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多時
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しばらく
ふりがな文庫
“
多時
(
しばらく
)” の例文
私もこんな事を口に出しますまでには、もしや貴方が御承知の無い時には、とそれ等を考へまして、もう
多時
(
しばらく
)
胸に畳んでをつたのでございます。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
馳
(
は
)
せて書斎に
引籠
(
ひきこも
)
り机に身をば
投懸
(
なげか
)
けてほつと
吐
(
つ
)
く息太く長く、
多時
(
しばらく
)
観念の
眼
(
まなこ
)
を閉ぢしが、「さても見まじきものを見たり」と声を
発
(
いだ
)
して
呟
(
つぶや
)
きける。
妖怪年代記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
私
(
わたし
)
は
悲
(
かな
)
しくなつて、
多時
(
しばらく
)
深
(
ふか
)
い
沈黙
(
ちんもく
)
に
沈
(
しづ
)
んだ。
背負揚
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
で、今夜もまた、早瀬の病室の前で、道子に別れた二人の
白衣
(
びゃくえ
)
が、
多時
(
しばらく
)
宙にかかったようになって、欄干の処に居た。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
多時
(
しばらく
)
門
(
かど
)
に居て動かざるは、その
妄執
(
もうしゆう
)
の
念力
(
ねんりき
)
を
籠
(
こ
)
めて夫婦を
呪
(
のろ
)
ふにあらずや、とほとほと信ぜらるるまでにお峯が夕暮の心地は
譬
(
たと
)
へん方無く悩されぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
▼ もっと見る
山の神や、
小児連中
(
こどもれんじゅう
)
、
顎
(
あご
)
が干上るもんですから、
多時
(
しばらく
)
お
扶持
(
ふち
)
を頂いて来いって、こんなに申しますので、お
言語
(
ことば
)
は
渡
(
わたり
)
に舟、願ったり
叶
(
かな
)
ったりでございます。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
多時
(
しばらく
)
静なりし
後
(
のち
)
、
遙
(
はるか
)
に拍子木の音は聞えぬ。その響の消ゆる頃
忽
(
たちま
)
ち一点の
燈火
(
ともしび
)
は見え
初
(
そ
)
めしが、
揺々
(
ゆらゆら
)
と町の
尽頭
(
はづれ
)
を
横截
(
よこぎ
)
りて
失
(
う
)
せぬ。再び寒き風は
寂
(
さびし
)
き星月夜を
擅
(
ほしいまま
)
に吹くのみなりけり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
いや、
罰
(
ばち
)
は
覿面
(
てきめん
)
だ。境内へ
多時
(
しばらく
)
かかっていた、見世物師と
密通
(
くッつ
)
いて、有金を
攫
(
さら
)
って
遁
(
に
)
げたんです。しかも貴女、女房が
孕
(
はら
)
んでいたと云うじゃありませんか。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
多時
(
しばらく
)
庭
(
には
)
へも
出
(
で
)
られなからうと
思
(
おも
)
はれましたので、
密
(
そつ
)
と
露
(
つゆ
)
の
中
(
なか
)
を、
花
(
はな
)
に
觸
(
さは
)
つて
歩行
(
ある
)
いて
見
(
み
)
たんでございます。
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
寝てから
多時
(
しばらく
)
経
(
た
)
つ。これは昼間からの気疲れに、自分の
魘
(
うな
)
される声が、自然と耳に入るのじゃないか。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
却説
(
さて
)
、葛木法師の旅僧は遠くも
行
(
ゆ
)
かず、どこで電車を下りて
迂廻
(
まわりみち
)
したか、
多時
(
しばらく
)
すると西河岸へ、船から上ったごとく
飄然
(
ひょうぜん
)
として
顕
(
あらわ
)
れて、延命地蔵尊の
御堂
(
みどう
)
に詣でて
礼拝
(
らいはい
)
して
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
多時
(
しばらく
)
思入った風であったが、ばさばさと
引裂
(
ひっさ
)
いて、くるりと丸めてハタと向う見ずに
投
(
ほう
)
り出すと、もう一ツの柱の
許
(
もと
)
に、その
蝙蝠傘
(
こうもり
)
に掛けてある、主税の
中折帽
(
なかおれ
)
へ留まったので
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
執事は大助を
彼方
(
あなた
)
の
一室
(
ひとま
)
へ案内し、はたと閉ざして立去りける跡に、大助は
多時
(
しばらく
)
無事に
苦
(
くるし
)
みつ、どうどうとしこを踏みて四壁を動かし、獅子のごとき力声を
発
(
いだ
)
して、満腔の鋭気を
洩
(
もら
)
しながら
金時計
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
前刻
(
さっき
)
から
多時
(
しばらく
)
そうやっていたと見えて、ただしくしく泣く。
後
(
おく
)
れ毛が揺れるばかり。慰めていそうな貴婦人も、
差俯向
(
さしうつむ
)
いて、無言の処で、
仔細
(
しさい
)
は知れず……
花室
(
はなむろ
)
が夜風に冷えて、
咲凋
(
さきしお
)
れたという風情。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“多時”の意味
《名詞》
多くの時間。長い期間。
(出典:Wiktionary)
多
常用漢字
小2
部首:⼣
6画
時
常用漢字
小2
部首:⽇
10画
“多”で始まる語句
多
多寡
多勢
多少
多分
多忙
多人数
多數
多日
多数