難
(
ありがた
)
う。 ...
黄金餅
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
ト同時に、口の歪んで居る事も、獨眼龍な事も、ナポレオンの骸骨な事も、忠太の云つた「氣をつけさつしあい」といふ事も、
悉皆
(
すつかり
)
胸の中から洗ひ去られた。
雲は天才である
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
勿論栄子は撮影所へ入ることを、
悉皆
(
すつかり
)
諦らめてしまつた。そして其から間もなく彼女は今迄の家庭生活を失ふと同時に、実生活の真中へ投り出されてしまつた。
質物
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
『さあ、
斯
(
か
)
うなつたら
逃
(
にが
)
す
事
(
こと
)
でないぞ。』と
最早
(
もはや
)
腹
(
はら
)
の
空
(
むな
)
しい
事
(
こと
)
も、
命
(
いのち
)
の
危險
(
あぶない
)
な
事
(
こと
)
も、
悉皆
(
すつかり
)
忘
(
わす
)
れてしまつた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
さうね、
纏
(
まとま
)
りやうがないつて思つてるンでせう?
悉皆
(
すつかり
)
、私はあきらめてもゐるのよ。奥さんを見たら、とても悲しくなつて、歩きながら、思ひ詰めちやつたわ。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
兵隊上
(
へいたいあが
)
りの
小使
(
こづかひ
)
のニキタは
亂暴
(
らんばう
)
にも、
隱
(
かくし
)
を
一々
(
いち/\
)
轉覆
(
ひつくりか
)
へして、
悉皆
(
すつかり
)
取返
(
とりか
)
へして
了
(
しま
)
ふので
有
(
あ
)
つた。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
『
然
(
さ
)
う、
私
(
わたし
)
、
恁麽
(
こんな
)
奇妙
(
きめう
)
な
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
てよ!』と
云
(
い
)
つて
愛
(
あい
)
ちやんは、
※
(
ねえ
)
さんに
憶
(
おぼ
)
えて
居
(
ゐ
)
たゞけを
悉皆
(
すつかり
)
話
(
はな
)
しました。それは
皆
(
みな
)
さんが
是迄
(
これまで
)
讀
(
よ
)
んで
來
(
き
)
た
所
(
ところ
)
の、
種々
(
しゆ/″\
)
不思議
(
ふしぎ
)
な
冐險談
(
ばうけんだん
)
でした。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
与るものならば未練気なしに
悉皆
(
すつかり
)
与つて仕舞ふが好いし、固より此方で取る筈なれば要りもせぬ助太刀頼んで、一人の首を二人で切る様な
卑劣
(
けち
)
なことをするにも当らないではありませぬか
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
「叱られるで。」と言ひながら、定吉は
軈
(
やが
)
て其の樂書を
悉皆
(
すつかり
)
消して了つた。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
それに行き著く一か八かの方途さへ、
悉皆
(
すつかり
)
分つたためしはない。
山羊の歌
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
二十年来慣れたことすら出来ないものを、是から新規に何が出来よう。根気も、精分も、我輩の身体の内にあるものは
悉皆
(
すつかり
)
もう尽きて了つた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
「えゝ、
悉皆
(
すつかり
)
直
(
なほ
)
りました」と
明
(
あきら
)
かに答へたが、
俄
(
にわ
)
かに立ち
上
(
あ
)
がつた。立ち
上
(
あ
)
がる時、小さな声で、独り
言
(
ごと
)
の様に
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
寧
(
いつ
)
そ
贋物
(
がんぶつ
)
で辛抱したら、格安に出来上るだらうと、
懸額
(
かけがく
)
から、軸物、屏風、
床
(
とこ
)
の置物まで
悉皆
(
すつかり
)
贋物
(
がんぶつ
)
で取揃へて、書斎の名まで
贋物堂
(
がんぶつだう
)
と名づけて納まつてゐた。
贋物
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
ト同時に、口の歪んで居る事も、独眼竜な事も、ナポレオンの骸骨な事も、忠太の云つた「気をつけさつしあい」といふ事も、
悉皆
(
すつかり
)
胸の中から洗ひ去られた。
雲は天才である
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
そして来た当座、毎日こゝに逢ひに来る彼を待つてゐるものらしかつたが、圭子の処へ子供を寄越して、父親が
悉皆
(
すつかり
)
安堵
(
あんど
)
してゐることは渡辺の話で圭子には解つてゐた。
チビの魂
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
サア、
賓客
(
おきやくさん
)
、もう
暗
(
くら
)
くなりましたぜ、
大佐閣下
(
たいさかくか
)
もひどくお
待兼
(
まちかね
)
で、それに、
夕食
(
ゆふしよく
)
の
御馳走
(
ごちさう
)
も
悉皆
(
すつかり
)
出來
(
でき
)
て、
料理方
(
れうりかた
)
の
浪三
(
なみざう
)
めが、
鳥
(
とり
)
の
丸燒
(
まるやき
)
が
黒焦
(
くろこげ
)
になるつて、
眼玉
(
めだま
)
を
白黒
(
しろくろ
)
にして
居
(
ゐ
)
ますぜ。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
せめて
疵口
(
くち
)
の
悉皆
(
すつかり
)
密着
(
くつつ
)
くまで
沈静
(
おちつい
)
て居て下され、と只管とゞめ宥め慰め、脱ぎしをとつて
復
(
また
)
被
(
き
)
すれば、余計な世話を焼かずとよし、腹掛着せい、これは要らぬ、と利く右の手にて撥ね退くる。
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
其理由
(
そのわけ
)
を
悉皆
(
すつかり
)
娘
(
むすめ
)
に
話
(
はな
)
してやれとグリフォンに
云
(
い
)
ひました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
悉皆
(
すつかり
)
下宿の払ひを済まし、車さへ来れば直に出掛けられるばかりに用意して、さて巻煙草に火を点けた時は、言ふに言はれぬ愉快を感ずるのであつた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
寧
(
いつ
)
そ
贋物
(
がんぶつ
)
で辛抱したら、格安に出来上るだらうと、
懸額
(
かけがく
)
から、軸物、屏風、
床
(
とこ
)
の置物まで
悉皆
(
すつかり
)
贋物
(
がんぶつ
)
で取揃へて、書斎の名まで
贋物堂
(
がんぶつだう
)
と名づけて納まつてゐた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「少し
寒
(
さ
)
むくなつた様ですから、兎に角立ちませう。冷えると毒だ。然し気分はもう
悉皆
(
すつかり
)
直
(
なほ
)
りましたか」
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
無理強ひの盃四つ五つ、それが
悉皆
(
すつかり
)
體中に
循
(
まは
)
つて了つて、聞苦しい土辯の川狩の話も興を覺えた。
眞紅
(
まつか
)
な顏をした吉野は、主人のカッポレを
機
(
しほ
)
に
密乎
(
こつそり
)
と離室に逃げ歸つた。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
しかし十九の時、
死
(
しに
)
つぱぐれに
逢
(
あ
)
つた、あの時のやうな重患でもなかつたので、
風邪
(
かぜ
)
をひくと
惹
(
ひ
)
き起し
易
(
やす
)
い肺炎ではあつたが、一週間ばかり寝てゐると、
悉皆
(
すつかり
)
好くなつてしまつた。
のらもの
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
遙
(
は
)
る/″\
本國
(
ほんごく
)
から
携
(
たづさ
)
へて
來
(
き
)
た三百
餘反
(
よたん
)
の
白絹
(
しろぎぬ
)
をば、
悉皆
(
すつかり
)
使用
(
しよう
)
してしまつた
相
(
さう
)
だ。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
「京都では別にこれといつて気に入つた物もないが、唯黄檗と指頭画とには
悉皆
(
すつかり
)
感服させられた。」
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「二三日の
雨
(
あめ
)
で、
苔
(
こけ
)
の
色
(
いろ
)
が
悉皆
(
すつかり
)
出
(
で
)
た
事
(
こと
)
」と平生に似合はぬ観察をして、
故
(
もと
)
の
席
(
せき
)
に
返
(
かへ
)
つた。さうして
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
手捷
(
てばし
)
こく顔直しをした蝶子の仕度が初まると、咲子は圭子と一緒に立ちあがつて、さも自分が
悉皆
(
すつかり
)
それを心得てゐるもののやうに、「それをぐる/\捲くのね」とか、「今度これでせう」とか言つて
チビの魂
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
『
然
(
さ
)
うですか。僕は
悉皆
(
すつかり
)
醒めちやつた。もう何時頃でせう?』
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
家光は心もち渋さうな顔をして笑つたが、その日の夕方には、柿の事なぞはもう
悉皆
(
すつかり
)
忘れてゐた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「
宗
(
そう
)
さんは
何
(
ど
)
うも
悉皆
(
すつかり
)
變
(
かは
)
つちまいましたね」と
叔母
(
をば
)
が
叔父
(
をぢ
)
に
話
(
はな
)
す
事
(
こと
)
があつた。すると
叔父
(
をぢ
)
は
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
木山も出ると負け出ると負けして、
悉皆
(
すつかり
)
気を腐らせてゐた。
のらもの
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
『あゝ、
悉皆
(
すつかり
)
醉つちやつた。』恁う言つて吉野は縁に立つ。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「心臓の
方
(
ほう
)
は、まだ
悉皆
(
すつかり
)
善
(
よ
)
くないんですか」と代助は気の毒さうな
顔
(
かほ
)
で尋ねた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
午後の三時、
規定
(
おきまり
)
の授業は一時間前に
悉皆
(
すつかり
)
終つた。
雲は天才である
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
宗助
(
そうすけ
)
は
安井
(
やすゐ
)
と
御米
(
およね
)
から
屆
(
とゞ
)
いた
繪端書
(
ゑはがき
)
を
別
(
べつ
)
にして
机
(
つくゑ
)
の
上
(
うへ
)
に
重
(
かさ
)
ねて
置
(
お
)
いた。
外
(
そと
)
から
歸
(
かへ
)
るとそれが
直
(
すぐ
)
眼
(
め
)
に
着
(
つ
)
いた。
時々
(
とき/″\
)
はそれを一
枚
(
まい
)
宛
(
づゝ
)
順
(
じゆん
)
に
讀
(
よ
)
み
直
(
なほ
)
したり、
見直
(
みなほ
)
したりした。
仕舞
(
しまい
)
にもう
悉皆
(
すつかり
)
癒
(
なほ
)
つたから
歸
(
かへ
)
る。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「
悉皆
(
すつかり
)
善
(
よ
)
くなるなんて、生涯駄目ですわ」
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「もう
悉皆
(
すつかり
)
好
(
い
)
いんですか」
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
“悉皆”の意味
《形容動詞》
悉皆(しっかい)
残すところ無く、すっかり、ことごとく。
(出典:Wiktionary)
悉
漢検準1級
部首:⼼
11画
皆
常用漢字
中学
部首:⽩
9画
“悉皆”で始まる語句
悉皆屋
悉皆成仏
悉皆浄尽