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和
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やわ
ふりがな文庫
“
和
(
やわ
)” の例文
睡魔の
妖腕
(
ようわん
)
をかりて、ありとある実相の角度を
滑
(
なめら
)
かにすると共に、かく
和
(
やわ
)
らげられたる
乾坤
(
けんこん
)
に、われからと
微
(
かす
)
かに
鈍
(
にぶ
)
き脈を通わせる。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と、信長は藤吉郎を
頤
(
あご
)
でさして、金ヶ崎の攻撃は意味のない戦だというので——と、やや
面
(
おもて
)
を
和
(
やわ
)
らげて、ありのまま、家康に語った。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
戸を明くれば、十六日の月桜の
梢
(
こずゑ
)
にあり。
空色
(
くうしよく
)
淡
(
あは
)
くして
碧
(
みどり
)
霞
(
かす
)
み、
白雲
(
はくうん
)
団々
(
だん/″\
)
、月に
近
(
ちか
)
きは銀の如く光り、遠きは綿の如く
和
(
やわ
)
らかなり。
花月の夜
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
「仰せのとおりですが、お
気先
(
きさき
)
の
和
(
やわ
)
らいだ折を見はからって、手前から、そろそろと申しすすめてみましょう。お任せくださいますか」
無惨やな
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
吉田は胸のなかがどうにかして
和
(
やわ
)
らんで来るまでは
否
(
いや
)
でも応でもいつも身体を
鯱硬張
(
しゃちこば
)
らして夜昼を押し通していなければならなかった。
のんきな患者
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
▼ もっと見る
また、一夜のねむりが、悲しさを、いくらか
和
(
やわ
)
らげはしませんでしたか。ああ、どうしていいのか、私は、もはや、わからない……
紫大納言
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
空に
懸
(
か
)
かれる太陽は、今にもその身に突き当たる恐るべきものの近寄っている事を知るや知らずや、
毎
(
つね
)
の如く
和
(
やわ
)
らかに輝いている。
暗黒星
(新字新仮名)
/
シモン・ニューコム
(著)
病気そのものが渇望していたところのものを、棚から
牡丹餅
(
ぼたもち
)
的に与えられたことの喜びが、兵馬の苦痛を
和
(
やわ
)
らげずにはおきません。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
西洋諸国、土一升に金一升を惜しまず鋭意して公園を設くるも、人々に不快の念を懐かしめず、民心を
和
(
やわ
)
らげ世を安んぜんとするなり。
神社合祀に関する意見
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
或時長頭丸即ち
貞徳
(
ていとく
)
が公を
訪
(
と
)
うた時、公は
閑栖
(
かんせい
)
の
韵事
(
いんじ
)
であるが、
和
(
やわ
)
らかな日のさす庭に出て、
唐松
(
からまつ
)
の
実生
(
みばえ
)
を
釣瓶
(
つるべ
)
に手ずから植えていた。
魔法修行者
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
家の中には隅々まで
和
(
やわ
)
らかな気分が広がつてゐて、逸子のねらつてゐるやうな、険悪な機会は、何処にも潜んではゐなかつた。
惑ひ
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
骨でも肉でも豆腐のように切れる鋭い
小刀
(
ナイフ
)
も、まるで鉛か銀のように
和
(
やわ
)
らかく曲がり折れて、
疵痕
(
きずあと
)
さえ付ける事が出来ません。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
しかし、そのころになってもまだ、彼の完全な沈黙は破られなかったし、
風貌
(
ふうぼう
)
の中のすさまじさも全然
和
(
やわ
)
らげられはしない。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
父母病弱なる者には父母の
疾
(
やまい
)
を憂えよと言い、敬なき者には父母を敬せよと説き、愛嬌なきものには色を
和
(
やわ
)
らげて仕えるのが第一だと教える。
孔子
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
和
(
やわ
)
らかい春の陽が射しかける午少し前の刻限になると、丁字風呂の裏門からすっと中に消え込む十八九の色子がある。
大衆文芸作法
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
もう死骸にほとんど異ならないゼラール中尉を見ていると、大尉は自分の感情がだんだん
和
(
やわ
)
らいでいくのを知った。
ゼラール中尉
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「うん、もういいよ」彼は急に機嫌をとる様に声を
和
(
やわ
)
らげた。「酒でも飲もう。ほんとに今夜は何うかしているよ」
赤い手
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
明るく
皓
(
しろ
)
い
初夏
(
はつなつ
)
の日ざしが、茂り合ったみどり草の網を
透
(
すか
)
して、淡く美しく、庭のもに照り渡り、
和
(
やわ
)
らかな光線は浅い
檐
(
ひさし
)
から部屋の中へも送って来ます。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
金銭を孫とも子とも視て、気楽に暮そじやあるまいか、なう婆さんとの相談も、物
和
(
やわ
)
らかなる気性とて。家賃の収入は、月々に、銀行預けと、定めても。
したゆく水
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
ことにも生えぎわが綺麗で、曇のない黒目がちの目が、春の宵の星のように
和
(
やわ
)
らかに澄んでいた。芸人風の髪が、やや長味のある顔によく似あっていた。
挿話
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
朝茶の炉手前は何かしら
苦業
(
くぎょう
)
を修する発端で、その日も終日不可解の茶の渋味を
呪法
(
じゅほう
)
に
則
(
のっと
)
るごとき泡立てに
和
(
やわ
)
らげて、静座しつつ、
楽
(
らく
)
の茶碗を取りあげて
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
平次はツイ
破顔
(
はがん
)
一笑します。まだ三十を越したばかり、にっこりするととんだ
愛嬌
(
あいきょう
)
のある平次の顔が、
脅
(
おび
)
え切った相手の男の心持を
和
(
やわ
)
らげたようでもあります。
銭形平次捕物控:141 二枚の小判
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「これを立つればここに立ち、これを導けばここに行われ、これを安んずればここに来り、これを動かせばここに
和
(
やわ
)
らぐ。その生や栄え、その死やかなしむ。」
現代訳論語
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
歌が男女の仲らいを
和
(
やわ
)
らげるものであったことは、『古今集』の序においてもすでに断定せられている。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
何ぞと言葉を
和
(
やわ
)
らげて聞けば、上等室の苅谷さんからこれを貴方へ、と差出す紙包あくれば
梨子
(
なし
)
二つ。
東上記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「なんだ⁈」 ちょっと、ダネックの顔色が
和
(
やわ
)
らいだ。案外、事実を知ったら吹きだすようなものかもしれない。彼は、バンドを
揺
(
ゆす
)
って、
嗤
(
わら
)
いながら立ちあがった。
人外魔境:03 天母峰
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
みんなは、おじいさんの
目
(
め
)
の
下
(
した
)
の
黒子
(
ほくろ
)
のある
笑顔
(
えがお
)
を
見
(
み
)
ると、どんなに
腹
(
はら
)
がたっていても
急
(
きゅう
)
に
和
(
やわ
)
らいでしまって、その
笑顔
(
えがお
)
につりこまれて
自分
(
じぶん
)
まで
笑
(
わら
)
うのでありました。
犬と人と花
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
鼠谷は怒るかと見せ、その後で
直
(
す
)
ぐ顔色を
和
(
やわ
)
らげて八十助の機嫌をとるのだった。八十助はようやく気持を直した、それが策略であるかも知れないとは思いながら……。
火葬国風景
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼女と話をすると、彼は心が
和
(
やわ
)
らぎ休らうのを感じた。ただ彼女と会うだけでも十分だった。不安だの、焦燥だの、心をしめつける
苛
(
い
)
ら苛らした
懊悩
(
おうのう
)
から、解放された。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
さあ通してお
呉
(
く
)
れ、いいや僕たちこそ
大循環
(
だいじゅんかん
)
なんだ、よくマークを見てごらん、大循環と云われると
大抵
(
たいてい
)
誰
(
たれ
)
でも
一寸
(
ちょっと
)
顔いろを
和
(
やわ
)
らげてマークをよく見るねえ、はじめから
風野又三郎
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
汝らの心の中に塩を保てば、ひとり自己を腐敗より救うのみでなく、汝ら相互間に
和
(
やわ
)
らぎを得るのである。神の国は平和、寛容、節制である(ガラテヤ五の二二、二三)。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
「摂」とは
摂受
(
しょうじゅ
)
の意味で、つまり和光
同塵
(
どうじん
)
、光を
和
(
やわ
)
らげて
塵
(
ちり
)
に同ずること、すなわち一切の人たちを
摂
(
おさ
)
めとって、菩薩の大道に入らしめる、
善巧
(
たくみ
)
な四つの
方便
(
てだて
)
が四摂法です。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
それが自分の部屋の東向きの窓障子の
磨
(
す
)
りガラスに明るく映って、やはり日増に
和
(
やわ
)
らいでくる気候を思わせるのだが、電線を鳴らし、窓障子をガタピシさせている風の音には
死児を産む
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
その様子を見てから尼の態度がやゝ
和
(
やわ
)
らぎ、ぽつ/\問いに応ずるけはいを示したとある。
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
生花
(
いけばな
)
、裁縫、諸礼、一式を教えられ、なお男子の如く
挙動
(
ふるま
)
いし妾を女子らしからしむるには、音楽もて心を
和
(
やわ
)
らぐるに
若
(
し
)
かずとて、
八雲琴
(
やくもごと
)
、月琴などさえ日課の中に据えられぬ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
と口は
和
(
やわ
)
らかにものいへども、胸に
満
(
みち
)
たる不快の念は、包むにあまりて
音
(
ね
)
に
出
(
い
)
でぬ。
海城発電
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
森林はまた、きびしい気候を
和
(
やわ
)
らげてもくれます。気候のおだやかな国では、自然との闘いに力を費やすことが少ないので、したがってそこに住む人間の性質も、優しくて
濃
(
こま
)
やかです。
ワーニャ伯父さん:――田園生活の情景 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
厳島は平家の守護神として、別格に崇敬されている社である。これに参拝されれば、平家への協力への
証
(
あか
)
しともなろう、清盛の心を
和
(
やわ
)
らげることもできよう。が、これは表のことである。
現代語訳 平家物語:04 第四巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
と
和
(
やわ
)
らかに言わるゝ程気味が悪うございますから、源兵衞は
恐
(
おそ
)
る/\
首
(
こうべ
)
を上げ
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
全国男女の気品を次第々々に高尚に導いて真実文明の名に
愧
(
はず
)
かしくないようにする事と、仏法にても
耶蘇
(
やそ
)
教にても
孰
(
いづ
)
れにても
宜
(
よろ
)
しい、
之
(
これ
)
を引立てゝ多数の民心を
和
(
やわ
)
らげるようにする事と
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
牧は
奈何
(
いか
)
にもして五百の感情を
和
(
やわ
)
げようと思って、甘言を以てこれを
誘
(
いざな
)
おうとしたが、五百は応ぜなかった。牧はまた忠兵衛に請うて、五百に
己
(
おのれ
)
を母と呼ばせようとしたが、これは忠兵衛が禁じた。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
と絹子さんは漸く
和
(
やわ
)
らぎ始めた。
嫁取婿取
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
ただ彼等の
為
(
な
)
すがままにして、彼等と共に遊ぶ心でいると、子供たちは、次第次第に、土地の自然そのものから
和
(
やわ
)
らげてゆきます。
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
温厚な風が、武蔵の貧しい姿を
和
(
やわ
)
らかにつつむのであった。うわさに違わず、但馬守は聡明な達人であると、武蔵もすぐ感じた。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
二人
(
ふたり
)
は
夫限
(
それぎ
)
りしばらく
口
(
くち
)
を
利
(
き
)
かずにゐた。
父
(
ちゝ
)
は此沈黙を以て代助に向つて与へた打撃の結果と信じた。やがて、言葉を
和
(
やわ
)
らげて
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
石黒がなにかいいだしたら、すまなかったくらいのことはいうつもりでいたが、石黒は狭く依怙地になっているとみえて、
和
(
やわ
)
らぐ隙をくれない。
予言
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
そこで「ウヌが人間ならオレも人間だ。向うへ行きたけりゃ手前の方からよけて通れ」という鼻の表現を
和
(
やわ
)
らげて
鼻の表現
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
氏のその不自然な努力による冷静が氏の持つ
和
(
やわ
)
らかな感情や熱を阻んで仕舞ふので、氏の云ふ事なり書く事が孤月氏の云ふ如く「生々した実感を伴ふ事が少い」のだ。
平塚明子論
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
呼べ、あれによういうて、何かわけありげな太夫と
和
(
やわ
)
らぎ合せたいと、わしは思う——門倉を呼べ
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
昨夜ヤヽ長時間湯ニ漬カッタオ蔭デ手ノ痛ミ少シ
和
(
やわ
)
ギ安眠スルコトヲ得タ。ガ、明ケ方眼ガ覚メテ見ルト又痛ミ出シテイルノニ心ヅク。雨ハ止ンデ空ハ綺麗ニ晴レ上ッテイル。
瘋癲老人日記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
和
常用漢字
小3
部首:⼝
8画
“和”を含む語句
和尚
柔和
平和
温和
調和
和郎
和女
大和
日和
和魂
穏和
和主
三和土
和蘭陀
和琴
大和魂
和声
和合
大和尚
混和
...