“ひさし”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
46.5%
45.9%
3.4%
庇廂0.5%
0.5%
0.5%
久濶0.3%
0.3%
0.3%
0.2%
庇髪0.2%
久矣0.2%
久闊0.2%
屋簷0.2%
屋翼0.2%
庇下0.2%
0.2%
斜廡0.2%
眉庇0.2%
軒庇0.2%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
犇々ひし/\と上げくる秋の汐はひさしのない屋根舟を木の葉のやうに軽くあふつて往来と同じ水準にまでもたげてゐる——彼はそこに腰をかけた。
わたしはそんなことをかんがえながら旧幕の世の空気がくらいひさしのかげにただよっているような家作やづくりを一軒々々のぞいてあるいた。
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
安井息軒やすいそっけんの『北潜日抄』明治戊辰六月二十九日の記に「保岡元吉衝心ヲ以テ没去ス。年来ノ旧識凋零ちょうれい殆ド尽ク。悵然ちょうぜんタルモノコレヲひさしウス。」
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それに間に合ふやう是非とも取り急いで茶室成就しあげよ待合の庇廂ひさし繕へよ、夜半のむら時雨も一服やりながらで無うては面白く窓撲つ音を聞き難しとの贅沢いふて
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
明るくしろ初夏はつなつの日ざしが、茂り合ったみどり草の網をすかして、淡く美しく、庭のもに照り渡り、やわらかな光線は浅いひさしから部屋の中へも送って来ます。
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
なくばやゝ離れた位置から遠くわが帽子のひさしのあたりに看る方がおもしろい。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
また久濶ひさしぶりに清らかな水は廃市に注ぎ入り、楽しい祭の前触が異様な道化の服装をして、喇叭を鳴らし拍子木を打ちつつ、明日の芝居の芸題を面白をかしく披露しながら町から町へと巡り歩く。
水郷柳河 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
若者はソフト帽のひさしをおろしながら云つた。
パンアテナイア祭の夢 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
小径の片側には園内の地を借りて二階建の俗悪な料理屋がある。その生垣につづいて、傾きかかった門のひさしには其文字も半不明となった南畝の匾額へんがくきゅうって来りおとなう者の歩みを引き留める。
百花園 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「八日。陰。午後吉田へ会合。主人、貞白及小島金八郎並にひさし同伴、やまぶね讚岐金刀比羅宮ことひらのみや参詣。夜四時過乗船、夜半出船。尤同日安石より御届取計。」
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「二十四日。(一月。)晴。於小田県公債証書買上代御渡相成に付、受取に出頭可致之処、差合に付為名代尚差出、金百二十五円、二分引に而金百円受取候事。」(節録。)名代「ひさし」はかみにも見えた飯田安石の子である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
白っぽい竪縞たてじまの銘仙の羽織、紫紺しこんのカシミヤの袴、足駄を穿いた娘が曾て此梅の下に立って、一輪の花を摘んで黒い庇髪ひさしびんに插した。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
庇髪ひさしってリボンをかけて着物をえた所は、争われぬ都の娘であったが、それでも平生ふだんは平気に村の娘同様の仕事をして、路の悪い時は肥車こやしぐるま後押あとおしもし
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
われこそはおと名高なだか印度洋インドやう大海賊船だいかいぞくせんなり、なんぢ新造軍艦しんざうぐんかんうばはんとて此處こゝつこと久矣ひさしすみやか白旗はくきてゝその軍艦ぐんかん引渡ひきわたさばよし躊躇ちうちよするにおいては、われに七せき堅艦けんかんあり
さうしてこの一さわぎのあとから、また久闊ひさしぶりに清らかな水は廢市に注ぎ入り、樂しい祭の前觸まへぶれが、異樣な道化どうげの服裝をして、喇叭を鳴らし拍子木を打ちつゝ
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
瀧の背景になつてゐる岩壁も上半部が三段ばかりに横襀よこひだになつて見えるが、その最上部のものは恰も屋簷ひさしのやうに張出してゐて、その縁邊が鋸齒状きよしじやうをなしてゐるので鋸岩のこぎりいはといふさうであるが
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
まへにいへるがごとく、雪ふらんとするをはかり、雪にそんぜられぬため屋上やね修造しゆざうくはへ、うつばりはしらひさし(家の前の屋翼ひさし里言りげんにらうかといふ、すなはち廊架らうかなり)其外すべて居室きよしつかゝる所ちからよわきはこれをおぎなふ。
桔梗屋の庇下ひさし左寄りの隅にも、天水桶と門柱との間に根元を押し込んで、中ほどを紐で横に結えて、高さ一丈ばかりの青竹が立っているのは、これは少しも異とするにたらないが、その竹の先に
折しも小春の空長閑のどけく、斜廡ひさしれてさす日影の、払々ほかほかと暖きに、黄金丸はとこをすべり出で、椽端えんがわ端居はしいして、独り鬱陶ものおもいに打ちくれたるに。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
大きな眉庇ひさしの附いた黒褐色毛皮製の鳥打帽、黒の編上靴——全体として少し猫背の感じスウイトウ・ストウブー
双面獣 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
ことに身体動作の軽捷けいしょうさは神業のごとくで、慶安四年三月二十五日、将軍家光いえみつの上覧試合に阿部道世入道あべどうせいにゅうどうと立合った時などは、跳躍するたびにその衣服の裾が軒庇ひさしを払ったと伝えられている
松林蝙也 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)