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刷毛
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はけ
ふりがな文庫
“
刷毛
(
はけ
)” の例文
朝食のあとすぐ、家扶の木下老人に細川紙を出して貰い、版木やばれんや色壺や皿や
刷毛
(
はけ
)
などを
揃
(
そろ
)
え、用部屋で罫紙を刷りに掛った。
恋の伝七郎
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
串にさした三角の
蒟蒻
(
こんにゃく
)
里芋の三つ差し、湯煮にしたのをさい箸で挟み出し、小さな瓶に仕込んだ味噌を
刷毛
(
はけ
)
でたっぷり塗ってくれる。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
「如才はございません」と懐からバレンと
刷毛
(
はけ
)
を取出して見せたといふ。紀友主人の感じていふ。さすが名人は違つてゐます、と。
砂がき
(旧字旧仮名)
/
竹久夢二
(著)
床板はちょうど塗り上がったばかりのところで、部屋のまんなかには小さな
桶
(
おけ
)
と、ペンキと
刷毛
(
はけ
)
のはいった欠け皿が置いてあった。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
で
墨壺
(
すみつぼ
)
に
刷毛
(
はけ
)
を浸し、独特の料理と同じく独特の文字を知っていたので、表の壁に次のような注目すべき文句を即座に書き記した。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
▼ もっと見る
その中に、ポケットから
刷毛
(
はけ
)
を出して、手帳を裂いた紙の上へ何か床の上から掃き寄せていたが、大事そうにそれを取上げて私に示した。
琥珀のパイプ
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
山の中腹の、黒々とした松林の下には、春の一
刷毛
(
はけ
)
あざやかに、
仄紅色
(
ほのくれなゐ
)
の霞の帶、梅に櫻をこき交ぜて、公園の花は今を盛りなのである。
漂泊
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
田町
(
たまち
)
から
馬道
(
うまみち
)
につづいた家も土蔵ももう一面の白い
刷毛
(
はけ
)
をなすられて、
待乳
(
まつち
)
の森はいつもよりもひときわ浮きあがって白かった。
箕輪心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
水兵たちの口惜しがる声を聞きながら、青木大佐は、壁に向ってペンキの
刷毛
(
はけ
)
を動かした。悲しい最後の言葉を書きつけるのだ。
昭和遊撃隊
(新字新仮名)
/
平田晋策
(著)
... ジャガ芋で包んでよく
夷
(
な
)
らして玉子の黄身を
刷毛
(
はけ
)
で塗ってバターを中匙一杯位
中央
(
まんなか
)
へ載せておいてテンピで二十分ほど焼くのです」玉江嬢
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
「さう? でも
宅
(
うち
)
ぢや
小供
(
こども
)
がないから、
夫程
(
それほど
)
でもなくつてよ」と
答
(
こた
)
へた
御米
(
およね
)
は
糊
(
のり
)
を
含
(
ふく
)
ました
刷毛
(
はけ
)
を
取
(
と
)
つてとん/\とんと
棧
(
さん
)
の
上
(
うへ
)
を
渡
(
わた
)
した。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
其
(
そ
)
の
時
(
とき
)
畑
(
はた
)
には
刷毛
(
はけ
)
の
先
(
さき
)
でかすつた
樣
(
やう
)
に
麥
(
むぎ
)
や
小麥
(
こむぎ
)
で
仄
(
ほのか
)
に
青味
(
あをみ
)
を
保
(
たも
)
つて
居
(
ゐ
)
る。それから
冬
(
ふゆ
)
は
又
(
また
)
百姓
(
ひやくしやう
)
をして
寂
(
さび
)
しい
外
(
そと
)
から
專
(
もつぱ
)
ら
内
(
うち
)
に
力
(
ちから
)
を
致
(
いた
)
させる。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
さすがに死の色彩を一と
刷毛
(
はけ
)
加えて、やや蝋化された感じですが、寝具から抜出した上半身の美しさは、何にたとえるものがあるでしょう。
奇談クラブ〔戦後版〕:03 鍵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
松山の坐っていた場所については特に注意を払い、布をひっぱったり、
鋲
(
びょう
)
をはずしたり、
刷毛
(
はけ
)
で
埃
(
ほこり
)
をあつめて紙包をいくつも作ったりした。
麻雀殺人事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
母親は叔父の着換えなどを、そっと奥から取り出して来て、そこへ脱ぎ棄てられた白足袋の
赭土
(
あかつち
)
を、早速
刷毛
(
はけ
)
で落しなどした。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
刷毛
(
はけ
)
でつけた頬紅を、脱脂綿でまたほのぼのとふきとり、上唇の濃いルージュを、下唇に移して、油性のクリームで光らせる。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
それは筆ぐらいの太さの木の枝を切って、その先をナイフでメチャメチャに切りさいた上、そこを石でたたいて、
刷毛
(
はけ
)
のようにする方法です。
新宝島
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
つづいて
刷毛
(
はけ
)
を使ってみたり
髱
(
たぼ
)
をいじってみたり、どこまで行ってこの奥方ごっこに飽きるのだか、ほとほと
留度
(
とめど
)
がわからないのであります。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
刷毛
(
はけ
)
で
刷
(
は
)
いたような
弓
(
ゆみ
)
なりになった
広
(
ひろ
)
い
浜
(
はま
)
……のたりのたりと
音
(
おと
)
もなく
岸辺
(
きしべ
)
に
寄
(
よ
)
せる
真青
(
まっさお
)
な
海
(
うみ
)
の
水
(
みず
)
……
薄絹
(
うすぎぬ
)
を
拡
(
ひろ
)
げたような
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
お妙が奈良漬にほうとなった、顔がほてると洗ったので、小芳が
刷毛
(
はけ
)
を持って、
颯
(
さっ
)
とお
化粧
(
つくり
)
を直すと、お蔦がぐい、と櫛を
拭
(
ふ
)
いて一歯入れる。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
いそいで来たものらしく、おしろいの
刷毛
(
はけ
)
がよくとどかない地だけが茶がちな顔のいろを出して、そこだけ妙に禿げたようにつるつるしていた。
香爐を盗む
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
八ヶ岳よりの、黒い一
刷毛
(
はけ
)
の層雲の間から、一条の金色をした光が落ちていて、それは、瀑布をかけたような壮観だった。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
この野の末にも、ついに、その限りはここにあるのだ——と、巨大な画匠が一
刷毛
(
はけ
)
、さッと軽く筆をすべらせたのである。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
オルガの唇が参木の顔の全面を、
刷毛
(
はけ
)
のように這い廻った。すると、彼女は立ち上ってベッドの皺をぽんぽんと叩いた。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
やがて一
刷毛
(
はけ
)
、黄の勝った一団の緑となるまで、日々微妙な変化を示しながら、色の深さを増して行くのは、朝晩眺め尽しても飽きない景色である。
寺町
(新字新仮名)
/
岩本素白
(著)
商売道具の細長い
刷毛
(
はけ
)
で赫っ毛のチビが台をたたいてる。後は日の照りつけるクレムリンの壁だ。鉄柵との間に狭い公園があって、青草が茂っている。
ズラかった信吉
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
そしてこの部屋には洗面の道具も備つてゐたし、私の髮を梳づる爲めに櫛や
刷毛
(
はけ
)
も置いてあつた。
懶
(
ものう
)
い手で五分おき位に休み乍ら私は身を整へ了つた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
これなどはただ自分の名をいろいろと
小札
(
こふだ
)
に印刷して、それをできるだけ多くの
堂宮
(
どうみや
)
の戸や柱にはってあるくだけで、
刷毛
(
はけ
)
のついた
継竿
(
つぎざお
)
などを用意して
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
事のついでにもう一
刷毛
(
はけ
)
この男と碩学との問答を写しておいて私もこの長物語の筆を結ぶことにしようと考える。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
あたりをみると、いつか
夕暮
(
ゆうぐ
)
れらしい色が、森や草にはっていた。
梢
(
こずえ
)
にすいてみえる空の色も、
丹
(
たん
)
の
刷毛
(
はけ
)
でたたいたように、まだらな
紅
(
べに
)
に
染
(
そ
)
まっている。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
即ちわずかに
刷毛
(
はけ
)
ついでに書きなぐったような人物を叮嚀に取扱って、御客様にも本尊様にもして、そして一篇なり一部なりを成して居る傾きがあります。
馬琴の小説とその当時の実社会
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
寛永寺の
鴉
(
からす
)
より近い処にビッシェール、ロート。顔のここらへちょっと一
刷毛
(
はけ
)
、どうですこの色は新しいね。トラヽイラヽララー、絵具の払いはいつでもよい。
二科狂想行進曲
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
湯
槽
(
をけ
)
から上つて来る自分を掴へ石鹸を塗り小判型の
刷毛
(
はけ
)
で擦り始め自分は体量十五貫ある体格検査でも上の部だが側に相撲取りが寄ると誠に見栄えが無くなる。
相撲の稽古
(新字旧仮名)
/
岡本一平
(著)
湯から
上
(
あが
)
ると縁側の
蒲筵
(
かまむしろ
)
の上に鏡台が出してあつて、化粧役の
別家
(
べつけ
)
の娘が眉
刷毛
(
はけ
)
を水で絞つて待つて居た。
住吉祭
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
その魂には一と
刷毛
(
はけ
)
の化粧もほどこされてはゐなかつた。だが、俺自身を見るがいゝ。俺も亦さうなのだらうと考へると、夏川は何よりもわが身が切なかつた。
母の上京
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
彼は細い
刷毛
(
はけ
)
を以て、金線細工の小箱から少しばかりの頬紅を取った。それは聖僧の遺骸を収める箱の雛形とも云うべき形をして、蓋には十字架がついていた。
大衆文芸作法
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
とうと、皇后の宮はある朝御自分で
刷毛
(
はけ
)
をもつてその
埃
(
ごみ
)
を払ひ落とされた。
埃
(
ごみ
)
はすぐに見えなくなつた。
茶話:06 大正十一(一九二二)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
ザアッ——と、
刷毛
(
はけ
)
ではいたようなにわか雨でした。空も川も一面がしぶきにけむって、そのしぶきが波をうちながら、はやてのように空から空へ走っていくのです。
右門捕物帖:32 朱彫りの花嫁
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
それから彼は死骸と棺の上に聖水をふりかけて、その上に聖水の
刷毛
(
はけ
)
をもって十字を切りました。
世界怪談名作集:05 クラリモンド
(新字新仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
柔
(
やわらか
)
い毛の大きな
刷毛
(
はけ
)
で、なんどもこすり、次に、白い粉をふりかけ、それを白ネルの
布
(
きれ
)
で
拭
(
ふ
)
き、それから、また白い粉をふりかけたり、刷毛でこすったりして、さいごに
市郎の店
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
花ごとに仕える特使が派遣せられ、
兎
(
うさぎ
)
の毛で作ったやわらかい
刷毛
(
はけ
)
でその葉を洗うのであった。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
近い森や道や畠は名残りなく暮れても、遠い山々の
頂
(
いただき
)
はまだ明るかった。浅間の煙が
刷毛
(
はけ
)
ではいたように夕焼けの空になびいて、その末がぼかしたように広くひろがり渡った。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
この時露月は
漸
(
よう
)
やく最後の一
刷毛
(
はけ
)
を入れてわれながら、満足したように画面を眺めましたが、やがて疲れ切ったように絵筆をぽんとほうり出して、うめくように
呟
(
つぶ
)
やきました。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
車台へ登ると蹴込みに敷いてある
獅子
(
しし
)
の毛皮のようなもじゃもじゃした布の上に「つぁらっ」と擦れる音がして、新らしい後歯がかすかに
刷毛
(
はけ
)
でのべた様な赤土のあとをつけた。
かやの生立
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
……あなたの筆には、まごころがこもって、じつにすっきりして、新鮮で、おまけに健康なユーモアがあるわ。……あなたはほんの一
刷毛
(
はけ
)
で、人物や風景のカン所が出せるのね。
かもめ:――喜劇 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
相良玄鶯院
(
さがらげんおういん
)
は、熊手を休めて腰をたたいた。ついでに
鼠甲斐絹
(
ねずみかいき
)
の
袖無着
(
ちゃんちゃんこ
)
の背を伸ばして、空を仰ぐ。
刷毛
(
はけ
)
で引いたような
一抹
(
いちまつ
)
の雲が、
南風
(
みなみ
)
を受けて、うごくともなく流れている。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
九月の四日に文治に拳骨で
擲
(
は
)
り倒されまして、目が覚めたようになって
頻
(
しき
)
りに
稼
(
かせ
)
いで、此の
長家
(
ながや
)
へ越して来たと見えて、
夜具縞
(
やぐじま
)
の
褞袍
(
どてら
)
を着て、
刷毛
(
はけ
)
を下げまして帰って来まして
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
けれどもまた四五日して、森文房具店の息子が(おそらく中学校の上級生であろう)母親から
刷毛
(
はけ
)
で制服の背中を払ってもらっている登校姿を見かけた時には、私は心を弱くした。
安い頭
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
石榴
(
ざくろ
)
の花と
百日紅
(
ひゃくじつこう
)
とは燃えるような強い色彩を
午後
(
ひるすぎ
)
の炎天に
輝
(
かがやか
)
し、眠むそうな薄色の
合歓
(
ねむ
)
の花はぼやけた
紅
(
べに
)
の
刷毛
(
はけ
)
をば
植込
(
うえご
)
みの蔭なる夕方の
微風
(
そよかぜ
)
にゆすぶっている。単調な蝉の歌。
夏の町
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
晩に、どこかへ大隊長が出かけて行く、すると彼は、靴を
磨
(
みが
)
き、軍服に
刷毛
(
はけ
)
をかけ、防寒具を
揃
(
そろ
)
えて、なおその上、
僅
(
わず
)
か三厘ほどのびている髯をあたってやらなければならなかった。
橇
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
“刷毛”の解説
刷毛(はけ)とは、木やプラスチックなどでできた柄の先端に多数の毛を取り付けた道具。漢字では「刷子」とも書かれる(ただし、「刷子」は「ブラシ」とも読まれる)。
(出典:Wikipedia)
刷
常用漢字
小4
部首:⼑
8画
毛
常用漢字
小2
部首:⽑
4画
“刷毛”で始まる語句
刷毛先
刷毛目
刷毛序
刷毛屋