“しばし”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
暫時38.8%
少時28.2%
霎時9.4%
5.9%
5.3%
少焉1.2%
少間1.2%
少頃1.2%
良久1.2%
多時1.2%
少許0.6%
多日0.6%
0.6%
少時焉0.6%
少選0.6%
0.6%
0.6%
要時0.6%
0.6%
須叟0.6%
須臾0.6%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
取出してのみ暫時しばし其處に休み居ける中段々夜も更行ふけゆき四邊あたりしんとしける此時手拭てぬぐひに深くおもてをつゝみし男二人伊勢屋のかどたゝずみ内の樣子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
みなまた少時しばしもくしてしまふ。其中そのうちちやる。ドクトル、ハヾトフはみなとの一ぱんはなしうちも、院長ゐんちやうことば注意ちゆういをしていてゐたが突然だしぬけに。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
待て霎時しばし、どうもうでない、そもそ乃公おれの学校の監督をしないとうものは、ない所以ゆえんがあってないとチャンと説をめて居る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
彼の女は名匠ヴェラスケスによつてしばしば描かれたやうな卵形の顔をした、額の余り高くない美人であつた。
アリア人の孤独 (新字旧仮名) / 松永延造(著)
乞としばしえんもとやすらひぬ餠屋もちやの店には亭主ていしゆと思しき男の居たりしかば寶澤其男にむかひ申けるは私しは腹痛ふくつう致し甚だ難澁なんじふ致せばくすり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
少焉しばしありてさきのアヌンチヤタに似たる少女は此室に入り、將に進みて我が居る亭に入らんとす。われは心にいたく驚きて、身内みうちの血の湧き立つを覺えき。
少間しばしありて遊佐は二階に昇りきたれり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
白鞭を以て地を築いてあなと成す、虫を中に置き、その上に沃盥よくかんす、少頃しばし蠕々ぜんぜん長きがごとし、竅中きょうちゅう泉湧き、倏忽しゅっこつ自ずからわだかまる、一席のごとく黒気あり香煙のごとし、ただちに簷外えんがいに出で
華やかなる袖をひるがえし、白く小さき足もと痛ましげに、荒磯の岩畳を渡りて虹汀のかたわらに近づき来り、見る人ありとも知らず西方に向ひて手を合はせ、良久しばし祈念をらすよと見えしが
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「何い、商売がどうしたと。」大喝一番腕まくりして向いきたるに、ぎょっとして飛退とびすさり、怨めしげに法会をながめて多時しばしは去りもやらず、彼がその日の収入におおいなる影響あればなり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
橋の上流下流にて花火を打揚ぐる川開きの夜の賑ひは、寺門静軒てらかどせいけんが記しゝ往時むかしも今も異りなし。橋の下流少許しばしにして東に入るの一水あり。これを
水の東京 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
○駒形の駒形堂を右に見、駒形の渡船場を過ぎ、左には長屋ごしに番場の多田の薬師の樹立こだちを望みて下ること少許しばしすれば
水の東京 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
揚幕より推出おしいだされて、多勢の見物の見る目恥かしく、しのぶ、小稲とともに狂言のなかに立交たちまじりて、舞台に鞠唄まりうたうたいし声の、あやしく震いたるも多日しばしがほどぞ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
偖彦三郎は橋本町一丁目家主八右衞門とたづねしに早速さつそくれければ八右衞門の家に行き對面たいめん致せしに八右衞門は彦兵衞のせがれ彦三郎ときゝむねふさがしばし言葉も出ざりしが漸々にかうべ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
されば菓子屋、植木屋、吹屋、射的場の前には、今一客を止めず。吹屋のねえさんは吃驚びつくりした半身を店から出せば、筆屋の老翁おやぢは二三歩往來へ進み出て、共に引き行く人浪の趾を見送る事、少時焉しばしたり。
二十三夜 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
少選しばしありて食卓に呼ばれぬ。われは舊恩人たる老公の前に出でゝ、身をかゞめて拜せしに、アントニオが席をば我とフランチエスカとの間に設けよと宣給ふ。
鼓瑟ことのてしばしとだえ鏗爾こうじとしてしつさしおきてち、対えて曰く、三子者さんししゃよきに異なり。子曰く、何ぞいたまん、またおのおのその志をいうなり。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
草緑にして露繁き青山の練兵場、林を出でゝ野に入り、野を去つて更に田に出づるかうがい町より下渋谷の田舎道は余と透谷とが其頃しばしば散歩したる処にして当時の幻影おもかげは猶余の脳中に往来す。
透谷全集を読む (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
想へば恵まれたるながめなるかな、ただ要時しばし、中空にかかりぬべき虹の橋は、やがて常住の影をここにあらはすがごとし、そのかがやく欄干おばしまりて、わが霊魂たましひは無限の歓喜を受けたりき。
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
しばし有りてをんなどもの口々に呼邀よびむかふる声して、入来いりきし客の、障子ごしなる隣室に案内されたる気勢けはひに、貫一はその男女なんによの二人づれなるを知れり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
目前まのあたり鯉魚りぎょ神異しんいを見た、怪しき僧の暗示と讖言しんげんを信じたのであるから、今にも一片の雲は法衣のそでのやうに白山のまゆひるがえるであらうと信じて、須叟しばしを待つ
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
須臾しばしを待つ間を、法壇を二𢌞り三𢌞り、緋の袴して輪に歩行いた。が、此は鎭守の神巫に似て、然もなんば、と言ふ足どりで、少なからず威嚴を損じた。