良久しばし)” の例文
「銀子さん」と良久しばしありて梅子は声ふるはしつ「四年前の貴女の苦痛を、今になつて始めて知ることが出来ました——」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
華やかなる袖をひるがえし、白く小さき足もと痛ましげに、荒磯の岩畳を渡りて虹汀のかたわらに近づき来り、見る人ありとも知らず西方に向ひて手を合はせ、良久しばし祈念をらすよと見えしが
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「ヘエ」と、伯母は良久しばし言葉もなく、合点がてん行かぬ気に篠田のおもてもれり「お前の神様のお話も度々たび/\聞いたが、私には何分どうも解らない、神様が嫁さんだなんて、全然まるで怪物ばけものだの」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
伯母は怪訝けげんな目して良久しばし篠田を見つめしが「——又た明日ゆつくり話しませう、疲れたらうに早くおやすみ、いつもの所にお前の床がある、——気候が寒いで、風邪かぜでも引かれると大変だ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)