“取寄(とりよ)” の例文
若(も)しもあの懐剣(かいけん)が、私(わたくし)の墓(はか)に収(おさ)めてあるものなら、どうぞこちらに取寄(とりよ)せて戴(いただ)きたい。生前(せいぜん)と同様(どうよう)あれを守刀(まもりがたな)に致(いた)し度(と)うございます……。
若衆(わかいしゅ)に取寄(とりよ)せさせた、調度を控へて、島の柳に纜(もや)つた頃は、然(そ)うでもない、汀(みぎわ)の人立(ひとだち)を遮(さえぎ)るためと、用意の紫(むらさき)の幕を垂れた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
『これ、武村兵曹(たけむらへいそう)、足下(おまへ)はなか/\薩摩琵琶(さつまびは)が巧(うま)い相(さう)な、一曲(いつきよく)やらんか、やる! よし來(き)た。』と傍(かたはら)の水兵(すいへい)に命(めい)じて、自分(じぶん)兼(かね)て御持參(ごぢさん)の琵琶(びは)を取寄(とりよ)せた。
今日(けふ)は用(よう)なしの身(み)なればとて兄(あに)は終日(しゆうじつ)此處(こゝ)にありけり、氷(こほり)を取寄(とりよ)せて雪子(ゆきこ)の頭(つむり)を冷(ひや)す附添(つきそひ)の女子(をなご)に代(かは)りて、どれ少(すこ)し私(わし)がやつて見(み)やうと無骨(ぶこつ)らしく手(て)を出(いだ)すに、恐(おそ)れ入(いり)ます
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これも必要なり彼(か)れも入用なりとて兵器は勿論(もちろん)、被服(ひふく)帽子(ぼうし)の類に至るまで仏国品を取寄(とりよ)するの約束(やくそく)を結びながら、その都度(つど)小栗には謀(はか)らずして直(ただち)に老中(ろうじゅう)の調印(ちょういん)を求めたるに
はい旦那様(だんなさま)私(わたくし)も、賓客(きやく)を招(よ)ぶ時(とき)には八百膳(やほぜん)の仕出(しだし)を取寄(とりよ)せまして、今日(けふ)の向付肴(むかうづけ)が甘酢(あまず)の加減(かげん)が甘味過(あます)ぎたとか、汁(しる)が濃過(こす)ぎたとか、溜漬(たまりづけ)が辛過(からす)ぎたとか小言(こごと)を云(い)つた身分(みぶん)でございますが
矢庭(やには)に引捕(ひつとら)へて官(くわん)に訴(うつた)へると二の句(く)もなく伏罪(ふくざい)したので、石の在所(ありか)も判明(はんめい)した。官吏(やくにん)は直(す)ぐ石を取寄(とりよ)せて一見すると、これ亦た忽(たちま)ち慾心(よくしん)を起(おこ)し、これは官(くわん)に没收(ぼつしう)するぞと嚴(おごそ)かに言(い)ひ渡(わた)した。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
松江の鱸(すずき)のフライ、北極熊の掌(たなごころ)の焼肉、巴里(パリ)の蝸牛(かたつむり)、といった類で、最後に配った果物の皿には、なんと南洋から飛行機で取寄(とりよ)せたという、名果マンゴスチンさえうず高く盛ってあったのです。
突(つい)て挨拶(あいさつ)をぞなしたり其夜吉兵衞には酒肴(しゆかう)を取寄(とりよ)せ船頭(せんどう)はじめ水主(かこ)十八人を饗應(もてな)し酒宴(しゆえん)を催(もよほ)しける明れば極月(ごくづき)廿九日此日は早天より晴渡(はれわた)り其上追手(おつて)の風なれば船頭杢右衞門は水主共(かこども)に出帆(しゆつぱん)の用意(ようい)を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すぐにお判(わか)りになったものと見(み)え『フムその懐剣(かいけん)なら確(たし)かに彼所(かしこ)に見(み)えている。宜(よろ)しい神界(しんかい)のお許(ゆる)しを願(ねが)って、取寄(とりよ)せてつかわす……。』
加之(しかのみならず)、酒(さけ)は近所(きんじよ)の灘屋(なだや)か、銀座(ぎんざ)の顱卷(はちまき)を取寄(とりよ)せて、と云(い)ふ會員一同(くわいゐんいちどう)の強請(きやうせい)。考(かんが)へてご覽(らん)なさい、九九九で間(ま)に合(あ)ひますか。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
嘗(かつ)て城(じやう)ヶ沼(ぬま)の縁(ふち)で旅僧(たびそう)の口(くち)から魔界(まかい)の暗示(あんじ)を伝(つた)へられたゝめに——太(いた)く忌(いま)はしかつたので、……権七(ごんしち)に取寄(とりよ)せさした着換(きがえ)の衣(きぬ)は、恰(あたか)も祠(ほこら)の屋根(やね)に藤(ふぢ)の花(はな)が咲(さ)きかゝつたのを
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
其奴(そいつ)引捕(ひつとら)へて呉(く)れようと、海陸軍(かいりくぐん)を志願(しぐわん)で、クライブ傳(でん)、三角術(さんかくじゆつ)などを講(かう)じて居(ゐ)る連中(れんぢう)が、鐵骨(てつこつ)の扇(あふぎ)、短刀(たんたう)などを持參(ぢさん)で夜更(よふけ)まで詰懸(つめかけ)る、近所(きんじよ)の仕出屋(しだしや)から自辨(じべん)で兵糧(ひやうらう)を取寄(とりよ)せる
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)