“しばらく”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
少時44.1%
暫時25.6%
5.2%
霎時5.0%
多日3.9%
多時2.3%
須臾2.1%
1.6%
頃刻1.6%
少焉1.0%
良久0.8%
久時0.5%
久濶0.5%
多年0.5%
小時0.5%
少時間0.5%
少選0.5%
少頃0.5%
少須0.5%
瞬時0.5%
一刻0.3%
久闊0.3%
寸時0.3%
数旬0.3%
有間0.3%
秒時0.3%
長時0.3%
頃之0.3%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
お母さんの責め立て方が追々厳しくなったので一寸気を抜く為めに、世態人情の探究にかこつけて少時しばらく家を明ける魂胆としか受取れない。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
暫時しばらく經つと、お雪は小さい手でと老爺の禿頭を撫でて見た。ああ、毎晩、毎晩、水をつけてるのに、些ともまだ毛が生えてゐない。
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
その時配った半歌仙には鳥居清満が鯉の表紙画をかき、香以がしばらくのつらねに擬した序を作った。その末段はこうである。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
先方むこうでも声に応じて駈けて来た。が、惨憺たる此場このば光景ありさまを見て、いずれも霎時しばらく呆気あっけに取られた。巡査は剣鞘けんざやを握って進み出た。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
多日しばらく、誰の処へも彼奴あいつの影が見えねえで、洗桶あらいおけから火の粉を吹き出さないもんですから、おやおや、どこへ潜ったろう、と初手のうちは不気味でね。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
せて書斎に引籠ひきこもり机に身をば投懸なげかけてほつとく息太く長く、多時しばらく観念のまなこを閉ぢしが、「さても見まじきものを見たり」と声をいだしてつぶやきける。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
明日霊銑むらの少年と湖辺に鼓噪こそうすると須臾しばらくして波湧き激声雷のごとく、二牛あいせるを見るにその一いとくるしんで腹肋皆白し、霊銑後の蜃にてると水血に変じ
ややしばらく鳴り通しに鳴っていた電話の鈴がはたとんだ時、二人は始めて奥の方から人の苦しみうなるような声のするのを聞きつけて、顔を見合せた。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
頃刻しばらくして夫帰り、午飯をきっした後、妻が夫を悦ばしょうと自室に入り見るに銀なし。どこへ持って行ったかと問うに夫は何の事か分らず、銀を取った覚えなしという。
彼は食事ををはりて湯浴ゆあみし、少焉しばらくありて九時を聞きけれど、かの客はいまだ帰らず。寝床にりて、程無く十時の鳴りけるにも、水声むなしく楼をめぐりて、松の嵐の枕上ちんじように落つる有るのみなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
良久しばらくありて、梅子は目をしばたゝきつ、「剛さん、軽卒めつたなことを仰しやつてはなりません、貴郎あなたは篠田さんを誤解して居なさるから——」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
連は中年の岩丈な船員風の男で、長い口髭をいじりながら、太い声で青年の言葉に合槌を打っていた。二人は以前余程親しい間柄で、久時しばらく別れていて、つい其日始めて出会ったらしかった。
日蔭の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)
で、此時も真紅まっかになって、一度国で逢った人だから、久濶しばらくといって例の通り倒さになると、先方は心持首を動かして、若し声に腰が有るなら、その腰と思うあたりに力を入れて、「はい」という。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
姥 ああ、お最惜いとしい。が、なりますまい。……もう多年しばらく御辛抱なさりますと、三十年、五十年とは申しますまい。今の世は仏の末法、ひじり澆季ぎょうき盟誓ちかいも約束も最早や忘れておりまする。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「さあ。小時しばらく考えさせて貰おう」
小問題大問題 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
少時間しばらくの沈黙の後で、復た捨吉は読みつづけた。彼は目上の人に対してと言うよりも、むしろ益のない自分の骨折に向って憤りと悲みとを寄せるような心で。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
鰻をたしんだ抽斎は、酒を飲むようになってから、しばしば鰻酒ということをした。茶碗に鰻の蒲焼かばやきを入れ、すこしのたれを注ぎ、熱酒ねつしゅたたえてふたおおって置き、少選しばらくしてから飲むのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
彼はほとんどこの女の宮ならざるをも忘れて、その七年の憂憤を、今夜の今にして始て少頃しばらく破除はじよするのいとまを得つ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
轆轤ろくろきしんで、ギイとふと、キリ/\とふたつばかり井戸繩ゐどなは擦合すれあおとして、少須しばらくして、トンとかすかにみづひゞく。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其男は、火光の射した窓の前まで来ると、にはかに足を留めた。女の影がまた瞬時しばらく窓掛に映つた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
さて、しかるにその足跡たるや、一刻しばらくもやまない粉雪こゆきのために、薄くおおわれておりますが、これがきわめて大切な点で、ほかの無数の足跡と比べて蔽われ方が著しゅうござる。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
名を呼ばれるさえ嬉しいほど、久闊しばらく懸違かけちがっていたので、いそいそ懐かしそうに擦寄ったが、続いて云った酒井のことばは、いたく主税の胸を刺した。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
寸時しばらく、顔を見合せた。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
水漂草の譬喩たとへに異ならず、いよ/\心を励まして、遼遠はるかなる巌のはざまに独り居て人め思はず物おもはゞやと、数旬しばらく北山の庵に行ひすませし後、飄然と身を起し、加茂明神に御暇おいとままをして仁安三年秋の初め
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「始は待合所の入口いりくちの所でちよつと顔が見えたのじや。余り意外ぢやつたから、僕は思はず長椅子ソオフワアを起つと、もう見えなくなつた。それから有間しばらくして又偶然ふつと見ると、又見えたのじや」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
然いふ譯なら此事は秒時しばらく吾儕にお任せなさい彼近所へゆき夫とはなく病が有かあらざるかを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
日出雄ひでをや、おまへちゝとは、これから長時しばらくあひだわかれるのだが、おまへ兼々かね/″\ちゝふやうに、すぐれたひととなつて——有爲りつぱ海軍士官かいぐんしくわんとなつて、日本帝國につぽんていこく干城まもりとなるこゝろわすれてはなりませんよ。
頃之しばらくニシテ妙法院親王ノ召ニ応ジテ侍読じとうトナル。王ソノ才ヲ愛シ寵賜ちょうし年アリ。後親ノ病メルヲ以テ官ヲ辞シテ郷ニかえル。家産薄劣、加フルニ病患ヲ以テス。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)