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やまなか
ふりがな文庫
“
山中
(
やまなか
)” の例文
九州の
窮介
(
きゅうすけ
)
、吉野の
葛
(
くず
)
、
山中
(
やまなか
)
の片栗というような本場ものでやると、料理も完全なものになる。そんな葛も築地の珍味店に行くとある。
琥珀揚げ
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
池の面は黒ずんで、合歓に渡る風が一きわ高く、静かな
山中
(
やまなか
)
の夜は物凄い程に
寂然
(
ひっそり
)
としている。……耳を澄ますと虫の音が聞こえて来る。
稚子ヶ淵
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
信州の
山中
(
やまなか
)
に於て密かに爆烈彈を製造してゐる事が發覺して、其一團及び彼等と機密を通じてゐた紀州
新宮
(
しんぐう
)
の同主義者が其筋の手に檢擧された。
所謂今度の事:林中の鳥
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
現に今から百余年
前
(
ぜん
)
、天明年間に
日向国
(
ひゅうがのくに
)
の
山中
(
やまなか
)
で、
猟人
(
かりゅうど
)
が獣を捕る為に張って置いた
菟道弓
(
うじゆみ
)
というものに、人か獣か判らぬような怪物が
懸
(
かか
)
った。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
清水
(
しみづ
)
を
清水
(
しやうづ
)
。——
桂
(
かつら
)
清水
(
しやうづ
)
で
手拭
(
てぬぐひ
)
ひろた、と
唄
(
うた
)
ふ。
山中
(
やまなか
)
の
湯女
(
ゆな
)
の
後朝
(
きぬ/″\
)
なまめかし。
其
(
そ
)
の
清水
(
しやうづ
)
まで
客
(
きやく
)
を
送
(
おく
)
りたるもののよし。
寸情風土記
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
四明
(
しめい
)
ヶ
岳
(
たけ
)
の天井を峰づたいに歩いて、
山中
(
やまなか
)
を経て
滋賀
(
しが
)
に下りてゆけば、ちょうど三井寺のうしろへ出ることができる。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
九谷という村は、加賀の
山中
(
やまなか
)
という温泉から、六、七里ばかりも渓流に沿って上った所にある山間の
僻地
(
へきち
)
で、今でもよほどの
物好
(
ものずき
)
でないと行けぬ位の山奥である。
九谷焼
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
つけて一軒の茶店ある所まで連れ行き
此
(
こゝ
)
にて待たれよ我は先へ行きて車を見つけ迎ひによこすべければと頼もしく
云
(
いは
)
るれどたつきも知らぬ
山中
(
やまなか
)
に一人殘されては車を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
荒物屋じゃア仕様がございません、それに今度金沢から
大聖寺
(
たいしょうじ
)
山中
(
やまなか
)
の温泉の方へ商いに行きたいと思いますのさ、
就
(
つい
)
ては小間物を仕込みたく存じますが、
資本
(
もとで
)
が有りませんから
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
馬込
(
まごめ
)
は谷おほき里、とりよろふ丘の
岬々
(
さきざき
)
、朝に夜に狹霧立ち立つ。高窻や東に開き、西をあけ、南もあけて、うち透かす賑ふ
灯
(
あかり
)
、
山中
(
やまなか
)
のみ湯のさまかも、月さへも紫明る。霧はおもしろ。
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「そんな秘し隠しをしなくともいいじゃありませんか。別に悪いところにいるというのじゃないし、女を買うわけでもないんですもの。
山中
(
やまなか
)
なんかへ行ってるよりか、よほど安心なもんや」
挿話
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
就中
(
なかんずく
)
能登の
輪島
(
わじま
)
は盛な生産地であり、これに次いで加賀の
山中
(
やまなか
)
があります。金沢も上ものを作る所として知られます。しかしこの国の漆器といえば誰も輪島を筆頭に挙げるでありましょう。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
昔から
人跡
(
じんせき
)
の到らない処であるから、仙道修行にはまたと無い処じゃ、わしはもと大和の国の神官で、
山中
(
やまなか
)
と云う者であったが、わしが人間界におった時は、
足利義満
(
あしかがよしみつ
)
や
義持
(
よしもち
)
が将軍になって
神仙河野久
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
山中
(
やまなか
)
といふ所にいたる。
経来
(
へきたり
)
し
磴路
(
とうろ
)
崖谷
(
がいこく
)
みな眼下指頭にあり。東南の
方
(
かた
)
ひらけて武蔵下野上野、筑波日光の諸山を望む。今春江戸の回禄せしときも火光を淡紅にあらはせりと、
茶店
(
ちやてん
)
の老婦語れり。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
洗ひ
嗽
(
うがひ
)
などして
暑
(
あつさ
)
を
凌
(
しの
)
ぎ
休
(
やす
)
らひ居たり此處は景色もよく後ろは
須走
(
すはし
)
り前は
山中
(
やまなか
)
の湖水と
打眺
(
うちなが
)
め居る彼方の
坂
(
さか
)
より
行衣
(
ぎやうい
)
に
襷
(
たすき
)
を
懸
(
かけ
)
て
金剛杖
(
こんがうづゑ
)
を突ながら
鈴
(
すゞ
)
の
音
(
ね
)
と
倶
(
とも
)
に來る富士同者あり
渠
(
かれ
)
も此處に休み水を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
朝夕のたつきも知らざりし
山中
(
やまなか
)
も、年々の避暑の客に思わぬ
煙
(
けぶり
)
を増して、
瓦葺
(
かわらぶ
)
きの
家
(
や
)
も木の葉越しにところどころ見ゆ。
尾上
(
おのえ
)
に雲あり、ひときわ高き松が根に起りて、
巌
(
いわお
)
にからむ
蔦
(
つた
)
の上にたなびけり。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
知らず、彼等は
何
(
なに
)
の故に
相率
(
あひひきゐ
)
てこの人目
稀
(
まれ
)
なる
山中
(
やまなか
)
には
来
(
きた
)
れる。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
『
山中
(
やまなか
)
の夕日白壁やすらかに君がゐまさんことをのみこそ』
『蒲団』を書いた頃
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
おじいさんは、この
山中
(
やまなか
)
にただ
一人
(
ひとり
)
住
(
す
)
んでいる
不思議
(
ふしぎ
)
な
人間
(
にんげん
)
でありました。
弟
(
おとうと
)
は、おじいさんの
小屋
(
こや
)
につれられてまいりました。
白すみれとしいの木
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
それでも、今からもう二十五年も昔になるが、
遂
(
つい
)
に私もこの洗いを思う存分賞味する機会を得た。加賀の
山中
(
やまなか
)
温泉に
逗留
(
とうりゅう
)
していた時のことである。
鮎の食い方
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
前にも記す如く、お葉は自分にも判らぬ心理状態の
中
(
うち
)
に
此
(
こ
)
の
山中
(
やまなか
)
へ
誘
(
いざな
)
われ、
此
(
こ
)
の窟の奥に囚われて
了
(
しま
)
った。重太郎と
山𤢖
(
やまわろ
)
とは夜の更けるまで帰って来なかった。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
少年も少し
心着
(
こころづ
)
いて、
此処
(
ここ
)
は
何処
(
どこ
)
だらう、と聞いた時、はじめて知つた。木曾の
山中
(
やまなか
)
であつたのである。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
ここの
山中
(
やまなか
)
乞食ばかりは、長年彼が注意して見て来たところでは、せむしの男も、
盲
(
めくら
)
の女も、ちんばの小娘も、老幼ことごとく同じ者がいつも同じ所に群れていた。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
馬込
(
まごめ
)
は谷おほき里、とりよろふ丘の
岬々
(
さきざき
)
、朝に夜に狭霧立ち立つ。高窻や東に開き、西をあけ、南もあけて、うち透かす賑ふ
灯
(
あかり
)
、
山中
(
やまなか
)
のみ湯のさまかも、月さへも紫明る。霧はおもしろ。
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
それから
紙燭
(
しそく
)
を
点
(
つ
)
けて出て来て、お武家さま斯様な人も通らん
山中
(
やまなか
)
へ何うしてお出でなさいました、拙者は武術修業の身の上ゆえ、
敢
(
あえ
)
て淋しい処を恐れはせぬが如何にも追々
夜
(
よ
)
は更けるし
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
貸さる我が羽織の上へ重ね
被
(
き
)
ても大きければ向ふ山風に吹き孕みて
恰
(
あた
)
かも
母衣
(
ほろ
)
の如し
後
(
あと
)
の馬の露伴梅花の兩子いろ/\に
見立
(
みたて
)
て
嘲
(
あざ
)
み笑ふ
此
(
こゝ
)
は信濃の
山中
(
やまなか
)
なり
見惡
(
みにく
)
しとて
寒
(
さぶ
)
さにかへられんや左云ふ君等の顏の色を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
たまに、こうして、あなたがたずねてきて
鳴
(
な
)
いてくださるので、
私
(
わたし
)
たちは、さびしい、こんな
山中
(
やまなか
)
にいてもなぐさめられるのです。
今夜
(
こんや
)
は、
雪
(
ゆき
)
になりそうです。
美しく生まれたばかりに
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
この山代の湯ぐらいでは
埒
(
らち
)
あかねえさ。
脚気
(
かっけ
)
山中
(
やまなか
)
、かさ
粟津
(
あわづ
)
の湯へ、七日湯治をしねえ事には半月十日寝られねえで、
身体
(
からだ
)
中
掻毟
(
かきむし
)
って、目が
引釣
(
ひッつ
)
り上る若旦那でね。
みさごの鮨
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
無法
飛
(
とば
)
せの馬車なれば(是よりして木曾の
山中
(
やまなか
)
にも無法飛ぶのは馬車ではないか
抔
(
など
)
定めて洒落始めしならん)
下手
(
へた
)
な言文一致の
詞
(
ことば
)
のやうにアツヱツ
發矢
(
はつし
)
など驚きて思はず叫ぶばかり山も川も只飛び過ぎ
熱川
(
にえがは
)
より奈良井の間の諏訪峠といふ所は車の片輪を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
しかし、
彼
(
かれ
)
らは、ある
山中
(
やまなか
)
の
湖
(
みずうみ
)
の
上
(
うえ
)
を
通
(
とお
)
ったときに、ついにそこへ
降
(
お
)
りなければなりませんでした。
がん
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
ええ……温泉でございますか、名は体をあらわすとか言います、とんだ
山中
(
やまなか
)
で、……狼温泉——
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかし、
年
(
とし
)
とったがんにとって、この
山中
(
やまなか
)
の
湖
(
みずうみ
)
は
彼
(
かれ
)
のしかばねを
葬
(
ほうむ
)
るところとなりました。
がん
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
七十にもなって、
跣足
(
はだし
)
で西京の本願寺へ
詣
(
もう
)
でるのが、この辺りの信者に多いので、これは
飛騨
(
ひだ
)
の
山中
(
やまなか
)
あたりから出て来たのが、富山に一泊して、朝がけに、これから加州を指して
行
(
ゆ
)
くのである。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
こんな
山中
(
やまなか
)
だけれど、なに
不自由
(
ふじゆう
)
はない。
長
(
なが
)
くここに
住
(
す
)
めば、
春
(
はる
)
、
夏
(
なつ
)
、
秋
(
あき
)
、
冬
(
ふゆ
)
、いろいろの
美
(
うつく
)
しいながめもあれば、
楽
(
たの
)
しみもある。おまえはいいと
思
(
おも
)
ったら、いつまでも
住
(
す
)
むがいい。
白すみれとしいの木
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「まったくだ、明日は
山中
(
やまなか
)
へ行くつもりだ。忙しい観光団さ。」
みさごの鮨
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼
(
かれ
)
も、
火
(
ひ
)
の
球
(
たま
)
について
谷
(
たに
)
へ
下
(
お
)
りようとしますと、もはや
夜
(
よ
)
が
明
(
あ
)
けていました。そして、そこは
路
(
みち
)
もないまったく
山中
(
やまなか
)
で、あのきばのように
高
(
たか
)
い
山
(
やま
)
は、まだ
遠
(
とお
)
くなって
見
(
み
)
えたのであります。
白すみれとしいの木
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
“山中”の意味
《名詞》
山中(さんちゅう)
山や森林の中。山間。
(出典:Wiktionary)
山
常用漢字
小1
部首:⼭
3画
中
常用漢字
小1
部首:⼁
4画
“山中”で始まる語句
山中人饒舌
山中鹿之介
山中鹿之介幸盛
山中人
山中毒
山中笑
山中路
山中左膳
山中心得
山中常盤双紙