依頼いらい)” の例文
時間のゆるすかぎり、糟谷かすや近郷きんごうの人の依頼いらいおうじて家蓄かちく疾病しっぺいを見てやっていた。職務しょくむ忠実ちゅうじつな考えからばかりではないのだ。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
餘念よねんもなくたわむれてるので、わたくし一人ひとり室内しつない閉籠とぢこもつて、今朝けさ大佐たいさから依頼いらいされた、ある航海學かうかいがくほん飜譯ほんやくにかゝつて一日いちにちくらしてしまつた。
手紙はしばしばもらったが、それもたいてい、新刊書の選択せんたく依頼いらいのついでに、故郷の消息をつたえるといった程度以上のものではなかった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
もし、なにたなら、通知つうちしてれ。うすれば酒手さかてすからと土方連どかたれん依頼いらいして、此所こゝつた。
試験所から依頼いらいされているのだが、湖から珍らしい魚がれても、受取りの係である復一は秀江の家へ近頃はちっとも来ないのである。そして代りの学生が来る。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
あるいは依頼いらい懇願こんがんするがごとく、あるいは諄々じゅんじゅんとして説くように、しきりに何かを明かしている弥生。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
さうして、形式的けいしきてき宗助そうすけはうから依頼いらいすればすぐ安之助やすのすけけるまで自分じぶんらちけたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ついでながら仏公使の云々うんぬんしたる陸軍の事をしるさんに、徳川の海軍は蘭人らんじんより伝習でんしゅうしたれども、陸軍は仏人に依頼いらいし一切仏式ふっしきを用いていわゆる三兵さんぺいなるものを組織そしきしたり。
ゆえにこれらの花は自分の花粉を自分の柱頭ちゅうとうに伝うることができず、是非ぜひともそれを持ってきてくれる何者かに依頼いらいせねばならないように、自然がそう鉄則てっそくもうけている。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
やっと十日たつかたたぬうちに、この「魔術師」事件の第一の殺人が行われ、明智はのっぴきならぬ依頼いらいによって、又その事件にかかり合わねばならぬ仕儀しぎとなったのである。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
先生はごうも平日とことなることなく、予が飲食いんしょく起臥きがの末に至るまで、力をつくしこれをたすけ、また彼地かのち上陸じょうりくしたる後も、通弁つうべんその他、先生に依頼いらいして便宜べんぎを得たることすこぶる多ければなり。
これは醫道いだうことなどは平生へいぜいふかかんがへてもをらぬので、どう治療ちれうならさせる、どう治療ちれうならさせぬと定見ていけんがないから、たゞ自分じぶん悟性ごせい依頼いらいして、その折々をり/\判斷はんだんするのであつた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
萬事ばんじ其人そのひとまかせて其人そのひと獨立心どくりつしん依頼いらいせしめるやう習慣しふくわんをつけねばなりません。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
藩中に商業行わるれば上士もこれを傍観ぼうかんするに非ず、往々おうおうひそかに資本をおろす者ありといえども、如何いかんせん生来の教育、算筆さんひつうとくして理財の真情を知らざるが故に、下士に依頼いらいして商法を行うも
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
みなみ亭主ていしゆ殊更ことさらかれ同情どうじやうして慰藉ゐしや言辭ことばをしまぬほどそのこゝろうごかされなかつたのみでなく、かれむし仲裁者ちうさいしや地位ちゐたねばらぬことに幾分いくぶん迷惑めいわくかんじた。勘次かんじけつして仲裁ちうさい依頼いらいしなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「ぼくもそうだと思います。命令者に依頼いらいする代わりに、多数の力に依頼するんでは、自治とは言えませんからね。」
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
入口いりぐちから三間許げんばかへだてて、棒杭ぼうぐひち、鐵條てつでうり、ひとらしめぬやう警戒けいかい依頼いらいされたのだ。
叔母をばさんに正式せいしきことわられながら、またきみ依頼いらいするのは可笑をかしいやうだが、きみはう叔母をばさんよりはなしわかるだらうとおもつてたとつて、中々なか/\うごきさうもなかつたさうである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
大佐閣下たいさかくかかう機會きくわいです、れい一件いつけんこのしま紀念塔きねんたうてること依頼いらいしては如何どうでせう。』
丁度ちやうど東京とうきやう高等官かうとうくわん連中れんちゆう紅療治べにれうぢ氣合術きあひじゆつ依頼いらいするのとおなことである。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
糟谷かすやはその夕刻ゆうこく上京して、先輩せんぱい時重博士ときしげはくしをたずねて希望きぼう依頼いらいした。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
かれはどちらからも依頼いらいされた仲裁人ちうさいにんではなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
宗助そうすけ廣島ひろしまかへるともなく、叔父をぢその賣捌方うりさばきかた眞田さなだとかいふ懇意こんいをとこ依頼いらいした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
すると赤シャツはそれじゃ昨日の事は君の参考だけにとめて、口外してくれるなと汗をかいて依頼いらいおよぶから、よろしい、僕も困るんだが、そんなにあなたが迷惑ならよしましょうと受け合った。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)