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微風
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びふう
ふりがな文庫
“
微風
(
びふう
)” の例文
まず、窓際へゆっくり席をとって、
硝子窓
(
がらすまど
)
を思いッきり押しあける。と、こころよい五月の
微風
(
びふう
)
が、
戯
(
ざ
)
れかかるように流れこんで来た。
香水紳士
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
短い
太皷型
(
たいこがた
)
の石橋を渡ると、
水屋
(
みづや
)
があつて、新らしい手拭に『
奉納
(
ほうなふ
)
』の二字を黒々と
染
(
にじ
)
ませて書いたのが、
微風
(
びふう
)
に
搖
(
うご
)
いてゐた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
更
(
さら
)
に
其
(
その
)
葉
(
は
)
は
何處
(
どこ
)
にも
感
(
かん
)
じない
微風
(
びふう
)
に
動搖
(
どうえう
)
して
自分
(
じぶん
)
のみが
怖
(
おぢ
)
たやうに
騷
(
さわ
)
いで
居
(
ゐ
)
る。
穗
(
ほ
)
は
何
(
なに
)
を
騷
(
さわ
)
ぐのかと
訝
(
いぶか
)
るやうに
少
(
すこ
)
し
俯目
(
ふしめ
)
に
見
(
み
)
おろして
居
(
ゐ
)
る。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
眸
(
ひとみ
)
をこらしてみつめていると、ときおり、
面
(
おもて
)
をなでてくる
微風
(
びふう
)
にまじってかすかな
叫喚
(
きょうかん
)
……
矢唸
(
やうな
)
り……
呼子笛
(
よびこぶえ
)
……
激闘
(
げきとう
)
の
剣声
(
けんせい
)
。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
其れが
嫩
(
やわ
)
らかな日光に
笑
(
え
)
み、若くは面を吹いて寒からぬ程の
微風
(
びふう
)
にソヨぐ時、或は
夕雲
(
ゆうぐも
)
の
翳
(
かげ
)
に青黒く
黙
(
もだ
)
す時、花何ものぞと云いたい程美しい。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
▼ もっと見る
同時
(
どうじ
)
に
下
(
した
)
を
見
(
み
)
ると、すぐ
近
(
ちか
)
く
大
(
おお
)
きな
木
(
き
)
が
目
(
め
)
に
入
(
はい
)
り、四
方
(
ほう
)
へ
張
(
は
)
った
枝
(
えだ
)
の
柔
(
やわ
)
らかな
緑色
(
みどりいろ
)
は
毛氈
(
もうせん
)
を
拡
(
ひろ
)
げたように、
細
(
こま
)
かな
葉
(
は
)
が、
微風
(
びふう
)
にゆれていました。
僕はこれからだ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
朝靄
(
あさもや
)
を、
微風
(
びふう
)
が
吹
(
ふ
)
いて、さざら波のたった海面、くすんだ緑色の島々、
玩具
(
おもちゃ
)
のような
白帆
(
しらほ
)
、
伝馬船
(
てんません
)
、久し
振
(
ぶ
)
りにみる故国日本の姿は
綺麗
(
きれい
)
だった。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
唯、金環蝕が終って
陽
(
よう
)
のはじまるときに生をうけた子供が、五月の
微風
(
びふう
)
にそよぐ若葉の
色彩
(
しきさい
)
の中に、すくすくと伸びてゆくことを
祈
(
いの
)
るのみである。
親馬鹿入堂記
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
双無塩
(
ふたりのあくぢよ
)
独
(
ひとり
)
の
西施
(
せいし
)
と
語
(
かた
)
るは
蒹葭
(
けんが
)
玉樹
(
ぎよくじゆ
)
によるが如く、
皓歯
(
しろきは
)
燦爛
(
ひか/\
)
としてわらふは
白芙蓉
(
はくふよう
)
の水をいでゝ
微風
(
びふう
)
に
揺
(
うごく
)
がごとし。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
砂地の
灼
(
や
)
けつくような
陽
(
ひ
)
の直射や、
木蔭
(
こかげ
)
の
微風
(
びふう
)
のそよぎや、
氾濫
(
はんらん
)
のあとの
泥
(
どろ
)
のにおいや、
繁華
(
はんか
)
な
大通
(
おおどおり
)
を行交う白衣の人々の姿や、
沐浴
(
もくよく
)
のあとの
香油
(
こうゆ
)
の
匂
(
におい
)
や
木乃伊
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
去
(
い
)
にし
年
(
とし
)
秋
(
あき
)
のはじめ、
汽船
(
きせん
)
加能丸
(
かのうまる
)
の
百餘
(
ひやくよ
)
の
乘客
(
じようかく
)
を
搭載
(
たふさい
)
して、
加州
(
かしう
)
金石
(
かないは
)
に
向
(
むか
)
ひて、
越前
(
ゑちぜん
)
敦賀港
(
つるがかう
)
を
發
(
はつ
)
するや、
一天
(
いつてん
)
麗朗
(
うらゝか
)
に
微風
(
びふう
)
船首
(
せんしゆ
)
を
撫
(
な
)
でて、
海路
(
かいろ
)
の
平穩
(
へいをん
)
を
極
(
きは
)
めたるにも
關
(
かゝ
)
はらず
旅僧
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
微風
(
びふう
)
の中から桜の花びらが病気の子のわきに落ちる。病気の子は動かない。
病む子の祭
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
微風
(
びふう
)
が花弁を動かしまた耀やかす。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
微風
(
びふう
)
もない
晩春
(
ばんしゅん
)
の夕ぐれ、——ありやなしの霞をすかして、
夕陽
(
ゆうひ
)
の光が
金色
(
こんじき
)
にかがやいている。いちめんの草にも、霞にも、竹童の
肩
(
かた
)
にも——。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
公園
(
こうえん
)
の
木立
(
こだち
)
は、
青黒
(
あおぐろ
)
い、
夜
(
よ
)
の
空
(
そら
)
に
立
(
た
)
っていました。
細
(
こま
)
かな
葉
(
は
)
が、かわいらしい、
清
(
きよ
)
らかな
歯
(
は
)
を
見
(
み
)
せて
笑
(
わら
)
っているように、
微風
(
びふう
)
に
揺
(
ゆ
)
らいでいました。
公園の花と毒蛾
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
蒸暑
(
むしあつ
)
い
中
(
うち
)
にも
凡
(
すべ
)
てが
水
(
みづ
)
の
樣
(
やう
)
な
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
を
浴
(
あ
)
びて
凉
(
すゞ
)
しい
微風
(
びふう
)
が
土
(
つち
)
に
觸
(
ふ
)
れて
渡
(
わた
)
つた。おつぎは
臼
(
うす
)
から
餅
(
もち
)
を
拗切
(
ねぢき
)
つて
茗荷
(
めうが
)
の
葉
(
は
)
に
乘
(
の
)
せて
一
(
ひと
)
つ/\
膳
(
ぜん
)
へ
並
(
なら
)
べた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
双無塩
(
ふたりのあくぢよ
)
独
(
ひとり
)
の
西施
(
せいし
)
と
語
(
かた
)
るは
蒹葭
(
けんが
)
玉樹
(
ぎよくじゆ
)
によるが如く、
皓歯
(
しろきは
)
燦爛
(
ひか/\
)
としてわらふは
白芙蓉
(
はくふよう
)
の水をいでゝ
微風
(
びふう
)
に
揺
(
うごく
)
がごとし。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
折から
爽
(
さわ
)
やかな五月の
微風
(
びふう
)
に、停車場一面ときならぬ香水の嵐をまきおこしながら、かけ出して行った。
香水紳士
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
どこかしらひえびえとした
微風
(
びふう
)
が
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
あたかも
南蛮絨毯
(
なんばんじゅうたん
)
を
敷
(
し
)
きのべたように、すみきった
大気
(
たいき
)
もみださぬほどな
微風
(
びふう
)
になでられてあった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
自分
(
じぶん
)
の
伴侶
(
なかま
)
が一つに
相
(
あひ
)
倚
(
よ
)
り
相
(
あひ
)
抱
(
いだ
)
いて
微風
(
びふう
)
にさへ
絶
(
た
)
えず
響
(
ひゞき
)
を
立
(
た
)
てゝ
戰慄
(
せんりつ
)
しつゝあるのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
秋なり、絶えず
微風
(
びふう
)
はきたる
畑の祭
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
時折
(
ときをり
)
、
微風
(
びふう
)
が
翼
(
はね
)
をかへして
畑の祭
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
“微風”の意味
《名詞》
微風(びふう、そよかぜ)
かすかに吹く風。
(出典:Wiktionary)
微
常用漢字
中学
部首:⼻
13画
風
常用漢字
小2
部首:⾵
9画
“微”で始まる語句
微笑
微
微塵
微行
微妙
微暗
微酔
微醺
微温
微睡