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徒
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いたず
ふりがな文庫
“
徒
(
いたず
)” の例文
先生は各人が自分の個性を伸ばしてゆくことを望まれて、
徒
(
いたず
)
らに先生の真似をするが如きことは
却
(
かえ
)
って苦々しく感じられたであろう。
西田先生のことども
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
人々の単なる主張を
徒
(
いたず
)
らに強いことばで宣伝し、ややもすればそのことばその主張にみずから陶酔するようなことがあってはならぬ。
日本に於ける支那学の使命
(新字新仮名)
/
津田左右吉
(著)
海賊には恨まれるかも知れぬけれど、これ丈けの財宝を、
徒
(
いたず
)
らに埋もれさせて置くのは意味のないことだ。よしよし、それに極めた。
白髪鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
彼等はこれを知らずして只
徒
(
いたず
)
らに天を仰いで空しく世道人心の頽廃を
浩歎
(
こうたん
)
しているのであります。思い切って鼻を往来の塵に埋めて
鼻の表現
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
私
(
わたくし
)
はまだその
後
(
あと
)
にいうべき事をもっていた。けれども奥さんから
徒
(
いたず
)
らに議論を仕掛ける男のように取られては困ると思って遠慮した。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
徒
(
いたず
)
らに恋愛の
泥濘
(
でいねい
)
に
悶踠
(
もが
)
いているにすぎない彼に絶望していたが、下手に
背
(
そむ
)
けば、逗子事件の失敗を繰り返すにすぎないのであった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
此他にビブリオターフと云うのがあるが、ターフとは墓の義で、唯
徒
(
いたず
)
らに読みもせぬ書物を買って積んで置くのを楽しむ
輩
(
やから
)
である。
愛書癖
(新字新仮名)
/
辰野隆
(著)
古来そのために無数の鶏、無数の犬、無数の人間が
徒
(
いたず
)
らに尊い血を流した、——宿命的にあらゆる物を狂気にさせる声援を与えた。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
同時に一兵たりと
徒
(
いたず
)
らに損ずべからざる御
直臣
(
じきしん
)
の兵をば、より有為な
秋
(
とき
)
に備えておかねばなるまいと愚考いたした次第にござりまする。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
うっかりしたら、お
守役
(
もりやく
)
の
私
(
わたくし
)
までが、あの
昂奮
(
こうふん
)
の
渦
(
うず
)
の
中
(
なか
)
に
引
(
ひ
)
き
込
(
こ
)
まれて、
徒
(
いたず
)
らに
泣
(
な
)
いたり、
怨
(
うら
)
んだりすることになったかも
知
(
し
)
れませぬ。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
(
青年
(
わかもの
)
を見てあざ笑う。青年は太刀の柄をすてて、更に弦の切れたる弓を取りしが、容易にかかり得ず、
徒
(
いたず
)
らに睨みいるのみ。)
蟹満寺縁起
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
徒
(
いたず
)
らに器を美のために作るなら、用にも堪えず美にも堪えぬ。用に即さずば工藝の美はあり得ない。これが工藝に潜む不動の法則である。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
炬燵
(
こたつ
)
から
潜
(
もぐ
)
り出て、土間へ下りて橋がかりからそこを
覗
(
のぞ
)
くと、三ツの
水道口
(
みずぐち
)
、残らず
三条
(
みすじ
)
の水が
一齊
(
いちどき
)
にざっと
灌
(
そそ
)
いで、
徒
(
いたず
)
らに流れていた。
眉かくしの霊
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
徒
(
いたず
)
らに、秘呪と称せられるのみにて、ここに十六代、
代々
(
よよ
)
、扶持せられて安穏に送るほか、何一つとして、功を立てたことはござりませぬ
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
父の茶道は
素
(
もと
)
より
然
(
しか
)
るべき
藪
(
やぶ
)
の
内
(
うち
)
の宗匠に
就
(
つい
)
て仕上げをしていたのであるが、しかも父の強い個性は
徒
(
いたず
)
らな風流を欲しなかった。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
食事を
摂
(
と
)
ることも、睡ることも、息をすることまで、何もかも困難になる。この幼い切ない魂は
徒
(
いたず
)
らに反転しながら泣号する。
火の唇
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
高崎松平も、大多喜松平も、どう間違っても、丸に立波の紋を掲げるはずはないのだから、ここで
徒
(
いたず
)
らに当惑するのも無理がないと見える。
大菩薩峠:28 Oceanの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
頭の上には知らぬ顔をしている大都市を持ちながら、
徒
(
いたず
)
らに助けを呼び、歯をくいしばり、もだえ、もがき、苦しむのである。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
大佐
(
たいさ
)
よ、
私
(
わたくし
)
も
既
(
すで
)
に
此
(
この
)
島
(
しま
)
の
仲間
(
なかま
)
となつた
今
(
いま
)
は、
貴下等
(
あなたがた
)
の
毎日
(
まいにち
)
/\の
勞苦
(
らうく
)
をば、
徒
(
いたず
)
らに
傍觀
(
ぼうくわん
)
して
居
(
を
)
るに
忍
(
しの
)
びません、
何
(
な
)
んでもよい。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
それは
恰
(
あた
)
かもかの
仏蘭西
(
フランス
)
の植木家の手になるピラミツド形、車輪形或は花環形の奇異なる草木を
徒
(
いたず
)
らに連想せしむるのみで
婦人解放の悲劇
(新字旧仮名)
/
エマ・ゴールドマン
(著)
共産主義者などは
徒
(
いたず
)
らに枝葉の空論をふりまく前に、
先
(
ま
)
ずこの人性の根本的な実相に就て問題を展開する必要があった筈だ。
咢堂小論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
徒
(
いたず
)
らな
豪奢
(
ごうしゃ
)
のうすら冷い触覚と、着物に対する甘美な魅惑とが引き浪のあとに残る潮の響鳴のように、私の女ごころを
衝
(
う
)
つ。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
法水は、とうてい聴くことは出来ぬと思われた、この神秘楽団の演奏に接することは出来たけれども、彼は
徒
(
いたず
)
らに陶酔のみはしていなかった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
若「アヽ此の比翼
散
(
ぢら
)
しも
徒
(
いたず
)
ら事になったか、怨めしい、それほど不実の人とは知らず、
勤
(
つとめ
)
の
中
(
うち
)
一夜でも
外
(
ほか
)
の客へは
交
(
かわ
)
さぬ枕」
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
ゆえにこの間に結ばるる夢は
徒
(
いたず
)
らに
疲労
(
ひろう
)
せる身体の
幻
(
まぼろし
)
すなわち
諺
(
ことわざ
)
にいう五
臓
(
ぞう
)
の
煩
(
わずら
)
いでなく、精神的営養物となるものと思う。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
この文学の光、文化の芽をどういう理由で僕達の手で又葬るべきだと云うのか。だが僕はこれのために又
徒
(
いたず
)
らに感傷的になって云うのでもない。
天馬
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
オ手紙ノコトハ勿論斯波君ニハ云イマセンカラ安心シテイラッシャイ。
徒
(
いたず
)
ラニ悲シミヲ増サセルニ過ギナイノナラ知ラセルノハ無駄ナノダカラ。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
唯
徒
(
いたず
)
らに田を耕し畑に種を蒔いたのみでその甲斐はなく、秋の忙しい苅入れ時には何もする事がなく、全くの、前代未聞の災難が起ったのである。
現代語訳 方丈記
(新字新仮名)
/
鴨長明
(著)
そら、狸だというので逃げ出す。大小を
挿
(
さ
)
した奴は、刀の反りを打って
空
(
くう
)
を
睨
(
にら
)
んで通る。随分悪い
徒
(
いたず
)
らをしたものさね。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
申砬の如きは眼中に日本軍なく、暴慢で到る処で
徒
(
いたず
)
らに人を斬って威を示す有様なので、地方官は大いに怖れてその待遇は大臣以上であったと云う。
碧蹄館の戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
さて家に帰ってやって見るに一向竹にもならず、
徒
(
いたず
)
らに
紙屑
(
かみくず
)
を製造する。退屈はとうとう私に絵というものは思ったより憂鬱なものだと感じさせた。
大切な雰囲気:03 大切な雰囲気
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
徒
(
いたず
)
らに物事に驚かず、よきものと
悪
(
あ
)
しきものの区別を知り、あらゆるものの価値を正当に批判し、しかもなお熱情をもってよきものを喜ぶ大人の眼が
大人の眼と子供の眼
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
ただあの文章はいくらか書き様に善くない処があって
徒
(
いたず
)
らに人を
罵詈
(
ばり
)
したように聞こえたのは甚だ面白くなかった。
病牀苦語
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
また芝の正眼寺へかよって禅もまなんでみた。けれどもやはり彼女には縁の遠いもので、どちらも
徒
(
いたず
)
らに
煩瑣
(
はんさ
)
であり、空疎なものにしか思えなかった。
菊千代抄
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
まるで彼は、このような前代未聞の話に
就
(
つ
)
いての何らかの意見を、その煙管から吸い出そうとでもしたものらしいが、
徒
(
いたず
)
らに雁首が唸るだけであった。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
天気は極めてよく、私達は、高く澄んだ蒼空の下に雪に覆われて長が長がと、その空につづく氷河の麓に、
徒
(
いたず
)
らに点ぜられた、
黒子
(
ほくろ
)
のように思われる。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
「黙られい!
徒
(
いたず
)
らに大言壮語——オッ、そういうお手前は、笠間氏じゃな、うわさによると、お手前は
鎧兜
(
よろいかぶと
)
を着して
寝
(
しん
)
に
就
(
つ
)
かれるということじゃが」
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
かくして、カラタール氏等を載せた臨時列車の紛失事件が未解決のままに、今年まで
徒
(
いたず
)
らに八年の歳月が流れた。
臨時急行列車の紛失
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
待っている間、机の上に置いてあった硯箱を明けて、巻紙に
徒
(
いたず
)
ら書きをしていた処であったから机の
向
(
むこう
)
に来ると
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
私は復古癖の人のように、
徒
(
いたず
)
らに言語の純粋性を主張して、
強
(
し
)
いて古き言語や語法によって今日の思想を言い表そうとするものに同意することはできない。
国語の自在性
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
良いということが徹底的で、容易に他の力に惑わされない。織物のことを知っている、紙のことを知っている。それはただ
徒
(
いたず
)
らに立派であってもいけない。
書道と茶道
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
この都会の
澱
(
よど
)
んでカスばかり溜った小路をあるきながら、例によって
何等
(
なんら
)
の感銘もなく、ただ
徒
(
いたず
)
らに歩行するだけの毎夜の疲労にとぼとぼ歩いていたとき
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
四囲
(
あたり
)
の人々がどうあろうと、そんな判別もつかぬらしく、ただ
徒
(
いたず
)
らにその眼は
執念
(
しつこ
)
く女の屍体に注がれていた。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
あの
尊
(
とう
)
とかりし我熱情の、
徒
(
いたず
)
らに消耗された事を思い嘆くあまりの、焦燥から来た我執とみなければなるまい。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
自分で一人前の生活もできないのに、
徒
(
いたず
)
らに人を罵るなぞは、あまり感心できないと、彼は考えたのである。
斗南先生
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
それは
徒
(
いたず
)
らな謙遜というわけでもなく、実はそれが神経的に、そして更に迷信的に
適
(
かな
)
わぬというのであった。
鬼涙村
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
氷雨
(
ひさめ
)
に似たようなものであれば、これは
徒
(
いたず
)
らに、今までの積雪の表面に余計な
硬皮
(
クラスト
)
をかぶせるだけの役にしか立たないから、折角の舞台を滅茶々々にされて
踊る地平線:11 白い謝肉祭
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
かくの如くして啓示なるものは、
徒
(
いたず
)
らに宗派的論争の用具と化し、古経典は、空しく各自の気に入った武器を引張り出す為めの、兵器庫の観を呈して
了
(
しま
)
った。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
それは個性の要求が必至的に
創
(
つく
)
り出した見方であって、
徒
(
いたず
)
らなる権力が如何ともすべからざる一個の権威である。一時は権力を
以
(
もっ
)
て圧倒することも出来よう。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
こういう場合に処すべき修養と訓練とをそれまでから欠いていたために、どうすれば好いか、全く策の
出
(
い
)
ずる所を知らないで
徒
(
いたず
)
らに
狼狽
(
ろうばい
)
して右往左往する者と
激動の中を行く
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
“徒”の意味
《名詞》
(かち)徒歩。
(かち)江戸時代、騎乗を許されなかった下級の武士。
(ただ)普通。凡庸。ありきたり。
(ただ)何事も無いこと。
(むだ)役に立たない、効果の無い又は不要に贅沢なもの。
(ト)仲間。同類の人。
(ズ)五刑の一つ。懲役刑。一年から三年まで半年毎に五段階設けられた。
(出典:Wiktionary)
徒
常用漢字
小4
部首:⼻
10画
“徒”を含む語句
徒歩
徒然
徒事
基督教徒
聖徒
徒爾
徒輩
徒労
清教徒
悪徒
徒為
徒士
徒渉
博徒
徒弟
徒跣
徒党
兇徒
耶蘇教徒
徒手
...