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嬌態
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しな
ふりがな文庫
“
嬌態
(
しな
)” の例文
金縁の
目金
(
めがね
)
を掛けたる五ツ紋の
年少
(
わか
)
紳士、襟を正しゅうして第三区の
店頭
(
みせさき
)
に立ちて、
肱座
(
ひじつき
)
に眼を着くれば、照子すかさず
嬌態
(
しな
)
をして
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ちょうど女の歩きつきの形のままに脱いだ跡が
可愛
(
かわい
)
らしく
嬌態
(
しな
)
をしている。それを見ると私はたちまち何ともいえない
嫉妬
(
しっと
)
を感じた。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
けれども葉子はもう左手の小指を器用に折り曲げて、左の
鬢
(
びん
)
のほつれ毛を美しくかき上げるあの
嬌態
(
しな
)
をして見せる気はなくなっていた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
そのうえ上半身や左右の手や腰部などで、種々なるところの挙動を示すが、これは柔軟体操ではなくしていわゆる「
嬌態
(
しな
)
」であるらしい。
長屋天一坊
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
もっともそれには、向うは夫人同伴であるから、薄手の
嬌態
(
しな
)
をつくるわけには行かない。かなり高等な技術が要る。
パーティ物語
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
▼ もっと見る
眉根を挙げ眼をぱっちり見開いて、頸筋をしなやかに
傾
(
かし
)
げながら、小娘にしては喫驚するような
嬌態
(
しな
)
をしてみせた。
悪夢
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
一寸
嬌態
(
しな
)
をして、そして受取る。思ひの外にその後も尚ほ三四杯を重ね得た。私は内心驚かざるを得なかつた。
姉妹
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
「あら、三河町の親分さんでしたか。どうもしばらく」と、お六はいやに
嬌態
(
しな
)
をつくりながら挨拶した。
半七捕物帳:11 朝顔屋敷
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
おつぎはどうかすると
目
(
め
)
の
邊
(
へん
)
に
在
(
あ
)
る
雀斑
(
そばかす
)
が一
種
(
しゆ
)
の
嬌態
(
しな
)
を
作
(
つく
)
つて
甘
(
あま
)
えたやうな
口
(
くち
)
の
利方
(
きゝかた
)
をするのであつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
侍がからだを揺すぶるのが、わざと
嬌態
(
しな
)
をつくるとしか見えない、
威嚇
(
おどし
)
のきかないことおびただしい。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
娘は真赤になって、
嬌態
(
しな
)
を作り作り万平の前に来て、振袖を重ねた。いい匂のする
桃割髪
(
ももわれ
)
を下げた。
芝居狂冒険
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
處へもツて來て、一日々々に
嬌態
(
しな
)
を見せられるやうになツて行くのだから耐らぬ。周三がお房を
詮議
(
せんぎ
)
する眼は一日々々に
寛
(
ゆる
)
くなツた。そして
放心
(
うつかり
)
其の事を忘れて了ツた。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
人間なら
好
(
い
)
い
齢
(
とし
)
をした
梅干婆
(
うめぼしばあ
)
さんが十五、六の
小娘
(
こむすめ
)
の
嬌態
(
しな
)
を作って甘っ垂れるようなもんだから、
小滛
(
こいや
)
らしくて
撲
(
は
)
り倒してやりたい処だが、猫だからそれほど妙にも見えないで
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
女房はその賛辞に動かされて、
媚
(
こ
)
びられた怪物が
嬌態
(
しな
)
を作るような様子で言った。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
時々、彼女は物に驚いた蛇か孔雀のやうな、をのゝくやうな
嬌態
(
しな
)
を作つて、首をもたげる。すると銀の格子細工のやうに頸を捲いてゐる高いレースの
襞襟
(
ひだえり
)
がをのゝくやうに動くのである。
クラリモンド
(新字旧仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
彼
(
か
)
の
女
(
じょ
)
は活発な足どりで、つかつかと舞台の前面に歩み出で、しなやかな
襟頸
(
えりくび
)
から肩の筋肉を、
蛇
(
へび
)
に
化
(
ば
)
けようとする人間のように、妙にくるくると波打たせながら、怪しい
嬌態
(
しな
)
を作って
小僧の夢
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
やがて板に掛けられた所を見ると、喜び、泣き、
嬌態
(
しな
)
を作るべき筈の
女形
(
をんながた
)
が、男の樣な聲で物を言ひ、男の樣に歩き、男も難しとする樣な事を平氣で
爲
(
し
)
た。觀客は全く
呆氣
(
あつけ
)
に取られて了つた。
所謂今度の事:林中の鳥
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
出来上った娘の姿を見て「この娘には、まるで女の
嬌態
(
しな
)
が逆についている」
娘
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そして、頭の毛の薄くなった四十男が、何か恥かしそうな
嬌態
(
しな
)
をした。
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
さうとも知らない若い夫人は、一寸
嬌態
(
しな
)
をつくつて博士の前に立つた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
そして今は、姿見に全身を映してみて、さかんに
嬌態
(
しな
)
を作っている。
踊る地平線:06 ノウトルダムの妖怪
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
「だってえ……
尋常
(
ただ
)
のじゃあ……」と甘たれた
嬌態
(
しな
)
をする。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
印東はくねくねと色っぽく
嬌態
(
しな
)
をして
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
お宮は五円札を一枚やると
嬉
(
うれ
)
しさを押し包むように
唇
(
くち
)
をきゅっと引き締めて入口まで送って出た私の方を
格子戸
(
こうしど
)
を閉めながらさも思いを残してゆくような
嬌態
(
しな
)
を見せて
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
と、とっさに看取した櫛まきお藤、おちょぼ口を袖でおさえると、ひとりでに
嬌態
(
しな
)
をつくった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
……血の道らしい年増の女中が、
裾長
(
すそなが
)
にしょろしょろしつつ、トランプの顔を見て、目で
嬌態
(
しな
)
をやって、眉をひそめながら肩でよれついたのと、
入交
(
いれまじ
)
って、門際へどっと
駈出
(
かけだ
)
す。
怨霊借用
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
良人
(
おっと
)
沼南と同伴でない時はイツデモ
小間使
(
こまづかい
)
をお
伴
(
とも
)
につれていたが、その頃流行した
前髪
(
まえがみ
)
を切って
前額
(
ひたい
)
に
垂
(
た
)
らした
束髪
(
そくはつ
)
で、
嬌態
(
しな
)
を作って桃色の小さいハンケチを
揮
(
ふ
)
り揮り香水の
香
(
にお
)
いを
四辺
(
あたり
)
に
薫
(
くん
)
じていた。
三十年前の島田沼南
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
お嬢さんは
嬌態
(
しな
)
を作つて小説家に話しかけた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
乳を隠す
嬌態
(
しな
)
らしい、片手柔い
肱
(
ひじ
)
を外に、指を反らして、ひたりと附けた、その
頤
(
おとがい
)
のあたりを
蔽
(
おお
)
い、額も見せないで、なよなよと
筵
(
むしろ
)
に雪の
踵
(
かかと
)
を散らして、
静
(
しずか
)
に、行燈の紙の青い前。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「どうも遅くなって済みませんでした。」優しく口を利いて、軽く
嬌態
(
しな
)
をした。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
「年増だって!」と
嬌態
(
しな
)
をつくって、「年増じゃないわねえ」
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
婦人記者は金糸雀のやうに一寸
嬌態
(
しな
)
をした。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
戀
(
こひ
)
か、
三十日
(
みそか
)
かに
痩
(
や
)
せたのは、また
白銅
(
はくどう
)
を
合
(
あは
)
せて、
銀貨入
(
ぎんくわいれ
)
に
八十五錢
(
はちじふごせん
)
と
云
(
い
)
ふのもある……
嬉
(
うれ
)
しい。
寸
(
ほん
)
の
志
(
こゝろざし
)
と、
藤間
(
ふぢま
)
の
名取
(
なとり
)
で、
嬌態
(
しな
)
をして、
水上
(
みなかみ
)
さんの
袂
(
たもと
)
に
入
(
い
)
れるのがある。……
甘
(
うま
)
い。
九九九会小記
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
文字若は、
嬌態
(
しな
)
を作って、足を引っこめようとした。
釘抜藤吉捕物覚書:13 宙に浮く屍骸
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
その
蔭
(
かげ
)
から、しなやかな
裳
(
もすそ
)
が、土手の
翠
(
みどり
)
を左右へ残して、線もなしに、よろけ
縞
(
じま
)
のお
召縮緬
(
めしちりめん
)
で、
嬌態
(
しな
)
よく仕切ったが、油のようにとろりとした、雨のあとの
路
(
みち
)
との間、あるかなしに
春昼後刻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
丈
(
せい
)
もすら/\と
急
(
きふ
)
に
高
(
たか
)
くなつたやうに
見
(
み
)
えた、
婦人
(
をんな
)
は
目
(
め
)
を
据
(
す
)
ゑ、
口
(
くち
)
を
結
(
むす
)
び、
眉
(
まゆ
)
を
開
(
ひら
)
いて
恍惚
(
うつとり
)
となつた
有様
(
ありさま
)
、
愛嬌
(
あいけう
)
も
嬌態
(
しな
)
も、
世話
(
せわ
)
らしい
打解
(
うちと
)
けた
風
(
ふう
)
は
頓
(
とみ
)
に
失
(
う
)
せて、
神
(
しん
)
か、
魔
(
ま
)
かと
思
(
おも
)
はれる。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
丈
(
せい
)
もすらすらと急に高くなったように見えた、
婦人
(
おんな
)
は目を
据
(
す
)
え、口を結び、
眉
(
まゆ
)
を開いて
恍惚
(
うっとり
)
となった
有様
(
ありさま
)
、
愛嬌
(
あいきょう
)
も
嬌態
(
しな
)
も、世話らしい
打解
(
うちと
)
けた風はとみに
失
(
う
)
せて、神か、
魔
(
ま
)
かと思われる。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
自
(
おのず
)
から肩の
嬌態
(
しな
)
、引合せた袖をふらふらと、台所
穿
(
ばき
)
をはずませながら、
傍見
(
わきみ
)
らしく顔を横にして、小走りに駆出したが、帰りがけの四辻を、河岸の方へ突切ろうとする角に、自働電話と
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ッたが、
初心
(
うぶ
)
ですからね、うじうじ
嬌態
(
しな
)
をやっていた、とお思いなさい。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と云って、肩でわざとらしくない
嬌態
(
しな
)
をしながら、片手でちょいと帯を
圧
(
おさ
)
えた。ぱちん
留
(
どめ
)
が少し
摺
(
ず
)
って、……薄いが
膨
(
ふっく
)
りとある胸を、
緋鹿子
(
ひがのこ
)
の
下〆
(
したじめ
)
が、八ツ口から
溢
(
こぼ
)
れたように打合わせの
繻子
(
しゅす
)
を
覗
(
のぞ
)
く。
妖術
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
頸
(
えり
)
の白さを、
滑
(
なめら
)
かに、長く、傾いてちょっと
嬌態
(
しな
)
を
行
(
や
)
る。
古狢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“嬌態”の意味
《名詞》
艶かしく色っぽい態度やさま。
(出典:Wiktionary)
嬌
漢検1級
部首:⼥
15画
態
常用漢字
小5
部首:⼼
14画
“嬌”で始まる語句
嬌
嬌羞
嬌声
嬌瞋
嬌笑
嬌名
嬌艶
嬌然
嬌嗔
嬌娜