しうとめ)” の例文
意地の惡いしうとめが嫁を仕込むといふ口實でいぢめるのも、繼母が繼子を、しつけるといふことにしていぢめ拔くのも、皆んな同じことだよ
そのお高婆さんが、嫁入当時多くの女が経験するやうに(女としては何といふ有難い経験であらう)ひどしうとめいぢめられた事があつた。
しうとめは折々気を附ける。「お前らくにしてお出かい。足が冷えはしないかい。」穿いてゐるのは、藁を内側に附けた木沓きぐつである。
致し居候に付當暮たうくれには藥代其外諸方の買掛り都合六七兩にも相成申候事ゆゑ此せつ半金はんきんも遣はさず候はねば來春よりはしうとめに藥を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
されば奧方おくがた町子まちこおのづから寵愛てうあいひらつて、あなが良人おつとあなどるとなけれども、しうとしうとめおはしましてよろ窮屈きうくつかたくるしきよめ御寮ごりようことなり
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ふところにいだき入んとするにしうとめかたはらよりよくのませていだきいれよ、みちにてはねんねがのみにくからんと一言ひとことことばにもまごあいするこゝろぞしられける。
お民もしうとめに泣かれて見ると、それでもとは云はれた義理ではなかつた。しかし養蚕は断念したものの、桑畑を作ることだけは強情に我意を張り通した。
一塊の土 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
其日はお妻の夫もしうとも留守で、家に居るのは唯しうとめばかり。五人も子供が有ると聞いたが、年嵩としかさなのが見えないは、大方遊びにでも行つたものであらう。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
邪慳じやけんしうとめのこと、意地くね曲つたヒステリーのあによめのこと、相変らず愚図で気のきかぬ頼りない亭主のこと、それから今度のごた/\についてのことだつた。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
反對派の手強い壓迫の底には、單に一期や二期の利益配當を欲しがる慾得づくばかりで無く、事毎に社會思想家がつて、理想論を振廻す田原を、小面こづら憎く思ふしうとめ根性が潜んで居た。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
一番近くに居た姉様あねさまは、しうとめの心を測りかねたが、取りなしをするつもりで
夜烏 (新字旧仮名) / 平出修(著)
みやこなる父母ふぼかへたまひぬ。しうとしうとめらぬきやく許多あまたあり。附添つきそ侍女じぢよはぢらひにしつゝ、新婦よめぎみきぬくにつれ、浴室ゆどのさつ白妙しろたへなす、うるはしきとともに、やまに、まちに、ひさしに、つもれるゆきかげすなり。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
堕落した飲んだくれの小役人マフリキエフの為めにはしうとめである。
「さう氣が付いたところで、親の金を持出した道樂息子や、嫁にいじめられて身投げの場所を見に來たしうとめを、往來でつかまへるわけには行くまい」
其時越前守殿かさねて彌吉夫婦に向はれ汝等いまだ菊を疑ふ樣子ある故つぶさに申聞すべし我菊がしうとめの死骸を檢査あらためさするついで家探やさがしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
よめはうちゑみつゝしうとめにかくといへば、姑はにはか土産みやげなど取そろへるうちよめかみをゆひなどしてたしなみ衣類いるゐちやくし、綿入わたいれ木綿帽子もめんばうし寒国かんこくならひとて見にくからず
何もしうとしうとめのやかましいが有るでは無し、わしが欲しくて我が貰ふに身分も何も言ふ事はない、稽古は引取つてからでも充分させられるからその心配もらぬ事
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
孝子三八にたまはると書付はなけれ共、まづふたをひらけば、内よりによつと塩竹の子、かねもらうたよりうれしく、(中略)女房にかくとしらすれば、同じ心のしうとめ思ひ、手ばやに塩だしかつをかき
案頭の書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そこでは慰藉料問題にからむ離婚訴訟の審理中であつた——しうとめ小姑のある家庭に嫁入つたが面白くゆかぬ……する内に姑の衣類が一枚なくなつた……占師うらなひしに訊ねたところが家の中の者が盗んでゐるといふ。
老残 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
嫁の口から言ひにくいこともあらうかと、しうとしうとめも、夫の勘三郎までも、席を遠慮させて、さて平次は膝をすゝめました。
越前守殿聞れてお菊に向はれ如何に菊其方は何故にしうとめを締殺したるや眞直まつすぐに申立よとありけるにお菊はしとやかに申樣おそれながら申上奉つり候私事姑女しうとめ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
二里あまりへだてたる村より十九歳のよめをむかへしに、容姿すがたにくからず生質うまれつき柔従やはらかにて、糸織いとはたわざにも怜利かしこければしうとしうとめ可愛かあいがり、夫婦ふうふの中もむつまし家内かない可祝めでたく春をむかへ
支度したくとても唯今たゞいま有樣ありさま御座ございますからとて幾度いくたびことはつたかれはせぬけれど、なにしうとしうとめのやかましいがるではし、わししくてわしもらふに身分みぶんなにことはない
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
三八夏は蚊帳かやの代りにせし身を腰元こしもと共にとこあふがせ、女房は又しうとめにあたへし乳房ちぶさ虎屋とらや羊羹やうかんにしかへ、氷からこひも古めかしと、水晶の水舟みづぶねに朝鮮金魚を泳がせて楽しみ、これ至孝のいたす所なり。
案頭の書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
しうとしうとめに氣に入る筈もなく、ろくな身寄もないのまでが馬鹿にされる種になり、到頭猫の子のやうに放り出されて、こんなところに落込み、年を老つた叔母と一緒に
六人乘りの傳馬てんま呑手のみてが揃つてゐるらしく、近寄るとプンと酒精アルコールが匂ひさうな中に、二十一、二の半元服の若い女が、單衣ひとへの肩を紅に染めて、しうとめらしい老女の介抱を受け
その頃の女は、剃刀を使へるのが一つのたしなみで、しうとめの眉を剃つてやつたり、亭主の髯を剃つたり、赤ん坊の罌粟けし坊主を剃つたり、なか/\に利用價値があつたわけです。
取つてしうとめになれば又自分の若い時の事を忘れて、伜の嫁をいぢめるのと同じことだ
留守番をして居る、少し耳の遠いしうとめが言ふのです。
お常に對しては、しうとめのお角以上にはゞかる樣子で
「おしうとめさんとうまく行かなかつた相です」