出立しゆつたつ)” の例文
せしとて甚だ通なりかつ出立しゆつたつの時に曰く木曾海道美人に乏し和田峠西もちや村の餅屋に一人また洗馬せばに一人あり洗馬のはわれ未だ其比を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
いや串談じようだんではなし札幌さつぽろ病院長びようゐんちやうにんじられて都合次第つがふしだい明日あすにも出立しゆつたつせねばならず、もつと突然だしぬけといふではなくうとは大底たいていしれてりしが
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いかにもはれるとほりで、その頭痛づつうのために出立しゆつたつばさうかとおもつてゐますが、どうしてなほしてくれられるつもりか。なに藥方やくはうでも御存ごぞんじか。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
隨分ずゐぶんながたされたとおもつたが實際じつさいは十ぷんぐらゐで熱海あたみからの人車じんしや威勢ゐせい能く喇叭らつぱきたてゝくだつてたのでれちがつて我々われ/\出立しゆつたつした。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
自分達の出立しゆつたつする時夫人は涙を目にいつぱいためて自動車の窓ごしに手を執られた。自分は此後こののち英国をおもひ出す度にこの夫人の顔が目に浮ぶであらう。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
立て何國へ參り候や存て有ばをしへられよと云に亭主暫く考へて何國と申す先は存ねども出立しゆつたつの時大津へ出る道を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
状態じやうたいは、不幸ふかうにして宗助そうすけやまらなければならないまでほど新生面しんせいめんひら機會きくわいなくつゞいた。いよ/\出立しゆつたつあさになつて宗助そうすけいさぎよく未練みれんてた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其處そこには毎日まいにちかなら喧嚚けんがう跫音あしおとひと鼓膜こまくさわがしつゝある巨人きよじん群集ぐんじゆが、からは悲慘みじめ地上ちじやうすべてをいぢめて爪先つまさき蹴飛けとばさうとして、山々やま/\彼方かなたから出立しゆつたつしたのだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
届出とゞけいでずして我儘わがまゝ出立しゆつたつせば、あるひはこう
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
今朝けさに成つて出立しゆつたつ迄時間の余つて居るのを利用して停車場ステイシヨンうしろの動物園を観た。有名なだけに完備して居るが、倫敦ロンドンの大動物園を観た目には驚く事も無い。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
待兼て居る成らん因て明あさは是非とも出立致し度と言けるに長庵否々いや/\此通り雨もふつて居ることゆえ明日あしたは一日見合せて明後日あさつて出立しゆつたつなすべしととゞめけれ共十兵衞は是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
過ぎし故郷を出立しゆつたつの当時ないて姉をば送りしこと夢のやうに思はれて、今日この頃の全盛に父母への孝養うらやましく、お職をとほす姉が身の、いのらいの数も知らねば
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
自分達と前後して土耳其トルコから着いた外務省の留学生のなにがしさんは自分達が出立しゆつたつしたあとの部屋へとまられるつもりで、それ迄は隣の杉村医学士の部屋の長椅子で寝て居られた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
しやしいよ/\明日の早天さうてん出立しゆつたつ致す故御暇乞いとまごひに參り候なりと村中へ暇乞にまはれり此時寶澤はやうやく十四歳の少年なり頃は享保きやうほいぬ年二月二日成し幼年えうねんより住馴すみなれし土地を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
美登利みどりなかをとこといふものさつてもこわからずおそろしからず、女郎ぢよらうといふものさのみいやしきつとめともおもはねば、ぎし故郷こけふ出立しゆつたつ當時たうじないてあねをばおくりしことゆめのやうにおもはれて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さりとてるくぎてはこまれど過不及くわふきふとりかぢはこヽろ一つよくかんがへて應用おうようなされ、じつところ出立しゆつたつ明後日あさつて支度したく大方おうかた出來できたれば最早もはやにかヽるまじく隨分ずゐぶん身躰からだをいとひてわづらひ給ふな
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あねたちの難義なんぎゆるやうなれば、いましばらくまりてと、母君はヽぎみものやはらかにのたまひたれど、おゆるしのいでしに甲斐かひなく、夫々それ/\支度したくして老實まめやか侍女つきらみ、出立しゆつたつ何日々々いつ/\内々ない/\とりきめけるを
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)