一年いちねん)” の例文
もっとちちときみかどからいだされ、いつもおそばつかえるとて、一年いちねん大部だいぶ不在勝るすがち、国元くにもとにはただおんな小供こどものこってるばかりでございました……。
身は桜町家さくらまちけ一年いちねん幾度いくどの出替り、小間使こまづかひといへば人らしけれど、御寵愛ごてうあいには犬猫いぬねこ御膝おひざをけがす物ぞかし。
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その習慣しゆうかんは、旅行りよこうをしないでも、一年いちねんのうちに、かならず一回以上いつかいゝじようは、自然しぜんむらにゐておこなうたものでした。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
これが毎年まいねんくりかへされると、その一年いちねんごとに生長せいちようした部分ぶぶんだけが、まるになつて區分くわけがつくのです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
えゝ、お姫様ひいさまの! うやらいままでの乞目こひめでは、一度いちど一年いちねんかゝりさうぢや。おかげ私等わしらひもじうも、だるうもけれど、肝心かんじんたすらうとふ、奥様おくさまをおさつしやれ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それでは今年ことしはじめてだのむかしからも一年いちねんはかりごと元旦ぐわんたんにありといふから、おまへさんも
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
一年いちねん取前高とりまへだかはみんな札差がとつてしまつて、諸拂にと少しばかりわたされるので困つてねだりにゆくといつた案配あんばいで、どつちが出入りなのだかわからなくなつてしまつて、お金も米も
花火と大川端 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
じつは、少年せうねんともに、たゞ一口ひとくちに、堪難たえがた空腹くうふく滿みたしたきは山々やま/\だが、てよ、いまこのちいさいうをを、周章あはてゝたいらげたとてなにになる、農夫のうふ如何いかうゑても、一合いちごうむぎはずにいて一年いちねんはかりごとをする
予備門よびもんに入学して一年いちねんばかりぎての事であるが、山田やまだの第二中学にる時分から早くすで那様こんな了見りやうけんが有つたらしいのです、一年いちねんぜん其志そのこゝろざしいだいたわたしだ小説のふでつて見なかつたのであるが
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
もう一年いちねんたつた今日こんにち
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
まだ、としかはらない舊年ふるとしあひだに、あゝはるがやつてたことだ。してると、この一年いちねんふたつにわかれて、きのふまでを去年きよねんといはうか。今日けふからのちを、今年ことしといはうか。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
くさむしれ、馬鈴薯じやがいもれ、かひけ、で、げつくやうな炎天えんてんよる毒蛇どくじやきり毒蟲どくむしもやなかを、鞭打むちう鞭打むちうち、こき使つかはれて、三月みつき半歳はんとし一年いちねんうちには、大方おほかたんで
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こんなことで、敦子あつこさまの婚期こんきねん一年いちねんおくれてきました。敦子あつこさまはのちにはすっかり棄鉢気味やけきみになって、自分じぶん生涯しょうがいよめにはかないなどとって、ひどく御両親ごりょうしんこまらせました。
暫時しばしがほどもまじはりし社會しやくわいゆめ天上てんじやうあそべるとおなじく、いまさらにおもひやるもほどとほし、櫻町家さくらまちけ一年いちねん幾度いくど出替でがはり、小間使こまづかひといへばひとらしけれど御寵愛ごちようあいには犬猫いぬねこ御膝おひざをけがすものぞかし。
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
地方ちはう風物ふうぶつ變化へんくわすくない。わけてたゞ一年いちねん、ものすごいやうにおもふのは、つきおなつきはたゞ前後ぜんごして、——谿川たにがはたふれかゝつたのもほとんおな時刻じこくである。むすめ其處そこ按摩あんま彼處かしこに——
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)