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冷
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ひやや
ふりがな文庫
“
冷
(
ひやや
)” の例文
小親
行
(
ゆ
)
きて、泣く泣く小六の
枕頭
(
まくらもと
)
にその恐しきこと語りし時、
渠
(
かれ
)
の
剛愎
(
ごうふく
)
なる、ただ
冷
(
ひやや
)
かに笑いしが、われわれはいかに悲しかりしぞ。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
身のまわりの空気は
忽
(
たちま
)
ち話に聞く中世紀の
修道院
(
モナステール
)
の中もかくやとばかり、氷の如く
冷
(
ひやや
)
かに鏡の如く透明に沈静したように思われました。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そうして単なる
冷
(
ひやや
)
かな批判者としてではなく、出来るならば少しでも感激の
相槌
(
あいづち
)
を以て、彼等に力附けたいとも思うのであります。
野草雑記・野鳥雑記:01 野草雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
健三の心には細君の言葉に耳を
傾
(
かたぶ
)
ける余裕がなかった。彼は自分に不自然な
冷
(
ひやや
)
かさに対して腹立たしいほどの苦痛を感じていた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
冷
(
ひやや
)
かな秋の日の午後、とりとめもなく彼女が斯ういう思いに耽っている時、一人の青年が来て水際に出した腰掛の上に休んだ。
湖水と彼等
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
▼ もっと見る
(白い衣物を着た女は、また窓から、白い花弁を眠れる旅人の上にふり撒く。)心地よく、
冷
(
ひやや
)
かに、この旅人は眠るだろう。
日没の幻影
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
いかにも傍観者の言いそうな
冷
(
ひやや
)
かな言葉である。
苦艱
(
くかん
)
にある友に
向
(
むかっ
)
て発する第一語において、かく
訶詰
(
かきつ
)
の態度を取るは
冷刻
(
れいこく
)
といわねばならぬ。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
わたしの心は
冷
(
ひやや
)
かであった。何の感動もない数分間が過ぎた、そして、わたしは唯、母の
歔欷
(
すすりな
)
く声を聞いただけであった。
三等郵便局
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
そこから土の
匂
(
におい
)
や枯草の匂や水の匂が
冷
(
ひやや
)
かに流れこんで来なかったなら、
漸
(
ようやく
)
咳きやんだ私は、この見知らない小娘を頭ごなしに叱りつけてでも
蜜柑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
中二 (
冷
(
ひやや
)
かに。)今のおやじの眼には、どんなひきがえるを見ても青く見えるでしょう。三本足にも見えるでしょうよ。
青蛙神
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
これが文三の近来最も傷心な事、半夜夢覚めて
燈
(
ともしび
)
冷
(
ひやや
)
かなる時、
想
(
おも
)
うてこの事に到れば、
毎
(
つね
)
に
悵然
(
ちょうぜん
)
として
太息
(
たいそく
)
せられる。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
夢なら覚めよと祈ったが、覚めるどころか、扉の隙間は見る見る拡がって、その向うから、吹き込む
冷
(
ひやや
)
かな夜気と共に、真黒な夜がバアと覗いている。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
如何
(
いか
)
に答へんとさへ惑へるに、
傍
(
かたはら
)
には貫一の益
詰
(
なじ
)
らんと待つよと思へば、身は
搾
(
しぼ
)
らるるやうに
迫来
(
せまりく
)
る息の
隙
(
ひま
)
を、得も
謂
(
い
)
はれず
冷
(
ひやや
)
かなる汗の流れ流れぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
省三は
蹲
(
しゃが
)
んでその水を
細君
(
さいくん
)
の口の傍へ持って往った。細君はその茶碗を
冷
(
ひやや
)
かな眼で見たなりで口を開けなかった。
水郷異聞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
われ
爾
(
なんじ
)
が
冷
(
ひやや
)
かにもあらず熱くもあらざることを爾のわざによりて知れりわれ爾が冷かなるかあるいは熱からんことを願う——弟はゆうべ床で読んだ聖書の句を
青草
(新字新仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
川上は浜田屋へ呼びよせられて来てみると、養母と奴とは
冷
(
ひやや
)
かな
凄
(
すご
)
い目の色で迎えた。三人が三つ
鼎
(
がなえ
)
になると奴は不意に、
髷
(
まげ
)
の根から黒髪をふっつと断って
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
晴着のない魂に、然し、私はただ
冷
(
ひやや
)
かな鬼の目で、歴史というもの、人間の実相の歩いた跡を読んでいた。
魔の退屈
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
そうしたら受ける身も授ける身も今までのように
冷
(
ひやや
)
かになっていないで、
到
(
いた
)
る処生きた人間に逢われよう。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
外は秋らしい
冷
(
ひやや
)
かな風が吹いて、往来を通る人の姿や、店屋々々の
明
(
あかり
)
が、厭に滅入って寂しく見えた。浜屋や鶴さんのことが、物悲しげに想い出されたりした。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
筆とりてひとかどのこと論ずる仲間ほど世の中の
義捐
(
ぎえん
)
などいふ事に
冷
(
ひやや
)
かなりと候ひし
嘲
(
あざけ
)
りは、私ひそかにわれらに
係
(
かか
)
はりなきやうの
心地
(
ここち
)
致しても聞きをり候ひき。
ひらきぶみ
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
自分でも意想外に
冷
(
ひやや
)
かな顔をし、なぜか気むずかしさが加わったが、いつの間にか私は顔を紅くそめた。
童子
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
激しいパッションがやや沈まって行った後では、それと反対な
冷
(
ひやや
)
かな心持が来て彼の胸の中で戦った。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そのあたりの射るようにあかるい灯火のいろがわたしには全くかけかまいのないように
冷
(
ひやや
)
かだった。
春深く
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
岡村は
厭
(
いや
)
な
冷
(
ひやや
)
かな笑いをして予を正面に見たが、鈍い彼が目は再び茶ぶだいの上に落ちてる。
浜菊
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
そして益々自己を偶像化さうとした。
而
(
しか
)
も、時には偶像としての自己を壇上に置いて私達を
冷
(
ひやや
)
かに見降さうとする矯飾的態度さへ現した。その態度を私達は冷笑したかつた。
猫又先生
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
冷
(
ひやや
)
かな歴史の眼から見れば、彼らは無政府主義者を殺して、かえって局面開展の地を作った一種の恩人とも見られよう。吉田に対する井伊をやったつもりでいるかも知れぬ。
謀叛論(草稿)
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
乞食を咏んだ句は随分あるけれども、大概それを
余所
(
よそ
)
から興味を以て眺めたり、
冷
(
ひやや
)
かに眺めたりする句ばかりで、一茶のように深い同情を以てそれに対した句は滅多にない。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
踏む足に縁の
冷
(
ひやや
)
かさを感じ、寐転んで畳の冷かさを感ずる類は、必ずしも異とするに足らぬが、耳を掘る耳掻の冷たさは、けだし俳人の擅場ともいうべき微妙な感覚である。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
盲目にその運命に従うと
謂
(
い
)
うよりは、
寧
(
むし
)
ろ
冷
(
ひやや
)
かにその運命を批判した。熱い主観の情と冷めたい客観の批判とが
絡
(
よ
)
り合せた糸のように固く結び着けられて、一種異様の心の状態を呈した。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
吾妻のワナ/\と
顫
(
ふる
)
へる
面
(
かほ
)
を、川地課長は
冷
(
ひやや
)
かに
眺
(
なが
)
めて「其の
態
(
ざま
)
は何だ、吾妻、貴様も年の若いに似合はず役に立つ男と思つて居たが、案外の臆病だナ、其れでも警察の飯を食つて居るのか」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
またおりふし夢野の神はしのびやかにきて
冷
(
ひやや
)
かな私の眠りをいろいろの絵筆に彩ってゆく。それらのことを私は日にちこまごまと日記につけておく。これはこの島に隠れて
島守
(
しまもり
)
の織る
曼陀羅
(
まんだら
)
である。
島守
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
かえって時代と共にその種は増し、質は豊富にせられていたのです。特に徳川期の
半
(
なかば
)
において、日本の民藝品はその絶頂に達したかの感があります。なぜその時代の茶人達がそれに
冷
(
ひやや
)
かであったか。
民芸とは何か
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
と言って苦しそうな嘆息を
洩
(
もら
)
し、
冷
(
ひやや
)
かな、
嘲
(
あざけ
)
るような語気で
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
と修一は
冷
(
ひやや
)
かに答へ、そして、ちらつと寿枝の頭を見ると
六白金星
(新字旧仮名)
/
織田作之助
(著)
哀
(
あは
)
れ、さは
冷
(
ひやや
)
けき世の
沈黙
(
しじま
)
、
恐怖
(
おそれ
)
の
木
(
こ
)
かげ
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
老博士が叫ぶと、怪老人は、
冷
(
ひやや
)
かに笑って
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
隣人は
冷
(
ひやや
)
かな態度で
敢
(
あえ
)
て答えなかった。
遺産
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
室は
冷
(
ひやや
)
かに、澄んでゐる。動かぬ。
雪
(新字旧仮名)
/
高祖保
(著)
冷
(
ひやや
)
かに見ているのではあるまいか。
百物語
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
巴里
(
パリー
)
の墓地に立つ悲しいシープレーの樹を見るような
真黒
(
まっくろ
)
な杉の立木に、木陰の空気はことさらに湿って、
冷
(
ひやや
)
かに人の肌をさす。
曇天
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
件
(
くだん
)
の婦人は落着払い、その
冷
(
ひやや
)
かなる
眼色
(
めつき
)
にて、ずらりと
四辺
(
あたり
)
を見廻しつ、「さっさとしないか。おい、お天道様は
性急
(
せっかち
)
だっさ。」
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その云い方が少し
冷
(
ひやや
)
か過ぎたせいか、母は何だか
厭
(
いや
)
な顔をした。嫂もまた変な顔をした。けれども二人とも何とも云わなかった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
唯継は彼の
言
(
ものい
)
ふ花の姿、温き玉の
容
(
かたち
)
を
一向
(
ひたぶる
)
に
愛
(
め
)
で
悦
(
よろこ
)
ぶ余に、
冷
(
ひやや
)
かに
空
(
むなし
)
き
器
(
うつは
)
を
抱
(
いだ
)
くに異らざる妻を擁して、
殆
(
ほとん
)
ど憎むべきまでに得意の
頤
(
おとがひ
)
を
撫
(
な
)
づるなりき。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
のみならず更に幸福だつたことには——或はこれも不幸だつたことには彼もいざとなつて見ると、
冷
(
ひやや
)
かに3と別れることは出来ない心もちに陥つてゐた。
貝殻
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
女は
稀
(
ま
)
れに窓から顔を出して夕空を覗うことがあるけれど、それがために何物をか恋い、憧がれてほっと顔を赤くするようなことがない。ただ
冷
(
ひやや
)
かに笑った。
僧
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
ただ
俯向
(
うつむ
)
いて
呼吸
(
いき
)
を呑んでいると、貴婦人は
冷
(
ひやや
)
かに笑って又
彼方
(
あなた
)
へ
向直
(
むきなお
)
るかと思う間もなく、室内は再び
闇
(
くら
)
くなって
其
(
そ
)
の姿も消え失せた、夢でない、
幻影
(
まぼろし
)
でない
画工と幽霊
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
◯この怨語を聴きたる三友は、ヨブを以て神を
謗
(
そし
)
る不信の徒となしたのである。そしてすべてかかる語を傍より
冷
(
ひやや
)
かに批評する者は、彼らと思を同じうする
外
(
ほか
)
はない。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
するとその山の
霊
(
れい
)
は、いばりもしなければへりくだりもしないで、岩の中から
冷
(
ひやや
)
かに答えました。
コーカサスの禿鷹
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
院長はまた
冷
(
ひやや
)
かに云った。先輩の眼は
金盥
(
かなだらい
)
に往った。先輩の熱した頭はやや
醒
(
さ
)
めかけていた。
雨夜草紙
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
だが、君は、私の情熱が燃え立てば燃え立つ程、
益々
(
ますます
)
冷
(
ひやや
)
かになって行った。私を避け、私を恐れ、遂には私を憎んだ。君は恋人から憎まれた男の心持を察しることが出来るか。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
冷
常用漢字
小4
部首:⼎
7画
“冷”を含む語句
冷笑
冷々
冷評
冷遇
冷水
冷淡
冷嘲
冷酒
冷却
冷奴
冷凍
湯冷
冷飯
冷泉
底冷
寒冷
冷気
秋冷
朝冷
冷冷
...