伯父をぢ)” の例文
「いゝえ、伯父をぢちやん、僕がお辞儀するのは、自動車に乗つてる人ばかしだよ。」と子供は相手の大きな図体に見惚みとれながら言つた。
食終くひをはりし後九助は金二兩土産みやげに出し九郎右衞門が遺言ゆゐごん并びに伯父をぢ樣の分米ぶんまい田地でんぢ十二石手を付ずに今以て村あづけに成て居ますと話すを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
長吉ちやうきち蘿月らげつ伯父をぢさんのつたやうに、あの時分じぶんから三味線しやみせん稽古けいこしたなら、今頃いまごろかく一人前いちにんまへの芸人になつてゐたに違ひない。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
そのばん伯父をぢさんも友伯父ともをぢさんもばれてきましたが、『押飯おうはん』とつてとりにくのおつゆあぢをつけた御飯ごはん御馳走ごちさうがありましたつけ。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
壽阿彌の姪が茶技ちやきくはしかつたことは、伯父をぢの手紙に徴して知ることが出來るが、その蒔繪をくしたことは、刀自の話に由つて知られる。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
なだれはあへて山にもかぎらず、形状かたちみねをなしたる処は時としてなだるゝ事あり。文化のはじめ思川村おもひがはむら天昌寺てんしやうじ住職じゆうしよく執中和尚しつちゆうをせう牧之ぼくし伯父をぢ也。
桂次けいじいまをる此許こゝもと養家やうかゑんかれて伯父をぢ伯母をばといふあひだがらなり、はじめて此家このやたりしは十八のはる田舍縞いなかじま着物きものかたぬひあげをかしとわらはれ
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「あ、山山のへっぴり伯父をぢ。」嘉ッコがいきなり西を指さしました。西根の山山のへっぴり伯父は月光に青く光って長々とからだを横たへました。
十月の末 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
しつ! だまつて/\と、くばせして、衣紋坂えもんざかより土手どてでしが、さいは神田かんだ伯父をぢはず、客待きやくまちくるまと、はげしい人通ひとどほり眞晝間まつぴるま露店ほしみせしろ西瓜すゐくわほこりだらけの金鍔燒きんつばやき
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
祖父祖母のやうなすぐれて美しい性質は夫婦とも露ばかりも持つて居らなかつたので、母方の伯父をぢといふ人は人殺をして斬罪ざんざいに処せられたといふ悪い歴史を持つて居るのであつた。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
そして私達のことを、伯父をぢといふ程にも近い親類のくなつたのにも、大して心を動かされない冷酷れいこくな人間だと思ふでせうね。けれど、私たちはその人に會つたこともなければ知りもしないのです。
長吉ちやうきちまつたく絶望してしまつた。長吉ちやうきちは役者になりたい自分の主意しゆいとほすには、同情の深い小梅こうめ伯父をぢさんに頼るよりほかに道がない。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
伯父をぢさんはもうこまつてしまつて、とうさんのめておび手拭てぬぐひゆはひつけ、その手拭てぬぐひとうさんをいてくやうにしてれました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
不義の女房にようばう并に伯父九郎兵衞へ能く分て遣はせしぞ伯父をぢは母方か父方ちゝかたかと問はるゝに九助こたへて亡夫ばうふ九郎右衞門まで七代の間水呑村名主なぬし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「なにしたど。爺んご取っ換へるど。それよりもうなのごと山山のへっぴり伯父をぢでやるべが。」
十月の末 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
「や、伯父をぢさん」と蒋生しやうせい蘇生よみがへつたやうにおもつて、はじめて性分しやうぶんこゑして伸上のびあがる。
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
仕事しごとやのおきやうさんは八百屋横町やほやよこちやう按摩あんまをして伯父をぢさんが口入くちいれで何處どこのかおやしき御奉公ごほうこうるのださうだ、なに小間使こまづかひといふとしではなし、おくさまのおそばやお縫物師ぬひものしわけはない
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
長を山崎某と云ひ、仲を鈴木某と云つて、師岡氏はそのであつた。三人は同腹の子で、皆伯父をぢに御家人の株を買つて貰つた。それは商賈しやうこであつた伯父の産業の衰へた日の事であつた。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
「マデイラの私の伯父をぢくなつて、五千ポンド遺してくれたのです。」
馬籠まごめむらはづれまでますと、そのたうげうへたかいところにもたがやしたはたけがありました。そこにも伯父をぢさんにこゑけるお百姓ひやくしやうがありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
長吉ちやうきちは第一に「小梅こうめ伯母をばさん」とふのはもと金瓶大黒きんぺいだいこく華魁おいらんで明治の初め吉原よしはら解放の時小梅こうめ伯父をぢさんを頼つて来たのだとやらふ話を思出おもひだした。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
五兵衞吉兵衞の兩人へ引渡しに成たりける元より久八がくびころしたるおもむ自訴じそせしかば翌日甲州屋吉兵衞伊勢屋五兵衞久八の伯父をぢ六右衞門一同等御呼出よびだしにて調べとこそは成りにけれ。
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
心細こゝろぼそことには、鹽尻しほじりでも、一人ひとりおなしつ乘込のりこまなかつた。……宿しゆくは、八重垣姫やへがきひめと、隨筆ずゐひつで、餘所よそながら、未見みけん知己ちき初對面しよたいめん從姉妹いとこと、伯父をぢさんぐらゐにおもつてたのに。………
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)